闇の魔法使いの卵   作:黒歴史量産機

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11 スリザリン

「それって、どういう意味?」

 

 オズワルドが怪訝な顔で首を傾げる。無理もない、誰だってさっきの言葉を聞いたらそんな反応をするだろう。

 

 スリザリンというのは特殊な寮だ。決して特別、というわけではない。すべての寮がそれぞれの特別な点を持っている。

 だが、俺たちスリザリンだけほかとは違う点がある。純血主義だ。

 

 勇気や忠誠心、知恵と違って、純血主義だけは家の中で受け継がれ、歴史を持つ『信仰』だ。

 

「スリザリンは、他の寮とは違って明確に親からの『圧力』がある」

 

 一部の家系はもしかしたらグリフィンドールやレイブンクローに行くことを強制するかもしれない。だが、それらと比べてスリザリンへ行くように子どもに教える純血主義の家系は遥かに多いのだ。子どもたちに選択肢などない。親からの罰を恐れ、組分け帽子にスリザリンに行かせてくれるよう願う子どもたちは、一体何人いるのだろうか。

 

「願ってもないのにスリザリンに入らざるを得なかった奴らは、間違いなく死喰い人にされる」

 

 純血主義の家系は、個人よりも家の慣習や思想を重んじることがほとんどだ。そういった家系に生まれた奴らは親からの圧力で、純血主義のシンボルである闇の帝王に忠誠を誓うことになる。たとえ、それが本心ではなかったとしても。

 

「そんな奴らが将来敵対する奴らと仲良くして、卒業して実際に戦場で出会ったら、どうなる?」

 

 間違いなく、殺すのを躊躇ってしまうだろう。

 

「その場に互いしかいないなら慈悲を見せることができるかもしれない。だが――」

 

 戦場は混沌としている。多くの敵と、多くの味方が入り混じり、誰が誰だかわからない中で命がけで呪文を掛け合う。死喰い人も闇祓いも不死鳥の騎士団も、基本は集団で戦闘を行う。知り合いと二人きりになる機会など、滅多にない。

 

「周りの仲間や敵は情をかけてくれるわけじゃない。殺すのを躊躇ってるうちにあっさり殺されちまうさ」

 

 いつか敵対するかもしれない人間と付き合うのは、大きなリスクがある。

 望ましいのは、互いに睨み合いつつも校内で実戦を交えない関係だ。互いに同情せず、干渉せず、適度に憎み合うくらいがちょうどいい。

 

「ま、戦争が終わったら仲良くすべきだとは思うけど、今のうちは干渉しすぎると後々危うくなるって話だ」

 

 俺の話を聞き終えたバーティとオズワルドはしばらく呆然と立っていた。

 

「あなた……触手好きの変態だと思ってたけど、まともな話もできるのね」

「どういう意味だコラ」

 

 触手好きは許せる。事実だ。だが変態というのはいただけない。俺は英国紳士であって、決して変態ではない。触手好きと変態はイコールじゃあない。断じてない。ないったらない。

 

「とにかくもう疲れたし、深夜に授業があっても明日の起床時間が遅くなるわけじゃねぇから、とっとと寮に帰って寝ようぜ」

 

 オズワルドとは変態の定義について数時間ほど議論したいが、明日も授業があるので睡眠を優先しよう。本当にホグワーツのスケジュールに関しては納得できない部分が多い。生徒の睡眠時間を授業で削るとかどうかしてる。マグルの睡眠に関する科学の知識をもっと取り入れればいいのだが、保守的な魔法界ではそうも行かない。

 

「セルウィン」

 

 階段を降りようとしたら、バーティに呼び止められた。眉にシワを寄せて、神妙な顔だ。

 

 

「お前も、本当はスリザリンに入りたくなかったのか?」

 

 

 たしかに、俺がスリザリンを選んだのは親に殺されないためだ。

 

「……後悔はしてねぇよ」

 

 

* * * * * * *

 

 

 バーティはけたたましい楽器の音で目を覚ました。

 

「……今日もバグパイプかい?」

「残念。今日はリコーダーだ」

「一気にダウングレードしたね」

 

 失礼な。リコーダーだって立派な楽器なんだぞ。ダウングレードとか言うな。

 カパルディは昨日医療塔に連れて行かれたから、そこで一夜を明かしたのだろう。今日の授業には参加できるのだろうか。

 

「さて、今日も一日のびのびと! 頑張るか〜」

 

 大きく伸びをして、カバンを持ちあげる。さっき起きたはずのバーティはいつの間にか荷物を用意し終えていた。なんかバーティの能力が単に優等生であるというだけでは説明できないくらい高いんですけど。

 

 

 大広間に朝食を食べに向かうと、すでにスネイプ先輩の隣にカパルディが座っていた。元気そうだ。

 

「セブルスから聞いたぜ? 昨日グリフィンドールの奴らと喧嘩したんだって?」

 

 長椅子に座ると、カパルディに声をかけられる前に、スネイプ先輩の隣に座っていた生徒に声をかけられた。

 

「えっと……そちらの方は?」

 

 おそらくスネイプ先輩の同級生だろう。身長もそれなりに高いし、明らかにスネイプ先輩と友人のようだ。

 

「おっと、まだ紹介してなかったね。こいつは僕の友人のマルシベールだ」

「スーテク・マルシベールだ。よろしく」

 

 そう言って、マルシベールは握手のために手を差し出した。

 こいつが、あのマルシベールか。

 

 マルシベール、そしてエイブリーは、原作でスネイプ先輩を闇の陣営に引きずり込む元凶だ。




スーテク・マルシベール

勝手に名前をつけさせていただきました。
由来は死を司る神 Sutekh
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