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「やっと今週の授業終わったぁ〜!」
金曜日の最後の授業が終わり、俺は歓喜の声とともに腕を伸ばした。隣のカパルディも眠そうにしている。
「まだホグワーツに入ってから一週間しか経ってないのに、なんだか一ヶ月も時間が過ぎた気がするよ」
「ほんとそれな」
なんだか5日しか授業を受けてないのにドッと疲れた。今日は部屋に帰ってゆっくり休もう。
と、思ったのだが、寮の談話室に入ったところで思わぬ人物に呼び止められてしまった。
「よう!」
「マルシベール、先輩……?」
なんと、マルシベールが俺たち四人に声をかけてきたのだ。バーティは今回はしかめっ面をせず、好意的に接している。心のなかでどう思っているのかは知らないが。
「お前ら、この後ここに集合な」
「え? 何かあるんですか?」
「スリザリンの伝統行事さ」
原作ではそんなのなかったな。まぁグリフィンドール以外の寮生活の描写がほとんどないからわからなくて当然だけど。どんな事をするんだろうか。スリザリンのことだし、純血主義に関わりがあるのか? だとしたらあんまり参加したくないな。
「なにするんですか? 黒ミサ? 悪魔崇拝? はたまた生贄を使って邪神召喚?」
「そんなわけあるか!」
「じゃあ酒盛りですか? 酒池肉林するんですか?」
「……クラウチ、こいつの頭ん中はどうなってる」
「こればっかりは誰にもわかりません……」
なんかマルシベールとバーティが変なところで通じ合ってる。絶対に相容れないと思ってた二人が俺の異常性に関してだけ意見が合うところとか見たくなかったな……。
「流石に保護者のいない中で未成年飲酒はしないさ。寮杯のためでもないのに規則を破るのは馬鹿のすることだ」
つまり寮杯に関することなら規則を破るんだな。イギリスは5歳以上なら保護者の同意で酒が飲める国だから、もっと飲酒に対する価値観が軽いと思っていたが、少なくとも魔法界ではそうではないのか。
「今日は普通に勉強会だよ」
「勉強会?」
「そう。うちの寮では毎週金曜日の授業後に勉強会をするのが伝統なんだ。過去問見せ合ったり、先輩に苦手な教科を教えてもらったり」
「……思ってたよりまともだった」
「お前の予想がおかしいだけだよ」
カパルディに突っ込まれながらも、俺は納得していた。スリザリン寮のモットーは純血主義の他に野心、狡猾、同胞愛がある。寮杯のために密かに過去問をシェアしたり、仲間の減点を防いだりするのは確かにうちの寮ならやりそうなことだ。
ひとまず苦手教科――魔法薬学についてスネイプ先輩に教わりたいので部屋に戻って教科書などを取ってこよう。
二十分くらいした後、スリザリンの談話室には全生徒の三分の二以上が集まっていた。新入生に至っては全員が集まっている。
監督生の一人が前に進み出て話し始めた。
「新入生諸君! 我らがスリザリン寮では、授業での成績や学年末の試験での結果を少しでも良くするために毎週金曜、授業が終わってから夕食の時間まで談話室で勉強会を行っている。参加は強制ではない。現にNEWT過程の生徒やOWL試験の近い五年生の多くはここにいない。だが、この会に参加することで有意義な時間が過ごせることは保証しよう」
周りを見渡してみると、上級生になればなるほど数が少ない。だが二年生や三年生の殆どはここに集まっている。継続してここにいるということは、何かしらこの会で得られるものがあるということだろう。
「先輩に質問しに行くもよし、自分一人で勉強するもよし! それでは各自自由にやってくれ」
監督生の言葉とともに、静まり返っていた談話室に少しずつ話し声が戻ってきた。俺は魔法薬学の話が聞きたいのでスネイプ先輩の机に向かった。
「どうしたセルウィン。俺に質問でもあるのか?」
「いや、マルシベール先輩じゃなくてスネイプ先輩に魔法薬学の質問をしようと思って」
俺はマルシベール先輩の言葉を受け流してスネイプ先輩の隣に座る。バーティも俺の後を追って同じ机に座った。この機に乗じてマルシベールから情報を聞き出そうとしているんだろうか。
「そういえばセルウィン、変身術の授業でインク瓶を触手に変えて減点されたんだってな」
「え――誰から聞いたんですか……?」
なんで減点された不名誉な事実が三年生に広まってるんだ?
「私よ」
マルシベールの後ろから一人の少女が近づいてきた。見覚えがある。確か名前は――
「オズワルド?」
「や、久しぶり」
オズワルドは確か水曜日にグリフィンドール生と喧嘩になってるときにマクゴナガル教授を呼んできてくれた生徒だ。だが、なんでこいつがマルシベールと交流があるんだ? この前はグリフィンドールとスリザリンの対立関係を非難してたし、純血主義者ではないと思ってたんだが。
「マルシベール先輩とは家の関係で前に何度か会ってるの。それでホグワーツに入ってからは色々と教えてもらってる」
「へー……」
話を聞きながら頭の中でオズワルドの警戒レベルを一段階上げる。こいつはこいつで目的がはっきりとしない。グリフィンドールとスリザリンの融和を望んでいながら、過激派純血主義者と交流を持っている。こいつは何がしたいんだ?
だが、原作で戦時中のホグワーツで騒動が起きるような描写は特になかったから学校内で大きな動きは見せないだろう。
「クラウチ、ちょっといい? 天文学で聞きたいことがあるんだけど……」
「ああ、天文学ならカパルディのほうがよく知ってるぞ」
バーティがそう言うと、マルシベールが一瞬目を細めた。が、すぐに何もなかったかのようにいつもの陽気な笑顔に戻った。
「そう。ならそっちに聞くことにするわ。ありがとね」
オズワルドはそう言って教科書を持ってカパルディのいる机に向かって行った。
その姿を、マルシベールはじっと見つめていた。
バーティは総合力では学年一位ですが、天文学ではカパルディ、変身術では主人公のほうが上です。