カパルディとバーティはけたたましい楽器の音で目を覚ました。カパルディは頭を抑えながら音の発信源である俺を睨みつけた。
「……今日はなんの楽器だ?」
「パイプオルガン」
「……どうやって部屋に持ってきたのか訊いていいか?」
「だめ〜」
バーティは起き上がってすでに荷物をまとめ始めている。カパルディでさえもう俺がこういった事をしているのにツッコまなくなった。
なにせ俺がこの起こし方を始めてからもう一ヶ月も経ったのだ。いやー、時間の流れって速いね〜。
「セルウィンって何個楽器持ってるんだ?」
「全部バグパイプに変身術を使ってるだけだから、実際に持ってるのは一個だね」
「その才能をもっと別のことに使えよ……」
変身術というのは魔法の中でもかなり難しい分野だ。どうも俺にはその分野だけ才能があるらしいのだ。それ以外の教科だと、一部の教科を除いて理論だけなら学年でも上位だと言える。前世の知恵がある分覚えが速い。逆に転生者でもないバーティがここまで優秀なのがおかしい。
寮を出て、まずは朝食を食べに大広間に向かう。一ヶ月もこの道を通ってるんだ、もう大広間までは目をつぶってでも行ける。
「うぼっ」
「……いま自分から壁にぶつかって行ったように見えたんだが」
「目をつぶって大広間までたどり着けると思ったけど無理だったか」
そんな他愛のない話をしているところで、事件はおきた。
「バーテミウス・クラウチ!」
「……ムーディ教授?」
バーティはものすごい剣幕のムーディ教授に呼び止められた。パグナックス・ムーディ教授は、今年の闇の魔術に対する防衛術の担当教諭だ。原作で出てきたアラスター・ムーディとはおそらく親戚だろう。両目も両足も健在だが、顔の圧がまさに映画で見たマッド・アイのものである。やはり遺伝なのか。
「クラウチ! お前は決闘クラブに入る気はないかね!?」
「決闘クラブ、ですか?」
ムーディ教授はどうやらバーティを決闘クラブに勧誘したいらしい。あまりにも勢いが激しいので、バーティは後ろにのけぞっていた。
「うむ! お前は授業でとても優秀だった! フリットウィック教授からの評判もいい! 今まで教えた呪文もすでに完璧に使えるとも聞いた! お前ならよき戦士になれる!」
「セルウィンも貴方に教えてもらった呪文使えますよ」
「そうか! だが今はお前の話をしている!」
なるほど、ムーディ教授は俺には何の興味もないのか。というより、俺が闇の魔法使いの家系だから意図的に無視しているんだろう。元闇祓いだからな、正義感が強いのかもしれない。
「四限目が終わった後! 場所は儂の部屋の扉に貼ってある! 待っているぞ!」
そう言うと、ムーディ教授は俺達がなにか言う前に、さっさと行ってしまった。九十歳を超えているはずなのに、元気なものである。
「なんか勢いよく喋る先生だよな。隣りにいた俺の顔にまで唾飛んできたし」
「え? 唾なんて飛んでた?」
「何の話だ?」
どうやら目の前に立っていたバーティと、その隣に立っていたカパルディと無口な少年には唾が飛んでこなかったらしい。なにそれ、喋りながら俺にだけ唾飛ばすってどんな高等芸?
「セルウィンとカパルディも来るかい?」
「俺はパス」
「俺は行こっかな。なんか嫌われてるみたいだけど、新しい呪文とか教えてもらえるかもしれないし」
正直言って決闘クラブは期待できそうだ。原作ではギルデロイ・ロックハートが復活させて、自身の能力不足で大失敗してたけど、今度の監修者は元闇祓いだ。質には期待できる。
「誘っておいて何だけど、大丈夫か? お前あんまり教授に好かれてなさそうだけど……」
「大丈夫だ、問題ない」
いくら評判の悪い教師でも、ダンブルドアが就任を許可したんだ。流石に生徒に危害を加えることはないだろう。……まぁ、原作でのクィレルとロックハートは除く。アラスター・ムーディは別人だったし。
「それじゃ、今日も一日のびのびと。がんばりますか」
それはそれとして、入学してから一ヶ月も経ってるのに同室の無口な少年の名前が一向にわからないのは何故だろうか。
* * * * * * *
指定された教室には、全生徒のおよそ三分の一が来ていた。見渡してみると、スリザリン生がやけに少ない。きっとわざと誘わなかったんだろう。決闘クラブの開催場所も自分の部屋の扉なんて分かりづらいところに貼ってあったし、自分が招待した奴ら以外にはあまり来てほしくないらしい。俺は来たけど。
スリザリンの同胞の中で知ってるやつがいないか探していると、予想外の人物を見つけた。
「オズワルド」
「あら、あなた達も招待されたの?」
「バーティだけな。俺は勝手についてきた」
僅かにいたスリザリン生の中に、同級生のオードリー・オズワルドがいた。まさか一年生で二人も招待されているとは。
「うちの寮にあんまり誘いが来てないってことは、招待の条件は防衛術が得意で、純血主義の家系でないことね」
「招待されてない俺がいるけど、追い出されはしないよな?」
「さあね。ムーディ教授だし、何が起こるかさっぱり」
ムーディ教授は今や学校内で最も厳しく行動の予測しづらい教授として有名だ。あのマクゴナガル教授よりも厳しく、唯一予測できることがあるとすればどんなに小さな失敗でも減点することだけ。
「集まっているな!」
教室中に響き渡る大声とともに、ムーディ教授が現れた。後ろからフリットウィック教授がついてきている。ムーディ教授は部屋の中心に立つと、足元に台を生成してその上に立った。
「諸君! 本日は決闘クラブに集まってくれて感謝する! 先んじて言っておくが、このクラブでは通常の決闘よりも実戦的な戦い方を学ぶ! 諸君の想像している決闘クラブとは違う活動を行うことを、まずは知っていてほしい!」
小さなざわめきが教室に広がる。
なるほど、原作でロックハートがやってたような形式に縛られたスポーツに似た決闘ではなく、戦場でするような戦いの練習がメインなのか。フリットウィック教授を見てみると、ムーディ教授の隣で渋そうな表情をしている。そういえばこの人は決闘チャンピオンっていう設定があったっけ。『決闘クラブ』を名乗る団体が誇り高く礼儀正しい決闘ではなく、より野蛮な戦闘方法を教えているという事実が気に食わないんだろう。だが魔法戦争が繰り広げられている中、生徒に自衛力をもたせることも大事だ、と判断してここにいるのだろう。心中複雑なんだろうな。
「ここにいるフリットウィック教授が儂と共に戦い方を教える! フリットウィック教授は元決闘チャンピオン! そして儂は元闇祓い! 諸君の期待に答えられる活動をすると誓おう!」
二人の経歴からして、かなり高い質の教育が受けられるんだろう。ただ、唯一心配なのは……
「言っておくが、このクラブでは自らの命を守る方法を学ぶ! 内容は普段の防衛術の授業よりも発展したものを学び、進度も速い! 身を守る術を本気で学ぶ覚悟のない者は去るがいい!」
教室に二度目の、より大きいざわめきが広がった。一部の生徒はすでに教室から出ようとしている。
ムーディ教授が始めたんだもんな。やっぱり、こうなると思った……。
参考までに現在の主人公たちの成績
(O.W.L.方式:T<D<P<A<E<O)
セルウィン
DADA:E
変身術:O
呪文学:E
薬草学:A(一部分野のみO)
魔法薬学:理論はE、作業はP
魔法史:O
天文学:A
飛行術:D
バーティ
全教科:O
カパルディ
DADA:P
変身術:D
呪文学:A
薬草学:E
魔法薬学:E
魔法史:寝てる
天文学:O
飛行術:E
無口な少年
全教科:謎
オズワルド
DADA:E〜O
呪文学:E〜O
変身術:A
薬草学:A
魔法薬学:A〜E
魔法史:E
天文学:P
飛行術:E
スリザリン生は定期的に勉強会をするので平均的な学力は高い設定です。
原作でハリーが入学するまで連続で寮杯を取る寮ですから、そこそこ優秀。