闇の魔法使いの卵   作:黒歴史量産機

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遅くなりました。更新再開します。


18 ガイジング、またはハロウィーン

 俺は部屋のベッドで寝転がっていた。カパルディはいつものように自分のベッドに寝転がって本を読んでいて、バーティは図書館で自習。無口な少年はふらっと出ていったっきり帰ってこない。

 

 この前のことが何故かすごく引っかかる。あの夜ムーディ教授はどこで何をしていたんだろうか。この前池で会ったときに何か秘密を隠しているようだったから、おそらくそれに関係ある何かをしていたんだろうけど、あの人はホグワーツで何をしようとしてるんだ? 原作では第1次魔法戦争の際にホグワーツで事件が起こった描写はなかったはずだ。つまりなにかが起こるならクリスマス休暇やイースター休暇で教授が外に出たときだ。ホグワーツ内で何かが起きるなら、ダンブルドア含む教師陣や生徒全員に気づかれない小さい事件だろう。

 流石にダンブルドアが認可した教師だ、生徒の命に関わることはしないだろう。……なんだろう、我ながら今の言葉の信憑性を疑ってしまう。

 

 まぁいい、いろいろとうだうだ悩むのはまた今度にしよう。なぜなら今日は――

 

「うっし、働くぞカパルディ」

「なんでだ」

 

 明日は十月三十一日、ハロウィーンだ。ホグワーツの存在するスコットランドではガイジングというらしいが、ホグワーツ内ではハロウィーンでいいらしい。俺はガイジングで通すけど。

 ホグワーツではガイジングの時期になると、寮の談話室や大広間にカボチャなどを使った飾りつけが行われる。その時に教師の飾りつけを手伝えば、寮杯の得点が得られる。寮杯の優勝を目指す我らスリザリン寮では、暇な生徒――特にO.W.L.やN.E.W.T.試験が近いわけではない三年生以下――が集団で手伝いに行くのが習わしだ。少なくともマルシベールはそう言ってた。

 

「お前どうせ暇だろ? 寮杯のためだ、先輩たち手伝いに行こうぜ」

「わかったよ。先行ってろ、後で追いつく」

 

 カパルディはゆったりとベッドから起き上がった。俺は一足先に大広間に向かうことにしよう。

 

 

* * * * * * *

 

 

「よお! もう来ないと思ってたぞ!」

 

 大広間では、スネイプ先輩やマルシベールをはじめとしたスリザリン生に混じって、チラホラと他寮の生徒も飾り付けの手伝いをしていた。おそらくスリザリンに寮杯を取られてたまるものかと必死になっているのだろう。

 マルシベールはスネイプ先輩とともにカボチャをくり抜いてジャック・オ・ランタンを作っていた。なんだか不気味な顔だな。もうちょっと愛嬌ある顔とかにはできないのだろうか。

 

「カボチャ、まだまだあるから手伝ってくれ。かっこよく頼むぞ!」

「了解です!」

 

 とりあえずカボチャ要員になった。困ったな。芸術センスはあんまりないから顔のデザインとかどうすればいいんだろう。大広間の中心に積み上がったカボチャの山から一つ取り出し、スリザリンの長机に置いた。

 加工は切断呪文ディフィンドを使う。魔法を使えば中身をくり抜くのだってサッとできる。魔法って便利だな。

 

「や」

 

 カボチャの中身を取り除いていると、俺の隣に誰かが座った。オズワルドだ。彼女も俺と同様にカボチャを持っている。

 

「お前もカボチャ担当か」

「マルシベール先輩に駆り出されてね」

 

 オズワルドは話しながらかぼちゃの中身をくり抜き始めた。魔法の力でカボチャの種がスルスルと出ていくのは見ていてなんだか気持ちがいい。

 しばらく作業していると、大広間にカパルディがやってきた。

 

「遅かったじゃねぇか。お前も一緒にカボチャ彫ろうぜ?」

「わかった」

 

 カパルディも山からカボチャを一つ取り出し、俺の隣りに座ってカボチャをくり抜き始めた。なんと素手で豪快に種を掻き出している。魔法使いとは思えねぇな。

 そうこうしているうちに俺のジャック・オ・ランタンは完成した。顔はサイバーマンみたいにした。ちょっとかわいい。

 あとは色々と魔法をかけて……。

 

「よし、君をハンドルズと名付けよう」

「お、セルウィンもできたの?」

「まぁな」

「俺も完成」

 

 オズワルドとカパルディも作り終わったみたいだ。っていうかカパルディ速くね? さっき作り始めたばっかだよな、しかも魔法あんま使ってないし。カボチャ彫りの才能があるな。……カボチャ彫りの才能ってなんだ?

 

「じゃーん」

「……なんというか、独特な顔だね」

「絶対ジャック・オ・ランタンに描くような顔じゃないな」

 

 二人からの評価はイマイチだった。だがハンドルズの特筆すべきところは顔じゃない。

 

「もうちょっと近づいて見なよ」

「近づいたって、何も変わら――」

 

 そう言って、カパルディがハンドルズに顔を近づけた瞬間、ハンドルズの内部が緑色に光り始めた。

 

『カパルディの馬鹿野郎』

「うわ、喋るんだ」

「なんで俺の悪口なんだよ!」

 

 驚くオズワルドと、怒るカパルディ。まぁ怒られるのはしょうがないよな。

 ハンドルズには近づいた人間全員に悪口を言うように魔法がかけてある。教師に見つかったら解呪されてしまうだろうが、見つかるまではこのままにしておこう。

 

「で、カパルディはどんなの彫ったんだ?」

「これだよ」

 

 カパルディのカボチャには、スタンダードなジャック・オ・ランタンの顔が彫ってあった。至ってシンプルだが、あの短時間で彫ったんだからすごいもんだ。やっぱりカパルディにはカボチャ彫りの才能がある。

 

「オズワルドのはどんな感じなんだ?」

「これよ」

 

 オズワルドは自信満々にカボチャを見せてきた。

 腕前は、まぁ……その、なんというか……。

 

 彼女にはカボチャ彫りの才能はなかったようだ。

 

 

* * * * * * *

 

 

 そして迎えたガイジング当日。この日の夜は大広間で大々的に宴が催された。

 残念ながらハンドルズの悪口機能は誰かに見つかってしまったようで解除されていたが、人が近づくと緑色に光る機能だけは残っていた。慈悲を見せてくれた教師の人、ありがとう。

 

 宴の後、寮に帰るとクィディッチチームのキャプテンが皆を談話室に集めていた。

 多くの生徒はソワソワしながらキャプテンが話し始めるのを待っている。もうすぐクィディッチの試合が始まるから、チーム編成でも発表されるんだろうか。

 

「なぁ、なんで皆こんなにソワソワしてるんだ?」

「セルウィンは知らないのか?」

 

 隣りにいたバーティに訊くと、信じられない、といったような目で見られた。

 

「今年は先輩が卒業したからシーカーのポジションがずっと空いてたんだよ。多分今日はそれが誰か発表されるから、みんな興奮してるんだよ」

 

 説明しているバーティ本人もいささか興奮しているように見える。そういえば原作ではクィディッチのワールドカップを観戦している描写があったし、クィディッチが好きなんだろうか?

 

 しばらくして、寮のメンバーが全員集まると、キャプテンは話し始めた。

 

「みんな、これから重要な発表があるの。今まで秘密にしていた今年のシーカーだけど、二年生のレギュラス・ブラックが担当することに決まったわ」

 

 談話室にいた全員から歓声が上がる。

 

 レギュラス・ブラック。魔法界の王族とも呼ばれる純血一族の中でもトップクラスの名家ブラック家の出身で、シリウス・ブラックの弟。将来は家督を継ぐと予想されていて、スリザリン内では大きな影響力を持っている。

 俺も家の都合で一度だけ会ったことがある。ダイオウイカの話をしたら父に慌てて引き離されてしまったが、とにかく礼儀正しい人だったことは覚えている。

 

 そして、彼は将来死喰い人になる。

 原作では、彼は若くから闇の帝王の大ファンで、ホグワーツ卒業後、または在学中に死喰い人となっている。そして自身の屋敷しもべ妖精を闇の帝王に殺害されかけたことで離反し、帝王の分霊箱を一つ盗むことに成功し、その引き換えに命を落とした。

 

 果たして次の試合、どうなることやら。




サイバーマン

イギリスのSFドラマ『ドクター・フー』に度々登場する悪役。
身体をサイボーグに改造され、感情を消された人間。人間をサイバーマンに変えることを「アップグレード」と称し、手当たり次第に周りの人間を同じサイバーマンへと改造する。いっぱいいる。
顔は無機質で不気味だが、じっくり見るとちょっとかわいい。


ハンドルズ

『ドクターの時』というエピソードに登場するロボット。頭部のみ存在し、サイバーマンの外殻がそのまま流用されている。
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