闇の魔法使いの卵   作:黒歴史量産機

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1 セルウィン家の一人息子

 ウィザーディング・ワールドでは、死喰い人の血筋に生まれるだけでバッドエンド確定だ。

 なにせ幼少期から純血思想とヴォルデモート卿への忠誠を叩き込まれ、運が悪ければ第一次魔法大戦で死喰い人側につき死亡。運が良くても第二次魔法大戦でハリー・ポッターに敗れアズカバン行きは免れない。仮に自身が死喰い人にならなくとも、ヴォルデモートが消えたあと、マルフォイ家のように当主がよっぽど世渡りが上手いわけでもなければ、裁判も行われずにアズカバンにぶち込まれる可能性が高い。よって、生まれる家次第でこの世界の住人の運命は決まってしまうのだ。

 

「最悪すぎるだろそんなの」

 

 そして残念ながら、俺は死喰い人の家に転生したようである。

 俺はもともと前世の記憶を持っていた。そして幸運なことに、ハリー・ポッターの本と映画を全て履修済みである。ただ、内容はうろ覚えだし、ゲームに関しては全くの無知である。だから、最初は自分が生まれた境遇がよくわかっていなかった。だが、

 

1、両親が自分たちを聖28族だと言っている

2、両親がどうやら過激な純血思想を持っている

3、両親がスリザリン卒業生で、闇の魔術らしきものを使っている

4、家が裕福であり、たまにマルフォイ家だのブラック家だのと聞こえてくる

5、家の内装がやたらと黒い

 

という点を踏まえると、両親が死喰い人になるキャラクターだ、という可能性は100%だと言える。家が黒いのは悪役の印だから間違いない。生まれたのは本編開始のだいぶ前だったらしく、今はまだヴォルデモートが活動を開始しておらず、死喰い人そのものが存在しないようだが、いざヴォルデモートが挙兵するとなると、両親は真っ先に死喰い人に加入するだろう。

 

そんなわけで純血思想の家に生まれた俺ことユマノ・セルウィンは、幼少期から闇の魔術の英才教育を受けてきた。まぁ闇の魔術も魔法の一種なのでありがたく習得させていただきました。未成年の魔法の行使は違法のはずなのだが、魔法界の法律は結構ガバガバで、純血一族になると見て見ぬふりをされる。どうやら未成年の魔法の行使を検知する方法があるらしいのだが、厳密には未成年の周りで使用された魔法を検知するという仕組みで、親が魔法使いの場合魔法を行使したのが親ではなく子どもだと立証する方法がないのだ。マグル生まれは魔法が検知されると行使したのが本人だとソッコーでバレてしまう。可哀想に。

 他にも、純血の名門一族として、ブラック家やマルフォイ家をはじめとした様々な純血主義の家へ挨拶へ行かされたりもした。当時学生になりたてだったルシウス・マルフォイには値踏みするような目で見られ、シリウス・ブラックには軽蔑の眼差しを送られた。愛想が良かったのは一つ上のレギュラス・ブラックくらいだった。

 両親は基本的に愛情よりも知識を注いでくれた。どちらかというとそのほうがありがたい。精神年齢が高めなのに子供扱いされるとかかなり地獄だからそのほうが都合が良かった。

 

 そしてついに、闇の帝王ヴォルデモートが挙兵。第一次魔法戦争が始まった。予想通り両親は死喰い人になってしまった。これで俺の未来はほぼ潰えたと言ってもいい。後はホグワーツ内でどれだけダンブルドア側の人間と親しくなれるかで俺の運命は決まる。戦争が終わったとき、もしくは戦時中に両親は逮捕されるだろうが、俺も同時に逮捕される可能性がある。その時に反死喰い人勢力の人間に養護してもらえれば大変ありがたい。だが、それまで俺にできるのは優等生になれるよう魔法を練習することくらいだ。特に閉心術は熱心に練習した。万が一闇の帝王に遭遇した場合、閉心術を使えないと心を読まれて即処刑、なんてこともありうる。なんとか入学までに形にはできたものの、まだダンブルドアや闇の帝王相手には使えるレベルではないだろう。在学中にもっと極めねば。

 

 そんなこんなで、立派な闇の魔法使いの卵に成長した俺は、ついにホグワーツに入学する年齢になった。

「と、ここまでがあらすじだな」

「誰だよお前」

 

 ホグワーツに入学する二週間ほど前、俺は父に連れられ、学校生活に必要なものを買いにダイアゴン横丁に来ていた。まずはローブの採寸から始めたのだが、時間がかかるらしい。父はと言うと、どうやら採寸の間、少し『別の用事』があるらしい。おそらくノクターン横丁に行くのだろう。

 話し相手がいなくて暇になった俺は、同じ部屋で採寸を受けていた少年に話しかけることにした。

 

「っていうかハリー・ポッターって誰だよ。あと『第一次』魔法戦争ってどういうことだ?」

「おっと失礼、話しすぎたみたいだ。杖を買い次第君に忘却呪文をかけるとしよう」

「怖いよお前」

 

 割とガチでドンビキされているようだ。

 

「なんだかもう途中から聞くのがめんどくさくなって聞いてなかったんだけど、君って誰なの?」

「あれ? 割と序盤で言ったはずだが?」

 

 なんだよこの野郎、そんな序盤から聞き流してたっていうのかい? じゃあ、改めて自己紹介しよう。

 

「我が名はユマノ・セルウィン! 闇の魔法使いの卵にして、いずれ魔法界に触手の素晴らしさを広めるものなり!」

「闇の魔法使いの卵って、そんな感じで堂々と宣言するものなんだ」

 

 少年は俺の自己紹介にさほど興味を示していないようだった。なんだよ、もっとリアクションしろよ。ちびっこのときから捻くれててどうするんだよ。

 

「では貴様の名を問おう。汝、名はなんという?」

「普通に喋れないの?」

 

 俺の中二チックな口調についていけなくなったのか、少年はあくびをしながら俺の喋り方を注意してきた。

 

「しかたねぇな。ところで君、触手について興味は――」

「ないね」

「そうか。じゃあイカとかタコとか――」

「ないね」

「そうか」

 

 どうやら俺とこいつはあまり趣味が合わないらしい。というか今まで生きてきて同じ趣味の人間に会ったことがない。何故だ、触手は素晴らしいじゃないか。

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