ついこの前までハロウィンだった気がするのに、もう12月。そろそろクリスマス休暇が近い。
副校長のマクゴナガル教授が休暇中にホグワーツに残る生徒の名簿を取り始めた。俺はできるだけ休暇中はホグワーツに残ることにしている。迂闊に家に帰ると、闇の帝王に謁見させられかねない。閉心術がまだ半人前な俺が今ヴォルデモートに開心術をかけられたら、即刻処刑もあり得る。
「二人は家に帰るのか?」
俺の質問に、バーティとカパルディは頷いた。
「家は母上が俺に会いたがってるからね」
どうやらバーティは父親とは仲があまり良くないようだが、母親とはうまくやっていけてるらしい。
クリスマス休暇に皆が胸を躍らせ始めたとはいえ、休暇が始まるまでまだ二週間と少しある。俺たち生徒は休暇だけを楽しみに最後の二週間の授業に挑んだ。だが、生徒たちに踏ん張る理由があると知ってのことか、休暇が近づくにつれて教授たちからの課題の量は増えていった。
特にひどいのは闇の魔術に対する防衛術だ。この授業はもはや理論を全て課題でこなし、授業では実技しかやっていない。事前に課題で次の授業で習う呪文の予習をし、授業で呪文の出来を見る、といった形だ。
「クラウチ、ちょっとここわからないんだけど教えてくれない?」
お陰でバーティはスリザリン生に日夜課題のことで詰めかけられている。元々死喰い人関係者が多いスリザリン寮で、魔法省の官僚の息子であるバーティは少し浮いていたというか、避けられていた節があった。授業で誰よりも加点されることから、直接的な攻撃やいじめはされてこなかったが、いまいち馴染めていなかったのは事実だ。話しかけるのは同室の俺とカパルディか、オズワルドくらいだった。それが今では、救世主扱いされている。防衛術の課題を難なくこなすバーティは、他人に教えることもとても上手く、理論の説明をほとんどほっぽり出しつつあるムーディ教授に代わり、スリザリン寮内で防衛術の専門家扱いされている。
そういえばオズワルドはバーティに気兼ねなく接していたな。何か目的でもあったのか? オズワルドは今のところ俺の中でムーディ教授とガブリエラの次くらいに警戒している。なにせ行動原理が全くわからない。敵対する二寮の融和を願ったかと思えば、実は死喰い人の家系と繋がりがあり、それにもかかわらず死喰い人と敵対する陣営の人間にも親しく接する。こいつはこいつで一体何がしたいんだろうか?
オズワルドは今のところ目立って動きを見せようとはしないため放置しているが、できれば早めに狙いは把握しておきたい。
ま、そんなことで悩んでる時間はないんだけどね。なぜなら俺も防衛術がやばい。バーティに縋りつきに行くとしよう。
* * * * * * *
「というわけで、俺はクリスマスの間ホグワーツに残ることにしました」
「へー」
俺の言葉を、ガブリエラはあまり興味がなさそうに聞いていた。
「あんたが残るなら私も残ろっかな」
「まじ?」
「瞬間移動の魔法理論が思いつきそうなんだ。なんか、うまく言い表せないけど、すぐここまで来てるんだよ。後はそれをうまいこと書き出せばいいだけで」
「……作り始めてまだ三ヶ月ちょっとだぜ?」
今までに発明されなかった理論を一から作り上げることを、ガブリエラはたったの三ヶ月と少しで成し遂げようとしている。ひょっとして、こいつ世界レベルの天才じゃないか? 必要の部屋でこそこそターディス作ってないで、もっと世紀の大発見とか成し遂げたほうがいいんじゃないか? もしかして、俺の干渉で魔法界の技術の進歩が遅れるとかないよな?
ガブリエラは原作で名前が出てこなかったから、この世界でどんな役割を持っているのかがあまりわからない。もしかしたら陰ながら魔法界に大きな影響を与えた人物かもしれないし、全く影響を与えなかった人物かもしれない。とにかく、俺が魔法界に悪影響を与えなかったことを願うばかりだ。逆にこの体験が後に世界を大きくいい方向に変えるかもしれないし、ポジティブに考えよう。
「……ところで、セルウィンはターディスができたら何をするつもりなんだ?」
「何って、どういうことだ?」
「ほらターディスって、実現したら大人数を一瞬で別の場所に送ることのできる便利な機械だろ? 煙突飛行や姿現しに代わる新たな移動手段だ。量産とかできるようになったら、大金持ちになれるだろ?」
「……そうだな」
そういえば、ターディスを作りたいとは思い続けてたけど、作った後どうするかは特に考えてなかったな。確かにターディスは現在の魔法界の移動手段を凌駕する大発明だ。量産が可能になったら、あらゆる箒の製造会社よりも利益を得ることが出るかもしれない。だけど……
「俺は特にどうしたいとか、ないな。ガブリエラの好きにしたらいいんじゃね?」
「いいのか?」
「だって、このターディス、ほとんどお前の手柄だろ? 利益はお前のもんだと思うぜ? 量産したい、っていうのならセルウィン家が後ろ盾になって支援してやるよ」
「……随分と虫のいい話だな」
「ぶっちゃけ俺ロマンでターディス作ったからさ。現実にターディスが存在する、っていう事実だけで満足なのさ」
ガブリエラはどうやら納得していないようだ。確かに俺がターディスから得られる利益を放棄する、というのはおかしな話だ。だが、現状聖28族の出であり、家督を継ぐ予定の俺は現在金に困っていない。ターディスも作りたいと思ったから作ったのであって、金がほしいから作ったわけじゃない。それに、魔法理論はほとんどガブリエラが書いたものだから、利益を貰う権利は彼女にあるはずだ。
「……正直に言え、何を企んでるんだ」
「何も企んでねぇよ。強いて言えば、量産するんだったら俺は俺だけのターディスが一台欲しい」
「あんたみたいな奴が、それだけで満足するとは思えない」
「俺みたいな奴ってなんだよ」
俺なにかしたか? ガブリエラの眼の前で怪しいことをした覚えはあまりないんだが。
「だってお前、死喰い人の――」
ガブリエラはそこまで言って、ハッと口を閉じた。
……なるほど、やっぱり信用されてなかったか。
「別にいいよ。俺が良くない家系の人間だってことは事実だ。無理に信用しろとは言わないよ」
「……」
その日は、もうそれ以上言葉を交わすことはなかった。
* * * * * * *
時は進み、ついに今日からクリスマス休暇が始まる。
バーティとカパルディはすでに荷物を詰め終えており、もう後は汽車に乗るだけだった。
「いいかい、クリスマスはロンドンに近づいちゃだめだよ。クリスマスデコレーションに襲われかねないからね」
「お前はなんの心配をしてるんだ?」
クリスマスと言えば、サンタの格好をしたロボットやクリスマスツリーが襲ってきたり、空からタイタニック号が落ちてきたり、とにかくロンドンが宇宙人の襲撃を受けやすい日だ。少なくともドクター・フーではそうだった。
「必ず生きて帰れよ……!」
「お前はロンドンをどんなとこだと思ってんだよ……魔境じゃねぇんだぞ」
俺の認識ではロンドンは割と魔境である。
二人は荷物を手にとって、最後に別れの挨拶を言った。
「じゃあな、セルウィン。元気でな」
「メリークリスマス。あと、良いお年を」
そう言って、二人は寮から姿を消した。無口な少年は朝起きた時にはもういなかった。本当に彼は何者なんだろうか。もう一学期目が終わったのに一度も声を聞いた覚えがないぞ?
さて、スリザリン寮のメンバーも、ほとんどが家に帰って、寮はだいぶ静かになった。一年生は全員帰省しており、談話室はだいぶ寂しい感じになっていた。スリザリン寮で残ったのは、俺と、後もう一人。
「や、セルウィン。僕と一緒に昼飯食べないかい?」
魔法薬学の天才、セブルス・スネイプだ。
ドクター・フーにて、クリスマスのロンドンでおきた出来事。
・サイバーマンの軍隊が巨大ロボを使用して街を襲撃する。
・宇宙人が血液型A+の人間を全員操って地球を侵略しに来る。この際にサンタクロースに扮したロボットが共に襲撃。その他にもクリスマスツリーが暴れ出して主人公とその仲間たちを殺害しようとする。
・星型の宇宙船に乗った肉食の宇宙人が地中深くに眠った仲間を呼び覚まして人類を喰い付くそうとする。再びサンタロボットが襲来。今度はツリーについている丸い飾りが人を襲う。
・宇宙船タイタニック号がロンドンに墜落しそうになる。この時点でロンドン市民はクリスマスになると宇宙人の侵略を恐れて外に出ないようになる。
・マスターという人物の策略で、全人類が一時的にマスターに体を乗っ取られ、開放されたと思ったら、別の宇宙人が惑星を引き連れてやってきた。