闇の魔法使いの卵   作:黒歴史量産機

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28 イースター

「……は?」

 

 ある日の朝、ふくろう便によって届いた母からの手紙を呼んで、俺は素っ頓狂な声を上げた。

 

「どうした?」

 

 バーティがベイクドポテトを頬張りながら聞いてくる。カパルディも不思議そうにこちらを見ている。

 

「いや、今度のイースター休暇、絶対に帰ってこいってよ」

「え? もう残るための届け出したあとじゃねぇのか?」

 

 もうすぐイースター休暇の時期だ。もうあと数日で二学期は終わる。休暇中にホグワーツ中に残る生徒は、事前に寮監に届けを提出しないといけない。

 クリスマス休暇のときは、俺はターディスづくりに専念するため届けを出した。ただ、瞬間移動装置の魔法理論が全く持って思いつかないので、今回はターディス作りは諦めて帰ることにした。

 

「いや、今回は届けは出してない。もともと帰るつもりだった」

「親に伝えてなかったのか?」

「伝えてたはずなんだけど、もっかいきたってことは相当やばいことが起きたのか?」

 

 もしかしたらそうかも知れない。

 うちの両親は前線でバリバリ戦うタイプの死喰い人だから、怪我をしても戦死してもおかしくはないのだが、たとえどちらかまたは両方が死んだとしても俺には後見人がついているので()()()()()()()

 

「ま、なんにせよそろそろ荷造りしたほうがいいか」

 

 

 

 

 

* * * * * * *

 

 

 

 

 

 荷物は思っていたよりも少なく済んだ。

 イースター休暇は二週間。服は実家にもあるのでさほど必要はなく、鞄に詰めたものといえば触手生物と宿題くらいだ。

 何事もなく日々は過ぎていき、ついにホグワーツを発つ日がやってきた。

 

「車内販売ってまだやってるよな? 大釜ケーキっていうの食べてみたいんだよね〜」

 

 ホグワーツ特急に乗るための待ち列に並んでいる間、俺の頭の中には車内販売のことしか残っていなかった。どうやって作ったのかは見当もつかないが、最初にのったときに食べたパンプキンパイがあまりにも印象的すぎてもうそれ以外のことが考えられない。

 

「大釜ケーキか。クリスマス休暇のときに食べた気がするな」

「どうだった?」

「それはもちろん美味かったさ! ホグワーツ特急の車内販売は絶対に期待を裏切らないね」

 

 カパルディも頷きながらバーティに賛同する。

 どうやら車内販売のお菓子は最高、という意見はホグワーツ生の中でも共通らしい。

 

 車内販売のお菓子の個人的なランキングについて語り合っていると、ついに俺達が乗車する番が回ってきた。

 

「さて、空きコンパートメントがあるといいけど」

 

 ホグワーツ生全員が乗っているわけじゃないから、空いているコンパートメントはあると思うが、見つけるのには多少時間がかかるかもしれない。

 

 入った扉から三両ほど離れた車両にやっと空きコンパートメントを見つけ、俺達はそこに座ることにした。

 まずカパルディ、そしてバーティが入り、それに続いて俺も――

 

「おや、先を越されてしまったようだね」

 

 全身に鳥肌が立ったのを感じた。

 後ろを振り返ると、そこには最近良く見かける先輩たちの姿があった。

 

「――ロジエール先輩に、マルシベールとエイブリー先輩?」

「なんで俺だけ呼び捨てなわけ?」

 

 マルシベールは頬を掻きながら苦笑いした。

 どうやら三人も空きコンパートメントを探していたようだ。だがたとえ彼らが先輩だからといってこのコンパートメントを譲るつもりはない。

 

「仕方がないね、私達はもう少し探すとしよう。彼らは、君のお友達かな?」

 

 エバン・ロジエールはコンパートメントの中を覗くと、カパルディとバーティに向かって微笑みかけた。

 二人は緊張しているのか警戒しているのか、ぎこちなく礼を返した。

 

「彼はバーテミウス・クラウチ君だね。私達六年生の間でも彼は有名だよ。なにせ、我が寮最大の得点源だからね」

「そうなんですか?」

「ああ。私の学年の監督生は数字が大好きでね、誰がどれだけ寮杯の点数を動かしたかをすべて調べているんだ」

「へぇ……」

 

 うちの上級生にそんな人がいるとは知らなかった。っていうか、他学年で誰が点数を動かしたかなんてどうやって調べるんだ?

 

「因みに俺はどれくらい点数を動かしてるかとか知ってますか?」

「たしか、加点は多いほうだけど、減点もやや多いと聞いているね。寮杯のために、来学期からはなるべく気をつけてくれよ?」

「すいません、これからは気をつけ――」

 

 そんな話をしていると、先輩たちの向こうから、誰かが近づいてくるのが見えた。

 手入れの行き届いていない茶色い髪の、両目の下に大きな隈を作った、そばかす顔の少女。

 

 

 ガブリエラだ。

 

 

 まさか彼女も今回帰省するとは思っていなかった。

 

 目があった途端、彼女は突然立ち止まった。

 そして俺、エバン・ロジエール、マルシベール、エイブリーと順番に視線を動かし、そしてまた最後に、信じられないものを見るような目で俺を見た。

 

 現在死喰い人の息子であるという理由で絶賛嫌われ中の俺。その俺が話しているのは、同じく死喰い人の子息達。

 最悪だ。

 

「どうかしたのかい?」

「――いや、何でもありません」

 

 俺がそう言うと同時に、ガブリエラは何も言わず俺の横を通り過ぎていった。

 

「おっと、私達も早く座る場所を確保しなくては。では、また来学期に」

 

 そう言って、エバン・ロジエールは二人を連れて、ガブリエラの後を追うように車両の奥へと進んでいった。

 

 廊下の先では、ガブリエラがとある老人と会話しているのが見えた。――ムーディ教授だ。

 教授は俺を発見するやいなや、ものすごい形相でこちらを睨みつけてきた。

 

 俺は大人しくコンパートメントに入ることにした。

 

 

 

 

 

* * * * * * *

 

 

 

 

 

 大釜ケーキは最高だった。やはりここの車両販売は期待を裏切らない。

 

 数時間の列車旅の末、俺達はキングスクロス駅にたどり着いた。

 

「9と4分の3番線って、なんで4分の3なんだろう。2分の1番線とかじゃだめだったのかな?」

 

 特に意味のない疑問をつぶやきながら、荷物を両手にプラットフォームに降りる。

 周りを見てみると、カパルディは両親と、バーティは屋敷しもべ妖精と、それぞれ保護者と合流できたようだ。

 

 そして俺も――

 

「久しぶりだね、ヘラルド」

「おかえりなさいませ、坊ちゃま」

 

 セルウィン家の屋敷しもべ妖精の一人――ヘラルドは俺を見るやいなや頭を下げてお辞儀をした。

 ヘラルドが指を鳴らすと、両手に持っていたはずの鞄が消える。魔法で実家に飛ばされたのだ。やっぱり妖精の魔法って魔法族のそれとは一線を画してる。

 

「それで、母が俺を呼んだのは何故かな?」

 

 俺がそれを訊くと、ヘラルドは目線を泳がせ、しばらく躊躇ってから口を開いた。

 

 

「実は……御主人様――あなたのお父上が、闇祓いによって逮捕されてしまいました」

 

 

 ……なんだって?

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