闇の魔法使いの卵   作:黒歴史量産機

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2 杖とキングスクロス

 採寸が終わり、ローブを買って店を出ると、父が待っていた。どうやらノクターン横丁で俺の入学祝いを買ってくれていたようだ。どんな闇の魔法道具なのだろうと思っていたら、深い闇の秘術という本だった。ダンブルドアに見つかると厄介だが、魔法についての知識はいくらあってもいいので持っていくことにしよう。

 

 ローブを買い、俺は意気揚々として次の店へと向かった。俺はこの瞬間をずっと楽しみにしてきた。今まで闇の魔術の練習には親の杖を使用していたが、今日から自分の杖を買ってもらえるのである。そんなわけで、俺は他の買い物をすっ飛ばし、真っ先にオリバンダー老人の店に突撃した。

 

「……いらっしゃいませ」

 

 オリバンダー老人は父を見ると少し顔をしかめたが、それでも礼儀正しく接客してくれた。無理もない、父は闇の魔法使いであり、オリバンダー老人からしてみれば、自分が丹精込めて作った杖を父に悪行に使われているのだ。が、それでも彼は商売人。彼の仕事は杖を作って売ること。彼は客である俺達に対してそれ以上の不愉快な態度を取らなかった。

 

「こちらはどうでしょうか」

 

 まず初めに渡された杖の材質はニレの木、ドラゴンの心臓の琴線だった。こちらを握って振ってみたが、杖職人オリバンダーにはあまり適していないと判断されたらしく、別の杖を渡された。今度はローリエの木、一角獣のたてがみ。こちらもいまいちだったようで、また別の杖を勧められた。

 今度の杖は、相性抜群だった。トウヒの木、不死鳥の尾羽根、24センチ、よく曲がる。芯が希少な素材らしく、他の杖より多少値段が張ったが、父はためらいなく買ってくれた。こういう時に聖28族の財力は頼りになる。

 

ついに杖を手に入れ、意気揚々と店を出た俺だが、まだ教科書、など大量の買い物が残っている。あまり気が乗らないが、必要なものなので買うしかない。教科書類を買った後、ふと周りを見渡していると、ちょび髭の男がじっとこちらを見つめていた。知らない奴だな、まじで何なんだろう。男は息子と思われる人物が店から出てくると、そそくさと離れていった。結局あの親子、互いに一言も言葉をかわさなかったな。仲悪いんだろうか。どこかで見たことがあるような顔だったが、俺が今世で会った死喰い人関係者ではない。誰だろう?

 

 

 数日後、ついにキングスクロス駅のあの有名な9と4分の3番線に行く日がやってきた。キングスクロスには初めてきたが、やはりヨーロッパの建築は素晴らしい。道中、「純血の名門一族の友達をたくさん作るんだぞ、ブラック家とか」だの「スリザリンに入るんだぞ」だの色々言われたが、俺はどちらかと言うと光サイドに近づかないと将来が危ういので聞き流しておいた。原作通り壁に突撃しなければいけないのだが、安全だとわかっていてもやはり怖いものは怖い。マグルに見られないように素早く移動すべきなんだが、少し手間取ってしまった。9と4分の3番線にはすでに人が集まっており、コンパートメントを確保するため、両親との挨拶は手短に済ませ、さっさと列車内に移動した。コンパートメントはすでにほとんど埋まっていた。上級生はそれぞれの友人たちと集まり、新入生もすでに一部グループができ始めている。どうやら空きコンパートメントはないらしい。しかたない、自分もどこかのグループに混ぜてもらおう。

 ちょうどいいところに、コンパートメントに一人で座っている少年がいた。ここに入れてもらおう。

 

「ごめん、相席いいかな?」

「え? ああ」

 

 少年は少し戸惑いながらもコンパートメントに入れてくれた。

 しかしこの少年、どこかで見たことがあるような気がする。顔立ちはいい……なんか眉毛がつり上がっている……訛りはスコットランド……。

 もしかして……

 

「もしかして、採寸の時一緒にいた?」

「ああ。どこかで見たと思ったら、君だったのか」

 

 どうやら彼はローブの採寸をしていた時、同じ部屋にいた少年らしい。なら彼は同学年かな?

 少年はどこか納得がいったような表情をしたが、すぐに何かに気づいたようで、慌てて言った。

 

「すまないけど、出ていってくれないか?」

「え?」

 

 会話して数十秒での掌返しは早すぎやしないか? 俺なにかしたか?

 

「とりあえず、理由を聞いてもいいか?」

「いやお前、この前あれだけ変な言動しておいて自覚ないとかやばすぎだろ」

 

 どうやら彼が冷たい原因はダイアゴン横丁での俺の態度が原因らしい。しかし何故だろう、あまり心当たりが思い浮かばない。

 

「何故だ、俺のしたことといえばせいぜい訳のわからないことを言いまくって触手について語り合おうとしただけじゃないか」

「それがヤバいっつってんだよ」

「ああ? 何だてめぇ触手が嫌いだって言うのか?」

「普通好きなヤツのほうが少数派だろ」

 

 どうやらこいつとは徹底的に馬が合わないようだ。

 

「よし、表出ろ。戦争だ」

「走行中の汽車から出たら危なすぎるだろ。お前馬鹿か」

 

 なんか馬鹿呼ばわりされた。そういえば気づかぬ間に汽車は発車していた。

 

「よし、廊下出ろ。戦争だ」

「出ねぇよ勝手に一人で出ていけ。ついでに二度と戻ってくるな」

「俺ちゃんそんなに嫌われてたの!? ちょっとショック……」

「お前キャラがブレすぎだろ」

 

「――あの」

 

 少年と白熱した議論を交わしていると、コンパートメントの扉を別の少年が叩いていた。髪は茶色でよく整えられており、そばかすのある肌は白く、服も手入れが行き届いていて、パッと見完璧な生徒に見える。一年生だろうか、少し緊張した様子でうつむいている。

 

 これが、バーテミウス・クラウチ・ジュニアとの出会いだった。




技術のない杖作りは、トウヒは難しい木材だと言う。しかし、彼らはそうやってみずからの未熟さを暴露してしまっている。
たしかに、トウヒ材を扱うにはある程度の熟練が必要である。トウヒの杖は、警戒心の強い者や神経質な者とは相性が悪く、不器用な者が扱うと間違いなく危険である。
この杖は、どんな魔法を発するべきか、みずからの意志で判断しがちなようだ。このため、使用する者には厳然とした態度が求められる。
しかし、相性が最適の持ち主に出会うと(私の経験上、ユーモアのセンスがあり、大胆に魔法を操る人物がいいようだ)、杖は強い忠誠心で持ち主を大いに助け、鮮やかで派手な魔法の効果を生み出す。

不死鳥の尾羽根は私の取り扱う最も貴重な芯材であり、自発性が強く、自らの意思で行動する事が多いため敬遠されがちだが、仕える魔法の幅は他の芯と比べて最も広い。
持ち主の選り好みが激しい芯材で、手懐けたり忠誠を得ることの難しい素材だが、一度忠誠心を勝ち取った持ち主に対しては、持ちうる全ての力を発揮する。

ギャリック・オリバンダー
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