闇の魔法使いの卵   作:黒歴史量産機

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34 帰ってきた日常

 イースター休暇が終わり、ティアゴ・カパルディはスコットランドからまたスコットランドに戻るためにロンドンに来ていた。

 スコットランド人はホグワーツに別の手段で行けたらいいのにと思う。

 

 鬱屈な気分でホームを歩いていると、突然視界が真っ暗になった。

 

「だーれだ?」

「どうせお前だろセルウィ――何だその帽子!?」

 

 俺の正体を見抜き、振り返ったカパルディは俺の風貌に目を見開いた。

 被っているのはとんがり帽子。マグルのイラストで魔女とかがよく被っているやつだ。一応ホグワーツの制服となっているが、何故か誰も被っていないのである。真面目なバーティでさえだ。買ったはいいが使わないのももったいないので今日から被ることにした。

 

「どう? 似合ってる?」

「ぶっちゃけ言ってダサいな。何世紀のファッションなんだよそれは」

「……11?」

 

 恐らくだが、この帽子は11世紀のファッションなんだろう。ホグワーツが開校した当時の制服が、とんがり帽の文化が廃れた今でも残っているだけだと思う。知り合いで唯一この帽子を使用しているのはマクゴナガル教授くらいだろう。

 

「くそ、この時代にとんがり帽の魅力がわかる同志はホーテンシア・ミリフット女史くらいなのか……!」

「誰だよ」

「帽子のとんがりさを法律で規定しようとして失脚した昔の魔法大臣」

「ヤバい奴じゃねぇか」

 

 ミリフット元魔法大臣も19世紀の人物なので今の時代の人じゃないか。残念。

「そんなことより、中に入ってコンパートメント確保しないか? 人が増える前にさ」

「了解」

 

 俺とカパルディはそれぞれ荷物を持ってホグワーツ特急の内部へと移動した。

 空いているコンパートメントは割と早く見つかった。空きコンパートメント目当てで早めに来る生徒は多かったものの、なんとか空いている個室を見つけることができた。

 

「よっ、二人共元気か――何じゃそりゃ!?」

 

 しばらくするとバーティもやってきて、カパルディとほとんど同じリアクションをしてみせた。なんだ、この帽子はそんなにおかしいものなのか?

 

 電車が発車して、車両販売でおやつを買うと、コンパートメントの中で自然と会話は弾んだ。

 

「それで、カパルディは休暇中何したんだ? イースターだからロンドンバスで死の惑星に行って金属の空飛ぶエイと格闘したりしたか?」

「そんなことしてねぇよ。クリスマスの時みたいに天体観測はしたけど、後は本を少し買ったくらいかな」

「バーティはどうだ?」

「毎日勉強だったね」

 

 相変わらずバーティは真面目だな。

 

「セルウィンこそどうなんだ?」

「俺か? 俺は触手の実験に失敗して聖マンゴ送りになった」

「……大丈夫か?」

 

 バーティは割と本気で心配する様子を見せた。カパルディは呆れてため息を付いている。

 

 聖マンゴからは即日退院して、母親と、後に釈放された父親からこっぴどく叱られた。実際にラバスタンとの間であったことは誰にも言っていない。入院中に誰かに見られたかもしれないので、聖マンゴに入院していたことは隠さないでおくことにした。

 

「そういえば、ラバスタン・レストレンジが逮捕されたらしいね」

「僕も新聞で読んだよ。確か裁判もなしにアズカバン送りだって?」

「父上も『レストレンジ家を公開捜査する良い口実になった』って張り切ってたよ。でも、裁判なしに投獄なんて父上の基準でも割とおかしい気がするんだよな……」

 

 レストレンジ家は聖28族の中のひとつなので、その血を引くものが逮捕されたとなると割とニュースになる。成果を出しているとアピールしたい魔法省が、闇祓いを逮捕する度に大げさに報道するということも関係しているが。

 

 裁判が行われなかったのは、恐らくアラスター・ムーディ達による俺に対する配慮だろう。ラバスタンが裁判で俺が関与していることを公表すれば、両親も、後見人の一族であるレストレンジ家も敵に回り、俺は孤立してしまう。戦時中で、更に法執行部と司法機関であるウィゼンガモットが強い権力を持つ魔法界であるからこそできた荒業だ。マグルの世界なら、どんな極悪人でも裁判無しで投獄されたら必ず反発が起きる。今回の件だけに関しては魔法界様々だ。魔法省に大きな借りができてしまった。

 

 そんなこんなで特急はホグワーツに到着した。御者もいない、馬も見えない馬車に乗り込むと、俺達はやがてホグワーツ城にたどり着いた。

 大広間にはごちそうが並んでいて、ダンブルドア校長による挨拶が終わると、俺達はその料理にがっついた。

 

「ゴーヤチャンプルもあるのか」

「ほしいのか?」

「いや、いらない。俺がこの世で嫌いなものがあるならば、それは死喰い人と気まずい雰囲気とゴーヤだ」

「死喰い人と並ぶとか、どんだけゴーヤ苦手なんだ……」

 

 ゴーヤは悪魔だ。この世に存在してはいけない緑の悪魔だ。なんでカパルディは平気でそれを食べれるんだろう。不思議だ……。

 

 

 

 

 

* * * * * * *

 

 

 

 

 

 

 晩餐が終わり、部屋に戻ろうとする俺を、呼び止めるものがいた。

 

「セルウィン君、少しお時間をいただけないかな?」

 

 振り返ると、そこに立っていたのは、今世紀最高の魔法使いであり、ホグワーツの校長でもある――

 

「アルバス・パーシヴァル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア教授……!」

「フルネームで呼んでもらえて嬉しいよ、セルウィン君。あまりに長いもので、覚えてくれる人は少ないからね」

 

 ダンブルドア教授はそう言ってニッコリ笑った。




ちなみにホーテンシア・ミリフットは本当に設定上存在するキャラです。
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