「ここ、座ってもいいかな」
茶髪の少年は頑張って声を絞り出しているようだった。まぁついさっきまで俺と吊り眉(仮称)が喧嘩してたんだし、ちょっとビビるだろ。
「別にいいよ。さ、座って」
「なんでお前が決めるんだよ」
吊り眉は抗議したが、俺は少年をコンパートメントにいれることにした。
「じゃ、邪魔だった?」
「いやそんなことはないさ。ただお前は別だ。出ていけ」
「さっきから俺に異常に風当たり強いのなんなの……?」
何故吊り眉は俺のことがそんなに嫌いなんだ。俺はただ触手の良さを広めたいだけなのに。
少年は吊り眉の隣に俺と向き合うように座った。自己紹介でもしたほうがいいだろうか。
「さて、俺はユマノ・セルウィン。そしてこいつは……名前なんだっけ?」
「ティアゴ・カパルディだ。よろしく頼む。そしてセルウィンは出ていけ」
吊り眉――改めカパルディは少年の前でも俺への態度を変えないつもりらしい。もしかして卒業までずっとこうなのか? だとしたら億劫だな。
少年の方はと言うと、俺の名前を聞いた途端に居心地が悪そうになり、急いで荷物をまとめ始めた。
「なんだ? どうした?」
「ごめん、俺やっぱり別のコンパートメントに行くよ」
「なんでだ?」
俺とカパルディが尋ねると、少年は少し躊躇ってから言った。
「父上が、死喰い人の子供とは仲良くするなって……」
「ああ、そういうこと」
確かに俺は死喰い人の息子だ。まともな親ならそんなやつを息子に近づけたくないのもわかる。俺の両親は死喰い人だという確かな証拠があるわけではないが、魔法省の人間は十中八九死喰い人だと考えている。実際その通りだ。証拠さえ抑えられれば速攻逮捕しに来るだろう。在学中に逮捕されると俺の立場が危ういので目立たないでほしいものだ。
彼の父親が魔法省の関係者で、父を見て俺が死喰い人の息子だということが気づかれていたとしたら、あの日この少年の父親に睨まれていたのも納得できる。
「たしかに俺の両親は『純血主義者』だけど、俺はそんなことないから安心してほしい」
彼を通じて両親が死喰い人だという証拠を魔法省に流されても困る。とりあえず純血主義者と濁しておいたが、それが死喰い人を意味することは彼にもわかってしまっただろう。とりあえず在学中に他の生徒に俺が両親の同類とは思われたくないので弁明はしておいた。
少年は理解してくれたようで、いくらか警戒を解いてくれた。
「名前は確か……、ユマノだったよね?」
「ああ。ユマノ・セルウィンだ。君は?」
「俺は――」
この少年、誰かに似てる気がするんだよな。もしかしたら本編に関わりのあるキャラかもしれない。
「――バーテミウス・クラウチ。バーティって呼んで」
……ん?
バーテミウス・クラウチ? あの、闇の帝王の忠実な下僕で、ムーディに化けてハリーを騙して、ヴォルデモート復活の鍵となったあのバーテミウス・クラウチ・ジュニアか? 眼の前のこの少年が?
「――ごめん、ちょっといいかな?」
一人で困惑していると、コンパートメントに一人の女子生徒が来ていた。上級生で、ローブの色からしてグリフィンドールだろう。
「君が、バーテミウス・クラウチくんかな?」
「はい、そうです」
バーティは女子生徒に呼ばれたようだ。父親のバーテミウス・クラウチ・シニアは時期魔法大臣最有力候補と言われているから、息子である彼も有名人なんだろう。
「私はリリー・エバンズ。教授から、あなたを呼ぶように言われているの。お友達と話してるところ悪いんだけど、ちょっと来てもらえるかな?」
……ん?
リリー・エバンズ? あの、ハリー・ポッターの母親の、リリー・ポッターか?
「はぁ、わかりました」
バーティは何故自分が教授に呼ばれたのかわかっていないようで困惑していたが、俺はまた別の理由で混乱していた。
なんでこんな短時間で物語の主要人物二人と会うんだ!?
バーテミウス・クラウチ・ジュニア
原作炎のゴブレットにて登場。ヴォルデモートの最も忠実なしもべの一人であり、その復活に大いに貢献した。
作中トップクラスの実力を持つ元闇祓いアラスター・ムーディを倒し、ポリジュース薬を使用し彼に化けた状態で一年間ダンブルドアを騙しきった演技の天才でもある。
死喰い人ながらDADAの教授を一年間見事に務め、教師としてはホグワーツ生からも高い評価を受けていた。
実はハリーが原作で闇祓いになることを決意したり、ネビルの薬草学の才能を開花させたのも彼の関与のおかげである。
原作では吸魂鬼に魂を抜かれ死人同然となってしまった。
映画版での演者は作者の敬愛するデイビット・テナント氏。