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バーティはリリー・エバンズに連れて行かれ、俺はカパルディと二人きりになった。
おそらくバーティはスラグホーン教授が優秀な生徒を集めるスラグ・クラブに招かれたんだろう。父親が優秀な魔法省重役で、更に聖28族であるクラウチ家出身。バーティを誘わない理由はない。
結局バーティは帰ってこず、俺はホグワーツに到着するまでカパルディと喧嘩しながら車内販売のかぼちゃパイを貪り食っていた。
数時間後、列車はついにホグワーツに到着した。上級生はセストラル馬車へ、新入生は小船へと分けられ、それぞれホグワーツへと向かった。
「やぁ」
小舟に乗り込んで、後ろから声がしたと思ったら、バーティが船に乗り込んでいた。
「君もこの船に乗るのかい?」
「ああ。教授との食事の席で会った同級生たちとはあまり馴染めなくてね。君たちが見えたから乗ったんだ」
「知ってる奴が近くにいると心強いよ」
知ってると言っても名前と、将来闇の帝王を復活させて世界を恐怖のどん底に陥れる、という事実くらいしか知らないのだが、今この場で一番良く知ってるのはカパルディを除けば彼だし、今の彼の死喰い人への態度からしてまだ純血主義には染まってないみたいだし、至って無害だろう。そう言えばバーテミウス・クラウチ・ジュニアは何寮だったんだろうか。公式では何も記述はなかったが、死喰い人になってたし、スリザリンか?
なんて考えているうちに、船はホグワーツに到着し、あっという間に組分け本番となった。
ちらりとスリザリン寮を見ると、レギュラス・ブラックが、グリフィンドール寮を見ると、ジェームズ・ポッター、シリウス・ブラック、リーマス・ルーピン、ピーター・ペティグリュー、そしてリリー・エバンズらしき人物が座っていた。レギュラス・ブラックは家の繋がりで会ったことがあるし、リリー・エバンズは列車で会ったから間違いないが、ジェームズ・ポッターとその友人たちは確証がない。まぁ、眼鏡をかけてるのが一人しかいないんだから、ほとんどあれがジェームズ・ポッターで確定だし、レギュラス・ブラック似の人が多分シリウス・ブラックだ。後の二人は近い席に座ってるだけだが、映画と顔つきが似ているのでおそらく本人だ。ポッター一味はいじめっ子らしいので、できればあまり関わりたくないな。
「カパルディ・ティエゴ!」
そんなこんなで組分けは進み、カパルディの番がやってきた。組分け帽子は暫く悩むと、高らかに宣言した。
「スリザリン!」
カパルディは控えめな拍手でスリザリン寮のテーブルに迎えられた。本人は信じられないといったような顔をしている。
そして、ついにバーティの番がやってきた。
「クラウチ・バーテミウス!」
彼は緊張しているのか、口の端をチロリと舐め、ゆっくりと組分け帽子へと近づいた。しかし、なかなか組分け帽子は答えを出さない。なにやらバーティにしか聞こえない声で話し込んでいるらしい。組分け困難者か?と思ったが、三分ほどで帽子は結論を出した。
「スリザリン!」
どうやらバーティは蛇寮らしい。スリザリンは死喰い人の子供が多いから悪影響を及ぼさないかどうか不安だ。
が、それよりも大変なのは、俺自身の組分けだ。俺の両親は死喰い人の過激な純血主義者。スリザリン以外の寮に組分けされたらただじゃ済まない。
「セルウィン・ユマノ!」
俺の番がやってきた。うん? 組分け帽子って洗ってないのかな? なんか変なにおいするぞ? 衛生的に大丈夫か?
「ふむ、知識を求める心も、あらゆる考え方への受容性もある。そして……非常に独創的。君が最も偉大になれる道は、レイブ――」
「スリザリンでお願いします」
「ほう、スリザリン? 確かに他の二寮に比べれば君にはスリザリンの適性があるが、私としてはレイブンクローを――」
「スリザリンでお願いします」
「本当にいいのかね? レイブンクローに行けば――」
「スリザリンでお願いします」
「だが、レイ――」
「スリザリンで」
「話を――」
「スリザリンで」
「あの――」
「スリザリンでお願いいたします!」
「ええいスリザリン!!」
いよっしゃぁぁああああ!!
とりあえずここで最悪のルート「両親による惨殺」を回避できた。これはかなり緊張した。死喰い人の子供はみんなこんな感じで必死なのか? いや、他の奴らはスリザリンに入れるって確信してるからそんな心配しないのか。
スリザリンの席に移動すると、バーティが微笑んでくれた。こっちも微笑み返す。家同士のつながりのあるレギュラス先輩も微笑んでくれた。こちらは丁寧に頭を下げて微笑み返す。なにせレギュラス先輩は魔法界の王族と言われるブラック家の跡取り候補だ。シリウス・ブラックが家柄に反している以上、特に何もなければ家督を継ぐのは彼だろう。そんな彼に無礼な態度を取ると、割とガチで消される可能性がある。スリザリンは仲間同士の絆が強い分、裏切り者や外側の人間に厳しいらしいから、あまり波風を立てずに平穏に過ごしたい。
スリザリン寮の長机に向かうと、カパルディが俺を見ながらこの世の終わりのような顔をしていた。なんだ、そんなに俺のことが嫌いなのか。
結局組分けではバーティ以外の知ってるキャラはいなかった。
その後の宴は平穏に過ぎていった。宴が終わると、俺達は監督生によってそれぞれの談話室へと案内された。スリザリンの談話室は地下にあり、なんと壁の一部がガラス張りになっていて、湖の内部が見れたのだ。何故か淡水の湖でダイオウイカが泳いでいたが、まぁここはウィザーディング・ワールド。なんでもアリのトンデモ世界だ。こんな夜に湖の内部がはっきり見えること自体がそもそもおかしいのだ。
「ではこれより部屋に移ってもらう。それぞれ四人組を作って、寝室に移動してくれ。女子は右、男子は左側の廊下に行け」
くだらないことを考えているうちに寮の説明は終わり、監督生の指示で部屋割りを決めることになった。
「バーティ、一緒に組まないか?」
「いいよ」
バーティと一緒の部屋になろうとしたら、思いの外うまくいった。死喰い人の子どもと仲良くするなと言われているのに、クラウチ・シニアにバレたら絶対怒られるな。
というわけで、俺はバーティ・クラウチ・ジュニアのルームメイトになりました。
俺たち以外にもどんどんグループができていき、決まった組から部屋に移動していった。そんな中、カパルディは周りと馴染めなかったらしく、どこのグループにも属せていないようだった。
「よぉカパルディ!」
「……セルウィン」
「もしよかったら、俺達と組んでもいいんだぜ? なぁバーティ」
「ああ」
「お前と一緒の部屋とか、死んでも嫌だね」
カパルディはどうしても俺と同じ部屋になりたくないらしい。何故だ、そんなに俺の触手好きが嫌なのか。……まぁ、それもあるかもしれないが、ただ――
「そうは言ってもお前、あと俺達しか残ってないぞ?」
「え?」
他の奴らはすでにさっさとグループ分けを終え、残ったのは俺達と、無言で突っ立ってる少年だけだった。誰なんだこの少年は、全く存在感なかったぞ。
「つまり、俺には、お前と同じ部屋になるという選択肢しかないのか?」
「そういうことだね」
「くっ、殺せ!!」
「そんなに嫌か!?」
自死を望むほどとか、俺どんくらい嫌われてんだよ。
カパルディは乗り気ではないようだったが、他に選択肢がないので、俺達と謎の少年一名はルームメイトになった。