そして迎えた授業初日。謎の無口な少年は昨日の夜と全く同じ位置に立っていた。昨日一睡もしてないんだろうか。なんか不気味。
授業の方はと言うと、今日の科目は呪文学、飛行訓練、魔法史、そして変身術だ。
一時間目の呪文学だが、驚くべきことに担当のフリットウィック教授は一、二作目の姿でも三作目以降の姿でもなかった。間違いなく同一人物ではあるのだが、見た目がぜんぜん違う。坊主頭で、ヒゲを伸ばしていて、茶髪。この人は定期的にイメチェンするんだろうか?
授業内容はおなじみ、ウィンガーディアム・レビオーサだった。もちろんレヴィオサーとは言ってない。チェストとも叫んでない。幼少期から闇の魔術の英才教育を叩き込まれてきた俺にとっては簡単で、何回かやったらマスターできたが、バーティは一回目で呪文を完璧に使いこなしていた。そう言えばこの人O.W.L.試験を全12科目最高成績で突破した天才だったわ。
バーティは飛行訓練でもその才能を発揮した。一回目の「上がれ」で箒は彼の手に吸い寄せられ、空を我が物のようにして飛んでいた。俺はと言うと、箒を上げること自体は簡単にできたものの、空を飛ぶ感覚がなかなか掴めなかった。バーティは将来スリザリンのクィディッチ代表選手になりたいらしい。うん、多分君ならなれるよ。
昼食を挟んでの魔法史は死ぬほど眠かった。なにせ先生が生徒にわかりやすく教える気があまりなく、ただ義務的に淡々と小さな声で棒読みするだけだったから。殆どの生徒は寝落ちし、残りはウトウトしていたが、バーティだけはシャッキリとしていて、俺も負けじと必死に目を見開いていた。内容は結構面白かった。あと先生がゴーストだった。大丈夫? 近代歴史ちゃんと更新してる?
変身術はとても面白かった。物を別のものに変えるっていうのが魔法っぽくてわくわくする。この教科に関してだけはバーティより先に実技をクリアすることができた。得意げな顔をする俺を、バーティは忌々しそうに見つめていた。あの、クラウチさん。殺人鬼の役を多く演じるテナント氏の顔で睨まれると大変怖いのでやめてほしいです。
そんな感じで、ホグワーツの授業一日目は終わった。今日だけでバーティと俺はスリザリン寮に合わせて50点以上も寮杯の得点を稼ぐことができた。ほとんどバーティの手柄だが、変身術の授業では俺のほうが多く加点されたので並べてもいいだろう。
明日は食事の時間にでも先輩とかに話しかけてみよう。
* * * * * * *
さて、はじめに説明した通り、俺はこの世界においてかなり危うい立場にいる。生き残りたいなら闇の陣営から逃げないといけないが、両親が死喰い人である以上、それはかなり難しい。シリウス・ブラックは、この先ジェームズ・ポッターの家に逃げ込み、叔父から金をもらうことでなんとか純血主義の実家から逃げ出すことに成功したが、今の俺には光陣営側の友人も、金もない。というわけでしばらくは死喰い人である親の支援を受けていかねばならない。
そこで問題になるのが、闇の帝王である。幸運なことに今まではそんなことはなかったが、もしかしたら彼が家に訪ねてくるかもしれない。早ければ、今年のクリスマス休暇に。もし闇の帝王に遭遇し、開心術を使われたら俺は処刑を免れないだろう。
なのでこの一学期中に閉心術をマスターしなければ、俺は詰む可能性があるのだ。
と、言うわけで、二日目は閉心術の使い手であるスネイプ先輩に突撃してみたいと思います!! スネイプ先輩は原作でも閉心術の達人で、闇の帝王相手に本心を最期まで隠し続けたという猛者だ。彼と親しくなれば、もしかしたら閉心術のコツを教えてもらえるかもしれない。
大広間にはすでにたくさんの生徒が集まっていた。そしてスリザリンの席には、スネイプ先輩と思われる生徒が一人。何故わかったかって? 髪型と視線。ずっとリリー・エバンスの方を向いてる。
「ここ、いいですか?」
スネイプ先輩の隣が空いていたので訊いてみる。原作ではあまりよろしくないお友達がいたようだが、今日はいないのか? とりあえずこの機会を逃すわけにはいかないので、ここに座らせてもらおう。
「……ああ、構わないよ」
許可をもらったのでバーティと一緒に隣に座る。スネイプ先輩の左隣が俺、その隣がカパルディ、さらにその左がバーティだ。無口な少年はいつの間にか長机の端の方に座っていた。どうやら一緒に食べる気はないらしい。
気を取り直して、俺はスネイプ先輩と会話することにした。
「俺、セルウィンって言います」
「俺はバーテミウス・クラウチです。よろしくお願いします」
「僕はセブルス・スネイプだ。こちらこそよろしく」
その後は食事しながら少し雑談をした。先輩は魔法薬学が得意らしく、今度教えてもらう約束をした。これで次に話しかけるきっかけができた。今日のところはこれで良しとしよう。
本日の授業は闇の魔術に対する防衛術、魔法薬学、薬草学、そして変身術だった。
DADAは初っ端からかなり難しかった。内容が初回授業のレベルじゃねえ。先生が鬼畜すぎる。バーティは今回も優秀だったし、俺もなんとかついていけたが、この先どんどん難しくなっていくのだろうと考えたら気が滅入りそうだ。ちなみに習った呪文はルーモス、レベリオ、そして煙幕呪文のフューモスだ。なんと初回授業で3つもやり、さらに1週間後にはこの呪文が完璧にできるかテストをするらしい。鬼か。
魔法薬学はあまり得意じゃなかった。理屈や何をすべきかは理解できるのだが、俺は手先が器用な方じゃないので調合に失敗しそうになってしまった。なんとか持ち直して完成させたが、バーティのそれとは雲泥の差だ。こればっかりは精密作業に慣れるしかない。昼食で早速スネイプ先輩に泣きついてコツを聞いてきた。でもなんか全く教科書と違うことを言ってくるんだが。そういえばこの時はそばにいかにも悪そうな友人がいた。一応両親に純血家系とコネを作れと言われているので挨拶しておいた。
昼食を挟んでの薬草学は、まぁぼちぼち。魔法薬学と同じく、理解はできるが精密作業ができない。魔法薬学ほどひどくはなかったが、要練習だ。
四時間目は変身術。実技に一番早く成功して、調子に乗った俺は教科書を謎の触手生物に変えてしまった。もちろん教授に怒られて減点された。それでも加点のほうが大きかったのでセーフ。
無口な少年はずっと空気だった。
デイビッド・テナント
バーテミウス・クラウチ・ジュニアを演じたイギリスの俳優。ドラマ『ドクター・フー』にて10代目の主人公を演じた。本人の性格は至って平和的で、ファンから「かわいい」と称される程であるにも関わらず、顔が怖いので殺人鬼の役を演じることが多い。
フリットウィック教授は数年おきにイメチェンを行う教授という設定にします。