謎の本
これは芸術の階、こっちは宗教の階…これは…哲学の階だな。本の整理って意外と疲れるんだよなぁ…。
俺の名前はローラン。都市じゃ星の数ほどいるしがないフィクサーだったんだけど…まぁ、いろいろあって今は友達の図書館で雑用をして過ごしてるんだ。それでこうやって本の整理に励んでる訳なんだが…さっきも言った通り、意外と疲れるんだよこれ。本の内容を確認して分別するだけだろって?数が多いんだよ!
図書館が外郭に飛ばされてから運営を再開して結構経つけど、ゲストはしょっちゅうくるし、外郭の化け物が入ってくることもあったりして忙しいんだよな。司書補の皆が起きてくれてからはだいぶ楽になったけど…俺1人で全部やらないといけなかった時期、アレ本当に地獄だったからな…。昔知り合いに単独で事務所を運営してた1級フィクサーがいたんだけど…ずっとあんなに忙しそうにしてたのも、今なら納得だな。あいつは知り合って半年しない内にくたばっちゃったって風の噂で知ったけど…。
そんなことを思い出しながら本の分別を進める。
………これは言語の階、こっち…は文学の階だな。よーし、やっと………1冊下敷きになって見えてなかったのか。……まぁこれで最後だし、パパッとやれば変わらないか!さっさと終わらせて本を届けにいかないとだし…。
えーっと…なんだこれ、『
なにか変な気がするんだけど………まぁいいか。これは…
内容を確認しようと本を開くと同時に、突然ページが輝き出した。
「うわっ!?」
思わず間抜けな声が出る。
輝きはどんどん強くなっていき、視界が光に包まれていく。
マズイな、なんて思いながら
そのまま動けずに光に包まれて、俺は意識を手放した。
光が収まった後、そこには階層ごとに分別された本が在るだけで…
────────────────────────
何かが爆ぜるような音で目が覚める。
「ッ今の音は!?うぐっ!?」
急いで動こうとして頭ぶつけるとか…地面に倒れてたのか……クソっ…痛いな…。
上半身を起こして周りを見回すと、高層ビルに挟まれた細い一本道にいた。
人気は…ない。裏路地みたいなところだな…でもここは都市じゃないだろう。あの光…俺はあの本に取り込まれたってことだろうから。幻想体の本だったのか?ならアンジェラに抽出してもらえば出られるはずだろうけど…。
さっきの爆ぜたような音…あれはなんだったんだ?確かあっちの方からだったよな?
立ちあがろうとすると右足に何かが当たった。
『TERRA』…あの本?どうしてここに…本の中に取り込まれたって訳じゃないのか?
なら…ここは本当に裏路地って可能性もあるのか?あの光で都市にぶっ飛ばされたとか…。もしここが都市ならかなり不味いな…幸い
まだ本に取り込まれた可能性が消えたわけじゃないけど…どっちにしろ訳のわからない本の中か、都市にぶっ飛ばされたことには変わりなさそうだ、最悪だな!
爆ぜた音のした方に続く道と足元に転がっている本を交互に見つめる……。
とりあえず…この本だな、中に何が起こったのかわかることが書いてあるかもしれないし。
警戒しながら 『テラ』を持ち上げて開く。
さっきのように光ったりはしなかった。また光って戻れるかもってちょっと期待してたんだけどな…。
少し落胆しつつ、本に書かれた文字に目を通す。
【
テラに普遍的に存在する鉱物の一種である黒い半透明の鉱石。
鉱石の中には莫大なエネルギーが秘められている。
テラにおけるエネルギー源であり、重要な資源。
【
源石に長い間侵されることで発症する病。
身体の表面や体内のあらゆる場所に結晶が生成され、最終的に体液が結晶化し、患者を死に至らしめる。
患者が生存中は他者に感染することはないが、死亡時に源石が拡散し、新たな感染源となる。
【感染者】
鉱石病に感染した者達の総称。
…源石に、鉱石病…?聞いたことない単語しか書いてないな…。残りは全部白紙だし…本当に何の本なんだよこれ?テラ…ってのは此処のことを言ってるのか?………………………………
結局何も分からずに疑問が増えただけだったな…。この本をみた時に変な感じはしたんだけど…早く終わらせてネツァクと1杯やりにいこうとか考えてて適当に流しちゃったんだよな…。
でも読んでる間にここが都市じゃないってことは分かったんだ。目が覚めてから結構経ったのに、人の気配が1度もしないなんて裏路地じゃ有り得ないだろ?人の気配も…音もあれからしてないし…本の方が何か情報を得られる確率が高そうだと思って優先したけど…やっぱりあっちを調べるしかなさそうだな。
とりあえずこの本は持って行くか…何かに使えるかもしれないし。
『テラ』を手袋に収納して、足を踏み出す。
俺は一本道を目覚めた時音のした方向へと進んで行った。
いきなり謎の本でぶっ飛ばされたローラン君
ご都合主義でごめんな…