生暖かい目で見守っていただけると幸い
荒野の小高い丘の上に立って、前方を眺める。
「あれが…移動都市チェルノボーグか。話には聞いてたけど、デカいな」
目を凝らさなくても見える巨大な要塞、少しずつこちらへと進んできているソレを眺めながら、一息つく。
さてと…一息つけたし、まずはどうやって乗り込むかだな?まだ距離はあるし…落ち着いて冷静に考えようか。
時間は昨日の夜まで遡る。
「すいません、ウェイ長官に用があるんですが…」
「はい、アポは…いえ、ローランさんですね。すぐにご案内します」
黒蓑に指示された通りに、さっき見たのとは別の秘書官に応接室に案内された。
…まだウェイ長官は来てないらしいな?時間があるなら、本の確認を進めておくか。
手袋から本を取り出そうとした時、応接室の扉が開いた。
「お疲れです。わたくしめに仕事と聞いて参上…しました」
ウェイ長官が来たと思って挨拶したんだけど…違ったみたいだな?
中に入ってきたのは、着物姿の小柄な龍だった。
「すいません、ウェイ長官にお話があってきたのですが…俺、部屋を間違えてますかね…?」
「いえ、ここで合っていますよ。先程黒蓑を遣わせて貴方を呼んだのはウェイではなく私ですから」
ウェイ長官以外にも黒蓑を動かせる人がいたのか…。
「私はフミヅキ。ウェイの妻です」
「長官殿の奥方様が、わたくしめにどんな御用でしょうか?」
「私にはあまり時間が残されていないので、単刀直入に言わせて貰います。私からの依頼を受けていただけませんか?もちろん、報酬は言い値で構いません」
「言い値って…まずは依頼の詳細を聞かせてください。黒蓑にもそう言われてたし…」
「…現在、龍門に向かって移動都市チェルノボーグが移動してきているのです。放置すれば甚大な被害を受けることになるでしょう。それを停止させるために協力して欲しいのです」
チェルノボーグ…確かレユニオンが占拠してる移動都市…だったか。
「そんなことが起きてるのに、長官殿からは俺に何も…動く必要がないってことじゃ?」
「…チェルノボーグは『この都市はウルサスの領土である』という識別コードを発信し続けているのです。故に龍門側から何か仕掛ければ、ウルサスとの戦争は避けられないという状況なのです」
それで所属がまだあやふやな俺の出番、ってことか。
「そして…ウェイは自らチェルノボーグの中枢区画に突入し、問題を解決した後、自らの死を持って責任を取り戦争を避けるつもりなのです」
「それがウェイ長官が俺を動かさない理由で、所属が未だあやふやで中立的な立場の俺なら、対応ができる」
俺を動かさないのはまだ信用がないってのもあるだろうけど…。
「…私は彼にも、一人で飛び出して行ったあの子にも死んで欲しくないのです」
せっかく協力関係になれた後ろ盾に死なれるのは俺も困るし…信頼度稼ぎにもなるんじゃないか?
「依頼を受けましょう。報酬は…ウェイ長官への口添えってことで…。それで、俺は具体的には何をすれば?」
それから龍門を出発して…ひたすら走り続けて今に至るってわけだな。
とりあえず、俺の最終目標はあの中枢区画を停止させること。後は先に乗り込んでるチェン…って人を助けるってのも入ってるな。
聞いた話じゃ他にもロドスって製薬会社がアレを止めようとしてるらしいから、合流して協力したいところだな。
…落ち着いて考えてみたけど、いい感じの方法が思いつかないな。下から飛んで潜り込むか上から直接乗り込むかだけど…上からは無しだな。見張りが結構多いみたいだし。それなら下からだな…。
失敗した時のことを考えるとちょっと怖いけど…そういうのは考えすぎないのがいいだろうな。
仮面をつけて、迫ってくる都市へ向けて走り出す。
しっかりと助走をつけて、跳躍する。
………………なんとか届いたか。ホントにギリギリだったけど……。下手したら見てらんない事になってたかもしれないな。
ここがチェルノボーグか。…俺以外にもここから入ったやつがいるらしいな?形跡から見るに…結構人数が多いみたいだな。
正直、移動都市の構造なんて分かってないんだけど…。
じっとしているわけにもいかないし…。いくら仮面があるっていったって限界はあるだろうから…敵に見つかることがないとは言えないから、さっさと動いたほうがいいだろうな。さっきの痕跡がロドスってやつのなら、なんとか合流して一緒に動きたいとこだな。
とりあえず場所的にここは最下層ってとこだろうし…中枢区画に行くなら上に上がればいいってことだと思うから…ひとまず進んでみようか。
もうちょっと考えてから来るべきだったな、と少し後悔しながら俺は前へ踏み出した。
ロドスの面々は少し前に突入済み
彼は少し遅れて到着した模様