風都のある晴れた日。
鳴海探偵事務所に一つの荷物と事件が舞い込んでくる。

左翔太郎、そしてフィリップに最悪の敵と最大の危機が迫る………!


※若い妄想を発散させた結果です。
よって単発、続きはありません

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行き詰まりに詰まったのでちょっと発散
仮面ライダー熱が暴走しすぎて夜しか眠れない

シフトカーマジprpr


Infinite Stratos ~W Boiled Xtreme~

「フィリップー。おーい、フィリップー!」

 

穏やかな風が吹く街、風都。

そこで起こった、ガイアメモリと呼ばれる地球の記憶を内包した端末を利用した事件からしばしの時が流れ、小規模ながら風都各地で起こっていたガイアメモリ犯罪も鳴りを潜め始めていたある日。

 

風都唯一の探偵がいる場所、鳴海探偵事務所の探偵、左翔太郎は、大きめな荷物を抱えながら、事務所のいずこかに消えた相棒を捜していた。

 

「ったく、フィリップの奴………」

 

持っていた荷物をテーブルに置き、入口左手、幾つもの帽子が掛けてある木製の扉を睨みつけるように見据える翔太郎。

ドアノブに手をかけ、そのまま勢いよく開け放った。

 

「おいフィリってくっせぇ!」

 

扉の先、事務所とは明らかに異なる空間に踏み込んだその瞬間、翔太郎の嗅覚に強烈な異臭が炸裂した。

加えて、どこか焦げたような臭いと共に煙もうっすら立ち上っている。

 

「ぐふっ、おぇぇ………んだよ、こりゃあ!おいフィリップ!!」

「………ん?翔太郎かい?」

 

翔太郎の怒号などどこ吹く風と言わんばかりの涼やかな声が響く。

無造作に伸ばされ、クリップで各所を留めるという個性的なヘアスタイルをした中性的な容姿の青年、左翔太郎の相棒、フィリップは何故か煙を吐き出す七輪の前で楽しげに座っていた。

 

「さっきから随分騒がしいね。何か良いことでもあったのかい?」

「んなことより!何なんだよこの異臭は!」

「そうだ、ちょうどよかった!」

 

立ち上がり、少年のように無邪気な笑みを浮かべながら翔太郎に詰め寄るフィリップ。

端から見れば子供が親に駆け寄るようなその様は、翔太郎にしてみればいつもの厄介な事態に他ならない。

 

「翔太郎………」

「………なんだよ」

 

「君は、「くさや」という食べ物を知っているかい?」

 

「………は?」

「くさや。アジやトビウオといった魚を開きにしてくさや液と呼ばれる魚醤に似た液体に漬け、天日干しにすることで作られる食材。調理する際に強烈な異臭を放つが、その反面、身に染み込んだくさや液の旨みも同じく強烈。ものによっては100年も同じくさや液を」

「もういいっ!!」

 

一度検索しだしたら徹底的に調べ上げるまで止まらないフィリップの検索癖。

実に楽しげに語り続けるフィリップの頭を、翔太郎は黒いスリッパでひっ叩いた。

 

「いたっ!?………翔太郎、それはあきちゃんの持ちネタだろう?」

「何が持ちネタだ。つか、俺らがやったところで怒りゃしねぇだろ」

「どうだろうねぇ………」

 

あきちゃん。

フルネームは照井亜樹子。旧姓鳴海。翔太郎の師、鳴海荘吉の一人娘にして、鳴海探偵事務所の現所長。

今は翔太郎とフィリップの戦友で刑事を勤めている、夫の照井竜と共に一泊二日の旅行に出かけているため不在。

 

「いつ帰ってくるんだったっけ?」

「今日の午後。ったく、所長だなんだ騒いどいて、自分は旅行かよ」

「まぁ、いいじゃないか。夫婦水入らず、と言うんだろう?照井竜もガイアメモリ事件がたまにしか発生しなくなって、手持ち無沙汰だったらしいからね」

「不謹慎だな、おい………ま、そうだけどよ」

「ところで、用件は?」

「へ?」

「さっきは茶化したけど、あの慌てようだ。何かあったんじゃないのかい、翔太郎?」

「あ、そうだった。ちょっと、こっち!」

「あ、じゃあくさやも………」

 

大急ぎで事務所に戻る翔太郎と、焼き上がったくさやを皿に乗せて後を追うフィリップ。

 

「………食べるかい、翔太郎?」

「いらねーよ!」

「残念。おいしいのに。………この荷物は?」

「今さっきうちに届いた。差出人の名前はねぇ。代わりに………これがあった」

「手紙?」

 

翔太郎から渡されたそれを、フィリップは開き、静かに読み始める。

 

 

拝啓

 

左翔太郎 並びにフィリップ

こんな形であなた達に、本職ではない依頼をすることをどうか許してほしい

この中には、今ある世界を変えられる力がある。それを、どうか守ってほしい

風都にはその波は来ていないが、世界は明らかに歪んでいる

その力は、間違いなく世界のパワーバランスを崩せるだけのもの。狙う者は後を絶たないはず

だから、あなた達に守ってほしい

 

 

「探偵ではなく、仮面ライダーとして………僕達が仮面ライダーだと知っている………?」

「最後まで名前は無しの謎の人物。念のためにちょっと調べてみたが中身は危険物とかじゃなさそうだ」

「そう………翔太郎」

「ああ。開けるぞ」

 

包装を解いて、その蓋を取り去る。

その中には、二人にとって何よりも馴染みの深い物があった。

 

「これは………!」

「ガイアメモリだと!?それに、ダブルドライバー!?」

 

入っていたのは、IとSの二本のメモリ、そして翔太郎とフィリップが持つ、ダブルドライバーと呼ばれるベルトだった。

 

「いや、待ってくれ。このドライバーは、なんだかおかしい」

「あ?………こいつは」

「メモリ挿入口が四つだ………それに、この二本のメモリ………」

 

ドライバーの中央部分は、Tの字を逆にしたような形をしていて、左右に一つずつ、上部分に二つのメモリ挿入口があった。

そして、メモリにはそれぞれIとS………「Infinite」と「Stratos」と刻まれていた。

 

「InfiniteとStratos………無限と………これは、成層圏、かな?」

「インフィニット………ストラトスって、あれじゃねえかフィリップ?」

「ああ。確か、女性にしか動かせないというパワードスーツ。現行………いや、旧兵器をただの屑鉄に堕落させた未来の兵器」

 

インフィニット・ストラトス。通称IS。

10年ほど前に一人の少女が造り上げたパワードスーツ。

元々は宇宙進出を目的としていた物だが、かつての兵器全てを一蹴したその威力から、本来の目的を外れ現在は各国で軍事目的の運用が行われている。

完全無欠の兵器に見えるが、実は一つの欠点がある。

 

それはフィリップも言った「女性にしか動かせない」ということ。

 

これにより、「頂上の兵器であるISを動かせない男は無価値」という風潮が世界規模で蔓延、僅かな時間で女尊男卑の価値観が根付いてしまった。

幸いにも、街全体が一つのコミュニティで確立されている風都ではその傾向は見受けられないが、一歩外に出れば、すぐその価値観は襲いかかってくるだろう。

 

「しかし、どういうことだ………ミュージアムはもう無くなったはずだろ」

「僕もそこが気になっていた。ISも地球で生まれた物だから地球の記憶の一部と言って問題は無い。だが、ガイアメモリを造れるはずがない。それに、必要なものはこの世に存在しないのだから………」

「………フィリップ?」

「誰が、どこで、何故、どうやって………ふざけてる………!」

「………フィリ」

 

その時、強烈な揺れが鳴海探偵事務所を襲った。

 

「っ!なんだぁ!?」

「この揺れ方、何かの爆発だ………翔太郎!」

「わかってる!」

 

自分のベストの中からJと記されたメモリを取り出す翔太郎と、Cの文字が刻まれたガイアメモリを掲げるフィリップ。

 

「………試してみるか、このドライバー」

「普段なら止めるところだけど今は緊急だ。やりたまえ、翔太郎」

「うっし!」

 

箱の中のドライバーを手に、翔太郎は事務所と、そこがあるビリヤード場から外へと出る。

 

「あれは………!」

 

見上げた先には、人型の何かが飛び回り、街へ向けて銃を乱射し、留弾を放ち、風都を破壊していく様があった。

 

「IS………ふざけんじゃねぇ!!」

 

翔太郎はドライバーを腹にあてがう。

するとベルトが翔太郎の腰を回り、逆側から固定する。

 

「フィリップっ!!」

『ああ、流石の僕も怒りを隠せない。行こう、翔太郎』

 

『Cyclone』

 

「何が目的か知らねぇが、風都を泣かせた罪は重いぜISよぉ………!」

 

『Joker』

 

 

「「変身!!」」

 

フィリップが、自身の体に現れたドライバーにCのサイクロンメモリを挿入、それが翔太郎のドライバーへと転送される。

一方、送られてきたサイクロンメモリを、翔太郎は改めてドライバーに挿入。反対側に、Jのジョーカーメモリを差し込む。

 

『Cyclone Joker!!』

 

メモリの音声、ガイアウィスパーが響き、翔太郎の身体が風に包まれる。

事務所に残ったフィリップは意識を失い、その意識は翔太郎の身体と一つになる。

風が止んだそこには、左半身が黒、右半身が緑色の戦士がいた。

 

仮面ライダーW。

左翔太郎とフィリップが変身した、風都の涙を拭う二色のハンカチであり、街を守る戦士である。

 

『翔太郎!まずは街の人達を!』

「わかってる!行くぞ!」

 

停めてあった、緑と黒二色のバイク、ハードボイルダーに跨がり、Wは多くの人々が逃げまどう街中へと走っていく。

 

「あっ、か、仮面ライダー!」

「逃げろ、速く!」

 

逃げ遅れた人達に声をかけていくが、パニックに陥った者には届かず、その一方で尚破壊は続けられている。

 

「しょうがねぇ………フィリップ、まずはあいつだ!」

『翔太郎、ヒートメタル、それにタービュラーだ!』

 

すると、Wの後方から巨大な装甲車、リボルギャリーが現れる。

その中心部が開き、ハードボイルダーがその内部へと運ばれていく。

 

『Heat Metal!!』

 

その一方で、Wはメモリを変え、右半身が赤、左半身が銀色の仮面ライダーWヒートメタルへと姿を変える。

 

「行くぜ!」

 

背中から鋼鉄の棍、メタルシャフトを引き抜き、ハードボイルダーの後部が交換された、空中戦用形態、ハードタービュラーに乗る。

 

 

 

「いい加減にしやがれッ!!」

 

上空に飛び上がったW、手近にいたISに、メタルシャフトの一撃を加える。

 

「っ、貴様は!?」

「悪党に名乗る名はあるが、外道に名乗る名前は無ぇ!!」

『奴の主武装は飛び道具のようだ。翔太郎、距離を詰めよう!』

「おう!」

 

ISから放たれる弾丸を避けつつ、Wは一撃ずつ、確実に攻撃を加えていく。

 

「おらぁぁっ!!」

「ちぃっ、チョコマカとっ!!」

「っと………フィリップ!効いてるように見えねえぞ!」

『ヒートメタルの威力でもまったくの無傷………これがISのシールドバリアーか!』

「二人分の声………?まぁ、そういうことだ。度肝を抜かれたが、もう貴様に遅れは取らん!」

「くっ………!」

 

先程までとは一転、正確に狙ってくるISの射撃に、今度はWが防戦一方になる。

 

「フィリップ!何か、手は!」

『今考えている!だが………!』

「万策尽きたな………まずは、足だ!」

 

そして、ISが放った弾丸が、Wの足ごとハードタービュラーを無慈悲に撃ち抜いた。

 

「ぐあぁっ!」

『翔太郎!』

「堕ちろぉっ!」

 

動きが鈍った隙を突かれ、ハードタービュラー、そしてWの全身に弾丸の雨が降り注いだ。

 

「ぐおっ、うっ、ああぁぁぁぁぁ!!」

『翔太郎ーーーー!!』

 

ハードタービュラーは大破、空を飛ぶ翼を奪われたWは、真っ逆さまに地上へと落下。

掴まるものもなく、そのまま地面へと叩きつけられた。

 

「がはっ、あぁ………!」

『くっ………!翔太郎、奴が来る!』

「ふ、フィリップ。メモリ………ルナ、トリガーで………」

『それよりも今は逃げろ!メタルでさえシールドバリアーは抜けなかった!ルナトリガーの威力では………』

「俺達が逃げたら、誰がみんなを避難させるんだよ………」

『っ………』

「フィリ、ップ………!」

『………わかった』

 

『Luna Trigger!!』

 

震える手でメモリを交換、黄色と青の、ルナトリガーへと姿を変え、両手で青色の銃、トリガーマグナムを構える。

 

「………こいつで………!」

『Trigger Maximum Drive!!』

 

トリガーマグナムに、青のトリガーメモリを装填。

銃口に青と黄色の光が集まっていく。

 

「『トリガー・フルバースト!!』」

 

放たれた二色の複数の弾丸。

それぞが不規則な軌道を描き、迫るISに殺到していく。

 

「………くだらん」

 

───その全てが、ISの銃弾に撃ち落とされた。

 

『な………!』

「嘘、だろ………」

「………」

 

静かに地に降りたIS。

右手のライフルをWへと突きつける。

 

「………テメェ、何が目的だ!」

「捜し物、とだけ言っておこう」

「何?」

「それ以上貴様が知ることは無い………終わりだ」

 

ISの持つライフルから、一発の留弾が放たれる。

それがWの身体を捉え、爆風と爆熱がWを呑み込んだ。

 

「うぁあああっ!!」

 

膝から崩れ落ちると同時に、変身が解除される。

 

「………聞こえた声は二人分だったが………まぁ、いいか」

「ぐっ、は………」

 

倒れながら、翔太郎は落としたジョーカーのメモリに手を伸ばす。

 

「おっと」

「があぁっ!?」

 

───その手を、ISの装甲脚が踏み抜いた。

 

「このまま殺してやってもいいが、その前に質問だ」

「はっ、うぅ………!」

「お前達のそれ、ガイアメモリというんだろ?それのIとSを探してる。心当たりは?」

「あ、がっ………おま、え………」

「その反応は知っているな?どこにあるか教えてくれないか?」

「ぎっ、ぁああ!」

 

手にかけられた脚に力がこもる。

圧倒的な重量に、翔太郎はもがくしか出来なかった。

 

「ほら、今なら腕一本で済むぞ。教えてくれれば命までは取らんと言ってるのに」

「がっ、ふぅ、う………あれ、は………」

「ん?」

 

脚をどけ、翔太郎の前にしゃがみこむIS。

消えそうな意識の中、掠れそうな声で翔太郎は口にした。

 

「だれがおしえるか、この、ド悪党………!」

 

「………っ!!」

 

その一言に逆上したらしく、翔太郎の頭にライフルの銃口を突きつける。

 

「いいだろう。なら、この街を徹底的に破壊した上で探し出す。お前は死ね、惨たらしくな!」

 

「翔太郎!!」

 

引き金に指がかかった瞬間、声が響く。

翔太郎とISが視線を向けた先には、フィリップが手に二本のメモリを持って立っていた。

 

「フィリップ………?」

「あぁ、あいつがもう一人か。で、何の用だ?」

「お前の狙いは、このメモリだろう!?」

 

そう言ってフィリップが掲げたのは、InfiniteとStratosのガイアメモリ。

 

「っ!そう、それだ!さぁ、それを寄越せ!」

「………翔太郎と、引き換えだ」

「フィリップ!よせ!」

「すまない、翔太郎。だが、これが考え抜いたベストなんだ」

「………お前、まさか」

「ふむ、まぁいい。こっちまで持ってきてもらおうか」

「………わかった」

 

両手を上げ、抵抗の意思が無いのを示しながら、フィリップは一歩ずつ翔太郎とISに近付いていく。

やがて二人の目の前まで来ると、フィリップはISの手にガイアメモリを置いた。

 

「………これでいいだろう?」

「ああ。騒がせてすまなかったな。行っていいぞ。後ろから撃つなんて姑息な真似はしない」

「そう、ありがとう」

「フィリップ………」

「一つ、いいかな?」

「なんだ?」

「ここまで風都を破壊して、それほどまでに求めたそのメモリ。どれだけの価値があるんだい?」

「………あってはならない物だ、とても言っておこう」

「あってはならない物………」

「それだけだ」

「なるほど、多くは聞かされていないのか」

「………何?」

「いや、もう結構。後は自分で検索するとしよう」

「貴様、さっきからなにを………!」

 

その瞬間、耳をつんざくような声が響き、ISの手からメモリが何かによって奪われていた。

 

「なっ………!?」

 

見れば、そこには二本の脚で自立する小さな恐竜のような物体がいた。

 

「何だ、これは!」

 

Fのファングメモリ。フィリップがピンチに陥った時に駆けつけ、力となる特殊なガイアメモリ。

ファングは飛び跳ねながら、ISを翻弄していく。

 

「くっ、小賢しい………貴様ら………っ!」

 

ファングよりも先に翔太郎とフィリップを始末しようと、ISはライフルを向けるが、そこには既に二人の姿は無かった。

 

「くっそぉぉぉぉっ!!」

 

 

 

 

「ったく、無茶するぜお前は………」

「敵を騙すにはまず味方から。君が気付いて、演技に乗ってくれて助かった」

「長いこと一緒だからな。裏があるってのは何とか読みとれた………っ」

「翔太郎!」

「大丈夫だ………だが、どうする?奴には攻撃一切通らなかったぜ」

「………そのための、このメモリだ」

「IとS………そうか!」

「だが、何が起こるかわからない。仮面ライダーとISはまったくの別物だ。うまくいくという保証も無い」

「フィリップ………」

「翔太郎。それでも、僕に賭けてくれるかい?」

「………」

「………」

「バカ」

「え?」

「今更何言ってんだよ。俺達は………何だ?」

「翔太郎………」

「二人で一人の探偵で、仮面ライダーだろ?それに………地獄まで相乗りする、そうだろ?」

「………ああ、そうだ。そうだった」

「行こうぜ、相棒!」

 

 

 

「よくもコケにしてくれたな………どこだぁ!」

 

翔太郎とフィリップが逃げ込んだ廃墟。

二人だけでなくファングメモリも逃げられたISは苛立っていた。

 

「やぁ、呼んだかい?」

「っ!」

 

声の元に振り向くと、そこには翔太郎とフィリップがそれぞれ両手にガイアメモリを持って立っていた。

 

「やってくれたな、貴様ら………まぁ、メモリを持ってきてくれたから良しとしよう。そいつを寄越せ」

「悪いね。これがどれほどの価値があるか聞きたかっただけなんだ。でも、お前は知らない。なら、自分で調べた方が手っ取り早い」

「そういうことだ。とっとと帰れ。これ以上この街を泣かせるつもりなら………相手になるぜ」

「笑わせるな。ISも使えない貴様らに何ができる」

「ああ。確かに僕らにはISは使えない」

 

『Cyclone』

 

フィリップが左手のサイクロン、次いで右手のインフィニットメモリのスイッチを押す

 

『Infinite』

 

「だが………」

「ああ………」

 

『Joker』

 

それに続いて、翔太郎も右手のジョーカーメモリと左手ストラトスメモリを起動させる。

 

『Stratos』

 

「ISじゃなくて、「ISの力」なら話は別だ」

「貴様ら………!」

「行くぜ、フィリップ」

「ああ、翔太郎」

 

 

「「変身!!」」

 

 

フィリップがドライバーの右側にサイクロンとインフィニットのメモリを挿入。それがデータとなって翔太郎のベルトに送られる。

送られてきた二本のメモリ、そして残るジョーカー、ストラトスメモリをドライバーに装着する。

 

 

『Cyclone Joker!!』

 

『Infinite Stratos!!』

 

逆Tの字型だったドライバーが中央部から二つに別れ、まるでXの字のように形を変える。

そして、サイクロンジョーカーを示すガイアウィスパーに次いで、インフィニット・ストラトスの名を女性型のガイアウィスパーが示した。

風が巻き起こり、それが晴れた後には、二色の機人がいた。

 

両腕と両足には左右それぞれのカラーリングの装甲。

重厚な雰囲気を出しながらも、装甲全てがシャープな造りになっている。

胴にも、僅かながら装甲が取り付けられているが、それも重苦しさは一切無かった。

首から伸びるマフラー、ウィンディスタビライザーは、変わらず風に靡いている。

 

「………思ったより変わり映えしねぇんだな」

「そのようだね。それに………」

「あっ、そういやお前の身体!」

「どうやら、エクストリームと似たような原理らしい。この形態では、僕達は一心同体というわけさ。まぁ、さすがに地球の記憶へのアクセスはできないようだが」

「まぁ、あれはエクストリームだけの特権みたいなもんだしな。しっかし、これが仮面ライダーとISの合体かぁ」

「正確には、WがISの力を取り込んだ状態、だよ翔太郎。そうだね、名付けるなら、仮面ライダーWサイクロンジョーカー・インフィニット・ストラトスVer、といった所かな」

「いや、長ぇよ!」

「ゴールドエクストリームと良い勝負だと思うんだが」

「え?………あぁ、確かに!」

 

「何和んでるんだ貴様らぁぁぁっ!!」

 

「あぶねっ!?」

「っと、随分短気だな………」

 

ISが放った銃弾を辛うじて避けたW。

見ればIS操縦者の女は顔を真っ赤にしてWに殺意を向けていた。

 

「ただでさえ貴様等にメモリを使われ、くせっ毛とあの爬虫類モドキに良いようにされ!その上目の前で寸劇!貴様らどこまで私をコケにすれば気が済む!!」

「………してたか?」

「さぁ?」

「………よし、コロそう」

 

低い声でそう呟いたと思った次の瞬間、主武装のライフルがISの両手に握られていた。

 

「………翔太郎、身体は?」

「ちっと休んだおかげで多少は楽だ。行けるぜ」

「そう、よかった」

 

そうして、Wは脚を踏み入れ、目の前のISを見据える。

 

「テメェは、俺達にとって一番許せねぇことをした」

「無関係の人を傷つけ、必要以上に街を破壊し、そして泣かせた」

「償いのチャンスくらいは与えてやるよ」

 

「「さぁ、お前の罪を数えろ!」」

 

「抜かすなぁっ!」

「フィリップ!」

「ああ!」

 

怒号と共に放たれた無数の銃弾。Wはそれを横に跳んで回避。

踏み込むと共に、ISまでの距離を詰める。

 

「はや………!」

「りゃあっ!」

 

勢いそのままに放たれた蹴りは、ISの胴体に大きくめり込んだ。

 

「ぐっ………なんのぉ!」

「おっ、とぉ!」

 

向けられたライフルを払い、そのまま腹に拳をねじ込む。

 

「かはっ!」

「すげぇな………」

「翔太郎、驚くのは後だ!」

「あ?あぁ悪ぃ!」

 

見れば、ISは再び距離を離し、ライフルを構えていた。

 

「メモリを変えよう!」

「おう!キツいの、いくぜ!」

 

『Cyclone Metal!!』

 

サイクロンメタル・ISVerへとチェンジ、やや鋭角的なフォルムになったメタルシャフトを構え、両端に風を宿す。

 

「蜂の巣だぁっ!!」

 

再度乱射された弾丸。

それを、メタルシャフトを高速で回転させ、巻き起こった風で次々と弾き飛ばしていく。

 

「翔太郎!」

「お熱いの、決めてやるぜ!」

 

『Heat Metal!!』

 

サイクロンメモリをヒートに交換、ヒートメタルへと姿を変えると、メタルシャフトに、今度は炎が灯る。

 

「うらぁっ!!」

 

炎熱をこめた突きで一閃、腕を弾くと共にライフルの一丁を破壊した。

 

「うあっ!………バカな………これが、ガイアメモリの力………くそっ!」

「あっ、待て!逃がすか!」

 

『Heat Trigger!!』

 

勝てぬと悟ったのか、後方へと飛び去るIS。

メタルメモリからトリガーメモリへ、ヒートトリガーとなったWは、左手で構えたトリガーマグナムをISへ乱射するが、当たることなく全て外れてしまった。

 

「あー、くそっ!どうする、フィリップ!」

「簡単なことさ。こちらも飛べばいい」

「は?………あ、そうだな」

 

 

 

 

「くそっ!くそ、くそ、くそぉっ!!完全に想定外だ!あんな形でISを………あのメモリがあってはならないとは、こういうことか………恨むぞスコール!!」

 

風都上空を飛ぶIS。

焦りと怒りで顔を歪めた操縦者の女は上官への悪態をついている。

 

「逃がさねぇぞこの野郎!」

「なっ!?」

 

『Luna Trigger!!』

 

後方から、ルナトリガー形態のWがその手にマグナムを携えて飛来してきていた。

 

「PICの飛行まで可能に………!」

「そこぉっ!」

 

Wが放った数発の弾丸は不規則な軌道を描き、その全てがISに命中した。

 

「しまっ………きゃあああっ!?」

 

その衝撃で姿勢と飛行制御に以上をきたしたISは、そのまま地へ落下していく。

奇しくもその光景は、先程Wが堕ちた時と真逆であった。

 

 

 

 

「ぐっ、うぅ………はっ!?」

「大人しくそのISを外して投降したまえ。こちらとしては、命を奪うつもりは無いんだ」

 

ISに向け、上空からマグナムを突きつけてフィリップが告げる。

 

「………ふふっ。甘いな」

「なに?」

「戦いは、生きるか死ぬかだろう!!」

 

獰猛な笑みと共に、ISが残っていたライフルを構える。

 

───即座に放たれた弾丸で、一瞬で撃ち砕かれたが

 

「ぁ………」

「警告はした。………翔太郎」

「あぁ………」

 

『Cyclone Joker!!』

 

『Joker Maximum Drive!!』

 

二つのメモリを換え、再びサイクロンジョーカーとなったW。

ジョーカーメモリを右腰のスロットに差し込み、マキシマムドライブを起動させる。

強く、大きな風が吹き荒れ、Wの身体が宙に浮いていく。

 

「………おのれぇぇっ!!」

 

が、それでもISはブレードを出現させ、Wに切りかかっていく。

 

「「ジョーカー・インフィニット・エクストリーム!!」」

 

突風と共に、左右で分かれたWの身体がISのブレードをへし折り、次いでISを大きく吹き飛ばした。

 

 

地面に降り立ち、変身を解除した翔太郎とフィリップ。

遠くには、ISから離れ意識を失った女性の姿が見える。

 

「………ひとまず、終わりだな。あの女は警察がどうにかするだろ」

「そうだね………でも、まだ謎は残ってる」

「ああ。ISのメモリとそれを使うためのドライバー………一体誰が………」

 

メモリを手に、空を見上げる翔太郎。

多くが崩壊した街であっても、風都の風は変わらず穏やかだった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「にゅふふ。やっぱ仮面ライダー………ってか、ガイアメモリってすっごいなー。あんな凡俗でも軽々IS使えちゃうなんて。あ、束さんとちーちゃん以外みーんな凡俗かっ!何か出来ちゃったから試しに一番使ってる奴の所に送ってみたけど、んー、何か予想以上で束さん感激ー!固っ苦しい手紙書いた甲斐もあったってもんだよ!うん!さーて、これからどうなるかなー。ちょっとは楽しませてね、仮面ライダー♪」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

『………そうして、白昼の風都で起きた事件は一端幕を下ろした。例のIS操縦者の女は、一貫して黙秘を貫いているらしい。まぁ、照井も取り調べに参加してるらしいから、時間の問題だと思う。ただ………俺には、これが何かの始まりにすぎないのではないかと感じている。フィリップも同様だ。いつか、あの女と同じような誰かが、あのメモリを狙ってくる可能性が無いことも無いのだから』

 

「翔太郎くん、怪我だいじょぶ?」

「ん?あぁ、ちっと痛むが………まぁ大丈夫だ」

「そっか。にしてもびっくりしたよー。帰ってきたら街はメチャクチャだし翔太郎くんはボロボロだし」

「まさかこの街でもISによる犯罪が起こるとはな。しかも白昼堂々と」

「まったくだ。あのドライバーとメモリが無かったらどうなるかと思ったぜ」

「それよりも。速く怪我治してね、翔太郎くん」

「亜樹子………」

「だって………」

「………わかってる。俺は、いや、俺達はこの街の涙を拭う二色のハンカチ………とっととこんな怪我治して、今もどこかで泣いてる誰かを………笑顔にしなきゃな」

「翔太郎くんが動けないと依頼が来ても解決できないからお金にならないし!」

「テメコラ亜樹子ォ!!」

「きゃあんっ!助けて竜くぅ~ん」

「ったく………ん?」

「………何だ、この臭いは」

「………くさっ!え、くっさ!」

 

ガチャッ

 

「………やぁ、あきちゃんに照井竜」

「フィリップくん!」

「フィリップ………この異臭は何だ………!?」

「ああ、これだよ」

「これ………くさや!?」

「ああ。僕なりにくさやを追求した結果だ。さぁ、どうだい?こいつを見てどう思う………?」

「すごく………!」

「臭いですぅ~………!」

「お前それまだやって………くっせぇ!」

「それ、どうにかしてよフィリップくん!お客さん来たときどうするの!?」

「振る舞うのはどうかな?」

「なんでやねん!!」

 

コンコンッ

 

「言ってるそばから来たー!ほら、早くどっかしまって!」

「あぁ!せっかく作ったのに!」

「所長、コーヒーの用意はしておくぞ」

「ありがと竜くん!ほら、ミイラの翔太郎くんは引っ込んで!」

「誰がミイラだ!」

 

『だから、その時が来たら、俺達は戦う。風都の探偵として………仮面ライダーWとして』




サイクロンジョーカーゴールドエクストリーム
サイクロンジョーカーインフィニット・ストラトスVer

うん、ここのが長いや

細かい設定とか考えてないっす、妄想の発散だからね
あ、もしかしたらこんな感じで単発のフォーゼ×ISなんかもやるかも


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