転生したらガイアデルムとなった件   作:アーロニーロ

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初戦闘

 

「ん?」

 

 瞼越しに何か光源を感じるんだが?陽の光とかそういうじゃなくてなんかこう、ライトつけてない時の部屋で感じられる薄暗い光的な感じのを。しかも何これ風?ってことは空気あんの?え?死んだよね俺?死んだんだよね?恐る恐る目を開ける。そこには

 

「は?」

 

 全く知らない世界が俺の目の前に広がっていた。

 

「何処だここ…」

 

 俺は呆然としながら思わずと言った様子で呟く。本当に知らん。何処だここ。つーか、本当に地球か?辺りを見渡すとそこには見たこともない植物に見たこともないクリスタルのような柱。地球じゃない。ってことは俺って死んだんだしもしかして天国か地獄?一応、親より早く死んだし雰囲気的にも地獄だと思うんだけど…。

 

「痛いのはやだなぁ…」

 

 ハハハ…と渇いた声を上げるとふとあることに気がつく。

 

「……なんか目線高くね?」

 

 俺の身長は170.5とぶっちゃけ平均よりやや低めだ。伊達に18年間お世話になったんだ。体の大きさを見違えるほど馬鹿じゃあない。明らかに違う目線の高さに困惑しつつ足元を見てみる。そして、

 

「は?」

 

 第二の驚愕が俺を襲った。は?なんか手とな足がめちゃくちゃゴツいんですけど。具体的にいうとRPGに出てきそうな中ボスくらいよ悪魔、みたい、な。

 

 かなり怖いが自身の様相を理解する為に少し先にある池へと足を運ぶ。恐る恐るといった様子で池の水面へと覗く。そして、

 

「こっっっっっっわぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 俺の顔の怖さに思わず絶叫した。なに、あの悪魔みたいな歪曲したツノ!?なに、あのドチャクソ鋭い目!?なに、あの絵本でしか見たことない牙!?おまけになにあの筋肉質な体!?ハロウィンであるちゃちな奴でもコミケで見かけるハイレベルな奴とも違う!創作では決して作り得ない生々しさがあった!これじゃあまるで本物じゃないか!?

 

「おおおおおおぉぉぉおおおお落ちちちち付けけけ、俺ぇぇ!!!」

 

 こ、これは、まさかのあれか!?あれなのか!?割と前からネットで流行のあれなのか!?イヤイヤイヤ!あり得ないって!!ほら、小説とかだと、神様的なやつに特典とか貰うじゃん!?非現実的にも程があるって!!

 

 あまりの現実感の無さに慌てふためく俺。すると、

 

《ユニークスキル『闘争者』を使用しますか?YES/NO 》

 

「うおッ!」

 

 そんな俺の動揺を嘲笑うように頭の中で暗闇の中で聞こえてきた副音声と同じ声が聞こえてくる。 

 

 は?

 何、何だって?

 ユニークスキル『闘争者』……?なにそれ?

 てか、この声は何だ?

 

 辺りを見渡しても人っこ?1人いやしない。ってことは俺にしか聞こえてないってことだ。確かに意識がブラックアウトする寸前からした後にまで似たような声は聞こえてはきてたけども。あれは気のせいじゃ無かったのか?すっごい機械的で人の暖かさは微塵も感じられないけど縋れるものが藁すらない今となってはこれに縋るしかない!

 

「い、YESで」

 

 瞬間、俺の声を聞き届けたのかヴンッという音共にホログラムのようなものが目の前に現れた。

 

「うおッ!…なにこれ?」

 

 目が悪かったはずの俺が近づかずとも問題なくよく見えていることに違和感を覚えつつも画面をよく見てみる。そこには、

 

 

名前:なし

身長:236.9cm

種族:下級悪魔(レッサーデーモン)

称号:悪魔族

エクストラスキル: 『五感強化』、『思考加速』、『吸血』、『竜鱗』、『竜力操作』、『眷属召喚』、『対寒耐性獲得』

固有スキル:『星幽体(アストラルボディ)』、『精神体(スピリチュアルボディ)

ユニークスキル:『 闘争者(タタカウモノ)』、『小竜公(ドラクル)』、『落下者(オチルモノ)

 

 

「なぁに、これ」

 

 ゲームのステータス画面のようなものを前に思わず誰もいないのに聞いてしまう。なにやら種族からスキルまで様々なことが記載されているけども…。……これがユニークスキル『闘争者』の効果?

 

 え?ステータスを確認するってだけの能力ってことぉ!?

 

 便利だけどもうちょい強いのが欲しかった俺は思わずちいかわみたいな反応をしてしまう。すると、確認が終わったのを確認したのか画面はすぐに閉じられた。うん、最早悪あがきでしかないが現実を見ておくか…。

 

 手をグーパーと握ったり解放したりしてみる。うむ、感触あり。

 

 頰をつねってみる。うむ、痛い。

 

 力一杯、拳を前に突き出してみる。うむ、衝撃で水面が揺れた。

 

 体の中で蠢く何かを開放してみる。うむ、赤黒いエネルギーがぶちまけられた。

 

「ハハハ…マジっすか…」

 

 現実逃避は大の得意だけど、ここは潔く認めなければならない。

 

 どうやら俺は、悪魔に転生してしまったらしい。

 

 

 さて、俺が悪魔に転生してしまったことは、とても遺憾ながら認めよう。え?現実を受け止めんのが早い?いつまでもウジウジしてるよりマシでしょ。

 

 で、認めはしたけど、このあとどうしよう?

 

 マジで右も左も分からないのが今の俺だ。暇とかそうでないとか言ってる暇がない。今日生きることすら不安定なんだ。そもそも腹が減るとかあんのか?悪魔って。

 

「どーしたものかねぇ「オイ」それにしたって「オイ、コラ」いきなりこんなとこに送られても困るんだよなぁ「無視してんじゃねぇぞ!!」……やっぱり無視とか無理でしたか?」

 

 ヘラっとした笑みを浮かべながら声のする方へと顔を向ける。そこにはこれぞ悪魔!と言えるような山羊頭の怪物がいた。

 

「あー、何でしょうか?」

 

「あ゛ぁ!?生まれたての騎士風情が男爵位である俺様に何故膝まずかねぇ!」

 

「男爵位?騎士?」

 

「ああ?そんな事もしらねぇのかぁ?マジで生まれたてかよ」

 

 俺の言葉を聞いた悪魔はわかりやすいくらい侮り始める。それにしても知らないワードが多すぎる。騎士とか男爵位とかそういうのってお偉いさんから貰い受けるもんじゃないのか?間違ってもこいつからノーブレスオブリージュを感じられねぇんだけど。

 

「すみません。何ですかのその騎士だとか男爵位とかって」

 

「東の帝国の人間(カス)共が定めた俺たちの階級みてぇなもんだよ!」

 

「はえー」

 

 カスって人間のことか?多分だけどこんなのがいる辺りここは三界風に言うと地獄とかその辺りかな?東ってことは西も北も南もあるってことだ。人間の世界事情に関しても知ることが多そうで大変だな。

 

 それにしても頭と口が軽いのか純粋に親切なのかは知らないが素直に答えてくれるとは思わなかったわ。まぁ、絶対前者だとは思うけど。多分、元いた世界基準で考えると階級的に2個上くらいか?ま、なんにせよこれ以上は理性的な会話はできそうにないな。

 

「ああ、ご丁寧にどうも。教えていただきありがとうございました。ここからは自分で知っていきますので」

 

「いいって事よ。お代はテメェの命で結構だぜぇ!!」

 

「やっぱそうなるかぁ!」

 

 俺の頭手がけて拳がすごい勢いと共に振り下ろされる。それが当たるよりも前に回避すると何かが炸裂する音が響く。

 

「ヒェ」

 

 目線をやるとそこにはバスケットボールサイズの拳が地面に陥没していた。あまりの恐ろしさに情けない声を上げると嬉しそうに悪魔は笑った。

 

「ハハハハハハハハハ!!いいぞビビれ!!ここは冥界!力のねぇ奴からくたばってくのさ!!そして俺はそう言う(弱い)奴が怯えながら嬲られるのが何よりも好きなのさ!」

 

 戦う

 道具

 逃げる  ←

 

 よし逃げよう。こういう時は三十六計逃げるにしかず。戦わないのかって?無理無理無理無理。こちとら生粋の帰宅部or化学研究部。あんなバイオレンスな連中と戦えるわけがないでしょ。

 

 あ、今の俺の姿はあいつらと似たり寄ったりだったわ。

 

 うん。無駄なこと考えてる暇があったら逃げよう。

 

「ッ!逃がすわきゃねぇだろうが!炎熱魔障壁(フレイムウォール)!!」

 

「うおぉ!今度は何ッ!?」

 

 突き刺した地面になんか力を込めたと思ったらなんか炎の壁が出てきたんだけど!?まさか、魔法!?つーか、やばい。

 

「マジかよ」

 

「これで逃げられねぇなぁ」

 

 完全に逃げ場を奪われた。羽があるから飛べばいいんだろうけど飛んだことないから飛び方を知らない。え、じゃあ一か八かで壁を突き抜けてみる?無理だし、なによりも炎熱に耐性あるとか書いてなかったから下手にダメージ負うだけだよね。ってことは倒す一択ってこと、になるよね。えっと、

 

「手加減とかは…」

 

「嬲られるのが好みかぁ?安心しろよ俺は得意だからな」

 

 してくれなさそうですね。してくれたところで苦痛が長引きそうだわ。やるしかないのか。

 

「んじゃあ、死ねやぁ!!」

 

「あっぶねぇ!」

 

 うおおおお!!顔面スレスレに拳が通過したぁ!!想像の数百倍こわいんですけど!?

 

「死ね死ね死ね死ね死ねェェェェェェ!!!」

 

 おわぁ!?ラッシュラッシュラッシュやんけぇぇ!!よ、避けろ俺ぇ!!右左右右左右右下上ぇ!!

 

「ハッ!思ったよりも避けられんじゃねぇか!それでこそ狩がいがあるってもんだ!」

 

 悪魔だからからか、動体視力が爆上がりしてるからかダッキングみてぇな要領で避けてみたけど案外避けられるじゃん俺!……待てよ。

 

 何で俺、ダッキングなんか出来んだ?

 

 そもそも何で俺はビビっるのにこいつの攻撃を問題なく回避できるんだ?

 

「おらぁ!炎熱爆弾(フレイムボム)!!」

 

 あ、炎の塊だ。ファイアーボールみたいで凄いな。でも、何だこれ。遅くない?俺の動きも遅くなってるけどこれなら簡単に避けられそうだ。あ、炎の塊を陰にして突っ込んできてる。この避けたコースだとぶん殴られるな。でも、この右ストレート、全然怖くない。こんな攻撃は手を添えて少し力を加えてやれば。

 

「死ィッ!?うおぉ!?」

 

「容易く周るッ!」

 

 まるで誘導されるかのように戦ってみると俺の言葉の通りに動く。すると、俺の言葉通り身の丈か俺の倍近くある大きな悪魔がするりと回転して地面に叩きつけられた。カハッと言いながら強制的に息を吐かされる悪魔を前に俺は驚きながらも距離を取る。そして、あるスキルが頭に浮かぶ。

 

「まさか『闘争者』のスキル効果か?」

 

 確かに意識を失う前に俺は強くなりたいとか戦えるようになりたい的なことを願った。まさか『闘争者』の効果ってステータスを見るとかだけじゃなくて戦う時の補助をしてくれるとかそういうのなのか?だとしたら、

 

「戦うことができる」

 

「イキってんじゃねぇぞクソガキがァァ!!!」

 

 体から立ち昇る魔力にびっくりする俺。うお、怖。けど、さっきほどの怖さはない。倒せるかもしれないと思うとここまで落ち着けるのか。……これはチャンスかもしれない。俺は何も知らない。それこそ自分の力すらも。ってことで、

 

「胸借りますよ、大・先・輩」

 

「〜〜〜〜ッッッッッッガアァァァァァァ!!!」

 

 手でちょいちょいと煽ってみると容易く乗ってくれた。単純で助かる。

 

 んで、突っ込んでくるわけだが。うん、遅い。自覚した分だとめちゃくちゃわかりやすい。なんか写輪眼をつけたらこんな視界に何だろうなぁって気分になるわ。これなら避けるんじゃなくて拳が来る場所を避けながら顔が来る場所に俺の拳を置いてやれば。

 

「ガァッッッ!!」

 

 容易く殴りとばせるってわけだ。動体視力の上昇もそうだけど人を一回も殴ったことのない俺がここまで腰の入った一撃を放てる辺り『闘争者』が働いているという俺の予想間違ってないな。

 

 目線を目端にやる。そこにはステータス画面が浮かんでいる。それをみてあるスキルが目に映る。……やってみるか?ちょうど火球を投げようとしてるし、試すにはもってこいか?でも、痛いのもやだし死ぬきっかけになるのも嫌だ。……ええい!!男は度胸!女は愛嬌だ!やるだけやってみよう!ぴーかーぶーのような構えをとってガードすると同時にスキルを発動。

 

 瞬間、俺を起点に爆発が生じた。

 

「ハハハハハハ!!どうだ!当たりゃあお前なんぞ1げ、きで…」

 

「ふぃー、びっくりしたー」

 

「む、きずだと」

 

「うん、ノーダメ」

 

 茫然自失といった様子の悪魔を前にガードを解いた俺は手をヒラヒラとしながら見せつけるようにそう言うと膝をついた。うん、本当に防御力が高い。

 

 先ほど発動させたスキルの名前は『小竜公』。その中に含まっている竜鱗というものだ。字面通り自身の体に竜の鱗を作り上げるもので防御力は今のを喰らって無傷で済むほどだ。こいつがショボかった可能性もあるが俺の頭から胸ほどの大きさの火球を喰らって無傷なのだから頑丈だと思いたい。しかも暑いどころか暖かいとも感じず、衝撃も感じない辺りただ防御力が上がるというわけではないようだ。

 

 あ、炎の壁が解けた。ってことはもう限界かな?目を見るに完全に戦意も喪失してるし。

 

「た、頼むぅ!見逃してくれぇ!!」

 

「……こっちを殺そうとしたくせして流石に都合が良すぎない?」

 

「な、何でもする!この通りだ!」

 

 悪魔はそう言うと頭を地面に擦り付けながら手を上にして降伏のポーズらしきものを取る。世界は違えども土下座のポーズは同じなんだなぁと思いながらも俺は思い悩む。

 

 ……正直言って見逃してもいいと思ってる。相手は戦意も喪失しているし、これは良心なのかは知らないけど人間だった頃の俺が見逃してやれとも囁いてる。…うん、仕方ない。

 

「はぁ、もう悪さはするなよ」

 

「あ、ありがとうございます!ありがとうございます!」

 

 俺の言葉に嬉しそうな顔をすると何度も頭を下げて礼を言う。うん、まぁ、釈然とはしないけど悪いことじゃあないんだしいっか。そう思いながら後ろを向いた瞬間、

 

「死ねやぁ!!」

 

「痛ッッッッッッた!!」

 

 背中を炙られるながら抉られる感覚が俺を襲いかかった。痛い、痛い、熱い、熱い!?何これってこんなことする奴1人しかいない!

 

「テ、メェ!」

 

「ゲハハハハハ!!温ぃんだよ馬鹿がぁ!!」

 

 ですよねー!やっぱりこいつだよなぁ!目線を痛みの発生源へと向けると槍状に変形した炎が俺の背中に突き刺さっている。こんなことも出来たのね!?こんな状況で発動させた辺り本当の奥の手っぽいなぁ!

 

「本っっっっ当に間抜けな奴だぜぇ!少し命乞いしたら容易く背中を向けやがって!!オラ死ね!俺に屈辱を与えやがって!!せいぜい冥土の土産にとどめはしっかり刺すってことを学んでいきなぁ!!」

 

「ああ、今からそうするよ」

 

 俺の言葉に「あぁ!?」と言い切るよりも前に俺はスキルを発動させて『竜力操作』を用いて全方向から赤黒いエネルギーを放出した。すると、炎の槍は跡形もなく悪魔は背後にあった岩に叩きつけられるように吹き飛んだ。叩きつけられた悪魔が俺をみて「ヒィ」とか言って逃げようとするけど逃がすわけねぇだろ。俺はブーストのようにエネルギーを放出すると凄まじい勢いで近づき、大きな悪魔を勢いを利用しながら岩に頭を叩きつけて握りしめる。

 

「いい勉強になったよ」

 

「んーッ!んーんーんーッ!!」

 

「効いてねぇのかって聞いてんなら安心しろよめちゃくちゃ熱いし痛いよ」

 

 熱されながら抉られるのは初めてだからめちゃくちゃ痛かったよ?でも、それ以上に自分の不甲斐無さに対して怒りが湧いている。それにしても安心した。命を奪うこと自体、やったことないから滅茶苦茶怖かった。でもさ、こんなクズ相手だったら

 

「微塵も後悔はしなさそうだ」

 

「んーーーーー!!!!」

 

「知るかぁ!!くたばれ!握撃嚇波(アガラール・ヴァルナー)!!!」

 

 即席で生み出した名前と共に掴んだまま放たれる赤黒いエネルギーが放たれる。放たれたソレは何の抵抗もなく涙を浮かべる悪魔の顔面を後ろにあった岩もろとも吹き飛ばした。頭どころか首すらも吹き飛んだ肉体は力無く崩れ落ち、命が消えたことを俺に教えてくれた。

 

「チッ、胸糞悪いッ」

 

 命を消したことに対して何も覚えられない自分に苛立ちを覚えながら舌打ちをしてその場を後にした。

 

 この日、俺は生まれて初めて人型の生き物を殺した。

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