カラバ共和国付近の暗礁宙域には、ガンダムと交戦した宇宙海賊の母艦であるルサイ級巡洋艦が隠れていた。
ルサイ級巡洋艦は、モビルスーツを12機搭載*1できる、ディオン皇国軍の宇宙巡洋艦だが、現在は第一線を引退しており、練習艦や哨戒艇として使われている。
しかし、中には本艦のように、宇宙海賊が何らかの手段を用いて入手し、母艦として使われている例も少なくない…。
「ボス。
ザルク1機、修理完了しました!!」
と首領に報告する、海賊団の団員。
「3機やられて…
使えるのは1機だけかい…。
まったく…。
連邦軍の新型モビルスーツを手に入れ損ねて…
こっちは、貴重なザルクが2機オシャカかい…★
人間の替えはきいても、モビルスーツの替えはきかない
からねぇ…。」
と言うのは、宇宙海賊の女首領シーラ・ガラーム。
ガンダムと交戦し、大破した3機のザルクは、破損していない部分をかき集めて、どうにか1機はレストアできたが、残りの2機はクズ鉄と化した…。
ザルク自体、もう生産されていないため、修理用のパーツが入手困難なことと、海賊なので、正規の修理用のパーツも入手できない。
だから、戦闘でモビルスーツが破損したら、破損していないパーツをかき集めてレストアしていくしかない…。
その結果、シーラの海賊団が保有するモビルスーツは5機になってしまった…。
そこで3日前、ジャンブーロ連邦軍のモビルスーツを強奪しようと考えたのだが…
じつは、連邦軍の新型モビルスーツの情報は、2週間前に
連邦軍の軍人からのリークされたもの
だったのである。
内通者が新型モビルスーツ…すなわちガンダムを
民間のコンテナに入れて輸送船に載せ、単独行動になるように仕向け、そこを海賊に強奪させる
という手筈だったのだが…。
「
と訊くシーラ。
「一応は…。」
と言う団員。
「何て言ってきたんだい?」
と訊くシーラに
「なんか…
ヘンなこと
言ってきてますね…。」
と言う団員。
「ヘンなこと?」
と訊くシーラに
「なんでも
ガンダムがパイロットと会話をした
とか…。」
と言う団員。
「ガンダム?
それが連邦軍の新型モビルスーツの名前かい?」
と訊くシーラ。
「はい。
なんでも、マシン・シンクロニティで動くモビルスーツだそうです。」
と言う団員。
「マシン・シンクロニティ?
つまり、あれかい?
手じゃなくて頭で動かすモビルスーツ
だっていうのかい?」
と言うシーラ。
「そこに、ロガのアニキが言ってた、プラズマフィールドまで持っているようです。」
と言う団員。
「いろいろとブッとんだモビルスーツだねぇ☆
ますます欲しくなったよ☆」
と喜ぶシーラ。
「そういや、今日は
武器商人のバーボン
が来る日でしたね。」
と言う団員。
「あぁ…。
まったく信用できない野郎
だけどね…。」
と、顔を曇らせるシーラ…。
武器商人のバーボン―。
悪徳武器商人
として有名な男だ…。
◇
カラバ共和国警備隊基地―。
ショーゴが営倉に戻ってきた。
「おい、どうだった?」
と訊くラノ。
「僕がガンダムにインプットしてしまったデータを削除するように言われたんだけどね…。」
と言うショーゴ。
「何だよ?
事情聴取じゃなかったのか?」
と訊くラノ。
「うん…。
でも、僕達の処遇について、あらためて協議するみたい。」
と言うショーゴ。
「マジか!?」
と驚くラノ。
「ほら、ごらんなさい☆
運がこっちに向いてきたわよ☆」
と喜ぶエリー。
「でも、良い方に転ぶとは限らないよ。
何せ、僕は
ガンダムを使い物にならないようにしてしまった
んだから…。」
と言うショーゴ。
「どういうことだ?」
と訊くラノに
「じつはね…」
と、事の顛末を話すショーゴ―。
◆
暗礁宙域に隠れているシーラの母艦に、(悪徳)武器商人バーボンの宇宙船が接舷した―。
ルサイのモビルスーツ格納庫で、シーラと面会するバーボン。
「これはこれは、シーラ様。
本日も我がバーボン商店をお引き立てしていただき、ありがとうございます☆」
と、シーラにお辞儀するバーボン。
七三分けの頭髪にカイゼル髭、綺麗に着こなした茶色のスーツ姿は、一見すれば好印象な
「フンッ★
お世辞はいいんだよ。
それよりも
頼んだブツ
は?」
と訊くシーラ。
「こちらでございます☆」
と、モビルスーツコンテナをシーラに見せるバーボン。
バーボンの部下達が、コンテナを開ける。
コンテナの中から出てきたのは…
「あれは…
ゲルーグ!?」
と驚く、シーラに同行していたロガ。
「はい☆
ディオン皇国軍が大戦末期に開発したモビルスーツ
DMS-014 ゲルーグ
の中期生産型でございます☆
1機だけでも大変なのに、2機も手に入れるのに苦労しましたよ★」
と言うバーボン。
DMS-014 ゲルーグ―。
D.C.0070年から始まった戦争の末期に、ディオン皇国軍が開発した高性能モビルスーツだ。
このモビルスーツが、もう1年早く登場していたらディオン軍が勝利していたと言われる、遅れてきた傑作機だ。
現在では、最終生産型がディオン軍で使われているが、退役は時間の問題である―。
「ところでシーラ様…
ゲルーグ2機…
安くないですよ?」
と言うバーボン。
「わかってるよッ★」
と、バーボンのイヤミったらしい言い方に腹をたてるシーラ…。
◇
翌日―。
ショーゴ達はジャンブーロに護送されることになった。
営倉から出たショーゴ達は、囚人護送車に乗せられた…。
「おい…
こりゃ、どう考えても、ジャンブーロに着いたら即刻死刑だろ!?」
と言うラノ。
「だ…大丈夫よ…★
裁判も無しに、いきなり死刑は無いと思うから…★」
と言うエリーだったが、その顔は恐怖でひきつっていた…。
「護送中に略式裁判という展開もあるかも…★」
と言うショーゴ。
「こうなったのも、全部、ショーゴのせいなんだからねッ★」
と、ついに責任転嫁しやがるエリー…。
「うるさいッ!!
静かにしろッ!!」
と連邦軍の兵士に怒られてしまうエリー…。
ショーゴ達を乗せた囚人護送車は、宇宙港に到着する。
宇宙港には、ジャンブーロ連邦軍のアラミス級宇宙巡洋艦ヴォスニアが停泊していた―。
◆
カラバ共和国付近の暗礁宙域―。
「
ガンダムを載せた船が、1時間後に出発するようです!!」
と、シーラに報告する団員。
「どんな船だい?」
と訊くシーラに
「ヴォスニアという、連邦軍のアラミス級巡洋艦です!!」
と言う団員。
「アゼラン級戦艦だったら大変でしたが、アラミス級巡洋艦だったら、どうにかなりそうですね☆」
と言うロガ。
「ただし、アラミスに積まれているゼム・ネクストは手強いよ!!」
と言うシーラ。
JMS-79-N
ゼム・ネクスト
大戦時のジャンブーロ連邦軍の主力モビルスーツだったゼムの近代化改装機で、現在の連邦軍の主力モビルスーツだ―。
シーラ海賊団のモビルスーツは、もはやポンコツ機といってもいい旧型モビルスーツのザルクが5機に
信用できない武器商人から買った、どうにか現在でも通用する旧型モビルスーツのゲルーグが2機…。
しかし、ヴォスニアには10機*2のゼム・ネクストが搭載されている。
モビルスーツの性能でも、数でも、シーラ海賊団の方が劣っている…。
それでも…
シーラ海賊団はガンダムを奪取するべく…
暗礁宙域から母艦のルサイ級巡洋艦を発進させた―。
「会敵予定時間は3時間後!!」
と報告する団員。
(戦力で劣る私らが、この作戦を成功させるためには
向こうに潜入している
が、どうにかしてくれると助かるんだけどねぇ…。)
と、シーラは顔をしかめた…。