闇に咲く火種   作:五時葵

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9話 USJ事件②

緑谷達は目を離すことができなかった。

僕らの“力”が敵に通用したんだと…

敵。プロの世界。自分たちはまだ何も見えちゃいなかったことに気づいた。

 

「死柄木弔」

「黒霧、13号はやったのか」

「行動不能にはできましたものの、散らし損ねた生徒がおりまして…一名逃げられました。

 

「は?」

「黒霧、おまえ、お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしてたよ…流石に何十人ものプロ相手じゃ敵わない、ゲームオーバーだ。帰ろっか」

 

「帰る?」「俺ら助かったんだ」

 

「けどもその前に平和の象徴の矜持を少しでも…へし折って帰ろう!」

 

狂気に満ちた目が緑谷達を捉える。死柄木弔の手が麗日の顔に置かれた…

 

 

「………本当にかっこいいぜ、イレイザーヘッド」

 

イレイザーヘッドが力を振り絞って個性を発動させる。

 

ヤバイヤバイヤバイヤバイ

 

緑谷が個性を発動し死柄木弔に向けて拳を向ける

 

SMASH

 

偶然力の調整ができ緑谷は腕を折ることなく攻撃に成功する…

 

成功したスマッシュ…しかしその攻撃は脳無によって防がれる。

 

「いい動きをするな…スマッシュってオールマイトのフォロワーかい?」

「……確かお前は緑谷出久だっけ?個性は確か超パワーだったか?残念だな脳無には効かねぇよ!」

 

脳無が緑谷の腕を掴む……

 

バアン!

 

扉が開かれる音が響きわたる。

 

「もう大丈夫、私が来た」

 

オールマイトは敵達をもろともせず一瞬で弔達の元へ飛んでいく。

そしてイレイザーヘッドを保護し、目で追えない速度で緑谷、麗日、峰田、瀬呂の四人を救出する。

 

 

「ああああ……だめだ、ごめんなさい…お父さん…」

 

弔は震える声で落ちた手を拾う

 

「助けるついでに殴られた…国家公認の暴力だ。流石に速いや目で追えない、けど思ったほどじゃない、やっぱり弱ってるって話は本当だったのかな…」

 

 

オールマイトが脳無に攻撃をする

 

CAROLINA SMASH

 

脳無はまるで効かないかのようにオールマイトを掴もうとする

 

「マジで全然…効いてないな!!」

 

「効かないのは“ショック吸収”があるからだよ」

 

オールマイトが轟音を立てながらバックドロップを決める。

 

「っ〜!」

 

 

黒霧が脳無をワープさせ、脳無はオールマイトの腹を掴みワープゲートへ引き摺り込もうとする。

身体を半端に留まった状態でゲートを閉じればオールマイトは引きちぎられる。

 

それを見ていた緑谷はオールマイトの元へ走り出す

 

「浅はか」

 

黒霧が緑谷の正面にワープゲートを出現させる。

その時

 

「どけっ、邪魔だ!!デク!!」

 

爆豪が黒霧を爆破させ地面に叩きつける。

 

パキパキ…脳無の半身が凍る

 

「テメェらがオールマイト殺しを実行する役だと聞いた」

 

「だあー!!」

 

轟は脳無を凍らしオールマイトを救け、切島は弔に殴りかかる

 

「くっそ!!いいとこねー!」「スカしてんじゃねえぞ、モヤモブが!」「平和の象徴はてめェら如きにはやられねぇよ」

 

「爆豪勝己…爆破、轟焦凍…半冷半熱、そっちが多分硬化の子かな?強個性の生徒共が集まって来た…それに出入り口も抑えられた…こりゃピンチだな」

 

「脳無、爆豪勝己をやっつけろ、出入口の奪還だ」

 

脳無は砕けた体を再生させ爆豪に殴りかかる…がオールマイトが庇う

 

「加減を知らないのか」

 

「仲間を救けるためだ仕方ないだろ、緑谷出久だっけな?あいつも仲間を救けるために俺に殴りかかって来たぜ。他が為になる暴力は美談になるんだろ。俺はなオールマイト怒ってるんだ。同じ暴力がカテゴライズされて、何が平和の象徴だ。所詮抑圧の為の暴力装置だお前は!暴力は暴力しか生まないと世に知らしめるんだ。」

 

「めちゃくちゃだな…自分が楽しみたいだけだろ嘘つきめ」

 

オールマイトは脳無と正面からの殴り合いを始める。

 

「ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの!敵よこんな言葉は知っているか!!?   Puls Ultra!!」

 

オールマイトに300発以上も打たれ脳無は飛ばされていくのだった…

 

──────────

⦅倒壊ゾーン⦆

 

少し遡って倒壊ゾーン、橘灯里が一人立ち尽くしていた。

 

 

全員倒したけど、無理やり起こして圧をかければすぐ計画を話した。

 

上位脳無に義兄と黒霧でオールマイトを仕留める。

まぁ予想通りのものだった

 

正直セントラル広場に戻ることは容易だが、戻ってしまえばいざという時に動くことができない。

現在オールマイトがいない状況のため、脳無を倒せる者はいないはず。

少なくとも戦力的には大丈夫だろう………

 

いや、オールマイトが来たな、ここまで声が聞こえてくる。

なら動かない方が良いだろう。脳無は強いが、実際オールマイトを倒せるかはわからない。

どうしたものか…

 

 

 

 

今後どう動くべきか考えていると、突然、大きな音が響き渡った

 

ドオオオオォォォン

 

飛ばされていく脳無

その動きの勢いと方向からして、オールマイトにやられたのだろう。

ショック吸収と超再生があるのに飛ばされた…吸収の限度を超えられたか。

やはり弱っているとはいえ、圧倒的だ。

 

さらに周囲から、ヒーローが集結している気配を感じる。雄英教師陣だろう

――黒霧が座標を知らない以上、脳無の回収は困難だろう。

 

あの個体は上位種だから残しておきたいんだよね…

あれが一匹いるだけで戦力になる。

 

それにドクターも悲しむ…

 

 

悩んだ末決めた…

 

仕方ない、行くか

 

────────

 

セントラル広場では教師たちがヴィランを撃退し、生徒たちの安否確認を進めていた。

 

「なんてこった…」

「これだけ派手に侵入されて逃げられちゃうなんて…」

「完全に虚をつかれたね…それより今は生徒らへの安否をーー」

 

 

それは唐突に姿を現した

全身から白い靄がかかり、よく見えない。仮面をしていることはわかる。

 

「またヴィランか!?」

「黒い靄の次は白い靄かよ、ぶっ殺す!」

 

「爆豪落ち着け、今は先生達がいるんのだから抑えろ。」

 

教師たちも警戒を強める中、その靄に包まれたヴィランが静かに口を開いた。

 

「……彼の忘れ物を回収するだけ…邪魔しないならこれ以上、そちらに危害を加えるつもりはない。」

 

「それを信用するとでも?」

 

「人質…」

 

「何!?人質、今すぐ解放しろ、うちの生徒は無事なんだろうな。」

 

「暴れられたら厄介なので、多少は…ね」

 

靄から赤髪の少女が血を流して意識を失っているのを確認する。

 

「「「橘さん」」」

 

「1人でかなり暴れてたからね、ちょっと動けないようにしてもらったよ」

 

教師も生徒も少しパニックに状態になる。そんな中冷静に口を開く根津校長…

 

「君の要望は何だい?忘れ物と言っていたね」

 

「脳無を回収したい、それさえできれば彼女を解放しよう。」

 

「脳無?それはなんだい?」

 

 

「あなた方はあの場にいなかったね…オールマイトが飛ばした、黒い化け物」

 

「……わかった、君の要望を聞き入れよう…」

 

 

「校長!?」

「仕方ないさ、生徒の命が第一だからね」

 

そういい、仮面のヴィランは背を向け、脳無が飛んでいった方向に歩いていく。

明らかな油断…教師側から見れば絶好のチャンスだ

教師たちは顔を見合わせた。スナイプが弾丸を撃ち、ミッドナイトがヴィランに眠り香を放つ、他の教師も橘灯里を救助すべく構えている。

 

銃弾は灯里を掴んでいる手と足に向け放たれ、誰もが当たった…と思った。

 

「!?」

 

銃弾の行く手を阻んだのは、仮面のヴィランの体から生じた白い靄だった。靄がまるで意思を持つかのように動き、銃弾を吸い込むようにして消滅させたのだ。

 

「邪魔しないんじゃ、なかったっけ?」

 

仮面のヴィランは灯里を掴む力を強め、少しだけ持ち上げてみせる。灯里の体がぐったりと揺れた。

 

「この子本当に殺すよ。」

 

冷徹な声が場の空気を凍りつかせる。

 

「次はないからね」

 

しばらくして、仮面のヴィランは脳無を確認できたのか、再び戻ってきた。

そして”橘灯里”を地面に置き解放した。

 

解放されたのを確認し、教師が攻撃をする。セメントスは逃げれないように壁を、スナイプは再度銃弾の嵐を、他教師も攻撃を仕掛けた。

しかし…当たることはなかった。

銃弾はすり抜け、気付けばセメントスが作った壁の上に座っていた。

 

「死ねや、仮面野郎」

 

BOOM!!BOOM!

 

爆豪がヴィランを攻撃した。

全力の爆発を繰り出す。

凄まじい轟音とともに爆炎が広がり、確実に仮面のヴィランを捉えた――はずだった。

 

爆豪が振り返ると、背後に悠然と立つ仮面のヴィランがいた。

 

「クソが!!」

 

爆豪が再び追撃を繰り出そうとした瞬間、仮面のヴィランは霧とともに跡形もなく姿を消した。

 

主犯にも逃げられた。その後現れたヴィランが生徒に怪我を負わせてしまった。襲撃は雄英高校の敗北で終わるのだった。

 

──────────

 

その後、私は病院に運ばれた。怪我的には大したことないんだけどね。色々検査されたよ。

検査の結果、血を流してはいたが、“幸いなことに気絶させられただけ“であり、重症ではなかった。

 

敵によって生徒は分断、死者は出なかったが怪我人が出た、一人の少女は人質に取られた。

運が悪ければ死んでいたかもしれない、敵の要求を飲まず少女をより危険に晒した。

 

“雄英の敗北”

 

主犯―義兄に逃げられ、その後現れた敵には教師が集まっても捕えることはできず、挙げ句の果てには圧倒的な力を見せた脳無まで回収された。

 

アドリブにしては上手くやったと思う。

無事黒霧に脳無の回収させたしね。

 

あの時私は脳無を確認できたので黒霧に座標を報告して回収させた。

黒霧は一応すみませんと謝っていたが許さん…

 

脳無は倒されたが、オールマイトが弱っているのは本当なのだろう。

証拠に私が行ってもオールマイトはいなかった。

つまり戦うことができなかったということだ。いつから力を使っていたかは知らないが、戦闘時間などを考えて連続して力を使えない、活動限界は1時間もないだろう。だから初めUSJにいなかったということだ。

 

コンコン

 

誰か来たようだ。

入ってきたのは警察、これでも私はあの敵と戦ったことになっている。敵の情報についてということか…

 

「いきなりすまないね、私は塚内直正、今回の事件ー敵連合の担当をしている者だ。早速で悪いんだが、あの仮面の敵について教えてもらえないか?」

 

「あの、皆は大丈夫、だったんですか?A組の皆は?相澤先生や13号は大丈夫なんですか?」

 

やっぱり、まずは生徒と先生たちの心配を…ね

 

「生徒は緑谷君以外で軽傷は数名、相澤先生は両腕粉砕骨折、顔面骨折…幸い脳系の負傷はなし、ただ眼に何かしらの後遺症が残る可能性がある。13号の方は背中から上腕にかけて裂傷が酷いが命に別状はない。」

 

「相澤先生に13号、緑谷君……でも皆生きててよかった。あ、すみません敵についてですよね。」

 

「いやいや、君も人質として取られていたからね、自分のペースで構わない」

 

「いえ、早く言って損はないでしょう。仮面の敵について話しますね。私はUSJの倒壊ゾーンに飛ばされました。たくさんいた敵は難なく倒すことができていました。仮面の敵は気づいたらいた…って感じです。私は個性で炎の蝶を当てましたが、そのヴィランは蝶をすり抜けていきました。一切油断はせずに警戒していたんですが気づいたら後ろにいて、意識を失いました。私からはそれくらいしか……」

 

「十分だ、協力感謝する。」

 

その後警察は一礼して部屋を出て行った。

嘘は言っていない、あの場に敵はいた。蝶も放った。ちゃんと幻影に攻撃したからね。上手い一人芝居だったと我ながら思うよ。

 

 

 

──────────

⦅深夜⦆

 

ここは敵連合が拠点としているバー。

雄英高校への襲撃を終え、死柄木弔は椅子に深く腰掛けていた。

その顔には怒りの色が濃く浮かび、指先で顔を掻き毟る仕草を繰り返している。

 

「クソが……」

 

苛立ちを抑えきれず、カウンターを乱暴に叩く。

彼の視線は黒霧に向けられた。

 

「黒霧、お前が生徒を逃がさなければ上手くいってたんだぞ!」

 

「すみません、死柄木弔……ですが、それより、お客様がいらっしゃいます」

 

「はぁ? 客だと? 誰だ」

 

「今、お連れします」

 

黒霧が静かに頭を下げると、ワープゲートを出現させる。

そしてその中から一人の人物が現れた。

 

その姿は黒いロングコートを身に纏い、顔は仮面で覆われていた。全身から漂う無機質な威圧感が空気を凍らせる。

 

「誰だ、お前?」

 

死柄木弔が立ち上がり、鋭い視線で相手を睨む。

 

「素顔を見せろ、ガキはお呼びじゃない」

 

仮面の人物は静かに口を開いた。

 

「はじめまして、死柄木弔……私の義兄」

 

低い落ち着いた声が場の空気を支配する。その言葉に、死柄木は眉をひそめた。

 

「義兄? 俺がか?」

 

疑問を口にする死柄木を一瞥し、仮面の人物は仮面を外す。

現れたのは、赤色の髪と冷徹な表情を持つ少女だった。

 

「私は死柄木冥。そう、あなたの義妹だよ」

 

「お前……雄英の……」

 

弔の目が驚きに見開かれる。

 

彼の表情が変わる間もなく、突然画面が点灯し、場の空気を切り裂くような声が響いた。

 

ジジ…ジ…

 

『やあ、冥。久しぶりだね』

 

画面が光り、オールフォーワンの声が響く。

 

「おい、先生! どういうことだ?」

 

弔が苛立った声で問いただす。

 

『すまないね、弔。君にはまだ話していなかったね』

『彼女は冥。僕の娘だ。そして君の妹に当たる存在だよ』

 

弔は目を見開き、冥に再び視線を向ける。

 

『彼女には雄英のスパイとして動いてもらっている。君に雄英生の個性情報を渡しているだろう? あれは彼女が用意してくれたものだ』

 

その言葉に、弔はわずかに眉を寄せた。

 

『ワシと先生の共作脳無も回収してくれたしな。流石じゃぞ、冥』

 

画面越しに聞こえるドクターの声からも満足げに笑みを浮かべる様子がわかる。

 

 

「事情は分かった。それで冥、どういうことだ? オールマイトは弱っているんじゃなかったのか?」

 

弔が身を乗り出すように問い詰める。

 

冥は冷静な口調で答えた。

 

「弱っているのは間違いないよ。証拠に君たちが帰った後、私は脳無回収のために動いた。けれどその時にはオールマイトはいなかったからね」

 

彼女は一息ついて話を続ける。

 

「それを踏まえて報告していくよ。まず、オールマイトについて。かなり弱体化していると思われる。戦闘時間などを考慮すると、活動限界は1時間ないくらいだと思えるね」

 

弔は腕を組みながら聞き入る。

 

「襲撃後については、イレイザーヘッドがかなりの重症。命に別状はないが、眼に後遺症が残る可能性がある。」

「13号については炸傷が酷いものの、問題はない模様」

 

淡々と報告を進める冥。弔はその内容に満足げな表情を浮かべていた。

 

『流石冥。素晴らしいね』

 

画面越しのオール・フォー・ワンが嬉しげに声をかけると、冥はわずかに口元を緩める。

 

「お父様、お褒めの言葉ありがとうございます」

 

だが、次の瞬間、冥の声に冷たさが戻る。

 

「それとお兄様、私は基本戦力として見ないで欲しい」

 

「は? どういうことだよ」

 

「私は基本、雄英生として動く。そう何度も動いては目立つし、大変なんでね」

「確実に動ける時と、いざという時にはこちらの判断で動くよ。だから、基本私は戦力と見ないで欲しい」

 

その言葉に、弔は不満げな表情を浮かべたが、しぶしぶ頷いた。

 

「わかった……情報さえ貰えればいうことはない」

 

「それと、何かする時は連絡を頂戴。アドリブだとフォローも大変だから」

 

冥の冷静な言葉に、弔は苛立ちながらも答えた。

 

「わかった」




〈白い靄〉
幻惑により、靄がかかっているように見えている。
銃弾を止めた靄は、【炎華+幻惑】によるものです。
死柄木冥としての基本戦闘時は今回同様、白い靄がかかっています。
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