障害物競走の結果は…
緑谷君が1位となり、私は続いて2位、焦凍3位、爆豪4位…となった。
予選通過者上位42名が決まった。
続いて発表された第二種目は――騎馬戦。
ルールは2〜4人のチームを組んで騎馬を作る。障害物競走の結果で各自ポイントが振り当てられていて、そのポイントを奪い合うといったものだった。
ミッドナイトの説明を聞きながら周囲を見回す。2位の私もそれなりに狙われる可能性が高いけれど、それ以上に目立つのは緑谷君の1000万ポイント。周囲の視線が彼のチームに集中しているのがわかる。
続々とペアができる中一人の人物に声をかけられる。
「なあ、お前」
「ん?君は普通科の…」
振り向いて返事をした瞬間、体にわずかな電気が流れるような違和感が走る。この感覚は覚えがある――精神干渉系の個性に触れた時の感覚だ。
お父様に精神干渉の個性をかけてもらっていたおかげで、私はある程度の耐性がある。そのおかげで簡単に支配されることはない。
「君…精神干渉系の個性か」
「は?なんでお前かからないんだ…」
目の前の普通科の人は驚いたように目を見開いている。その反応を見て、私は彼の個性の概要をほぼ理解した。
「かなり精神面は鍛えてるからね、精神干渉とかされると感覚的にわかるんだよ。君の個性は…尾白君とB組の子を見るに“洗脳”といったところかな?自己紹介をするのは初めてだね、私は橘灯里。個性は炎華、炎を蝶や花の形にして出せるものと思っておいて」
「はぁ…1-C心操人使、個性は洗脳だ。声に応答した奴を簡単な命令程度なら操れる。」
「なるほど…良い個性だね」
「良い個性?“敵向けの個性”の間違いだろ…」
心操君の自嘲気味な声が耳に届く。
「いや、良い個性だ。応答一つで相手を無力化できる。これがどう役立つかは君が決めるといいよ。それと騎手は心操君に任せていいかな?私がやると爆豪やらに絡まれそうでね…」
心操君はあまり納得していなさそうだったが、私の意見には承諾した。
「わかった。他2人の個性を解けとは言わないよな」
「もちろん」
私が先頭の騎馬とし、尾白君・B組の子を左右に置かせた。
「私たちは1000万Pは狙わず、第二種目突破だけを考えて動こう。確実に1000万Pは狙われるからね、隙があるところからポイントを貰い防御に徹しよう。」
「了解」
騎馬戦開始の合図が響くと同時に、緑谷君のチームが他の騎馬から集中攻撃を受ける。その混乱を横目に私たちは慎重に動き、最小限のリスクで得点を稼いでいった。
1つハチマキを奪う。1000万ポイントに夢中な騎馬は視界が狭く、私たちの動きには気づかない。
「ナイス!この調子でもう1つは取りたいね…一旦離れよう、焦凍の騎馬が動く…」
私の指示で心操君が騎馬を操作し、攻撃範囲から外れる位置へと移動する。案の定、上鳴君の電撃と焦凍君の凍結が襲いかかり、周囲の騎馬が次々と動きを止める。
「動けない騎馬からポイント貰って、防御に徹しようか。」
凍結で動けなくなった騎馬のハチマキを狙う。心操君が声をかけ、相手が返事をした瞬間、相手は無抵抗になり、そのまま簡単にポイントを奪うことができた。
「やっぱその個性いいじゃん」
その後は時間が来るまで守りに徹し、無駄な争いを避けた。
緑谷君チーム対焦凍チーム、爆豪君チーム対B組の物間君チーム。
焦凍達が1000万Pを奪い取りそして守りきり、爆豪君が物間君からハチマキを奪い、そこで…
『TIME UP!』
終了の合図とともに、結果発表がされる。1位轟チーム、2位爆豪チーム、3位が私達のチーム、4位が緑谷チーム。
終了と共に心操君が尾白君とB組の子の洗脳を解く。
「ご苦労様」
2人は混乱していたが…まぁいいだろう。
そして昼休憩の指示が出され、生徒は一旦解散の流れになった。
──────────
昼休憩中、通路で爆豪の姿を見つける。何かを気にしているような様子だ。
「爆豪君、ここで何し――」
声をかけた瞬間、爆豪君が素早く振り返り、私の口を咄嗟に塞いだ。突然の行動に少し驚く。これは……前に私がしたことへのお返しかもしれない。
けれど、それよりも耳に届く声に意識が向く。この声は……緑谷君と焦凍?
「個性婚…知ってるよな。親父はオールマイト以上のヒーローを作るため、俺の母親と結婚した。実績と金はある男だ…親父は母の親族を丸め込み、母の“個性”を手に入れた。俺の他に兄弟はいる…だが、親父が望んだ個性が出たのは俺だけだった。」
「うん…」
「橘灯里…あいつは俺の双子の妹だ。」
「え?橘さん、けど苗字が…」
焦凍の低い声が静かに通路に響く。爆豪君は口を押さえたまま、私をじっと見つめているが、その目は戸惑いを隠せていないようだ。驚いた声で返す緑谷君に、爆豪君も一瞬息を呑むのがわかる。
「あいつは最近まで行方不明だった。雄英で数年ぶりに出会った…あいつ、当時個性が発現せず、家で孤立していた。俺も…あいつを否定しちまった。辛そうな顔してたのに、目を背けて、無視して…。兄として最低だったと思っている。」
「雄英に入って会った時も、俺はあいつにきつく当たった。久しぶりに会えた嬉しさなんて全くなくて…ただ、昔の自分を思い出して苛立った。自分が最低だってことは、あの瞬間でも気づいてたのに…。」
……どうしてあいつは緑谷君に家のことを話しているんだろう。それにしても……勝手に話されるのは困る。爆豪君は口を塞いだまま、話を聞き続けている。その視線がちらりと私に向けられるが、特に何も言わない。ただ耳を立て、焦凍の言葉を拾っている。
「……轟くんは、今の橘さんをどう思ってるの?」
「正直…わからねえ。久しぶりに会ったあいつが、何を思ってるのか、俺のことをどう考えてるのか…。昔の俺がしたことを、許されるわけないとも思う…。でも、だからといって何をどうすればいいのか、わからねえ。」
焦凍の声が途切れる。彼の迷いと葛藤が伝わってくるけれど、私にとってはどこか他人事のように感じられた。
「この火傷…母が俺に『お前の左側が憎い』と煮え湯を浴びせたものだ。記憶の母はいつも泣いている…俺は今クソ親父の道具にすぎねぇ。けど、これ以上道具になるつもりはない。ざっと話したが俺がお前につっかかるのは見返す為だ。クソ親父の“個性”なんざなくたって…いや、使わず“一番になる”ことで奴を完全否定する」
悪いとは…思ってるんだね。でも氷版エンデヴァーって感じ。
話が終わり緑谷君と焦凍が解散したのを見て、爆豪君が押さえていた手を離す。
「爆豪君…前のお返し?女の子にはもう少し優しくした方がいいよ」
私が冗談混じりに言うと、爆豪君は少し気まずそうな顔で返してくる。
「お前…さっきの話…」
「なんの話?」
「お昼食べに行こう、お昼時間なくなるよ」
私は笑顔を浮かべて答える。爆豪君の問いかけをさらりとかわしながら、心の中で静かに呟く。
過去には“囚われる”つもりはない。私は私、死柄木冥……。
──────────
そして昼休憩終了
レクリエーション種目そして最終種目だ。
A組の女子が全員チア服を着ている…
「おい!橘、なんでお前着てないんだよ」
「んーその話が回ってきてなかったから?」
どうやらこの現状は上鳴と峰田のせいらしい。正直、これを信じてしまった八百万さんたちにも少し問題がある気がするけど、まぁ深くは考えないことにする。
さて、最終種目はトーナメント、一対一の真剣勝負だ。
ルールは単純明快。相手を場外に出すか戦闘不能に追い込むか。ただし命に関わる行為は厳禁。それ以外は道徳倫理を問わない自由な試合ということだ。
「あの…!すみません、俺辞退します」
唐突に手を挙げ、辞退宣言をしたのは先ほどまで同チームだった尾白君だ。
静まり返る会場。尾白君はうつむいたまま理由を述べる。どうやら心操君の個性で無意識のままここまで勝ち進んできたことが、プライドとして許せないらしい。
同じ理由でB組の子も辞退を申し出た。
ミッドナイトの好みらしいので棄権を認められた。
繰り上がりでB組の子が二人が加わりくじが行われた。
私の一回戦目の相手は上鳴君か…
そしてその後レクリエーションが終わり、第1試合が始まる。
初戦は緑谷 対 心操
『緑谷 開始早々完全停止!?』
プレゼントマイクの実況が響く。緑谷君が心操君の個性にかかったのは間違いない。
尾白君の話から察するに、緑谷君には洗脳系の個性を教えていたのだろう、けど煽られて反応してしまったようだ。
緑谷君は場外へ歩き始める。このままでは心操君の勝利――かと思いきや、緑谷君は突然立ち止まる。
その指がかすかに動き始めた。意識が戻っている?いや、無意識のうちに体が反応したのか?
緑谷君は個性を暴発させ自傷することで洗脳解除を解いた。
その後殴り合いの末、緑谷君の投げ技が決まり緑谷君の勝利となった。
私は第三試合出場だね
第二回戦は焦凍対瀬呂君
彼には悪いけど、これは結果が目に見えている。
予想通りすぐに終わった。焦凍の大氷結により瀬呂君は氷漬け、ドンマイコールが聞こえてくる。
さてと次は私か…
『冷静沈着、その炎は的確に敵を貫く!橘灯里!!対 スパーキングボーイ!上鳴電気!!』
「初戦から橘ってマジかよ…」
「よろしくね、上鳴君」
軽く挨拶を交わし、試合開始の合図が出た。
「体育祭終わったら飯とかどうよ?俺でよければ慰めるよ。この勝負一瞬d――」
ドン!!
何か言いかけた上鳴君の腹に、私の拳がめり込む。
一瞬、彼の目が大きく見開かれる。気が抜けたように膝を折ったところをそのまま足を掴み、場外へ向かって軽々と放り投げた。
『瞬殺!!おぃおぃ最後まで話させてやれよ…』
あっさりと試合が終わってしまった。
「上鳴くん場外、二回戦進出橘さんーー!」
さて――次に備えよう。
ステージから通路に移動する。
その時、ふと視界の端に赤い炎が揺れるのが見えた。エンデヴァーだ。
彼は少し離れた通路の陰から、私の試合を見ていたようだ。
「……何の用ですか?」
私が近づくと、エンデヴァーは一瞬だけ目を細めて私を見た。
「久しいな」
低く響く声に、私は足を止める。
「お前がどこで、どう過ごしていたかわからんが」
無表情を保ちながら、エンデヴァーの視線を正面から受け止める。その目には探るような光が宿っている。
私は小さく息を吐き、冷たい声で返した。
「わざわざそれを言うためだけにここにきたんですか?プロヒーロー様はお暇なんですね」
「焦凍から話は聞いている。個性が発現していたそうだな」
「おかげさまでね、死にかけましたが」
一瞬、エンデヴァーの目が鋭く光る。それでも、表情は動かない。
「お前の個性は俺の炎を継いで強力かもしれんが、焦凍には及ばん。このまま進めば焦凍と当たるが、焦凍の邪魔はするな。」
「私は轟じゃありません。」
冷たく硬い声が通路に響く。
「あなたの家庭に巻き込まないでください。それに最高傑作なら失敗作なんかに負けないので問題ないですよね。」
その一言が、エンデヴァーの中にどう響いたかはわからない。
しかし彼は何も言わず、ただじっと私を見つめていた。
私は振り返り、通路の奥へと向かう。視界の端に映る赤い炎が、次第に小さくなっていくのを感じながら歩き続けた。
「……最高傑作ね。」
小さく呟いたその言葉は、誰にも聞かれることなく、闇の中に消えていった。
席に戻り、試合の観戦を続ける。
そして次からは二回戦となる。
次は緑谷 対 焦凍
焦凍が凍結で攻撃するのに対し、緑谷君は指を壊しながら氷を破壊し、耐久戦となっている。
緑谷君の言葉に動かされたのか炎を使った。あれだけ否定していたのに…
そしてエンデヴァーは焦凍コールがうるさい。
勝負の結果としては焦凍の勝ち。冷やされた空気が炎で瞬間的に熱され膨張、そして爆発により緑谷君は場外へ飛ばされた。
次は私か…相手は飯田君
ステージが大幅に崩壊したため、補修が行われてから、入場の形となった。
『冷静な判断と圧倒的な実力を持つ!橘灯里 対 スピードで戦いを制すことはできるか!飯田天哉 !』
「勝たせてもらうよ、橘くん…」
「良い戦いを、飯田君」
『START!』
レシプロバースト
飯田は初めから全力を出した。
エンジンが止まるまで約10秒、その間に決め切るつもりだ。
凄まじい勢いで灯里に向かって突進してくる。
灯里に近づくまで2秒
初っ端から飯田君が速度を上げてきた。騎馬戦で最後使ってたやつか。
2秒――他と比べて速いがこれで全力なら余裕だな。
飯田天哉のスピードは圧倒的だ。観客席からも驚きの声が上がる。プロヒーローたちも目を見張り、実況のマイクからは興奮が伝わってくる。
しかし、極限にまで高められた動体視力・身体能力・瞬発力。灯里には問題なかった。
その速さの前に、灯里の表情は一切動じない。飯田君の突進が目の前に迫る――その瞬間、灯里の体がひらりと揺れた。
避けられた飯田は攻撃を止めない。背後に回り込み、加速された蹴りを放つが、灯里はまるで蹴りがくるとわかっているかのように、ギリギリ当たらないラインに移動する。
「くっ」
『飯田の蹴りを避けるゥ!おいおい、橘なんで避けれるんだよ!』
右、左、右、下…飯田君の動きは速いが単純だ。
速いからこそ、攻撃が読めれば避けるのは簡単だ。近づくのに2秒、連続攻撃に6秒。騎馬戦を考えると、長時間使えず、使用後はオーバーヒートする。
「うおおぉぉぉぉ!!!」
繰り返しの突進を放ちながら飯田君が叫ぶ。その声には焦りが滲んでいる。
これがラストかな?
ドンッ!
彼の蹴りが私の腹部に命中する。
だが…灯里は微動だにしなかった。
「!?……なっ!」
飯田の蹴りは灯里の手でがっちりと掴まれている。
驚愕の表情を浮かべる飯田君。しかし、次の瞬間、彼の視界は空を舞っていた。灯里は無駄のない動きで彼の足を掴んだまま宙に投げる。
飯田君はそのまま場外へと飛ばされ、観客席から大きなどよめきが上がる
「飯田くん場外――橘灯里の勝ち!!」
灯里は場外に落ちた飯田君のもとへ歩み寄る。
「飯田君、ごめん。投げたけど、大丈夫?」
「……くっ、負けてしまった。流石だな、橘君……」
飯田君は悔しさを噛みしめながらも、灯里の顔を見上げた。
灯里は静かに頷き、次の試合へ向けてスタジアムを後にした。
これで準決勝進出か……次は焦凍だね。
冥はフィジカル強強、戦闘技術に加え、適応能力で耐性も多種多様!
簡単なものあげるだけでも…物理耐性、 衝撃耐性、斬撃耐性、痛覚耐性など完全に無効でなくても、耐性は時間と経験で強くなっていきます!