闇に咲く火種   作:五時葵

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12話 体育祭③

 

二回戦最後の試合

爆豪と切島の試合は激戦だった。切島の硬化による防御が爆豪の攻撃を何度も受け止めたものの、常に硬化状態を維持することによる体力の消耗が大きかった。

 

最後には爆豪の絨毯爆撃に耐え切れず、切島はダウンを喫した。

 

これでベスト4が出揃う

準決勝進出者たちが揃い、スタジアムはさらに熱気に包まれた。

 

次の試合、私の相手は焦凍だ。

 

控え室に向かう途中、廊下の先にその焦凍が立っているのが見えた。

 

「焦凍、炎使ったんだね。全然使おうとしなかったのに。」

 

私が声をかけると、焦凍は驚いたように少し目を見開く。

 

「!? ああ。」

 

ぎこちなく頷く焦凍の姿に、少しだけ口元を緩める。

 

「あの時だけは……あいつを忘れていた。」

 

低く呟くような声。彼の目はどこか遠くを見ていた。

 

「そっか。」

 

私は短く答えると、そのまま振り返らずに言葉を続けた。

 

「前回みたいな結果にならないことを期待してるね。」

 

焦凍は何か言いたげにこちらを見ているようだったが、私はそのまま歩き出した。

 

焦凍を後にして控え室に入り待機する。

 

────────────

 

数分後――

 

場内アナウンスが響き渡る。スタジアムの熱気は最高潮に達している。

 

『氷と炎を操る最強!轟焦凍!! 対 個性も強ければフィジカルも最強かよ! 橘灯里!!』

 

歓声の中、静かに舞台へと足を踏み入れる。

 

焦凍が冷静な視線をこちらに向けるのを感じる。私はそれを受け流すように小さく息を吐き、スタジアムの中心に立った。

 

「さて――始めようか。」

 

『START!

 

開始と同時

焦凍は迷わず氷を生み出し、大氷結を放つ。

 

ズズズ――!

 

瞬く間に私は巨大な氷の塊の中に閉じ込められる。

 

観客席がざわつく中、焦凍は氷の塊を冷たく見据える。

 

「終わりか…?」

 

先手必勝の大氷結。以前と違って炎を出す隙を与えなかったため、警戒しながらも焦凍は氷を見る。

 

そして氷の内部から亀裂が走り始める音が響く。

 

バキ……バキバキ――!

 

氷に穴が開き、ゆっくりと私が姿を現す。

 

「前にも言ったよね。この程度じゃ……。」

 

焦凍の目がわずかに細まる。

 

私は右手を上げ、小さな蝶を生み出す。それをゆっくりと焦凍へ向けて飛ばした。

 

「獄蝶」

 

蝶が優雅に空を舞いながら焦凍に迫る。焦凍はすぐさま氷の壁を作り、蝶を防いだ。

 

ドォン!!

 

氷と蝶がぶつかり合い、破裂する音が響く。焦凍は連続して氷を作り出し、私の動きを制限しようとするが、それを私は軽く避け続ける。

 

「……もう少し工夫してみたら?」

 

私は冷静に呟くが、焦凍は無言のままさらに氷を生成し続けた。

 

パキ…パキ…

 

次々とステージに氷を張り巡らせ、私を追い詰めようとする。

 

「炎は使わないの?舐めてるの?」

 

挑発してみせるが、焦凍は反応しない。

 

指先から花の形をした炎を生み出す。

 

華帝の彩(かていのあや)

 

花弁を模した炎が鮮やかに輝き、その形状が徐々に剣へと変わる。

 

焦凍は再び広範囲を覆う大氷結を放つ。

それに対して私は炎の剣を無数に生み出し、それを氷へ向けて次々と放つ。

 

バツンッ ガシャアッ

 

剣が氷の塊を突き刺し、次々に切り裂いていく。氷の破片が空中に舞い、焦凍の攻撃は完全に無効化された。

 

焦凍の表情がわずかに動く。攻撃が防がれ、破壊されていく。

 

「身体冷えるよね、温めてあげようか?」

 

私はさらに多くの蝶を生み出し、それをステージ全体に散らしていく。蝶はその場で飛び続け、焦凍の動きを制限していく。

 

攻撃は単純、そして同じことの繰り返し…流石に飽きてきた

 

「……つまんな。」

 

私は冷たく呟き、終わらせようと考える。

 

焦凍がわずかに動くのが見えた。

その視線は一瞬だけ左手へ――炎を使うことを迷っているのが明らかだった。

 

手を振り上げ、巨大な蝶の形をした炎を生み出す。それはこれまで放ったどの獄蝶よりも大きく、輝きを放っていた。

 

「これで終わり。」

 

巨大な獄蝶が焦凍に向けて一直線に飛んでいく。その羽ばたきは、まるでステージ全体を飲み込むかのようだった。

 

焦凍は体勢を崩し、炎を使おうとする素振りを見せるが、それでも最後まで使わなかった。

 

ドォン――!

 

獄蝶が焦凍を吹き飛ばし、焦凍は場外へと弾き出された。

 

「轟くん場外、よって橘さんの勝利!!」

 

ミッドナイトの勝利宣言が響く中、私は無表情のままステージを降りる。

 

焦凍が膝をついている姿をちらりと見たが、振り返ることなく出口へと向かう。

 

「次」

 

私の視線は、すでに決勝戦へと向かっていた。

 

────────────

 

爆豪君vs常闇君

常闇君は爆豪の連続攻撃を止め続けている。

 

実況からは“無敵”と言われているが、彼の個性“黒影”はおそらく光に弱い。今までの戦いでは即座に攻撃していたが今回反撃していないのが証拠だ。光を浴びることで弱体化するといったところだろう。

 

攻防戦が続く中、爆豪君が裏を取った。

そして手のひらから強力な光が放たれる。

 

煙幕が晴れたー爆豪君が片手で常闇君の顔を抑えていた。黒影は泣いているようで、常闇君は降参した。

 

「常闇くん降参!爆豪くんの勝利!」

 

『よって決勝は、橘 対 爆豪だあ!!!』

 

決勝戦相手は爆豪君か…

 

────────────

 

決勝戦ー控え室で待機していると、乱暴に扉が開かれた。

 

「あ?」

 

「何?爆豪君、乱暴に開けないでもらえる?」

 

「俺に指図するな、なんでてめぇがここに…クソが、ここ2の方か」

 

どうやら部屋を間違えたらしい、いきなり来たうえに、うるさい

 

「爆豪君うるさい、早く自分の控え室へ行ってよ」

 

そう煽るとすかさず、言い返してくる…犬かな?すぐにキャンキャン吠えて

 

「うるせぇ、部屋間違えたのは俺だが…いちいち煽るな!」

 

爆豪君がその場で爆破を起こす。

 

「てめぇは俺が倒す」

 

勢いよく扉が閉められ爆豪は出て行く。

爆豪は焦凍の話を聞いていたとは思えない態度。普通なら気を使って気まずくなりそうだが…

彼のそういうところは気に入ってるんだけどな〜

 

だけどクソなのには変わらないからね…

 

────────────

 

『さァいよいよラスト!!雄英1年の頂点がここで決まる!!決勝戦、橘 対 爆豪!!!今…』

 

『START!』

 

初めに動いたのは爆豪だった

爆破の反動を使った猛スピードの突進。そのスピードは観客からも歓声が漏れるほどだった。

 

「はぁっ!」

 

爆豪の拳が橘を捉えようとした瞬間、灯里は体を小さく動かしてその攻撃を紙一重でかわした。拳が空を切る音が響く。

 

「……避けんじゃねぇぇ!」

 

爆豪は眉をひそめ、次々に攻撃を繰り出す。爆破の余波で砂煙が舞い、舞台上の視界が揺らぐ。それでもほとんど動じずにその場で攻撃を見極め、最小限の動きでかわし続ける。

 

『橘!!飯田戦同様、爆豪の攻撃を避けまくる!!』

 

「……。」

 

灯里の表情は冷静そのものだ。無駄な感情も力も一切見せない。

 

爆豪の拳が灯里を捉えようと迫る。だが灯里はそれを見切り、寸前のところで身を翻した。軽やかに後方へ回避する灯里の動きは、まるで予測していたかのように正確だった。

 

しかし、爆豪はそこで終わらない。

 

「逃げられると思ったかよ!」

 

爆破音と共に、爆豪の掌から炎と煙が噴き出す。彼はその爆風を利用して、自らの動きを即座に軌道修正。今度は真後ろから猛スピードで灯里に迫る。

 

灯里が振り返る間もなく、爆豪の手が鋭い勢いで伸びーー

 

彼の手は灯里の頭を掴んでいた。

 

「逃がすわけねぇだろ!」

 

叫びと共に、爆豪は全身の力を込めて、そのまま地面へ叩きつける。

 

ゴォォォンッ!

 

凄まじい音と共に、灯里の体が舞台に叩きつけられる。観客席からは驚きと歓声が交錯した声が響き渡る。

 

『ここで爆豪の攻撃が決まる!!!』

 

爆破の爆風を駆使した加速と、狙いを外しても即座に追撃に転じるその反射神経。彼の戦闘センスがいかんなく発揮された瞬間だった。

しかし爆豪は違和感を覚えていた。頭を掴んだあと抵抗がまったく感じられなかった。

 

「てめぇ舐めてんのか?個性使えよ!攻撃しろよ!」

 

叫びながら、爆豪は再び爆破の構えを取る。だが灯里はその言葉にも動じることなく、起き上がり、淡々と埃を払っただけだった。

 

「……使う必要がないだけだよ。」

 

その一言に、爆豪の怒りがさらに燃え上がる。

 

「ブッ殺すぞ!!俺が取るのは完膚なきまでの一位なんだ!!舐めプするやつに勝っても意味ねえんだよ!」

 

「ねぇ?なんで勝つことが前提に入っているの?」

 

灯里の声には冷淡さすら感じられた。彼女は穏やかな笑顔を浮かべていたが、その目には笑みの欠片もなく、ただ静かに爆豪を見据えていた。

 

その瞬間――灯里の姿が消えた。

 

ゴッ!!

 

爆豪の腹部に、灯里の拳がめり込む。息を詰まらせる爆豪の体が一瞬揺らぐ

 

「ッ!! クソが!」

 

爆豪によって放たれる爆破の衝撃。

しかし、灯里は微動だにせず、まるで何もなかったかのように、爆豪の頭を掴み――

 

ドゴォン!!

 

地面に叩きつけた。激しい衝撃音が響き渡り、舞台が震える。

 

爆破を使いながら後退し、再び空中で体勢を立て直そうとする爆豪。しかし、その一瞬の隙を灯里は逃さなかった。

 

トッ!

 

灯里は地面を強く蹴り、爆豪を追うように高く跳躍する。

 

「っ!」

 

爆豪が空中での体勢を整えきる前に、灯里の手が爆豪の足首を掴む。

 

ドオォォオン!!

 

灯里はそのまま爆豪の体を振り下ろし、再び地面に叩きつけた。

 

「はぁ…はぁ…」

 

爆豪はなんとか起き上がるものの、連続攻撃に流石にダメージを負ったのか膝をつく。

 

「呆気ないね。なんだっけ?俺が勝つ?完膚なき一位?」

 

橘の冷たい声が爆豪の耳に届いた瞬間、また距離を詰め蹴りを決める。

 

爆豪の体は宙を舞う。

 

「お望み通りに」

 

彼女の周囲に炎の蝶が舞い始めた。

 

「……獄蝶」

 

炎の蝶が舞台を彩り、爆豪に向かって飛ぶ。

 

BOOOM!!

 

着弾と共に圧縮された炎の蝶は爆発

 

灯里は無言のまま背を向け、スタジアムの出口へ向かい始める。

 

 

「……クソがぁ!まだ終わってねぇよ!!!」

 

爆豪は力を振り絞り、爆破で一気に間合いを詰めた。

 

「ぶっ飛べえええ!!! 榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!!」

 

爆破の特大火力に勢いと回転が乗った、まさに人間榴弾が拳を振り下ろす。

 

だが――

 

「は─?」

 

灯里は冷静な表情のまま体を回転させる。そして、爆豪の攻撃に合わせるように、鋭い回し蹴りを放った。

 

ドンッ!

 

爆豪の勢いは止まらず、そのまま呆気なく場外へと落下する。

 

観客席からは驚きの声と拍手が入り混じった歓声が上がる。

 

「あっけなく終わったね、完膚なきまでの一位ゲットかな?」

 

灯里はその場に立ちながら、冷静な声でそう呟いた。その視線の先には場外で膝をつき、唖然としている爆豪の姿があった。

爆豪は拳を握りしめ、唇を噛みながら地面をじっと見つめている。

 

「爆豪くん、場外!!!」

 

ミッドナイトの宣言が響き渡る。

 

「よって以上で全ての競技が終了!!今年度雄英体育祭1年優勝はーーーA組 橘灯里!!!」

 

その場に歓声が巻き起こる。スタジアム全体が拍手で包まれる中、灯里は静かにお辞儀をした。

 

そしてその後表彰式が行われる。

 

「これより!!表彰式に移ります!」

 

ミッドナイトが淡々と進める中、2位の表彰台にいる爆豪は縛られていた。

 

「メダル授与よ!今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!!」

 

「私がメダルを持ってきた!!」

「我らがオールマイト!!」

 

被った…見事にミッドナイトとオールマイトが被ったが、問題なく進められる。

 

「常闇少年おめでとう!強いな君は、ただ!個性に頼りっきりじゃダメだ。相性差を覆すために地力を鍛えよう」

「……御意」

 

 

「轟少年おめでとう!準決勝で左側を収めてしまったのはワケがあるのかな?」

 

「緑谷戦できっかけをもらって…わからなくなった。俺もあなたのようなヒーローになりたかった。ただ、俺だけが吹っ切れてそれで終わりじゃダメだと思った。精算しなくちゃならないものがまだある。」

 

「顔が以前と全然違う…今の君ならきっと精算できる」

 

 

「さて爆豪少年…」

 

オールマイトが話せるように爆豪のマスクを外す…

 

「オールマイトォ2番なんて意味はねぇんだよ、完膚なきまでの1位じゃないと意味ねえんだよ」

 

「うむ!相対評価に晒され続けるこの世界で、不変の絶対評価を持ち続けれる人はそういない…傷として受け取っておけよ!忘れぬように!」

 

「いらねっつてんだろ」

 

爆豪は拒否を続けるがオールマイトに強制的にメダルをかけられる。

 

 

「そして、橘少女おめでとう!」

 

オールマイトがメダルを首にかける……ものすごく嫌だ!

 

「見事な戦いだったよ。体術もしっかりでき、冷静な判断が素晴らしかった。この調子で頑張るんだ!」

 

「もったいない、お言葉ありがとうございます…」

 

感情を抑えながら、なんとか言葉を絞りす。

 

「さァ!!今回は彼らだった!!しかし、この場の誰でもここに立つ可能性はあった!ご覧いただいた通りだ!次世代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!そんな感じで最後に一言!!皆さんご唱和下ださい」

 

「「プルス…」」

「おつかれさまでした!!!」

 

「「そこはプルスウルトラでしょオールマイト!」」

 

そんな感じではちゃめちゃな体育祭は幕を閉じたのであった…

 

───────────

 

その日は久しぶりに、以前まで暮らしていた隠れ家に帰った。

 

少し前まで住んでいた場所だというのに、どこか懐かしさを感じる自分に気づく。周囲の静けさは変わらず、足音が響くたび、静まり返った空気に馴染むようだった。

 

ドアを開けると、そこには変わらない玄関と通路が広がっていた。

 

「死柄木冥、おかえりなさいませ。」

 

奥から静かな声が聞こえた。

 

「久しぶり、白狐(びゃっこ)。こっちの様子はどうだった?」

 

「問題ありません。それより――部屋で“あの人”がお待ちですよ。」

 

白狐の言葉に胸が高鳴る。

 

「まさか…お父様が?」

 

白狐は無言で頷く。それを確認すると、私は言葉を失ったまま家の奥へと向かう。通路を駆け抜け、部屋の扉を開ける。

 

「お父様…!」

 

その部屋にいたのは、私の父ーーオールフォーワンだった。

 

オールマイトとの戦い負った大怪我の影響で、表立って動くことが減ったお父様とは、こうして顔を合わせる機会が少なくなっていた。だけど、こうして部屋で待っていてくれたのだ。

 

「こうして会うのは久しぶりだね、冥。体育祭、見ていたよ。」

 

柔らかい声でそう言うと、お父様は手を伸ばし、私の頭を撫でた。その手の感触は、驚くほど優しくて温かい。

 

「流石冥だね。個性の使い方も、体術も、また一段と良くなっている。」

 

その言葉を聞いた瞬間、胸の中に溢れる感情を抑えきれず、思わず飛びついた。

 

「お父様!ありがとうございます!」

 

その瞬間だけは、私はまるで無邪気な子供のようだった。お父様の胸に抱きつき、その優しさに甘える。

 

自分がスパイとして活動していることも忘れて、ただこの一瞬だけ、父娘の時間を過ごす。それはどこにでもいる、普通の親子のような光景だった。

 

「無理はしていないかい、冥?」

 

「大丈夫です、お父様!全然疲れてないし、むしろ楽しかったです!」

 

その声は、自分でも驚くほど無邪気な響きだった。体育祭での戦いで見せた冷静さや圧倒的な強さとはまるで別人のような自分に、どこか不思議な感覚を覚える。

 

「それはよかったよ」

 

お父様は小さく頷くと、私を優しく抱き寄せた。その腕の中で、私は安心感に包まれる。

 

「これからも内通者として、手伝ってもらうが、冥が思うようにやるといい」

 

「はい!お父様!!」

 




しれっと出てきた新キャラ“ 白狐(びゃっこ)”、どのような個性・人物なのか、後々紹介していきます。

《技説明》
「華帝の彩」(かていのあや)
炎を凝縮した花を作り出し、それを任意で形状を変化させる。剣、槍、などは切断性などがあり、切る刺すと同時に対象を焼く。
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