身体の免疫機能が落ちてる・・・・・!?
病弱スキルでも付いているのかな・・・?
・・・・・それは、本当に一刹那の事だった。
カッ、と、羂索は瞑っていた目を開いて回想する。
監視用の不可視の呪霊。
呪霊操術の支配下のそれが、未だに全体像が分からない一人の女性の姿を捉えた。その呪霊の見ている物と、己の視界を同期させている羂索。当然、それが何を見ているのかを理解していた。
青色の和服を着た、ブルーオニキスを煮溶かして線状にして見せた様な、艶やかに煌めく青い長髪を持った、美しい女。
人界に生まれる事は先ずあり得ない、神界・天界の美。いやあれは、悪魔の美ではあるまいか?
羂索は彼女を見た瞬間、恐怖と無慈悲さと悍ましさと冒涜的さを、その麗姿から感じ取る事が出来た。親しみやすさが、その女の『美』には無いのである。
死徒や宇宙伝説魔獣の特性以前に美の純度が高すぎて、寧ろ『死』を想起してしまうのだ。隔絶した美の故に、頬を赤らめるとか見惚れるとか言う反応すらが、最早起きる事がない。
不興を買えば、死ぬ。見てしまえば、醜い自分に耐え切れず死を選ぶ。そんな剣呑さを、監視用の呪霊越しに羂索は感じ取ってしまったのである。
それに、彼女は既に気付いていた。自身を監視している、透明化の迷彩を行っている呪霊の目線に、である。死徒としての感知能力の高さを活かして。
その方向に目線を送る女。それを受けた瞬間、おぞましくとも美しい女の目線をモロに受けた羂索の使い魔が、一瞬。半透明の呪霊としての姿を露にし、そのまま大気に還っていった。
女が死徒や怪獣としての特別な力を行使して送った訳ではない。この世の者ではないと断言できるほどの美しい姿を真正面から目視する形となったその使い魔は、呪霊でありながら人に縛られた状態の奴隷の身の上の己を恥じ、あの女に見られ続け恥を認識される位なら、と発狂して自死を選んだのである。
それは漏瑚を彼女と遭遇させる少し前の出来事だった。
だが、何故、筆舌に尽くしがたい彼女の美貌のことを羂索は黙っていたのだろうか?せっかく手に入れた情報の一つなのに・・・・・。
「匂う、匂うぞ。この地域から特級呪霊のニオイがするぞ」
呪霊は人間などとても暮らせないような場所を好む。山奥や樹海のような畏れに満ちた場所を。
自身という世界にとっての
「しかし、対象に力の差を分からせて調伏する為に、自らを666の群体ではなくただ1匹の最高の獣とするネロ・カオスの「武装999」というのをわざわざ真似てみて、内包している概念核が持つ人格や要素の因子を試しに一つに圧縮して統合してみたらこのような姿になって思考も固定されるとはな・・・・・」
ある呪霊の生得領域の内部にスムーズに侵入しながら、口調も含めた三つの因子を統一した女は変わり果てた自身の風貌をじっくりと見る。
鯉が滝を登って龍になるように。山に千年、海に千年住んだ蛇が竜になるように。蛹を破り蝶が舞うように。怪獣、死徒、人間としての
髪の色は上は青で下は光体のように光り輝いている銀色。目は瞳孔と結膜の色が赤で角膜の色が金。何処となく人間と死徒としての姿が混ざっているような姿を形成していた。
だが、それだけだったら、ディオネ、ニュクス、ボイベの三神が合体したことで三相の女神ヘカテが生まれたのでは?天上の月神セレネと地上の狩猟神アルテミスと冥府の破壊神ペルセフォネの三位一体でヘカテを指すのではないか?という一説があるように。三つの概念核を全て統合して、三位一体という概念を利用して新生した自分の姿に、多少なりとも困惑はしなかっただろう。
問題は通常のヒトのカタチという己の秩序を崩して出てきた強すぎる怪獣成分。・・・・・混ざっているそれはメツオーガやメツオロチとしての要素が明確に無くなっているように見える外見の怪獣娘形態。
背中に生えている翼のような四つの突起は収納可能な完全な翼と化していて、尻尾は更に長く鋭く、どことなく兜を装着していた女性に見えていた、彼女の頭に生えている一対の角は、より兜らしい青と赤と金で彩られた姿に変貌していた。
そして、青い甲殻で作られた鎧みたいな身体の部位は、上半身に元々あった胸の顔に見える器官が何故か発光するように輝いていて、下半身が袴のようにも見えるお姫様みたいなロングドレスのような服装になっていたのであった。
一つに因子が纏まっていても、整いすぎてグロテスクに見える完璧すぎる美貌を、彼女はこの姿でも相変わらず維持していたが。この怪獣としての要素は・・・・。まさか・・・・・?
「予想した通りにルーゴサイトのような要素が入ってきているな。なるほど、私を転生させた神々が言っていたことはこれか。今の私に怪獣としての名前を付けるならメツ=ガアシエンディエタになるか?」
勝手に理解して納得した、三つの因子を統合して生まれた女は、生得領域内にいた、統一された外見をもった目玉がない呪霊の集団を、血液のコーティングによる強度増強と物理保護によるバフを重ねがけした鋭く尖っている特徴的な鉤爪で切り裂きながら空間を滑るように進む。
凄いな。275万人以上の生命を吸い上げて集積し、その集積した血を『溶かして』一つにした、原理血戒持ちの死徒と数多ある星々を捕食してきた宇宙伝説魔獣と人間としての私の因子をリソースとして極限まで一つに圧縮したことで新しく生まれた
月姫リメイクで半死徒化した遠野志貴がナイフを血液のコーティングで強化したように、両腕から触手のように伸びる鋭利な箇所がある自身の鉤爪を血液コーティングで強化しているとはいえ、鞭のように適当に振り回しているだけで、発生した風圧や空気の摩擦だけでも有象無象が祓われていく。
膨大な力の行使による歪みの発生で生得領域という一種の世界そのものが否定されかねない事態を引き起こさないように、原理血戒の稼働率を限界まで抑えて影響力を弱めているとはいえ、まるで無双ゲーだな。
だが・・・・・この生得領域が誰かに見つかるかもしれない。並大抵の存在では私を害せぬことは出来ぬが、五条悟には見つかりたくはない。埋め込まれた原理血戒を最大限まで励起するといった対抗手段や勝てる算段は普通にあるが、六眼と言った魔眼の一種、純粋に高レベルの魔術師ならぬ呪術師と、死徒の属性を持つ私にダメージを通す手段と条件を兼ね備えている。
流石は現代最強の術師の肩書きを持つ、この世界の特異点たる男。面倒な相手だ。ギャグ時空という世界を展開する超人という底が知れない術式を持つ高羽という人間よりはマシだが、この身体を持ってしても戦わずにすむなら、越したことがないという考えを抱かせた人間よ。
メツオーガの遠隔干渉、重力操作による発展型。メツオロチのエネルギー吸収フィールドの解釈を拡張した空間操作で周囲の空間を捻じ曲げる攻防一体のバリアを筆頭とした怪獣としての機能と美貌や魅了の魔眼を筆頭とした死徒としての機能をフルにとはいかないが、存分に活かして、この生得領域の主である呪霊のところにさっさと向かうとしよう。
蹂躙度合いは加速する。
『生』を否定する『死』が災害のようにいたずらに吹き荒れる。
呪いが更に強大な『呪い』に押し潰される。
美貌や魅了の魔眼で硬直して行動不能になった呪霊達の群れが、あまりの行動速度に、断熱圧縮や空力加熱という現象を引き起こす流線形となった
ある呪霊は特徴的な鉤爪で切り裂かれて、光芒から生まれた爆発や炎に巻き込まれて、ムカデの胴体のような尻尾を中心とした身体の一部から放出された、ミサイルのように飛んでくるトゲ攻撃と雷撃に直撃して、攻防一体のバリアでお手玉のように吹き飛ばされたと思うといつの間にか上空の空間に鎮座していた紫色の渦から放たれた禍々しい色の怪光線で薙ぎ払われていった。
色々な攻撃が放心状態で無防備になった呪霊の群れに使われていたが、中でも彼女が好んで多用していたのは、霧化を応用したことで生まれた捕食行為だった。対象を気相と化した自身の身体で包み込んで、崩壊させるのと同時に喰って糧にしていたのだ。
そして、有象無象の呪霊の集団を
「アニオリだ。アニオリ呪霊が目の前にいる」
それの外見は痩せ細った人間に近い姿をしていた。体色がピンク色で指先が鋭く、特に肥大化している左腕が特徴な呪霊だった。
「この呪霊は確か・・・・・
極点に達する美貌による魅了効果と魅了の魔眼の重ねがけで朧絶の動きを拘束しながら、女は朧絶の特徴的な外見をまじまじと見ている。
この時の彼女の思考は分かりやすいだろう。明らかに他の呪霊の毛色が違うな。具体的には挙げづらくてむず痒いが、一昔前のジャンプのアニオリ映画の敵キャラみたいな外見だな。と思いながら朧絶を見ていたから。
「色々と聞きたいことがあるが後にする。言葉遣いは自然体でもいい、まずは貴様の術式をもって私の
と呪力を奪うがいい」
朧絶というアニオリ的な外見を持つ特級呪霊を充分に観賞し終えた女は、美しいと言う規矩を超越する『美』の力や魅了の魔眼で自身が調伏して生殺与奪の権利を握ったのも同然な呪霊に対して命令を下す。
自分の血液と呪力を奪えと。
「・・・・・ええ、分かりましたとも」
血液を糧にする死徒の異能や魔術のリソースは、月姫リメイクでは魔力でなく『呪力』と、ヴローヴが行使する概念魔術の炎を、対魔力スキルの域にある自前のオドの出力だけで無傷で防いでいたシエルにそう呼称されていた。
魔とはただ生きているだけで超常を引き起こすものであり、外付けの機関である魔術回路で神秘を引き起こす魔術師とは理由が違うように、私という生物の生態は身体に呪術の行使に必要な器官がある呪術師や呪霊とは違う。とはいえ、呪力と血液があるなら、
死徒と英霊の共通点にエーテルで構成された肉体があるように。呪霊にも共通点があるから。
・・・・・・予想通りだ。呪術に対する抵抗力や耐性をあえて落としているとはいえ、奸骨奪胎という術式の干渉によって力が失われている。主に血液という私の世界を構築する情報が。
死徒の女が持つ膨大な呪力と血液が朧絶という名の特級呪霊に略奪される。
第三者から見たら誤差の範囲内に等しいかも知れないが。
朧絶の方は・・・・・一級術師に祓われる一般的な特級呪霊程度から自然呪霊を上回る程度に存在規模が上がっているな。こちら側でも強化幅を調節できるとはいえ。
明かされた魔女と妖精の関係と「死後に存在濃度の薄れていない妖精=妖精亡主」の情報から、暫定的に魔女のナイトコールになった祖である捕食公爵スタンローブ・カルハイン。又の名を
そんな亡霊の死徒や腑海林アインナッシュのように、呪霊も死徒化するのでは懸念していたのだが、流石に死徒化はしなかったか。前提条件が違うから当たり前か。
朧絶が強くなった理屈は、ロアがアルクェイドの力を奪ったというより、宿儺の指という呪物を取り込んだ呪霊と近しい理屈。
それか・・・・・術式によって世界が違うと原作の真人が言っていたように、奸骨奪胎という術式という名の世界の働きのおかげで、朧絶は私という生物が有する『呪い』のおかげで純粋に強くなれたという結果が発生したというわけか。面白いな。
自我を持つ配下の顕現。意識を有したまま肉体を呪力に分解。残り微かな呪力で核を再構築。これらの芸当を全部術式関係ない自前の技術でやれる、面白そうな玩具を手に入れたことから、さっさとこの場所から去るとしよう。
高度な死んだフリや逃走手段を有しているとはいえ、ソシャゲで描かれた朧絶の最期。真人に魂を捉えられて、無為転変で死んだように。この場所に朧絶を放っておいたら、本人がどれだけ足掻いても、最終的に魂が五条悟に捉えられた挙句に、死ぬ未来が容易く予測できるからな。
女は目的を達成するついでに、この
呪術廻戦のソシャゲに登場した特級呪霊。朧絶が出てくる呪術廻戦二次創作もっと増えてもいいと思います。