「真に自由な存在とはなんだろうな」
和洋折衷な屋敷にある書斎部屋に一人の女がいる。
それは人間として
書斎部屋にある椅子に、かの有名な考える人のポーズを取りながら、自由について考えている最中だった。
呪術廻戦の公式小説、闇中寓話というタイトルが付けられた話に登場した老人との会話を経て、後日改めて本当の自由とは何か?と住処にしている家で考えることにしたのだ。彼女は。
今世だけでなく、前世や前世の前世も含めると私当人には自由がないように思えるのは、当たり前だろう。文字通りの宿命論を体現していますからね。けれど、怪獣として活動していた自分や死徒としての私、異世界からやってきた
三つの概念核と集積してきたエネルギーを、自身が有する原理血戒という名の世界卵にある、魔術基盤の代用にもなる三相の女神の一説を利用して統合することで産まれた、霊基より上の光体で構成された新しい
けれども、ウルトラマンのような身体、擬似的な光の巨人とも例えることができる光体化を身につけても、精神性はあの老人と同じ境地にいるのでしょうか?この私は。
彼女は思考の海に沈む。
だけど、少女はすぐにその行為は辞めたのであった。それほど考える必要性はない。食事の時間が来たことと比べたら、どうでもいいことと思い直して、思考の海から浮上して椅子から立ち上がったのであった。
「アラ、食事の時間だよ」
「分かりましたわ。お父様」
計画を立てて、その通りに行動することが出来るけど、当人は何も考えてないよ。と言えるほどに刹那的に生きる、ライブ感で動く彼女の中で、食事という行為の優先行為は高い。
宇宙伝説魔獣としての因子や死徒としての因子抜きでも、一粒のお米にも神様が宿るという教えを素直に信じて、食べ残しは滅多なことではしないと言えるくらいに重きを置いていたのであった。何があっても揺るがないだろう、彼女の行動理念の一つになっているほど。
「ごちそうさまでした。お父様とお母様が作る料理は相変わらず美味しかったですわ」
「アラが美味しいと言ってくれて良かったですね」
「ああ。今日も良い食べっぷりで、見てて嬉しいよ」
それはなんてことのない和気あいあいの食事風景だった。家族仲が良好そうな、何処にでもありふれていそうな人間達だった。
だけど、少女を中心としたこの家庭の真実の情報を知ったら、義憤を覚えそうな者がいる光景だった。
━━━それでも、歪んだ敬愛や親愛の念を向けるのと同時に愚弄している者がいるとはいえ、それぞれがお互いを愛しているのは、変わらない
碁盤の目のように張り巡らせられた地区がある札幌の街を歩く異形がいた。堂々と世界に見せつけるように、自信満々に己の姿を誇示しながら。
「怪獣としての概念核、怪獣娘に該当する形態、獣化を簡易的でも常時していた方が、気の所為になるかもしれないが気が楽と感じるな。死徒や人間として生きていた『生』よりも、怪獣として生きてきた前世が長くて因子が強いからか?」
頭に生えている、メツオロチの重要的な部位である角を触りながら、獣化&非存在化&霧化による分け身を併用して活動している女性は、いつものようにひとりごちる。
「リメイク月姫の情報で死徒は長く生きるために力ある別の生き物を取り込む必要がある関係上、高位の死徒は大概、大なり小なり、通常の人の形保っていないという。人型の時点で優雅ではないという思考で全長数キロな巨大なカラスの姿を持つ黒翼公大歓喜な設定があることから、怪獣として
人間達で賑わう昼間の街並みなのに彼女の長ったらしい独り言は誰にも聞こえない、素養がある人間にも存在を察知できない。
原理血戒を有する死徒の特性やアンバランスゾーンに生息する怪獣と化す獣化を使用している等の色々の要因があるとはいえ、天上の神々も惑わす美貌によって魅了された
朧絶が興味深い呪詛師を見つけたと言ったが、どんな
観光も兼ねた全国巡りのついでに、居場所を全て把握することはまだまだ足りないが、その気になれば、開催場所の土地にいる
・・・・・戸惑う必要性も無い。羂索の行動パターンが確実に変わって、渋谷事変が起きない可能性が更に高くなるが、この後、術式を保持しているが、脳の構造デザインが非術師の人間達と虎杖悠仁のように呪物を取り込んだ人間達を
たかが、千人の人間が死ぬだけだ。人間社会に大きな問題は与えないのは確信できる。この地球でも、名も知れない人間達が世界の何処かで無意味に死んでいるのだから。それに比べたら、私が齎す『死』は有意義なものだろう。
本人視点ではそうではないが、いつものように物騒な考え事をする女。いや、力ある人間も力ない人間も関係なく、実行に移さないだけで、大多数の存在は似たような考え事をするから、彼女の思考回路はそこまでは人間離れしていないかもしれない。
愉快犯的にライブ感で動いて、考えたことを即座に実行に移そうとする行動力が、人間にとって一番の害悪な面だと言えるだろう。しかも、潜伏能力や逃走能力も高くて、死徒や宇宙伝説魔獣としてのプライドも一応あるが、躊躇なく潜伏や逃走と言った手段も選ぶ精神性もあるのが始末に負えない厄介な点であった。
畜生道にあたる前世の怪獣時代。味なんて不要!とにかく食べることさえ出来ればいい!!かつての私はそう考えていたが、死徒としての側面オンリーは、味覚が無いおかげで血の味しか分からなくなるのが欠点だな。それなのに、自分は何を喰っているのか、と感覚で分かるのが不思議な点だ。
非存在化しているとはいえ、わざわざ対価の代金を目にも止まらない早業で支払って得た食物。その辺の路上屋台で売られていたホクホクの塩辛ジャガバターを堪能するように、上品にゆっくりと少しずつ食べながら彼女は朧絶が待っている場所に向けて歩く。
彼女がたどり着いた場所は地下街。その中でも特に古い区画。広い地下歩行空間から枝分かれして、とあるビルの地下フロアに繋がる、人気が一切ない道。地上階へ繋がる通路続く階段の裏に、入り組んだジグザクの通路があるところ。
結界を作る為の用途として、朧絶に作成された樹木型の呪霊が構築した帳の影響で暗闇になっていた所に、スウと、彼女の人差し指が縦に走り━━その切れ目を広げて内部に押し入った。
「これが例の呪詛師か・・・。知識として知っているだけで唆らん、面白くないな」
「御眼鏡に叶わなかったようですみませんね」
戯れとして、携行食も兼ねた配下にした特級呪霊と合流した吸血鬼の女の目線には、人形師と呼べる、朧絶によって拘束された、一人の弱々しい呪詛師がいた。いや、はっきり言って、呪詛師とはとても呼べない弱き者。ちゃんとした呪術師や呪詛師がこの場にいたら、あまりの弱さに似非呪詛師とお墨付きをもらえるほどだった。
数多の有象無象と同じく、非存在化を解いた女性の、ヒトのカタチを取った『美』という概念そのものではないか?と疑いたくなるほどの美貌に見惚れている人形師の男。
そして、未だに魅了されているとはいえ、魂が抜かれているような状態から再起動を果たした男が取った行動は━━━。
「アアァ、貴方様だったのでスね。私の呪いを鎮めてくれたノハ・・・・・」
自身の目の前に現れた吸血鬼の女性を上位存在を目にしたモノ。目の前に顕現した神を祈って崇める敬虔な人間みたいな態度を取ったのだ。
確かに彼女が有する美貌は、美の女神そのものではないか?と見たモノを錯覚させて、信仰せざるを得ない『美』を誇っていたが、人形師の男が即座に崇めた事実には、それ相応の理由があった。
男は自身の先祖が作り出した呪物に呪われていたからだ。その証拠に暴走する呪骸が彼の身体を蝕んでいる。
見よ。肉人形と言わざるを得ない、蜘蛛のようなシルエットを描いている、自己増殖する人形と合体してしまった哀れな男の醜悪な身体を。
だが、いるだけで徒に法則を掻き乱す彼女が北海道を住処にしていたことで、人形師を蝕む呪いは抑えられて完全に無害化した。
人形師と呼ばれる呪詛師からしたら、自業自得とはいえ、呪いに蝕ばれる身になった自身を救ってくれた彼女の存在は、その美貌も相まって救世主そのものに見えるだろう。
「どうやら貴方様はこの人間に救世主扱いされているようですよ」
「私は神様や救世主扱いされるほど、殊勝なモノではないんだがな」
このように原理血戒を有する死徒としての特性やウルトラ怪獣としての特性を持って、世界法則を徐々に塗り替えようと活動する彼女に、呪霊被害を中心とした呪いから間接的に救われた人間は意外といるかもしれない。
ただし、
「ありがとうござッ!?」
他者に死を徒に撒き散らす死徒兼、星をも喰らい尽くして周囲を破滅させる魔獣に相応しい精神性の持ち主ということを除いた話だが。
「食べるのですか。私の術式で自己増殖する呪骸と融合してしまった人間が持つ特性を最大限に活かすことができる『器』呪霊を作ろうと思っていましたが・・・」
「食べるのは当たり前だ。呪骸と融合してしまった人間はどんな味がするのか?と好奇心が湧いてきてしまったからな。━━━感想は化学調味料をふんだんに使ったジャンクフードみたいな『濃い』味だ。他者と体液の交換をしていない処女のような通常の
いたるところに肉食獣の犬歯を思わせる凶悪な突起がついている、メツオロチ特有の太く長大な尻尾を無造作に叩きつけられた結果、身体の大部分が獣に噛み千切られたように消失するという結末を辿って死んだ人形師の男の死体を余所に、女性は悠々と対象の味について語る。
「つまらん用件だった。私は人間としての私の元にさっさと帰るとする。次呼びつける時は、それは私の琴線に触れるモノであるという条件を忘れるなよ、朧絶」
「ええ、そうしますとも」
男の身体の大部分を蝕んでいた人形部分ではなく、僅かに残ったの生身の部分が最期に残るという、人間としての尊厳が辛うじてある死は、男に対する彼女なりの慈悲なのだろうか。結局はこれまでの犠牲者と同じように、朧絶に作成された樹木型の呪霊ごと一滴の血液も残さずに全てを彼女に貪り食われるとはいえ。
「そういえば、私は言葉に信憑性を持たせる効果を発揮させる呪言を持つ呪言師、鶴瓶加也という名前の呪詛師がこの世界に存在することを知識として知っている。よければ、貴様の『器』呪霊作成を手伝う為に材料として連れてこようか?」
「お言葉に甘えて親切心を受け取りたいのですが・・・・・・、今はいりませんよ。そんな微妙な効果を持つ呪言の術式なんか。貴方様と出会う前のかつての昔の私なら欲しがったかもしれませんが。大体、その辺の問題は貴方様自身が解決できるのではありませんか?」
「それもそうだな。暗示に関しては私の美貌と魅了の魔眼で事足りる。後日、鶴瓶加也という人間も
呪霊や呪詛師を中心とした既存の呪いの代わりに、小さな子供が好奇心や悪戯心で虫を解体する行動を実行するように、小腹を満たすために手頃なスナック菓子を食べる行為と等しい感覚で他者に被害を出し続ける。
そういう在り方で生きる生物として自身を定義して、勝手に囚われている故に。
彼女という存在は。