さっそくだが、呪術廻戦世界でただ一人の死徒として活動している彼女には致命的な弱点が存在した。
流水?そんなモノが弱点になるなら、死徒として活動せずに一つの地域に大人しく引き籠もっている。それとも日光?それも弱点にならない、これも同様だ。
ニンニク?違う。人間としての
そんなテンプレートな吸血鬼の弱点は存在しないに等しい。
勿論、キリスト教関連も。
実現しない仮定だが・・・・・。もしも、この世界に型月世界の聖堂教会があって、洗礼詠唱や聖別済みの武器を身に受ける事態が起きても、彼女は平然とするだろう。
つまりは、だ。ヘカテ神がルーツであるという説がある十字架や三位一体という概念を持った宗教に関係ある人間の攻撃なんて、ヘカテの
相性ゲーを対象に無理矢理押し付けて、俺ルールを理不尽に発揮できる彼女は、立派な
話はずれてしまったが、彼女の弱点とはそもそも死徒としての特性は関係ないモノだ。
その弱点の正体とは、人間としての名前だった。
メツ=ストリガ=モルモー=ラミア=アラ=ガアシエンディエタ=オロチという怪獣や死徒としての二つの感性を持つ彼女の視点でもDQNネームなのでは?と疑問を抱く名前だったから。
事実、外宇宙からやってきた
ただし、死徒や怪獣としての彼女は名前を付けた存在。魔女の女神ヘカテを崇める
名前に入っているメツオロチの部分は置いといて、まずはストリガ。これはイタリア語では魔女。スラヴ神話の吸血鬼を指す。次はモルモー。ヘカテの
その
そして、彼女という死徒が怪獣としての自分に一番相応しい。的を得ていると思った名前はガアシエンディエタであった。
ガアシエンディエタとは、北米大陸の先住民、ネイティブ・アメリカンの一部族のセネカ族の伝承に登場する龍である。そんなドラゴンの
だから、彼女という死徒は転生先に選ばれた人間の両親に感謝していた。名前もそうだが、
『アラ。我々、ウイッカンの行うことは、善意によるものであれ悪意によるものであれ、巡りめぐって三倍になって戻ってくるという三重の法則がある。それに従って、余裕をもって優雅に善行を重ねなさい』
『分かりました!お父様!!』
『貴方や私顔負けの立派な存在になりそうですね』
『そうだな』
ええ、そうです。貴方達の言う通りにアラという子供は立派な存在になりましたよ。魔女の女神であり、あらゆる吸血種に関わりがある吸血鬼の女神。真祖ならぬ神祖でもあるヘカテの眷属。この
歪んだ敬愛と親愛の念を込めて、桁外れの美貌と魅了の魔眼の重ねがけで都合の良い道具と成り果てた人間の両親を愚弄しながら、『彼女』は誰にも見られないように我が家のバルコニー内で笑う。嗤う。嘲笑う。声を立てずに。気でも狂ったように。
ああ、哀れなるアラ。違う理が働いている宇宙、真なる外の世界。異世界のソラからやってきた、私という
長い髪。特に女の髪には魔が宿る。
古き魔女達の伝承をなぞるようだった。
人間としての彼女の背中を覆い尽くす勢いで銀の髪が更に長く伸びる。
背中一面の銀色の滝にはまるで背中一面の入れ墨か何かのように、禍々しくも美しい死徒としての彼女の顔と全てを捕食して世界を滅亡を促さんとする怪獣としての顔が交互に浮かんで蠢いていた。
着用している羽織や着物をあえてはだけさせながら、艶めかしい肢体を己の両腕で抱きしめながら、背筋を冒涜的に震わせる女はこう嘲笑っていた。
本来の身体の持ち主の両親が見たくはなかったであろう顔。
同じく人一倍に善性を兼ね備えていた愛娘もまた見せたくなかったであろう表情。
その全てを暴くように。
『助けて!助けてお父様!助けてお母様!私が、私でなくなるの!!誰か・・・・・』
彼女という死徒に完全に取り込まれて、三つある概念核の一部になる直前に晒した、ある女性の無様な最期の再現。
ああ、思い返しただけで笑みが零れ落ちてしまう。周囲に弱みを見せないように気丈に振る舞っていたのに。あんなに泣き叫ぶ最期を迎えるとはなぁ・・・・・。安心してください、
いずれ起こる未来。渋谷事変で魂を肉体が凌駕する理屈で、降霊された禪院甚爾がオガミ婆の降霊術の支配から脱したが、彼女の場合はそうはならなかった。理由は簡単。存在規模が違うから。常識的に考えたら、星喰いの怪獣と星を殺す毒を保有する死徒の魂に肉体が勝てるわけがないのは当たり前だが。
元来、魔女というのは、月の光を浴びながら深い深い森の中で暮らしていくものだ。
一糸まとわぬバランスの取れた美しい裸体を晒しながら、趣味である月光浴と森林浴をする彼女が庭園内を練り歩く。魂の色が完全に変わっているとはいえ、吐き気を催す邪悪と断言できるような歪んだ笑顔を浮かべながら。
両親とお揃いになれて、コンプレックスが解消されたことに感謝しろよ、かつての人間の私。実践魔女の術式。『三倍率の装填』が私という死徒に超抜能力として発現したことを。
「しかし、怪獣で霧化と言えば、色合いからもしかしてメツオロチはルーゴサイトそっくりな怪獣に進化することが可能なのでは?という与太話を思い出しますが・・・・・」
誰にも聞こえない独り言を呟きながら、サーヴァントで例えたら霊体化にあたるかもしれない死徒の非存在化を適用して、夜の街中を歩く異形の姿があった。
翼っぽい背中の四つの突起と長い尻尾を除けば、彼女の服装はどことなく甲冑を着た女性に見える。ただし、あくまでもそう見えるだけだ。頭に生えている兜の角と青い甲殻で作られた鎧は。
今、ある場所を目的として移動している怪獣娘としての彼女の身体は分け身である。
獣化も併用しているとはいえ、これくらいの芸当なら、下等な霧化である分身。己という使い魔に意識を載せて活動できる死徒は多いだろう。
ただし、普通の分け身と違って、彼女のはそれぞれが独立した思考と生身の身体を持って自由に活動できる。つまり、全員が本体でもあり分身でもあると解釈できるだろう。そこら辺はまるでネロ・カオスのようだと例えることができるかもしれない。
事実、三つある
しかも、元いた世界でも有名だった魔術理論。創作でもよく使われる類感呪術や感染呪術対策も彼女という死徒はしていた。これは容易だった。やばくなれれば
彼女という死徒が掲げる不死は三相の顔。力を吸収して進化をする性質と強靭な生命力を持つ怪獣としての自分。永遠不変の美貌を持つ死徒としての自分。今の世界の霊長の覇者、人間としての自分。
「呪術廻戦世界の法則を滅ぼせという命令。オールトの雲の小惑星を片っ端から渡り歩いて数稼いだORTのように、捕食による進化で『複数の星の根源を超越した』という実績を保有する新宇宙伝説魔獣の力さえ充分に使えれば、すぐに目的を達成できるのに。ウルトラマンのせいで基本的に死徒としての力をメインとして戦う羽目になるのがはがゆいな・・・・・」
直感と未来測定と未来予測を組み合わせた複合
ウルトラシリーズの世界から呪術廻戦の世界に転生したことと死徒の目線を得たことで気づいたことがある。
ウルトラマン含む、ウルトラ怪獣達はそこにいるだけで物理法則を常時改変している疑惑があることだ。型月風に言えば、独自のテクスチャルールを周囲の空間に敷いていることに相当する?それとも抑止力や世界から修正を受けない真性悪魔の固有結界が例えとして相応しい?それとも汎人類史ORTの侵食固有結界・水晶渓谷に近しいのか?
あるSF作家が書いたウルトラマンの公式小説では、怪獣達にミサイル攻撃があまり効かない理由に、限られた存在だけしか突破できない再生能力があるから。一種の特殊な力の場を体外体内問わず展開しているから。とある魔術の禁書目録に登場する垣根帝督の
少なくとも私が内包しているメツオロチは全てに当て嵌まっているが・・・・・。サンプルが一つでは足りん!!できることなら、他の
怪獣としての凶悪な食性だけでなく、知性体が持つ
そして、原理血戒という特異点を所有する死徒の目線からウルトラ怪獣達が内包している神秘を考察する彼女は研究者としての魔術師の素質があると言えるかもしれない。
・・・・・所詮は仮定だが、型月世界に彼女が怪獣としての力を持ちつつ死徒として転生することになっていたら、コインの表と裏。人理と原理。英霊と死徒の最終到達目標である『星の最終回答』。世界征服を可能とする実力がある神霊と同じか、それ以上の力を持つⅨ階梯の死徒。番外位のロア含む二十七祖の皆様と一緒にアーキタイプの作成を仲良く目指していたかもしれない。
そう考えると、呪術廻戦世界でオーバーカウント1999やアルズベリ天動説の真似事を仲間の死徒を増やさずに一人でしようとする彼女の現状は見る人が見れば憐れみを覚えざるを得ないだろう。
「特級呪霊といえどもこんなモノか・・・・・。メツオロチの力をパワーソースにすることで死徒としての力を更に底上げしているとはいえ弱すぎる。国家を転覆できる特級術師なら私の相手になるか?」
目的の場所である、廃病院跡地。そこには疫病を元にしたと思われる特級呪霊をエネルギーを吸収する紫色のフィールドで呪霊が拠点にしていた廃病院ごと丸ごと跡形もなく捕食した彼女の姿があった。
「姿形も覚える価値もない蝿未満の存在だったが、流石は特級呪霊。貴様を構成する
今回の彼女の活動の目的は、まだ出会っていない特級呪霊がどんな味をしているかの確認。純粋な好奇心による活動だった。結果は人間と比べるとまだまだだが、怪獣としての彼女の側面は満足する
「さて、私がわざと土地全体に染みつくように撒き散らした呪いを確認しにここに来るであろう、有象無象よ。私という呪いに対してどういう評価を下す?」
空間支配能力を利用した擬似的な未来予知で羂索と特級呪霊達がここに来る。自然呪霊達が星を侵し殺して作り変える原理血戒を保有する死徒をどう評価することを分かっていた上で、彼女は呪いを土地に撒き散らす。己の存在を誇示するように。
メツ=ストリガ=モルモー=ラミア=アラ=ガアシエンディエタ=オロチという死徒が霧化で霧散して消えていって、しばらくした後。
廃病院の跡地に三つの存在が現れた。
姿を現したのは、頭に縫い目がある袈裟を着た男性と一つ目の火山頭の呪霊と樹木のような呪霊だった。
「この土地に染み付いた呪いを君らはどう思う?」
「この呪いの持ち主は儂らとは絶対に相容れぬと断言できる」
『この呪いは・・・・・危険です!!人間や呪霊どころか、自然も殺す呪いです』
未だに彼女の正体や目的どころか姿形を完全に知る者はいない。捉えることができる者もいない。
世界でただ一人しかいない死徒の暗躍は続く。
人間も呪霊関係なく、己の気分次第で、平等に不平等に、
感想がないのが寂しい・・・・・。