神から与えられし祝福/呪い それは死徒化   作:一般通過龍

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呪術師を統制し監督する為の機関であり、事実上の日本最高権力。腐ったミカンと称された老人達が多くいる呪術総監部では、メツ=ストリガ=モルモー=ラミア=アラ=ガアシエンディエタ=オロチという名前を戴いた死徒が齎した破壊活動の対応に追われていた。

 

 

 

「大阪市は壊滅。何も残っておらぬ」

 

「これをどう公表する?」

 

「そもそも件の存在はまだ見つからぬのか?」

 

 

「幸いにもかの存在が呪いをばら撒いた土地には、呪霊が発生しなくなっていると報告されているから、放っておいてもいいのでは?」

 

「キサマの頭はお花畑か。アレは計画的に動いて、天元様の浄界(結界)を汚染し回っている。どう考えても碌な目的ではないと確信できる。我々にも被害が及ぶのも時間の問題だ」

 

「呪霊でも術師でもない異質な呪いをばら撒くモノ・・・・・何者だ・・・・・・?」

 

 


 

 

 

 

飛騨霊山。天照大御神を祀る神社がある場所である。

だが・・・・・そこに祀られているのは、天照大御神だけではない。

 

 

 

花神、花中の王、百花の王、天香国色。それら全ては、牡丹の別名である。中国史における美女の代名詞の一人である楊貴妃も、嘗てはこの花に例えられていた。

 

 

牡丹と言う花はまさに、美しい花の代表格とも言うべき花であり、それ故に女の美を表現する手段としては極めてオーソドックスである事の裏返しでもある。

 

有り触れた美の修辞技法(レトリック)では、彼女の仕草の美しさを表現出来ない。座れば牡丹、と言う言葉があるが、彼女という吸血鬼(死徒)の艶やかさを大輪の牡丹で表現するのは、余りにも陳腐だった。詩才がないとすら、罵られるであろう。

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

それほどまでに彼女という死徒は美しかった。形容しがたい美貌の持ち主だった。知覚しただけで骨抜きにされて魂が彼女の美貌に囚われるほど。

 

━━━━最早美しいと言う言葉すら、彼女の前では使う事が失礼(愚弄)にあたるかもしれない。美しいと言う言葉は、彼女を表現出来る修辞技法(レトリック)がこの世に存在しない為、仮に使っているだけに過ぎない。彼女の美を表現する方法は、宇宙が死を迎えるその時までもう存在しないだろう。

 

彼女と言う存在を、二人の術師はあるがままに感じる事しかもう出来ない。

 

冷えた林檎や熟れた桃、たわわに実り垂れ下がる葡萄を思わせるような果実にも似た香気をその身から発散させたその美女の。

 

自由を謳歌するが如き、腰まで伸ばした青い髪と、美神ですらも嫉妬を覚える程、周りの空間ごと白く輝くその美貌の女の正体を。

 

 

嫌々ながらも覚悟を決めて、飛騨霊山浄界で術師や呪霊でもないUNKNOWN(アンノウン)と呼べる存在を待ち構えていた日下部篤也と七海建人。二人の一級術師の意識をその美貌で容易く刈り取って己のモノにした彼女は余裕を持って優雅に歩く。

 

宿儺の即身仏がある場所に向けて。

 

 

はっきり言って、魅了の魔眼が宝の持ち腐れになってしまうほど私の美貌は足切り能力として見ても優秀すぎる。

 

少しでも知覚しただけの対象を魅了して行動不能にするのは序の口で、無機物や空間、世界そのものを魅了することができるのだから。

 

特有の超抜能力になっている規格外の美貌。これ一つだけでも死徒として食っていけるだろう。

 

 

けれど、私にとってこれは長所でもあると同時に欠点でもある。美貌のおかげで大抵の存在が抵抗してくれない、私に食われないように生きるための戦闘を開始してくれない。醜く(美しく)生に執着する良い反応を見せてくれない。

 

━━━━━目の前でテクノブレイクする輩が多い。殺生院キアラや魔界都市新宿の『姫』みたいな趣味を持っていないから困る。そういう面では人間や怪獣としての身体があって良かったというべきだ。

 

 

彼女は三つある自分の身体を気に入っていた。これに比べると前世の前世。人間としての自分、かつての身体は醜悪だな。という感想を抱くくらいに。

 

まあ、率直に言うと美人な女性の身体になったことを彼女は喜んでいたのである。TS転生をエンジョイしていたのである。だが、それはそれとして美しすぎることに不満を持っていた。贅沢な悩みともとれるが。

 

 

原作では、無くなっても結界(浄界)の構成に問題ないと天元の口から語られていた宿儺の即身仏だが・・・・・・。

 

即身仏が人々の安寧を祈って自ら死んでミイラ化した存在であるのと同時にオリジナルの両面宿儺が飛騨を守る英雄として活動したのを考えると、飛騨霊山に宿儺の即身仏を置くのは皮肉や願掛けの類としては一流だな。宿儺自身に対しての愚弄としても。

 

本当にいい性格をしているな、天元とやらは。

 

 

「さて、予定通りに喰うか」

 

 

彼女の影が動き出す。怪獣のカタチを形成した深く青く美しく妖しく輝いている影が、目的の宿儺の即身仏を捕食するために。

 

そういえば、ウルトラマンティガで宿那鬼という両面宿儺がモチーフの一つとして入っている怪獣(妖怪)がいたな。アレも両面宿儺本人ではない、どちらかと云えばもう一つのモチーフ元の酒呑童子要素が強い妖怪()だったが。まさか、ウルトラ世界の両面宿儺本人が宿那鬼を器としてガタノゾーアを筆頭とした闇の勢力と戦っていたという衝撃的な事実が明かされたのは驚いたな。

 

 

彼女という死徒が飛騨霊山に訪れた意味の一つ。宿儺の即身仏を喰ってみたいという目的を成した女は次の行動に移った。

 

美貌に見惚れてボーとしている一級術師。七海建人を吸血しようと。

 

どうせ死ぬ運命なら私に収穫されて血肉()になる方が有意義な人生になるだろうという傲慢な、いかにも上位存在みたいな考えを抱きながら。

 

 

七海建人一級術師の首筋に肉食獣より凶悪な吸血鬼の牙がゆっくりと迫る。

 

着ている和服から雪のような白い肌を艶やかに露出させながら、獲物を締め付ける大蛇のように、術師として鍛え上げられた対象(オトコ)の身体に、自慢の自身(オンナ)の身体を絡み付かせて。

 

それは男女の営みのように。

 

 

 

シン・陰流「簡易領域」

 

居合「夕月」

 

 

「一時的とはいえ、私の美貌による呪縛から逃れることができたか。見事だな」

 

 

誰もが見惚れてしまう彼女の吸血行為を中断させて対象を救うという偉業を成し遂げたのは日下部篤也というくたびれたサラリーマンのように見える男だった。

 

居合を当てようとした瞬間に高位の死徒が持つ共通の特性という概念防御の前に日本刀を置き去りにしたまま、まるで巨大な壁に突進したかのように弾き飛ばされたが、寸前で七海建人を彼女から引き剥がすことに成功したのだ。彼は。

 

だが代償は重かった。七海建人の代わりに吸血されるという運命を背負ってしまった、美しい死そのものではないかという彼女の興味をその身で受け止める羽目になったから。

 

 

「この感覚は呪具だな。それも特級相応の。だがな、こんな玩具では私には届かんよ」

 

 

聞くだけで、男を射精させ、腎虚にすら陥らせる程艶やかな魔声を発しながら、吸血鬼の女は繊手で、日下部篤也が念には念を入れて特別に持っていくことを許された特級呪具の日本刀をクッキーのように砕いて、破片を己の喉に流し込んで咀嚼した。

 

咀嚼音が遥かに遠い。音が、礼儀を弁えている。或いは、彼女の不興を買うのが恐ろし過ぎて、物理法則が、金属が砕けたら音を立てると言う当然の理屈を捻じ曲げているのだ。

 

 

頭で考えるのでなく、背骨で考えて行動する?簡易領域による自動カウンター?そんなモノは知らん!!こんなモノで彼女の動きを食い止めることが思うことができるなんて烏滸がましい。無知蒙昧極まれる!!

 

簡易領域を全身で捕食しながら迫ってくる『美』に対して日下部篤也は何もできない。何も行動できない。

 

 

「怪獣や死徒の特性を所有している私という存在(生物)には、単なる無手で殴ることも無意味な行為だが・・・・・もう聞こえなくなったのか、落胆したぞ」

 

 

ふたたび彼女の美貌に魅了されて自我を囚われたから。しかも今度は魅了の魔眼によるおまけつきだ。

 

 

 

 

「有り難く思え。貴様の血を吸ってやろう。なに心配はするな、殺す気はない。私の血を送り込むこともない」

 

 

 

元来、吸血鬼伝承による吸血鬼の吸血行為は性のメタファーではないかと暗喩される。

 

 

彼女という死徒が対象(獲物)を捕食する手段は色々とあるが、吸血鬼らしい吸血行為を受ける者は世界一な幸せ(不幸な)者だろう。

 

 

実際に日下部篤也という男はあまりの快感に光悦とした表情を浮かべている。━━━━━最早手遅れ。彼女が齎す行為以外では、あらゆる快楽を感じなくなる身体になったのだ。

 

あらゆる存在を美貌だけで忘我の域に誘い天上楽土に至らせることが可能な彼女は正に世界を滅ぼす毒婦(ヴァンプ)

 

 

この日、死徒としての姿を見た者はことごとくと言っていいほど殺していた彼女から、本人の気紛れとはいえ、例外として奇跡的に生き延びた者が二人も出た。

 

ただし、二人の男達の世界から色が消えた。美しいと言った感覚を感じにくくなったのだ。

 

 




極めた美貌=最強。
足切り能力としても優秀で世界そのものを従えて、根源にも到達できる最強の能力です。
奈須きのこ氏が影響を受けている作家の一つである、菊地秀行先生の作品を見ているとそう思いますよね。
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