神から与えられし祝福/呪い それは死徒化   作:一般通過龍

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いつものように独自解釈や独自設定があります。


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原理血戒と書いてイデアブラッドとはよく言ったモノだ。元ネタのイデアの意味はイデア界に存在するものごとの真の姿。ものごとの原型(アーキタイプ)を指すからな。

 

各々の方法と原理で不老不死を追求して体現する死徒にとっては、絶対的な永遠不変な概念の一つであるイデアという単語は構成素材としてとても似合っている。本当に。

 

 

 

第七聖典・断罪死のように『原理を停止』させるか、直死の魔眼みたいに『別世界のルール(法則)を飛び越えて直接死に至らせる』ことが出来る例外中の例外。私の原理(世界)の法則を無視して原理血戒ごと滅することが可能な存在は、この世界にいないだろう。

 

彼女は月姫リメイクにおける設定アップデートで死徒側の冠位(グランド)の証たる原理血戒を駆動させている時の祖は、基本的に不滅の存在であるという説を信じていたのであった。

 

 

「それにしても━━━これは、監視のつもりか?血袋(人間)以下の分際の癖に気配が鬱陶しい。一切合切とくと失せるがいい」

 

青色の和服を着た女は右手首の先を上から下に向けてフワ、と仰いだ。

 

それに合わせ、彼女が今いる地域の全ての呪霊達が重力のような見えない何かの力に存在ごと否定されたように(・・・・・・・・)押し潰され、割れた水風船のように地面へと弾け飛んで消滅した。

 

最近、敵意を筆頭とした感情を向けられやすくなっている頻度が増したな・・・・・。色々な場所を観光がてらに行脚しながら、聖杯で作られる特異点そのものと例えることができる原理血戒の世界(惑星)規模の呪いを主に日本という土地にばら撒いてテクスチャを汚染しているとはいえ、術師はともかく人間から生まれた絞りカス風情に敵意といった感情を抱かれるのは不快だ。

 

・・・・・・こちらから出向いてやるとしよう。

 

魂レベルで高次元の存在と化した影響で五感以外の超常的な感覚器官が生えてきた彼女は、自身と因果を紡いだある特級呪霊の元に向かう。

 

 

 

「来たか・・・・・ッ!!??」

 

極限の美を知覚してしまった特級呪霊は、彼女の美貌に引き寄せられて殺されてしまった数多の犠牲者達と同じように意識を囚われる。

 

美しさを表すのに引き合いに出される言葉は、花や宝石の他に、著名な多神教の神々も含まれている。

アポロンやヴィーナスの二柱の神など、古今の文献を漁れば、果たしてどれ程美しさの比喩表現として使われて来たのだろう。

最早手垢が付き過ぎていて、美しさを表す言葉としては最早時代遅れにも甚だしい言葉となってしまっていると見て間違いはない。

 

そうと解っていても、火山頭の呪霊は、美の女神が地上に顕現した、と錯覚せずにはいられなかった。

 

秀麗類なきその美貌は漏瑚という名前の特級呪霊を見ていると言うよりは、空気中を漂う呪力や周囲の動きを見ているかのようであった。

 

傍目から見れば到底、漏瑚に関心を払っているとは思えない。一切の感情が宿らぬその表情の、何と美しい事か。

 

この女性がいる空間はその美しさの故に、例え汚穢蟠る吹き溜まりの一角ですら、アンブロジアが咲き誇る天国の花園宛らに錯覚する事であろう。しかし、この女性が佇む世界はその美しさの故に、自らの存在自体に世界を統合してしまい、風景や空間の調和と美を殺してしまう事であろう。

 

何と、罪深い美なのであろうか。

世界の存在意義の一つを奪い去る程の美を持ったこの女性が、此処まで大地と天空の怒りを買わずに生きられたのは、その美が地球や星辰すらも宥めるからか?真実は誰にも解らない。

 

彼女の『美』は、通常の存在では手の届く範囲にありながら決して理解できない(ふち)、全知全能ならぬ人知無能の域にある故に。

 

 

「それにしても、275万人以上の生命を糧にした私という世界の異物()の他にも呪霊や呪詛師と言った危険存在がいて、多くの人間達が国外逃亡せずに社会をいつも通りに回して生活している姿は滑稽で不思議だと思わないか?漏瑚とやら?」

 

「・・・・・・・」

 

岩手県にある山々の中で青い髪を月の光で輝かせながら、無言で呆けたように突っ立っている火山頭の呪霊に一方的に好き放題語りかける女性(死徒)がいた。

 

「一般的に考えたら、即座に海外逃亡するのが道理なのにな。ただし、やすやすと逃すつもりはない。日本だけでなく世界各地の土地を原理血戒の呪いで犯して、人間達に今以上の死を撒き散らすことも検討に入れている」

 

相手が話の意味を分かるどころか、『美』に見惚れてそもそも話を聞ける状態でなくても彼女は勝手に喋り続ける。独り言のように。自分に言い聞かせるように。

 

「羂索の奴に言われて来たのもあるが、この様子だと呪霊の未来の為に自分という存在が確実に生きて帰れないということも分かった上で私の力を測りに来たというところか?良いぞ、このまま縊り殺してもいいが特別だ。その覚悟に免じて動くことを許そうではないか」

 

気紛れを起こした彼女は魅了の魔眼を利用して、未だに自身の『美』に見惚れてしまっている漏瑚の魂に命令する。私の美貌の呪縛に囚われるなと。

 

相手の魂を魅了して、精神を操縦、操作することができる能力でもあるけど、魅了されるなという本末転倒な使い方をされた魅了の魔眼だったが、どうやら彼女の矛盾染みた命令は効果を無事発揮したようだ。

 

美貌による呪縛による行動不能状態から解放されたとはいえ、未だに彼女の手中にある仮初の自我の元で漏瑚が取った行動は領域展開。

 

『蓋棺鉄囲山』

 

 

全力で目の前の存在を殺すという意思が籠もった行動で顕現したのは、焼けた岩や溶岩で四方八方を囲まれた火山の内部のような領域。

 

「死ね!!儂らの世界の為に!!」

 

摂氏1400度にも達する、ビルと同じくらいの大きさのマグマの津波を真正面から受けて呑み込まれてしまう女、身に纏う衣裳が灰も残らず燃え失せ、彼女もまた瞬きよりも早い時間で燃え盛る人の形となった━━━━燃えていた時間も、一瞬だったが。

 

吸血鬼の華奢な肢体を舐め尽くすように纏われた炎があっという間に沈静化して行く。冷静に考えればあり得ない話である。地表近くのマグマの温度を超える超高温の熱を浴びていて、『無傷で人の形を保てている』と言う事自体が既に常軌を逸した光景だ。普通ならば、一瞬の内に人の形をした炭化したモノになり、最終的に灰も残らず消え失せる。

 

人の形の炎が、水が引いて行くように消えて行く。露になる、この世の『白』の見本のような色をした柔肌、悠々と風に任せるがままたなびいているネモフィラの如き青髪。そして、気高さと淫売のような毒婦ぶりが同居した、神ですら裸足で逃げ出すその美貌。真の美しさは、地球の血液ですら害せる事が出来ぬのか。マグマですら意思を持ち、焼き殺す事を躊躇うのか。そう感じずにはいられない。

 

死徒は、無傷であった。復元呪詛という過去の状態へ逆行する再生能力なしに。

 

「頑張れ頑張れ。今の私は上級死徒、Ⅶ階梯の力しか出さないように出力を手加減(セーブ)しているから、この世界では自然呪霊になっているが型月世界では精霊の分類に入る貴様は、もしかしたらこの私を倒せる可能性があるかもしれないぞ?」

 

意味が分からない単語が言葉の中にあるが、メスガキのように煽ってきた女に更なる攻撃を仕掛けようとした漏瑚だったが、ある事に気づいた。

 

自身の領域(世界)がナニカに侵食されていくように少しずつ消えていくのだ。

 

「世界の上に外殻という分かりやすい結界を組み立てる領域展開の性質は内側と外側を入れ替えて、一時的に世界の上に別世界を上書きする固有結界というより”招き蕩う黄金劇場”や”宙駆ける星の穂先”みたいな『固有結界に似て非なる大魔術』の類だなと個人的に思っていたが、ある意味死徒バージョンの空想具現化とも例えることが出来る原理血戒を駆動させている死徒を領域展開に入れたらこうなるのか。面白い」

 

どの道負ける運命とはいえ、漏瑚にとっての判断ミスは、侵蝕固有結界や自律式固有結界と同じように世界を区切らずに己の心象風景を具現化、世界を侵食して世界(テクスチャ)を己のモノにすることが可能な原理血戒(イデアブラッド)の持ち主の彼女に初手から領域展開を使ったことだった。

 

術式を付与した領域を結界で囲わず具現化させる神業領域と違って周囲の色を己の色と塗り替え、好きなモノを置く行為に等しい通常の固有結界相手だったら、漏瑚の蓋棺鉄囲山という領域は共存や後出しジャンケンで一方的に塗り替えることもできたかもしれない。

 

だが、通常の常識が通じないアンバランスゾーンからやってきた怪しげな獣の力を持っていることを除いても、彼女は血を巡らせるだけで惑星の物理法則を塗り替える特異点の原理血戒持ちの死徒である。周囲の空間の自分の理想の空間になる確率を操作、世界を自由に変貌させる空想具現化とも性質が近い異能(呪い)の使い手である。しかもアルクェイド・ブリュンスタッドの事象収納という名の地球白紙化現象にも対抗できる、新しい天体の卵故に出力や押し合い性能も高いというおまけ付きだ。

 

 

「ぬおおおおおお!!」

 

今にも剥がれ落ちそうな領域の中で漏瑚は必死に目の前の得体のしれない女に攻撃を必死に仕掛ける。だが、一切の効果はない。無意味だ。それどころか、攻撃する度に体力が奪われていって、相手の糧になっているような感じだ。

 

舐めプは相変わらずしているが、死徒だけでなく怪獣の力も解放し始めた彼女の周囲の空間は歪んでいる。世界の常識が通じないアンバランスゾーンと化している。

 

彼女の内面に渦巻く質量・・・・・あらゆる星を喰って己の糧にしてきた新宇宙伝説魔獣が蓄えてきたエネルギーの膨大さに、世界の法則さえ歪み始めているから。

 

漏瑚の必中必殺の攻撃は彼女が内包しているエネルギーの暴力で乱される。何の防御障壁も張っていない肉の体がマグマの熱を容易く無効化するという悪夢・・・・・。

 

単に生物としての存在規格(スケール)が違うことは、ここまでの絶望感を対峙する相手に与えるのか。

 

「汚染物質でもあると同時に地球の影法師でもある死徒()に負けるのか?自然に対する畏れから生まれた呪霊の癖に人間の立場に成り代わろうとする者が情けないと思わないのか?代わりに霊長の立場に着いてやろうか?」

 

 

唯一の攻撃らしい攻撃。全身に生えている突起から放たれた光弾のようにも見える青い雷で火礫蟲を全て撃ち落とした、獣化という名の怪獣娘形態になった女が疲労困憊な呪霊に煽るように語りかける。

 

 

 

『極ノ番・隕!!』

 

 

「なんだ、ただの火山弾ではないか。引力操作(アトラクション)

 

メツオーガの重力操作という生態にある能力でロアの魔術の真似事をした彼女に奥義の支配権が乗っ取られた瞬間、崩れゆく漏瑚の領域(現実)が彼女の原理血戒(空想)に封じ込められた。

 

 

結果は当然であった。祖には及ばない死徒であるジェスターも万全なら、力を取り戻しつつあるイシュタルの領域を一時的にかき混ぜるという。ならば、この戦い(遊び)で上級死徒と同じ力しか出さないように振る舞っていた女。Ⅸ階梯の祖に成り上がれる『王冠』と例えられる事ができる原理血戒を駆動させている彼女に勝てる訳が無かったのだ。

 

 

術式が焼き切れて、極ノ番という自身の奥義を相手に利用された挙句に今にも死にそうな状態、チェスで言えばチェックメイトに入った漏瑚が女に問いた。

 

「貴様は何者だ・・・・・?」

 

特級呪霊の予想に反して、女は返事を平然と何でもないように律儀に返す。

 

「楽しませてもらったお礼だ。正体を少しだけ明かす。私は破滅を齎す新宇宙伝説魔獣であり、あらゆるモノに死を徒に運ぶ吸血鬼でもある。まあ、分かりやすく言ったら侵略者(インベーダー)だな。そして人類だけでなく人間(ヒト)が産み出したモノに有利を取る死徒の特性が呪霊にも働いているから、神智学協会に登場する概念で例えたらエーテル体に当たるかもしれない貴様は腐っても人類とは切り離せない要素(一員)でもあろうよ」

 

「そうか・・・・・」

 

世界(宇宙)は“在る”と想定する事で多くの事象を説明できるが、既存の法則(ルール)がおかしくなる故に実在してはいけない不条理な『無』が根底にあり、動力として流動する。それは型月世界も私の前世がいた世界(ウルトラシリーズ)もこの世界も変わらない不変(モノ)。果実は腐り、体は欠け、生は止まる。この無意味な貴様の死も、歯車を回す一因と知るがよい」

 

彼女の()によって創造された未来も過去も曖昧な泡沫な異界。受肉した魔による即死宣言(メメントモリ)を思わせる、メツオロチの吸収フィールドの特性も付与された空間の中で漏瑚という特級呪霊は消え去ったのであった。

 

 

 

 

「しかし、死徒と真性悪魔の性質は色々と似ているな。死徒も真性悪魔も星に巣食ってルールを書き換えるモノだから似通うのは当たり前だと考えるべきなのか?実際に死徒二十七祖のメンバーに真性悪魔がいるのだから。そして、なんでもありなアンバランスゾーンに生息する怪獣としての(姿)が型月ナイズされた結果、生じたエーテルこそあり得ないモノを存在させる第六架空要素という名の無属性なのかだろうか?もしかして私という死徒は真性悪魔の座に到達したのか?」

 

 

世界から隔絶された何処かにある地下空洞で彼女は独り言のように呟きながら、物思いにふける。いつも通りに。

 

 

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