夢特典は皇帝竜の魔法? 作:流星群
遂に幽鬼の支配者編突入です。
S級クエスト(ほぼ十年クエスト)を何とか達成し、マグノリアの街に着いた。
ボロボロのラクサスを病院に送り届けた後、俺は食料を買いに街を歩いた。
街を歩く人々が俺の方を振り返る。俺の紋章を見て密々と話し始めた。
「お、
「凄えな、あのラクサスって奴と同じギルドか」
「難易度が高いクエスト達成したらしいぜ」
「流石、マスター・マカロフの孫だな」
色んな声が聞こえてくる。どうやら昨晩のクエスト達成は噂になってたようだ。
ゴミ箱に捨てられてる新聞紙を見つけた。
それを開くと、《妖精の尻尾の魔道士、ラクサス・ドレアー、超難関依頼達成》と書かれていた。これでラクサスの評判も上がるだろうか。
再び街を歩く。確かギルドの近くにいい店がある。
「おい、妖精の尻尾の魔道士だぜ」
「しっ、あまり見るな。気の毒だぜ」
「あ〜あ、これでギルドに行ったら現実を思い知らされるんだろうな」
先程とは打って変わって哀れな人を見る視線だった。一体何が起きたのだろう。
買い物をしてラクサスに食料を届ける。
病室を開ける。
あれ、1人多いな…
「ラクサスさん、食料を買ってきました」
「助かるぜ、リン」
「お前が…」
病院に戻るとそこには緑髪で長髪の青年が待っていた。
「お前がリン・フユノか」
「あ、はい、そうですが…」
「くくくっ…、そう固くなるな。こいつはフリード。俺のチームメンバーの雷神衆の1人だ」
「よ、よろしくお願いします。リン・フユノです」
「フリード・ジャスティーンだ。この前入った新人だな。お前に聞きたい事がある」
そう言うとフリードは俺の近くに来た。病室を2人で出る。
病室を出るなりフリードは俺の胸倉を掴んだ。そのまま壁に押し付ける。ゴンと俺の頭が壁にぶつかる。
前を見るとフリードは怒りの表情を浮かべていた。
「お前、ラクサスの足を引っ張ったな…!!」
そう言って俺を睨んでくる。
「あのラクサスが十年クエストになる依頼とはいえこんなに負傷して帰ってくるとは思えない。怪我の原因を俺がラクサス聞いたが、『俺の力量不足だ』の一点張りだ。だが、どう考えてもラクサスに付いて行ったお前がラクサスの荷物になったとしか思えない…」
「…はい、俺のせいです。俺は力不足でした」
そう言うとフリードの目は更に厳しくなった。
「…どうなってるのか知らんが、その馬鹿高い魔力を上手く使えばこんな事にはならなかったものを!!
…まあ、自分のせいだと分かってるなら良い。だが二度とラクサスの足を引っ張る真似はよせ。危険な依頼について行くな」
「はい…」
「はあ…。まあお前は新人だし一度目だから多めに見てやる。だがこの事はギルドや街の皆には隠しておけ。依頼で怪我をしたとなるとラクサスの信用が下がる。今日はもう帰れ」
それだけ言うとフリードは病室に入って行った。
今日は俺を入れないようだ。
些か新人に厳し過ぎる気もするがそれだけラクサスを慕っているのだろう。何処かで名誉挽回しなければ認めて貰えなさそうだ。
ギルドに向かう。門の前で立ち止まる。
何だ…あれ…
俺が見た光景。
ギルドの姿は大きく変わっていた。
建物は崩壊寸前。その原因はギルドに何本刺さった巨大な鋼鉄の棒。
ギルドが蜂の巣状態だった。
慌ててギルドの中に入る。
中には…いない。
下の方から声がする。
「な、何だ!?馬鹿デカい魔力が来たぞ!!」
「何者だ!!」
あ、やべっ…上がった魔力抑えられない…
そうしてると下から1人出て来た。
地下があったらしい…
「!!リン…!!」
「ビスカさん…遅れてすみません。おはようございます」
「…何なのその魔力…本当にリンなの?」
「色々わけがあって…抑えられないです…」
「……」
ビスカは顔をしかめた。俺だと信じられない様子だ。
下から更に人が来る。
「あっ…リン、今日は来たんだ。てっ…身体ボロボロじゃん!!どうしたの?」
「あ、平気です。転んだだけで…」
「嘘っ!?なわけないでしょ」
「大丈夫です。それよりレビィさん…ギルドのこれは…」
上を指差す。レビィは決して納得してなかったが話し始めた。
「…北東の方のギルド、
どうやら誰もいない夜中にギルドがこんなにされたらしい。
幸い怪我人はいない様子。
そう思っていると外から誰か来た。
「おいっ!!中にいるのは誰だ!!」
「気をつけろ!!恐ろしい程の魔力だ!!」
この魔力は…
「おいっ、皆っ…無事か…!!」
「何でこんな事に…」
「くそっ、ファントムの野郎!!」
「マスター…!!」
そこにいたのはナツ、ルーシィ、グレイ、エルザだった。
「っ…リン…お前か…その魔力…」
「そうだが…」
「ほ、本当にリンなの…?」
ナツとルーシィですら俺を疑っている。
昨晩のクエストによる吹雪によるスリップダメージとラクサスの潰された腕及び魔力欠乏症の回復の代償、更に完成した皇帝竜1号の反動ダメージで魔力が大きく上昇してるようだ。
グレイとエルザさんは俺を化け物を見る目になりかけてる。
「…っ…まあ良い。それよりこの状況について誰か教えて欲しい」
エルザさんは取り敢えず話をずらした。
ここだと落ち着かないのでそのまま地下へと案内される。
「よっ、お帰り」
マスターが酒を飲みながら片手をあげた。
「マスター、これはどういう事ですか!?」
「んん、どうって事ないわい。あ、それよりお前達勝手にS級クエストに行きおって、お仕置きじゃ」
そう言ってナツとグレイ、ハッピーの頭を叩き、ルーシィのお尻を叩いた。
その悠長な態度にナツ達は怒ったが、マスターから一連の事を教えられると怪我人がいない事に少し安心した様子だった。同時に
その場はお開きになった。
皆それぞれ帰宅する。
俺はラクサスの様子が気になる為病院に一度顔を出した。ラクサスは既に殆ど回復しており、少し動けるようになっていた。
看病していたフリードに追い払われた。ゆっくり休んで欲しい。
自分の借アパートへと向かう。
階段を登った。何処かの部屋が騒がしい。
ドアに手を掛けて気付いた。あれ?空いてる。鍵掛けたはずなんだが。ていうか、何だか中が騒がしいな。泥棒がいるのか?
そう思ってドアを開けた。
「よう、遅かったな」
「待っていたぞ」
「遅せーぞリン。早く夕飯作ってくれよ〜」
「ご、ごめん勝手に入って、私も色々手伝うから…」
「あい」
????
まるで意味が分からんぞ?
何で増えてるんだ!?
「
「あ…、成る程…」
エルザさんの説明を聞いて俺は納得した。まだこの街にそのギルドの面子が隠れてる可能性はある。
…確かに1人でいるのは危険かも知れない。
「それはそうと、何もない部屋だな…」
「見て見てルーシィ、これリンの下着だよ〜」
「ひゃあっ、ナイスよハッピー、それ私に寄越しなさい♪」
「す、凄いな。男子と言うのはこういうのを履くのか」
「リン〜、唐揚げ作ってくれよ」
…ナツの夕食リクエストは兎も角、女子達と猫は何をやってるんねん。
取り敢えず、風呂を洗って、順番に入って貰い、夕食を作り始めた。5人分と猫が食べる分あるだろうか。
「んふふっ♪リンのエプロン姿良いわね♪」
「様になってるな。一家に1台欲しい所だ」
「あ、ずるいよエルザ。私だって欲しいんだからっ」
料理をしてるとルーシィと風呂からあがったエルザさんが俺の方を見てきた。俺は家政夫だろうか。ルーシィやエルザさんの。…全然ありだな。
別に見ていても良いが、俺だってルーシィやエルザさんがエプロン姿で料理をするのを見てみたい。2人共凄く綺麗なんだしさ。料理に自信があったら手伝ってくれても良いんだぞ。
「出来たぞ」
ルーシィが風呂から出たタイミングでテーブルに料理を出した。唐揚げ(特製香味野菜のソースかけ)、コールスローサラダ、卵スープ。
「おおっ、美味そうだな〜」
「流石ね♪リン」
「わあ〜い、オイラは刺身だ〜」
「ふっ、香りと見た目は良いな」
「やるじゃねえか」
そう言って手を伸ばし始める一同。
夕食は賑やかだった。完食した。
順番に風呂に入り、それぞれ寛ぐ。
ベッドに腰掛けるエルザさん、机の椅子にグレイ、ナツはソファ、ルーシィはテーブルの椅子に腰掛けていた。
グレイはなんか読んでる。ノートみたいな…
ん?それ、俺の日記だ。
…まあ、良いけど…
「グレイ、それは何だ?私に見せて見ろ」
「あ、おい、エルザ、ったく良いところだったのによ」
あっ、エルザさんに取られた。俺の日記…
「それで、なんでファントムは急に襲ってきたの?」
ルーシィが俺も気になってた事をエルザさんに質問する。
「うむ、それなんだが…」
それからエルザさんの説明が始まった。
妖精の尻尾と幽鬼の支配者。2つのギルドは昔から仲が悪く、しばしば小競り合いを起こしていた。
両ギルドの実力は拮抗しており、魔道士の質は妖精の尻尾の方が上だが、構成人数では幽鬼の支配者が圧倒的に上回るようだ。
加えて向こうにもS級魔道士である4人の魔道士(通称エレメント4)がいる。そして、更に今回のギルド襲撃の主犯である幽鬼の支配者の象徴、鋼鉄の滅竜魔道士。
その名もガジル・レッドフォックスと名乗る男がいるようだ。
だが、今回何故、襲ってきたのかはエルザさんにも分からないらしい。
やがて皆、それぞれの場所で休み始める。俺は寝る場所が無いので、今回の襲撃の事を考えていた。
一体何が目的で襲ってきたのか。
恐らくギルドを蜂の巣にしたのは宣戦布告。これからより大きな争いが起こる。
一体何が起きるのか。
ギルド間で争いが起きたら起こる事を想像する。
拉致、殺害、資源の強奪…
…………。
…………。
……駄目だ。新人の俺に分かる訳ねえ。
考えても仕方無いのでベランダに出て外の様子を眺めた。
街の夜景を見る。ここからだと目の前の建物が遮って暗いだけだ。
そう言えばラクサスさん達は病院だが無事だろうか。フリードがいるが彼の実力や魔法を俺は知らない。気になって仕方が無かった。
俺は翼を生やして、夜の街を飛ぼうとした。
「どこ行くの?」
背中にかけられた声に振り返る。ルーシィがベランダに出ていた。部屋の方を見ると3人共寝ていた。
「ちょっと夜景を観ようと思ってな…寝ないのか?」
「あははは、私もそうしようと思ったんだけどね…。ベッド、エルザに取られちゃった」
ベッドの方を見るとエルザさんが真ん中に陣取って寝ている。成る程、あれじゃルーシィは眠れないな。
「ねえ、空飛ぶんでしょ、どうせ寝られないから私も連れて行って」
「OK、浮かせるよ」
1人で病院に行くつもりだったが、仕方無い。別にルーシィには病室の外で待ってて貰えば良いだろう。
ルーシィの身体に魔法をかける。すると彼女の身体が浮き上がった。
「わあっ…」
そのまま2人でベランダから飛ぶ、そのまま斜めに上昇していき、目の前の建物を超えた。
やがてマグノリアの街のどの建物よりも高く飛ぶ。あの大きな建物はカルディア大聖堂。
「素敵…凄く綺麗…」
隣を飛ぶルーシィは街の夜景に感動している様子だった。その美しさに思わず見惚れてしまう。
「ねえ、リン…」
「ん?」
隣を飛行するルーシィに声をかけられる。そちらを見るとルーシィは俺の方をじっと見ていた。少し耳が熱くなる。
「今度、2人で何処か行かない?」
綺麗な顔が此方を見ていた。俺は息をするのも忘れてルーシィの方を見ていた。
「え、えっと…俺と…?」
「うん」
そう言う頬は薄っすらと赤らんでいた。俺はバレないように呼吸を静かに整えると返事をしようとした。
ゴッ!!!!
「「!!!」」
しかしそれは叶わなかった。突如轟音が夜の街に轟いた。鉄を何かに衝突させる音だった。
「っ…何、今の」
「分からない、けど…」
2人でそちらを見る。どう考えても夜の工事には思えなかった。嫌な予感がした。
「行くか…!!」
「うんっ」
一気に音がする方向へ飛行し、移動する。
音は続いていた。悲鳴が聞こえてくる。聞いた事があるような声だ。
辿り着いた。
「っ!!!」
「レビィちゃん!!」
そこには驚くべき光景が広がっていた。
何と見知らぬ長髪のガタイの良い男が妖精の尻尾のメンバー、チームシャドウ・ギアの3人を攻撃していたのだ。
男の2人、ジェットとドロイは倒れ、レビィは地面に這いつくばっていた。辺りに鉄の匂いがする。この魔力はギルドを蜂の巣にした鉄棒と同じだった。
再び男が攻撃しようとする。
「
「がああああああっ!!!」
空から男の背中に青く光る稲妻を撃ち込む。蒼雷は鋼鉄男に激突し、一気にスパークする。
煙を上げて男が倒れた隙に、2人で地面に降り立ち、シャドウ・ギアの3人の所へ向かう。
「レビィちゃん!!しっかりしてっ!!」
「…ルーちゃん?」
「大丈夫!?直ぐに何とかするから、リンっ、少しだけお願いっ、全部は駄目だからね!!」
「ああ」
レビィに回復魔法をかける。同時に俺に雷が降り注ぎ、ダメージを受ける。結構痛いな…大分喰らったみたいだ。
後ろで立ち上がる気配がする。
「よそ見とは、余裕だな!!」
鋼鉄男は俺に鉄棒で攻撃してくる。
俺はその鉄棒に向かって雷の魔力を纏った雷撃の蹴りを放った。
蹴りが命中し、雷が鉄棒に降り注ぐ。
ドガガガガガッ!!!
「ぐおおおっ!!!」
「っ…!!!」
一気に降り注ぐ青い雷。鉄棒が大きく弾かれ、バキッと鉄が折れる音がする。文字通り蹴った所から真っ二つに折れた。「ぐうううっ!!!」と鋼鉄男が苦悶の声をあげるが、俺の脚も痛い。腕を抑える鋼鉄男。
「クソがあっ!!…ぎひっ、ならこれでどうだ!?」
そう言うと腕を変形させ、鉄の剣を作る。ウオオオンッと唸る鋼鉄の剣。返しの刃が無数に生えており、触れたものを切り刻むものだと分かる。更に自分の身体も鋼鉄の皮膚に変化させた。
「何よ、あれ…」
後ろにいるルーシィが呟く。ここで攻撃を避ければ後ろにいる人達が殺られる。
それならば…俺は魔法陣を構える。
「うらあっ!!!」
一気に突っ込んで来る。光のように速い。だがその一撃は鋼鉄男自身も重そうだ。腕を振り上げた今がチャンス。
「
「があっ!!!」
俺は一気に鋼鉄男の懐に入り込み、雷を纏った一撃を喰らわせた。バリバリバリッと轟音が鳴り響き、鉄の鱗が破壊される。
怯んだ鋼鉄男にもう一撃。魔法陣を発動する。
「
「があああああああっ!!!」
鋼鉄の剣が破壊された。鉄鱗も吹き飛んだ。鋼鉄男は大ダメージを受けようだ。
「くっ、畜生っ!!!」
後ろに吹き飛んで距離が出来たのを良いことに鋼鉄男は闇の中に消えた。
暫く辺りを警戒していたが逃げたようだ。
「リン、大丈夫!?」
ルーシィが後ろから駆け寄って来た。
俺は頷いた。
後ろを見るとまだ、ジェットとドロイの2人が倒れている。
彼らを回復させなければならない。
俺はそちらへと向かうのだった。
少し戦わせました。