夢特典は皇帝竜の魔法? 作:流星群
今回は彼のターンです。
「美味しい〜、美味しい〜♪」
もぐもぐと高級ステーキの塊をルーシィが頬張っていた。幸せそうな顔を見ていると心が癒される。
俺はその緩んだ笑顔に満足しながら、彼女と自分の空になった皿を見た。
「ステーキ、まだあるから焼こうか?」
「ひゃあっ、本当に良いの!?」
「ああ、古くならないうちに全部消化しないといけないからさ」
「もうっ、リン最高♪大好き♪」
大好きって言われた。超嬉しい。ルーシィの為にテレビを適当につけて、そのまま台所に向かう。
彼女もついてきた。冷蔵庫から肉を取り出す。
「ちょっと、こんなに買ったの?報酬幾ら貰ったのよっ」
「800万
「凄〜い、家賃何年分よ!!本当羨ましいわ、あたし達と大違いよ!!」
「ぷっ、ルーシィが金欠になるの久しぶりに見た気がする」
「本当よ〜、
ギルドに帰った時に最強チームの面子聞いてから、薄々察してたけど、やっぱりやりたい放題だったか…。ルーシィも大変だな。
それはそうと、これだけS級クエストの報酬が高いなら色々使いようはあるな。
後で大きな家買おうかな。目指すはルーシィと2人暮らし。うん、燃えてきたぜ。
ステーキを適量サイズにカットしてフライパンで焼き始める。ジュウウッと脂の音がする。ルーシィが後ろで見ている。
何故、俺の家でルーシィと俺がステーキを食べているのか。
事は俺がS級クエストを達成して帰って来た夜に遡る。
「もうやだ、あたし頑張れな〜い」
ルーシィがテーブルに突っ伏していた。
大きな胸がつぶれて眼福だった。
ラクサスとのS級クエストを達成した後に、ギルドメンバーに褒められて(その際にルーシィとの関係を聞かれたので「俺が彼女を好きなだけです」と言ったら崩れた者が十数名いた)、アパートの部屋に戻ってきた。
その日は疲労でぶっ倒れて気が付けば朝になっていた。
昼頃俺は起きた。インターホンがなっていた。戸を開けるとルーシィがいた。「帰ってたんだ、お帰りなさい、あたしもこれからギルドに行くところなの」と笑顔を見せてくれたけど、何処か疲れていた様子だった。
取り敢えず、まだ何も食べて無いのでルーシィの昼食も兼ねて料理をする事にした。彼女を部屋に入れて最近の話を聞くと、ルーシィはエルザ、ナツ、グレイ、ハッピーの4人と1匹でチームを組んだみたいだ。
ギルドに帰って来た時に
しかしそれとは裏腹にそのチームで達成した依頼はお世辞にも上手く行ったとは言えないみたいだ。現にルーシィはお金が足りず、大家さんに怒られて泣きながら俺の部屋に来ている。
とって置きのお土産があるからと俺は彼女をソファに座らせた。
出来た料理を運んで彼女の前に置いた。高級ステーキだ。
「ああん、リン〜、ありがと…、ひゃあっ、美味しそう、ていうかこの肉高いんじゃないの?」
「S級クエスト達成したからな、報酬だけは凄いよ。そっちも凄く大変そうだな、どしたん?」
「羨ましいっ、凄く羨ましいってばっ、ずるいよこんなの。聞いてよ〜、ナツとエルザがクエストで街を滅茶苦茶にするのよ〜、止めようにもあたし星霊1体ずつしか呼べないし、あたし抑えられない〜!」
どうやらナツとエルザがクエストで山賊ギルド辺りを殲滅する際に周りを見ないで攻撃し、街中を巻き込んだようだ。
お陰で報酬は貰えず、逆に被害請求でごっそりと金を取られたらしく、ルーシィは金欠状態だった。
「もうやだ、リンー!!ラクサスの依頼断ってあたしと依頼に行ってよ〜、このままじゃ家賃払えな〜い」
「取り敢えず明日空いてるから一緒に行こうか」
「リン〜!!」
「ぷっ、可哀想。でも、楽しそうだな」
ルーシィは不満気だったがその表情は柔らかい。エルザやナツとの相性は凄く良いようだ。楽しめてるようで何よりだ。
「リンはどう?」
「俺か?難しい依頼だったよ」
ルーシィが俺の行った仕事に興味を持った。
俺の方はと言うと、ラクサスとのクエストでとある村の人を襲う魔獣との戦闘は勿論、村人に魔獣がかけた呪いの解除、及び魔獣の討伐系の依頼に当たった。
正直俺はこういう知識は足りないので大変だった。魔獣に噛まれた村人の死の呪いを治すのに、いつもの回復魔法をかけてダメージで肩代わりをしたが呪いが強すぎてダメージが深くなり、途中でやめた。呪いを解除するには魔獣の雌の血が必要だったので、群れの中にいる雌を捕らえて、解剖し、その心臓の血を採取した。村の名医に魔獣を引き渡して、呪いがかかった1人1人に注射を打ち、呪いを解除した。
しかしそこに魔獣の群れが大量に押し寄せて来た。何かがおかしいと思った俺はふと村人の中に魔力を発する人間がいるのに気付いた。その魔力が魔獣のそれに似ている事に気付いて、その村人に魔法を発射すると、変身魔法が解除され、その村人の姿は悪魔へと変化した。
なんと人間の言葉を覚えた悪魔が人間に変身して、配下の魔獣を操り、人間を襲わせていたのだ。そして魔獣によって殺された人間を喰っていたのはその悪魔だった。
俺とラクサスはその悪魔と戦ったが、これがまた強かった。魔獣との戦いで消耗していた事もあり、苦戦したが、唯一、俺とラクサスが上回っているスピードでダメージを与え続け、ラクサスが雷で痺れさせた所を煉獄砕破で攻撃し、更に皇帝竜1号をくらわせてなんとか倒した。
「ちょ、ちょっと、あんた大丈夫?いつやられるかハラハラするわよ…」
「ラクサスもついてるから大丈夫さ、最悪依頼なんて無視して逃げる気でいるから、流石に今回の依頼は危なかったからもう少し調整するってよ」
「よ、良かった…、依頼なんかであんたがいなくなったら、あたし絶対耐えられないから」
ホッとしたようにソファに座るルーシィ。
俺は席を立った。時計を見るともう時間だ。ギルドに行かないといけない。
「それじゃ、ギルド行こうか。俺、エルフマンと約束があるんだ」
「あっ、そう言えば行く前になんか言ってたわね、何するの?」
「全身
「そっか、ねえ、ギルドまで一緒に行かない?」
「ああ、一緒に行こうか」
ギルドに行き、挨拶をする。その際に多くの目が俺とルーシィを見ていた。S級クエストから帰って来た時といい何かあったのだろうか?
エルフマンと約束の場所へと向かう。エルフマンはギルドの裏の森の広場で待っていた。隣にはミラジェーンさんもいる。
「遅かったな、リン、漢らしくないぞ」
「悪い、予想外に依頼が長引いたから、お詫びとして全身
「そうこなくっちゃな、行くぞ」
エルフマンは魔力を込めた。身体が徐々に魔物の姿になった。
「うっ、がああああああ」
しかし、意識を乗っ取られたようで苦しみ出した。そのまま腕を振り回して、周囲を破壊する。
失敗だな。
俺は近づいて魔法でエルフマンに電気ショックを与えて魔力を霧散させる。
「があっ、はっ、俺、どうなった?」
エルフマンは意思を乗っ取られた時の記憶がないのか俺に自分の様子を聞いてくる。
「暴れ出した。魔物に意思を乗っ取られてる。もう1回やろう、よく集中するんだ、目の前の俺を認識したままゆっくり魔物へと変身しろ」
「わ、分かった」
「エルフマン…」
ミラジェーンさんが心配そうに見ていた。エルフマンは再び魔物へと変身し始めた。
その日、エルフマンが
多分、このまま俺が見てるだけでやってもまた失敗する。それでは意味が無かった。エルフマンが
集中力、決意、そして…、全身
これらが全部纏って初めて全身
ギルドのカウンターでどうしたものかと考えていると視界にミラジェーンさんが映った。聞いた話だとミラジェーンの魔法も確か
暫くぼんやりとミラジェーンさんを俺は見ていた。
が、ふと俺の中にある考えが思い浮かんだ。
俺はギルドの書庫に行った。そして幻術魔法について、勉強し、必要な魔法アイテムをギルドの倉庫から探し出した。目的の物は見つかった。見つけた。5本の杖を俺は見つけ出した。
「はあ、はあ…」
「……」
あれからルーシィとのクエストを達成して数日後。
今日も俺の前にエルフマンが倒れていた。あれから十数回試行してみたが、エルフマンが魔物の意思に打ち勝てる様子は無かった。魔力も切れ始めた。後2、3回が限界のようだ。
「エルフマン、今日はもう終わりに…」
「はあ、はあ、駄目だ姉ちゃん、俺は強くなるって決めたんだ…まだ諦めるわけにはいかねえ…」
ミラジェーンさんがエルフマンを止めようとするがエルフマンは拒否した。しかしエルフマンも口ではそう言ってるが、心が折れかけてるのが分かった。
陰でルーシィも心配そうに見ている。
俺はため息を吐いて、エルフマンの横に立った。
「なあ、エルフマン、次で成功させよう。出来無かったら今日は終わりだ」
「ま、待ってくれリン…俺はまだ…」
身体を起こそうとするエルフマンの耳元に近づいた。そして…
「エルフマン、よく聞け、もし出来無かったら俺は君の姉に手を出す」
ビクッとエルフマンの肩が揺れた。が、俺は構わず続けた。
「ギルドに入った時から思ってたんだ。凄く綺麗だなって、俺、疲れちまった。もうおかしくなりそうなんだ。良いよな?エルフマン、お前なら許すだろ?」
エルフマンのその目が俺の方を向く。信じられないと言った目つきだった。
「S級クエストで俺も疲れてるんだ。ギルドに入ったばかりなのにこの仕打ちだぜ、あり得ないよな、俺はまだ新人なのによお、疲れちまったよ。何かご褒美があっても良いよな。お前のくだらない
エルフマンの目がヤバいことになってきたが俺は気にしない。
「リン…てめえ、自分で何を言ってるのか分かってるのか…言っていい事と悪い事があるぞ…!!」
「分かって無いのはお前の方だエルフマン。全身
そう言うと俺はエルフマンの目に5本の杖をかざして幻術をかけた。
見せたのは
「や、辞めろっ!!姉ちゃんに触れるな!!」
「エルフマンっ、どうしたの!?」
「来るな!!」
エルフマンが俺に掴みかかる。心配して駆け寄ろうとするミラジェーンさんを俺は止めた。にわか仕込みの幻術が台無しになる。
俺は勝負を決める為に、エルフマンに囁いた。
「お前には覚悟が足りないな、姉を護る覚悟も、大切な物を護る力も全てが足りない…」
「う、うおおおおお!!!」
エルフマンの全身に魔力が滾った。そして見る見るうちに、魔物のそれへと変化していく。
「え、エルフマン…!!」
「うわ…」
遂にエルフマンが全身
「エルフマン、こっちだ」
幻術を解除すると、エルフマンの視線がこちらを向く。エルフマンはしっかりと俺の方を見ていた。
「リン、絶対にお前は許さねえ!!」
エルフマンは俺に殴りかかった。
「エルフマンっ、何してるの!!」
「やめて!!」
「来るな!!」
駆け寄ろうとするミラジェーンとルーシィを片手で合図し止める。十数発の拳が俺を攻撃する。ドガッ、バキッと破壊音がなり、凄い威力の攻撃が俺を襲う。俺は身体でそれを受けた。
「リン、てめえええ!!」
エルフマンは大きく殴りかかった。もう十分だろう。最後にその拳を片手で受け止めた。
バシッ
「!!」
そして、エルフマンの身体に雷を流した。エルフマンの全身
そして、疲れ切ったエルフマンが崩れ落ちる。
ミラジェーンさんが駆け寄った。
「エルフマン、大丈夫!?」
「はっ…、ね、姉ちゃん!?」
「エルフマン…!!」
ミラジェーンさんはエルフマンを思いっ切り抱きしめた。同時にルーシィが俺の方に来る。
「リンっ、大丈夫!?」
ルーシィが俺の方に駆け寄って来た。俺は取り敢えず笑って返した。
エルフマンは姉に応えるように抱き返すと俺の方を睨んだ。俺は両手を上げた。
「エルフマン、冗談だ。俺は手を出してない。全部幻術だ」
「なっ…なんだと!?」
「嘘だと思うならミラジェーンさんに聞いてみてくれ」
「ね、姉ちゃん、リンに手出しされてないか?」
「何の事?」
ミラジェーンさんの返答にエルフマンは啞然とした。俺は5本の杖を見せつける。エルフマンは驚愕で開いた口が閉じなかった様子だ。俺は笑った。
「成功したな、次やる時は俺への怒りで制御しろ」
「リン、お前まさかこれを狙って俺にあんな幻覚を…」
「この際硬いこと言うな」
俺はエルフマンに手を差し出した。エルフマンは一瞬睨んだが、俺の手を取った。
ミラジェーンさんが俺の方を見た。
「お礼を言うわ」
「あ、無しで良いです。碌でもない方法なので」
「本当に碌でもないぜ、次あんな事言ったら幻術でも殺すからな」
「エルフマン…!!」
「う、分かったよ姉ちゃん、ありがとな、リン」
「俺の方こそ済まない、あんな屑みたいな方法しか思いつかなかった」
無理やりお礼を言わされるエルフマン。正直不憫だ。しかし何がともあれ俺はエルフマンの全身
ミラジェーンさんが俺の方に来る。
「ごめんね、エルフマンがこんな特訓に付き合わせちゃって、今、手当てするからギルドに行きましょう」
「だ、大丈夫です」
「駄目よ、ギルドの先輩としてけじめがつかないわ。受け取って、お願い」
そのままギルドに引きずられて行った。後ろからエルフマンが睨んでくるのが怖すぎる。
ギルドに入る。そしてミラジェーンさんがエルフマンの全身
「……」
ちらりと2階を見ると、ラクサスが口元に笑みを浮かべていた。ノルマ達成だった。
俺はそのまま医務室に連れて行かれた。そのままエルフマンに殴られた場所を手当てし始める。
「リン、本当にありがとう」
「別に、こんなのなんでもないです…、ですから…」
「駄目よ、ちゃんと湿布貼らなきゃ、悪くなるわ」
ミラジェーンさんは丁寧に俺の顔や身体に湿布を貼った。普段からクエストで傷ついたギルドメンバーにも同じ事をしている様子で慣れてる様子だ。
「ねえ、リン…」
「なんですか?」
ミラジェーンさんは最後の湿布を俺に貼る。俺の目を見た。
そして…
「私、現役復帰しようと思うの…、だから…手伝ってくれる?」
そう言って俺の顔をじっと見つめた。
その真剣さに俺は固まった。そして、正気に戻るなり首を縦に振った。
「……」
その様子を医務室の扉から見ている人達がいた。
因みに主人公が今回使った幻術魔法はミストガンの杖と同じホルダー系の幻覚魔法です。
エルフマンのテイクオーバー成功!!
次は誰を強化しようかな…