世界に異種族や異能力の存在が露見して数年、世界は平穏を取り戻した……。なんて事は無く、混沌とした世に順応しただけである。
そんな世界の小さな国の路地裏で、女子高生が腹に大穴が空いてる状態で横たわっている。急な展開だが、言葉通りなのだ。
彼女の名前は篠原 春、帰宅中に近道しようと路地裏に入ったら、何者かに背後から刺されたのであった。
「………」
春は瀕死ではあるが生きている。しかし、このままでは数分と持たずに命の灯火は消えるだろう。
春はどうにかしないとと朧気な頭で考えていると、コツコツと足音が近づいてくる。足音は春の前まで来ると止まった。
春はどうにか首を動かし、足音の主を見ると、そこには見知った男がいた。
「何か血の臭いがすると思ったら死にかけの幼なじみがいる……」
男の名前は、神山 陽介。高校生ながらに便利屋を営んでいる。とある人物を追っていたら、たまたま春の事を見つけたのだ。
陽介は春をどうするか考える。どう転がっても面倒な事になるのは予想がつく……。
結局、陽介は結論が出なかったため、
「意識有るようだから聞くけど、助かるけど面倒事に巻き込まれる可能性の高い人生送るか、安らかに死ぬのならどっちがいい?」
死にかけている春に直接確認するという暴挙に出る。究極の2択を死にかけの女子高生に選択させるなと言いたいが、後々ぐだぐだ言われるのも嫌だったのだ。
「い……き…た」
朦朧とする意識の中、春は生きたいと願う。どうしてこんな理不尽な目に合っているのか? ドラマの続きは? 好きなアーティストの新曲は? と死ぬに死にきれないのである。……案外余裕がありそうとか人生楽しそうとか言ってはいけない。
「OK」
陽介は、春の背中を抱え、上半身を起こすと
「痛いかもしれないけど許してくれ」
風穴に何かをねじ入れる。春は激痛により、意識を失った。
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現在、夜の6時過ぎ、外は帰宅中の人で溢れる時間帯だ。ここ数年は異種族や異能力が露見した事により混沌としていたが、ここ最近は元通りとまではいかないが、見慣れた光景が戻って来ている。そんな時刻に
「………はっ!?」
春は目覚めた。
「ここは?」
春は周りを見渡す。知らない部屋だ。私は何故ここに居るのだろうか? 考えてると記憶がハッキリしてくる。
「そうだ!? 背中?」
背中を貫かれた事を思い出し確認する。どうやら穴は空いていない様だ。
「夢って分けないだろうし…」
あの焼ける様な痛みが夢とはどうしても思えない。春が自身に何が起きたのか考えていると、正面のドアが開く。
「あら? まさか、2時間程で目を覚ますとは思いませんでした」
そこには銀髪の女性が立っていた。女性は部屋に入らず春を一瞥すると
「私は八坂 百代と申します」
「し、篠原 春です」
春は状況に困惑しつつも、どうにか対応する。
「陽介様をお呼びしますので、少々お待ちください」
そう言うと、百代はドアを閉めた。足音が離れていくのが分かる。
春はいろいろ聞きたかったが、聞く方はできなかった。混乱していたのもあるが、百代の容姿が良すぎたというのが理由だ。春の頭の中はなにあの美人? という考え意外は消えていた。
数分経過し、少し冷静になった春は自身の腹部を擦ったり揉んだりしていると、足音が近づいてくる。音からするに2人だろう。
ドアの前で足音は止まり、ドアが開くと陽介と百代が入ってくる。
「取り敢えず目覚めた様でなにより。で、いい話と悪い話どっちから聞きたい?」
「えー……? じゃあ、悪い話から」
腹に穴を開けられ以上に悪い話とかあるのだろうかと春は思う。
「そっちからか……じゃあこれ書いて」
びっしりと文字の書いてある書類が陽介から手渡される。
「あのー、これは?」
「うちの雇用契約書とか諸々」
「なんで!?」
いきなり幼馴染みに入部届けぐらいの感覚で雇用契約書を渡されれば驚くだろう。
「どこにも所属してない能力者なんて相当な強さでもないと勧誘ヤバイだろうし最悪の場合は誘拐、洗脳、脳改造だぞ」
「私は異能力とか使えないけど!?」
「数時間前までは無能力者だったかもね」
「かもね!?」
「身体に入れた物もそうだけど、風穴を空けられた状態で意識あるの異能力者でもないとおかしいだろ……」
ただの女子高生が身体に穴が空いても気絶せず、数分耐えているのは確かにおかしいだろう。
「とにかく、春は身体の中にある物の力が使える様になる可能性が高いからさ。取り敢えずでいいから所属しときな。これでも割りと名前は売れてる方だから安心してくれ」
「な、なるほど。……いや、私の中にあるものって何?」
春は自分の中に何かがあるという事に驚く。医者でもない人間にそんな事を言われても困るだろう。
「ああ、春を治すために埋め込んだ。ちなみに値段はつけれないタイプのヤバイやつ」
「そんなのが私の中にあるの!?」
どうやら陽介が春を助けるために使用した物は価値をつけるのも難しい物である様だ。
「身体の中に入ってる物の事で誘拐される可能性高いから気をつけてね」
「取って!? 今すぐ取って!?」
春は焦る。とにかく自分の中にあるヤバい物をどうにかして欲しいのだ
「既に第2の心臓と化してるから取ったら危険かと」
「前言撤回! 取ると死ぬなら前言撤回!」
百代が取ったら危険というと春は掌を返す。
春はうら若き女子高生、まだ死にたくはないのである。まだ、某喫茶店の新作ドリンクも飲んでいないのだから。……やはり結構余裕なのではなかろうか?
「取り敢えず、なる早で書いといて。悪い事は書いてないからさ。で、いい話に方だけど」
「本当にいい話なんだよね? 私が生きてることがいい話ってオチじゃないよね?」
正直この状況でいい話というのも謎であるため、春の疑問は最もだ。
「ちゃんといい話だよ。端的に言うと、春の風穴を空けた奴は捕まえた」
本当にいい話であった。既にこの状況を作り出した犯人が確保されていたのでる。実に仕事が早い。
「あのさ……」
「なにさ?」
「こういうのってさ、ある程度強くなった私がリベンジするもんじゃない? 展開的に」
確かに、その手の展開はよくあるだろう。あと終盤になって実は初期のアイツ強くね? みたいなやつも。
「そんなマンガみたいな展開そうそう起こるわけないだろ」
ごもっともである。そうそう起きる物じゃない。
「そもそもの話だけど、アイツただのシリアルキラーだし、最初の敵だと強いけど、中盤くらいだと雑魚っていう微妙な強さだぞ」
「私そんなのにやられたの!?」
春は雑魚に殺されかけた事にショックを受けるが
「まぁまぁ、一般人からすれば異能力持ちのシリアルキラーなんて災害見たいなものでしょうから」
と、百代がフォローする。
戦闘特化の異能力者や異種族からすれば、春を殺そうとした犯人の力は弱い部類だ。しかし、それでも一般人を簡単に殺す事ができるの力がある。
「そういうわけだから。これから便利屋パライソで頑張ってくれ」
「えぇ……。ていうか便利屋なんだ」
「ここまで私たちの説明なしでしからね。まぁ、ゆっくりと知っていけばいいのです」
何はともあれ便利屋パライソの物語が始まるのであった。