混沌都市~便利屋パライソ珍道中~   作:ものため

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第1話 公園荒しを捕まえろ 前編

 土曜日の昼下がり、ランチタイムも終わり、ゆっくりとした時が流れるであろう時間帯に篠原 春は走っていた。それはもう全力で走っていた。商店街にある肉屋のコロッケの誘惑に耐え、走り続け、そうして……

 

「よし! 捕まえた!!」

 

「な゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!?」

 

 猫の捕獲に成功した。

 

 なぜ春が猫を追いかけていたというと、単純に便利屋パライソへ脱走した猫の捕獲依頼が来たからである。

 

 金持ちの飼い猫であるため、かなり報酬が良かったのため、陽介が迷い無く引き受けたのだ。

 

「もう逃げちゃダメだからねー」

 

 猫なで声で捕獲した猫に話しかけるが、

 

「に゛ゃ゛あ゛あ゛!」

 

 全力で拒否される。すぐにその手を離せ!とでも言ってるかの様だ。

 

「どうしてこんなに暴れるの……」

 

 春は暴れる猫を抱え。パライソに戻るのであった。

 

~~~ 

 

「また何かありましたら、便利屋パライソのご利用をお待ちしております」

 

 捕獲した猫を依頼人に引き渡すと、依頼人は報酬を陽介に手渡し、礼をいい終えるとパライソを後にした。

 

 依頼人が出ていくのを確認すると陽介はため息をついて客用のソファーに腰かける。

 

「あの猫、あと100回くらい脱走してくれないかな」

 

 受け取った報酬の封筒を見ながら陽介は呟く。封筒のなかには1万円札の束、間違いかく猫を捕獲しただけで貰える額ではない。

 

「とんでもないこと言わないの。暴れるし大変だったんだからね」

 

「春様が手を離した瞬間に大人しくなりましたし。何なら私たちにすぐ懐きましたけどね」

 

「…前までは動物に懐かれる方だったのに」

 

 ここ最近、春は異様に動物から避けられている。近隣の犬には威嚇され、動物園に行ったら動物は折の隅まで逃げた。動物好きの春からすると頭を抱える問題だ。

 

「能力の相性もあるし、制御出来たら元通りかもしれないから頑張れ。でだ……」

 

 陽介はソファーから立ち上がると自分のデスクに向かう。

 

「春がここに入って数ヶ月、修行もいい感じに進んでるってことで実戦だ。これ依頼書ね」

 

「え、わかった」

 

 デスクの引き出しから書類を取り出すと、陽介は春に渡す。

 

「今日の夜からだから準備しといてくれ」

 

 そういうと、再びソファーに腰を下ろすのだった。

 

~~~

 

「というわけで、近くの公園です」

 

「陽介なんでそんなに説明口調なの?」

 

「気分」

 

 時間が経過し、陽介と春はパライソの近くにある公園に来ていた。

 

「で、依頼の内容は把握してると思うけど、ここ最近遊具が壊されたから犯人を捕まえて欲しいんだと」

 

「異能力者の仕業なら警察とかじゃない?」

 

 至極真っ当な意見だ。犯罪者を捕まえるのは警察の役目だろう。

 

「警察も見に来たらしいんだけど、異能力者の犯行の可能性が高く人的被害がないから専門の課が動けない。みたいな事を言われたらしい」

 

「そんなことあるの!?」

 

「まぁ、なんというか、異能異種対策課……略して異課ってのも警察にもあるんだけど……」

 

 元々、世間に異能や異種族が露見する前からそういった事を対処する課はあるのだ。あるのだが、

 

「基本えぐい人手不足で、基本的に人的被害起きるか現行犯じゃないと動いてくれないんだよ」

 

「えぇ…」

 

 とにかく人手不足で別の事件に人員を使っているため動けなくなっていた。国営のため安定してる以外にメリットがほぼ無く、異能など特殊技能がければ所属出来ないため人材が来ないのだ。

 

「しかも、世間にバレてから通報が多くなってるだろうし、捌ききれないんだろうなぁ。俺の知ってる人が異課で裏方してるけど実働部隊は休ませなきゃだから書類仕事で最近ずっと徹夜だってさ」

 

「うわぁ」

 

 元々、人手不足気味だった職場が完全にブラックになってしまっているのが現状の異課である。そもそも、異能力者を隠して生きている事の方が多く、募集した所で来ないのだ。

 

「俺らは仕事が多くなって選びほうだいだから、得もあるけど……。あっちは選べないからな」

 

「わたしパライソに来て良かった」

 

「そのセリフもっと後に残して置いてくれよ」

 

 理由も理由である。こんな序盤にラスト辺りで使うセリフを吐かないで欲しいものだ。

 

「話戻すけど、遊具が壊されたんだってさ」

 

「でも、どれも問題なさそうだけど」

 

 辺りを見回すと遊具はある。春は暗くて壊れてる部分に気づいてないだけ?とよく確認するが、やはり壊れてる様には見えない。

 

「俺が直した」

 

「え?」

 

 突然の報告に春はキョトンとした顔をする。

 

「春が猫追っかけてる間に直したよ」

 

「うそ!?」

 

 春が猫に苦戦している頃、陽介は1人で公園の遊具を直していた。なんなら新品レベルにキレイになっており、元の状態より良くなっている。

 

「俺はそういう事も出きるんでね。なんなら半人探しも出来るが……まぁ、今回は切羽詰まるまで無し」

 

「へー」

 

 因みに依頼人である公園の管理者にメチャクチャ感謝されたらしい。

 

「でも、なんで直したの?」

 

「貰うもんは貰ってるし、今回は必要だったからな」

 

 慈善業者でも何でもないので依頼料は取っている。だが、今回は依頼の完遂に必要だった故に安めだ。

 

「管理人に頼んで近隣の住民に噂を流すのに協力して貰ったし」

 

「噂?」

 

「そう。遊具が全部直ったっていう噂」

 

 陽介が依頼料を安めにしたのは、管理人に協力して貰ったのも理由だ。全部1人でこなすなら、普通に直した分の料金を請求する予定だった。

 

「取り敢えず隠れて様子見よう。今回は許可とって監視カメラも設置してあるけど、出来るだけ現行犯で捕まえる。てか、現行犯じゃないと後回しにされるか、動いてくんないかもしれん」

 

「本当に人手不足じゃん」

 

 流石に監視カメラで取れば動いてはくれる。ただ現行犯でない限り他の事で後回しになるだけなのだ。

 

「異課は異能とかの特殊技能が必要だからな。どうしても人が増えないんだ」

 

 能力にもよるが能力者には能力者をぶつけるのが最善だ。能力しだいだが、暴れるような能力者を拳銃でどうこうするのは難しい事も多い。

 

「ま、とにかく隠れよう。そこに茂みもある」

 

「何このちょうど良い茂み」

 

「昼間に俺が作った。あとこれ特性の虫除け。茂みに隠れるから一応つけときな」

 

 陽介の準備の良さに、春は少し引いていた。

 

「こ、ここまでするんだ」

 

 どうにか口にした言葉がこれである。探偵ドラマの様に歩き回って証拠を探すのかと考えていた春からすれば想定外の準備の良さである。

 

「まぁ、一応ね」

 

 二人は茂みに隠れ犯人が現れるのを待つのであった。

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