2人が茂みに隠れ一時間ほど経過した頃、春の中に1つの疑問が生まれていた。
「ていうかさ、そもそも犯人はここに来るの?」
確かに春の疑問も最もだろう。そもそも犯人が来るとは限らない。
「んー、公園の遊具壊すのが趣味とか癖でも無ければ来るんじゃないか?」
「どんな趣味?」
破壊癖という癖もこの世にはあるのだ。どんな理由でもおかしくはないだろう。
「ま、今日のところは、それの確認も目的だし」
「確認?」
「そう。壊した理由がここの公園にあるのかどうか……。それっぽいのが来たな」
公園に黒パーカーでフードを被った男が入ってくる。男はフラフラとしており、何とか歩いているといった様子だ。
男は何とか滑り台まで辿り着くと、滑り台の一部を掴み、引きちぎった。どうやら犯人はあの男のようだ。
「春、不意打ちで死なない程度にやれ」
「あっ、はい」
壊されるの前提だとしても、せっかく直した物が壊されて、陽介の機嫌が悪くなっているのが春には分かった。
「あのタイプは耐久性も強いだろうから、少し強めにやって大丈夫だ」
「そら私念じゃないよね……。じゃあ、やるよ」
春は手を拳銃の様な形にし、指先を男に向ける。すると、指先から雷が放たれた。
2ヶ月前に陽介が春の身体に埋めたのは、雷を宿す神器の欠片であった。
強力な神器であっため、欠片といえど絶大な力を誇り。その結果、春はこの数ヶ月は力を制御する訓練を行っていた。最初の内は対象を消し飛ばす程の威力であったが、春の努力の結果、ある程度の制御が可能となっていた。
「ぐえ!?」
春の指先から放たれた雷は男に当たる。すると、男は受け身を取ることも出来ずに倒れた。
「……あっさり倒せちゃったね」
「鍛えてる様には見えないし、ただの一般人……いや、ただの犯罪者か」
犯罪者にただも何も無いだろうとは言ってはいけない。
「能力者だから強いって分けじゃないんだね」
「そりゃそうよ。能力者だからって軍人だの警察だのになるわけじゃない。普通に生きてるやつのが多いさ。てか、能力を使ったり自己申告しなきゃ能力者ってわからんし」
現状、異能が使える使えないは判断することが出来ない。そのため、監視カメラやらなんやらを設置したのだ。
「取り敢えず、ひん剥いて縛ろう」
「いやいや、気絶してるしいいでしょ……」
「いや、ひん剥いとく。なんなら、ひん剥いた服をロープ代わりにする。そうすりゃ逃げたくても逃げれん。おっ、財布だ。マイナンバーカードもあるな……名前は小嶋 元治ねぇ」
陽介は服を脱がすついでにマイナンバーカードの名前を確認する。どうやら小嶋 元治というらしい。
「悪魔か!?」
ここまでやる必要ないでしょ! と春は怒る。確かに、相手が能力者とはいえやりすぎかもしれない。そんな春に対し陽介は
「悪魔は存在してるから、例えに出すの止めときな」
「あっ、はい」
小嶋の服をロープ代わりにして手足を縛りつつ、陽介は春に例えに異種族を出すのを止めとけと咎める。……言葉狩りの極みだ。生きにくい世の中になっているのかもしれない。
「さて、縛り終わったし……起こすか」
「なんで!?」
「知的好奇心。結構強い能力っぽいのにやってるんこと公園荒らしだぞ。普通に謎だろ。しかも体調悪そうだし」
小嶋の能力がシンプルな身体強化だと過程すると、こんなしょうもない事をしてるのは陽介にとって謎である。しかも体調不良の時に。
「まぁ、私も気になるけど先に警察に電話しないと」
「百代が連絡してあるから、そのうち来るよ」
「いつ百代さんに連絡したの!?」
「さっきチャチャっと」
春が気づかない間に連絡したようだ。どこにそんなタイミングがあったのだろうか?
「そういう分けだから聞こうぜ。何より……なんで俺が直した滑り台壊したのか聞かなきゃならん」
「あっ、これ個人的な恨みだ」
陽介は気絶してる小嶋の顔をペチペチと叩く。壊されるの前提で直したとしても、壊されると腹は立つのでる。
なかなか起きない小嶋に痺れを切らした陽介は尻をそこそこの威力で蹴る。
「……イタッ!?」
「あ、起きた」
蹴られた衝撃で小嶋は飛び起きる。どうやら何が起きているのか分からない様子だ。
「し、縛られてる!? くっそこんな物!?」
「縛ってるやつアンタの服だから破いたらパンイチで逃げる羽目になるぞ、小嶋さん」
「なっ!? くそ……」
縛る物が自身の服と知り、小嶋は諦めうつむく。
「アンタ何でこんな事したの。騒音トラブルか?」
「……お前らに話す意味ないだろ」
話した所で意味なんてないだろうと小嶋は不貞腐れる。
「直した遊具壊されたんだから聞く権利はあるだろ。たぶん」
元々壊されるの前提で作っておいて、この言い様である。
「お前が直したのか……」
「そう。どうせ捕まるんだから話してみろよ、気が楽になるかもしれないぞ」
小嶋は少し考えると
「……寝れなかったんだ」
ポツポツと喋り始めた。
「帰って来て、やっと寝れると思ったら子供の声がうるさくて……!」
小学校や公園の騒音は度々問題になる。しかし、そうだとしても程度はしれるだろう。
「……ずっと働いてやっと家で寝れる所だったんだ。久しぶりの家だったんだ」
「マジもんのブラックだな。止めちまえよ、そんな所」
小嶋の顔を見るとやつれており、隈が酷いが分かる。ふらついているのも疲れ来ているのだろう。
「前にいろいろあって工場長に能力者なのがバレて……言うことを聞かないと危険な能力者って事を言いふらして他では働けないようにするって言われて……。それで、たまに帰れても寝れなくて……」
「お、思いの外酷い」
春は小嶋に同情した。そして社会の恐ろしさを知ったのであった。
「当分は静かに眠れると思ったのに……昼間うるさいし……様子見に行こうとしたら遊具は直ったって噂で持ちきりだし」
「嘘はついてないな」
陽介は小嶋の様子から嘘はついていないと判断する。陽介はため息を吐きながら振り向くと
「との事だけどどうします。さっきから話聞いてるでしょ」
陽介は誰もいない場所に向かって声をかける。すると、突然何もなかった空間をからスーツ姿の男が現れる。
春は、この異常な現象をまのわたりにし、咄嗟に構えようとするが、「大丈夫だから」と陽介は春を宥めた。
「お久しぶりです」
「はい、お久しぶりです。こっちはうちの新人です。春、挨拶しときな」
陽介は春に挨拶をするよう促す。
「あ、うん。篠原 春です。よろしくお願いします」
「ああ、貴女が……。私は異能異種対策課に所属の佐々木 信次郎と申します。よろしくお願いいたします」
名乗った佐々木に対して、春はこの人が……と見つめる。スーツはヨレヨレ、髪も簡単に整えたる程度……。春から見た第一印象としては冴えない男といった感じだ。
「佐々木さん、また寝れてない感じですか」
「裏方寄りの能力で戦闘力はないので、最悪寝なくて大丈夫です。裏方が寝て実働部隊休めない方がマズイので」
「知り合いとしては寝てほしいんですけど……」
公務員だろうと一般企業だろうと、ブラックなところはブラックの様である。公務員になら提示に帰れると思ったら大間違いだ。
「私、パライソに拾われて良かった」
「だから、そのセリフもっと最後の方に取っておいてくれないか? 入ってから数ヶ月だと良かったねーくらいの感情以外はないから」
最終回辺りに使って欲しいセリフNo.1といっても過言じゃない。そんなセリフをこんな序盤で使うな。
「で、佐々木さん、この人何ですけど」
「ええ、話は聞いてましたが……。ぶっちゃけ、同情とかなんでもなく、ここで起きた事を見なかった事にするので異課の実働部隊に所属して欲しいです」
「えぇ……」
佐々木の発言に春は引いた。異課はどこまで人手不足なんだろうか。
「別の犯人がやったことにして、この人は異課所属にするってところですか?」
「まぁ、それが安牌ですね」
「お、おい!? いいのかよそんなので!?」
陽介と佐々木の会話に小嶋はツッコミ。小嶋からすれば器物破損の罪がチャラになるのだが、急に警察組織に所属させられるかもという恐怖が勝っている。
「その精神状態で人を襲わなかった時点でいいかなと。何より人不足ですので」
「そうだぞ。俺なら工場長をヤってる」
「お、おう……」
小嶋は引いた。警察は隠蔽工作をしようとしているし横のガキはシンプルに怖い。
「まぁ、最終的には貴方が決める事です。うちに所属するのも良し。普通に罪を償うのも良しです」
どうするのが正解なのかと小嶋は考える。しかし、頭が回ってないため、まともな答えが出てこない。
「取り敢えず。アンタがどうしたいかでいいんじゃないか?」
頭が回ってない事を察した陽介が助け船を出す。
その言葉を聞いた小嶋は少し考え、
「アンタの所で働けば寝れるか?」
と質問する。
「そうですね。実働部隊は休憩時間と最低5時間の睡眠を取らせる様にしてます」
そう聞くと小嶋は小さく笑みを溢し
「寝れるなら何だっていい。これからよろしく頼む」
異課への所属を希望した。
「なんか良いところ取られちゃったね」
「そんな日もあるさ。一応滑り台を直しおくか」
陽介と春は少し離れた所からオッサン達の良いシーンを眺めるのであった。
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依頼から数週間が過ぎた頃、陽介達はパライソのテレビでニュースを見ていた。
『平泥工場の工場長である。黒沼容疑者が横領、強迫、汚職、薬物売買など罪により……』
「この工場って小嶋さんの努めてたとこだよね」
「まぁ、叩けば埃が出る所じゃなかったからな」
ニュース内容は小嶋の勤め先だった工場の件だ。元々キナ臭い噂があった事と小嶋の証言もあり、捜査に踏み込んだところ工場長の余罪が出るわ出るわ。結果、あっという間の逮捕であった。
「そういえばさ、公園の管理人には何て言ったの?」
「犯人は捕まえて警察に渡したから安心してくれって言っといた」
「……嘘は言ってないね」
確かに捕まえたし渡してはいる。ただ渡された奴はそのまま警察の実働部隊になっているが。
「あと、簡単に小嶋さんの事情を少し話したら同情してた。被害届とかも取り下げてたらしい」
「へー、良かったね」
陽介は別に隠す必要も無いため、小嶋の名前こそ出さなかったが、動機や今後どういう事になるかを簡単に事情を話したのである。
「まぁ、今回の依頼料は小嶋さんがキチンと払うって事になったのも理由だな」
管理人からすれば、ほぼ無料で遊具が新品になったのだ。これ以上、事を大きくする必要も無いため、被害届を取り下げてたのである。
「まぁ、いい感じに終わったし、めでたしめだたしってことでいいさ……」
陽介はそう言うと目を瞑り、昼寝をしだすのであった。
こんな感じで、いろいろ書ければと考えています。