混沌都市~便利屋パライソ珍道中~   作:ものため

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第3話 生やせばいいってもんじゃない。

 火曜日の午前11時過ぎ、天気は晴れでいい風も吹いている。そんな日に陽介は、

 

「杉山、この問題は分かるか?」

 

「はい、そこは……」

 

 授業を受けていた。平日はただの学生なのである。春も別の教室で授業中だ。

 

~~~

 

 なんだかんだ午前の授業が終わり、陽介は簡単に昼は済まし風通しのいい場所でゆっくりと休んでいた。左手には缶コーヒー、右手にはスマホを持っている。

 

「小説の流行りはなんだろうな」

 

 陽介は暇潰しにネット小説を見始めた。ぽけーと小説を読んでいると誰かが近づいてくる。

 

「ヨウじゃん。どうしたのこんな所で」

 

「おー薫か。見ての通り休んでる。相変わらず性別分からん顔と声してるね」

 

「デリカシーとかないの?」

 

 彼の名前は柊 薫、中性的な顔立ちと声をしており、名前も名前のため、性別を間違えられるのである。

 

 そんな彼は陽介の中学からの友達である。今年はクラスが別になってしまったが、定期的に遊ぶ程度には仲がいい。

 

「つか、ここ最近休んでたらしいけど大丈夫か?」

 

 陽介が薫のクラスに顔を出すと、休みだったという事がここ最近多かったため、陽介は心配していた。

 

「うーん、なんか気分が優れない日が多いんだよね。そっちもメンタル大丈夫?」

 

「割りといいよ。なんだかんだ夜は寝れてる」

 

 実のところ、陽介はメンタル面はあまり強くない。一時期メンタルを崩していた事もあり、割りと些細な事でもメンタルを崩すタイプである。酷い時は夜も眠れない程だ。

 

「それなら良かった」

 

「俺は良くないよ。気分が優れない日が多いってなんだよ」

 

 そう陽介が言うと薫は笑う。

 

「ははは。昨日、物置の整理したから疲れてるのかも。少し風邪を引いたくらいだと思うから大丈夫」

 

 薫からすれば、ちょっとした風邪くらいの認識の様だ。

 

「ヤバくなる前に病院行けよ」

 

「分かったよ。そろそろ休み時間も終わるから教室戻るんだよ」

 

「あいよ」

 

 話を終えると、薫は教室に戻っていった。

 

 この時、陽介は思ってもみなかった。まさかあんな事になるとは

 

~~~

 

 金曜17時、便利屋パライソには特に依頼もなく。陽介達はゆっくりとした時間を過ごしていた。

 

「仕事来ないね」

 

「まぁ、稼いでる時に稼いでるから問題は無い。てか、ジムの家賃もあるし」

 

 パライソ事務所のビルは陽介名義であり、一階のジムからの家賃もあるため金銭的には余裕があるのだ。

 

「そろそろ晩御飯にしましょうか?」

 

「おー、頼んだ」

 

 珍しく……もない、ゆっくりした時間を過ごすパライソ一行あったが。

 

「ん? なんかドタバタいってるな」

 

 入り口階段が騒がしい。誰かが走って登って来てるのだろう。

 

 音が入り口の前で止まると、ピンポーンとインターホンがなる。

 

「俺行ってくるから百代はお茶の準備でもしといて」

 

「かしこまりました」

 

 入り口の前の人物はかなり慌ててるのな陽介には分かる。足音はもちろんだが、どうも挙動が慌ただしいのだ。

 

 陽介は入り口解錠しけ扉を開けるとそこには自分と同じ高校のブレザーを着る女性がいた。走って来たのか、ぜーはーと息を整えている。

 

 女性は陽介に気づくと泣きそうな顔になりながら

 

「ヨ、ヨウ助けて!?」

 

 助けを求めてきた。

 

 どうしたもんかと髪をポリポリと掻く陽介だったが、顔を見ると誰かがに似ている事に気づいた。

 

 陽介は、まさかと思いがら、力を使い確認する。

 

「お前薫か? 何で性別変わってんの?」

 

「そうだよね!? 僕って男の筈だよね!?」

 

 陽介は思考する。修学旅行の時、間違いなく男湯に一緒に入った。なんなら本当に男か確認してブツがあった記憶がある。

 

「修学旅行の時に男湯入ってただろ」

 

「うん入った! 僕が変になった分けじゃないんだ!」

 

「いや、どう見ても変にはなってるだろ」

 

 薫は混乱している様だ。取り敢えず確認のために陽介は

 

「えい」

 

「ひゃ!?」

 

 薫の胸を掴み揉む。

 

「本物か? 詰め物って感じじゃないし、偽物じゃないか……」

 

「ちょ!? ヨウ!?」

 

 本物であることを確認すると、陽介は手を離す。これドッキリじゃないのか……など考えていると

 

「陽介? 薫にナニシテルノカナ」

 

 後ろに修羅(春)がいた。

 

「一応確認するけど、こいつ誰だけ分かる」

 

「薫デショ」 

 

「性別は」

 

「女の子」

 

 このやり取りを聞いた薫は膝から崩れ、泣き始めてしまった。

 

「春の言葉が止めになってしまった」

 

「へ!? 私が悪いの!?」

 

「悪くは無いだろうけど……取り敢えず客間に移動しよう。ほら行くぞ薫」

 

「ひっく……ごめん」

 

 陽介は薫の腕を掴み立ち上がらせ、客間に移動した。

 

~~~

 

 客間に移動し、陽介は春と百代に現状の起きていることを話す。

 

「どれだけ考えても記憶の中の薫は女の子なんだけど」

 

 春は薫をずっと女性であったというが、陽介からすれば、薫は少し前まで間違いなく男だった。

 

「私は陽介様に薫様は男性と伺っていた筈です。写真も見させて頂いたことあったかと」

 

 百代は薫を直接見たことはないが陽介から男性と聞いていたとの事である。

 

「写真見れば分かるんじゃない?」

 

 春は写真を見ればいいと意見をだす。しかし、

 

「さっきスマホで確認したら全部女になってたよ」

 

「じゃあ女の子じゃない?」

 

「でも男って言ってるぞ」

 

「じゃあ男の子か」

 

「でもお父さんもお母さんも僕は女の子だって。戸籍も変わってたし」

 

「じゃあ女の子か」

 

「でもついてたぞ」

 

「なにが!?」

 

 平行線だ。どうしても陽介と春の記憶が噛み合わない。

 

「改変魔法クサイな。薫はなんか心当たりはないのか」

 

「物置の整理をしてから調子を崩してたかな……。こうなったのは今朝だけど」

 

「その時になんかしたって所かね」

 

 物置にあった何かを触ってしまったのだろうと陽介は予測する。

 

「埒が明かない。薫、顔さわるぞ」

 

「ちょ、ヨウ!?」

 

 陽介は手で薫の顔を固定し、目を見つめる。

 

「百代さん、陽介は何してるの?」

 

 端から見れば、いちゃついてる様にしか見えない光景に春は困惑する。

 

「解析魔法ですね。身体を解析して何が起きているか確認している様です」

 

「魔法!? 陽介って異能力者じゃくて魔法使いだったの!?」

 

 陽介が魔法使いという事に春は驚く。

 

「そういえば言ってませんでしたね」

 

「数ヶ月も居るのに初耳だよ」

 

「まぁ、気にする余裕も機会なかったですしねぇ」

 

 春と百代が喋っている間も陽介は解析を進めている。薫の身体をくまなく探る。

 

 10分ほど過ぎた頃、陽介は薫の顔から手を話し一息つく。

 

「どう? なんか分かった?」

 

「まぁ、だいたいの事は分かったよ」

 

 陽介は百代が用意していた紅茶を口に含む飲み込む。

 

「ふぅ……。薫、なんか宝石みたいの触っただろ」

 

「う、うん。整理の時に……。綺麗だなって思って、そういえば気づいたら無くなってたような」

 

「原因それ、強力な魔道具だったっぽい」

 

 陽介が解析した結果、薫の性別が変わったのは宝石型の魔道具が原因だった様だ。

 

「発動したと思われる魔法は2つ、魂に合わせて身体を最適化する魔法とその身体に辻褄を合わせるための改変魔法だ」

 

「結構すごい魔法じゃない?」

 

 春は認識改変と聞き、とんでもないない魔法の様に感じた。しかし

 

「いや、対象が記録と記憶なうえに、一定の力を持ってる奴には効果が無い様になってるから改変としては範囲は広いけど効果は弱めだ」

 

「な、なら、その宝石を取れば僕は元に戻れるの!?」

 

 はぁ、ため息をつきながら陽介は薫見る。

 

「無理だな」

 

「……へ?」

 

「春と違って完全に融合してるから取り出すも何も出来ないし、最適化の魔法も常に発動してるからどうしようもない。こっそり性別を変えるの魔法しても意味なかったしな」

 

 常に最適化の魔法が発動しており、男に変化させても直ぐに女の身体に戻ってしまうため、意味がないのである。

 

「そ、そんな~」

 

「ほら、あれだ……」

 

 陽介は必死に慰めようとするが言葉が出ない。どうにか考えて出た言葉は

 

「あの……、まぁ、生やす魔法はいける筈だから、身体が女であれば最適化も反応しない筈だから、なんならその内適応して男に戻りたいって気持ちも無くなる可能性あるから」

 

 これだった。だいぶデリカシーが欠けている。生えれば問題ないとでも思っているのだろうか?

 

「ヨウ……、慰めになってないよ……」

 

「……ごめん、俺は無力だ。春どうにかしてくれ」

 

「ムリムリムリムリ!? キラーパス過ぎるでしょ!?」

 

 最悪のキラーパスである。無茶振りなんてもんじゃない。わーわーぎゃーぎゃーと陽介と春は取っ組み合う。朝起きたら性別変わって人に対する慰めの言葉なんて二人とも知らないのだ。というか誰も分からん。

 

「先に泣かせたのそっちですー。くそ強神機を宿してる癖に改変魔法を無効化出来ないのはどうかと思いますー」

 

「初心者だからしょうがないでしょ!?!?そっちだって女の子の胸揉んでおいて!?」

 

「自認は男だからセーフですー」

 

「ああ言えばこういう!?アンタみたいのが女の子を泣かすんだ!?」

 

 とうとう喧嘩しはじめた。実にアホらしい

 

「ぷ、はははははは!」

 

「「は?」」

 

 薫は取っ組み合う二人を見て笑いだす。陽介と春は一瞬目を合わせ、うなずき

 

「おーおー、見せ物じゃねーぞ。何見てんだコラァ」

 

「何ガン飛ばしてんだコラァ」

 

 寸劇をし出した。このノリに乗るしかないと判断したようだ。

 

「ハハハハハハハハ! 二人とも変わんないなぁ……!」

 

 薫は二人の寸劇を見て、少しは元気を取り戻した様だ。

 

「いや、私は結構変わったよ」

 

「今回の改変を無効か出来ない程度で変わったねぇ」

 

「喧嘩売ってんのかテメェ……っ!」

 

「ハハハハハハハハ!!」

 

 陽介が煽ると春が反応し、また寸劇が始まる。

 

 百代はその光景を見て微笑みを浮かべながら

 

「もう8時ですし夕御飯にしましょう。準備出来ますから」

 

「いつしたの!? ずっと居たよね!?」

 

 なんならずっと私の横に居た筈だと春は驚く。

 

「秘密です」

 

 百代は人差し指を口にあてながら微笑み、薫の方を向く。

 

「柊様のご家族にも既に連絡済みなのでご一緒にどうぞ」

 

「いつ連絡したの!? 何で僕の家の電話番号知ってるの!?」

 

「秘密です」

 

 百代は微笑みながらウィンクをすると、台所へ向かった。

 

「ふぅ……でだ。取り敢えず、この書類に名前とか書いてくれ」

 

 陽介はデスクから書類を取り出す。

 

「あ、契約書だ」

 

「そう、契約書。一応うちに所属しとけば勧誘とか誘拐とかは減るからな」

 

「誘拐が減るってなに?」

 

 誘拐される可能性が減るのである。どこも能力者が欲しいので手段は選んでいられないのだ。

 

「誘拐から洗脳ないし脳改造は見たことあるよ」

 

「人権はどこに……」

 

「裏の組織の類いにそんな概念はないよ」

 

 民度は昭和特撮の悪の組織とトントンである。

 

「取り敢えず、力の制御からだな。明日からビシバシいくぞ」

 

「うん!」

 

「その前に女の子の身体に慣れなきゃでしょ」

 

「……うん」

 

 こうして、便利屋パライソは新たなメンバーを迎えるのであった。

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