混沌都市~便利屋パライソ珍道中~   作:ものため

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第4話 爆食いには気を付けよう

 薫がパライソに入り数週間が過ぎた頃……。

 

「「う、動けない……」」

 

 今日の訓練はハードだった様で、2人は動けなくなっていた。地下にある訓練場からどうにか戻ってきた2人は突っ伏している。

 

「取り敢えず、今日はもう訓練なしかな」

 

「「やったぁ!!」」

 

 2人が喜んでいると

 

「ん?」

 

ピンポーンとインターホンが鳴る。

 

「あー、俺と百代で対応するから2人は汗拭いてきて」

 

「うん、分かったよ」

 

「了解! 直ぐ拭いてくるから!」

 

 そう言うと2人は汗を拭きに行った。

 

「配達は無いはずだから、依頼かねー」

 

 陽介は玄関に向かうのであった。

 

~~~

 

「そういえば、身体には慣れた?」

 

「流石に慣れて来たかな」

 

 薫は春からの質問に対し慣れて来たと返答したが、入浴時はなるべく身体を見ない様にしているし、トイレもまだ違和感がある状態だ。

 

「さっきのチャイムって新しい依頼人かな?」

 

「荷物が来る見たいな話も聞いてないし、そうかもね」

 

 2人は簡単に汗を拭き、制汗剤を使い匂いを消すと、応接室に向かうが

 

「なんか騒がしくない?」

 

「どうしたんだろう?」

 

 どうも騒がしい。応接室に近づく度、なにかワメいている様な声が大きくなっていく。

 

 2人は、なんだなんだ? と応接室の扉を開くと

 

「だから! アンタ何回目だ!? 流石にヤバイぞ!」

 

「大丈夫です! だから早く魔法を掛けてください!」

 

「いや寿命が長い=身体が丈夫ってわけじゃないからな!? 痩せたり太ったりの繰り返しは流石に不味いだろ!?」

 

「長生きする気はありません!」

 

「親御さん泣くぞ!?」

 

 陽介と耳の長い少しポッチャリした金髪の女性が言い争っていた。

 

~~~

 

「エルフ!? 実在してたの!?」

 

「うわぁ、美人……」

 

 初のエルフに薫は驚き、春は容姿の良さを褒める。

 

「えへへ。あっ! 自己紹介がまだでしたね。私はエルシア・ルーブと申します! 大学生やってます!」

 

 春と薫もエルシアと名乗ったエルフの女性に自己紹介をする。

 

「春さんと薫さんですね。よろしくお願いします」

 

「「こちらこそ、よろしくお願いいたします」」

 

「いや、よろしくないから帰ってくれ」

 

「酷い!?」

 

 陽介はエルシアに対し容赦なく帰れといい放つ。何故こんなに扱いが雑なのだろうか? 

 

「ヨウは何でそんなにエルシアさんの扱い雑なの? ていうか、エルシアさんの依頼ってなに?」

 

 薫は陽介のエルシアに対する雑さに依頼が関係してると睨み質問する。

 

「ダイエットだよ」

 

「はい?」

 

 陽介の返答に薫は目を丸くする。

 

「下のジム行けよって言ってるんだがなぁ」

 

「運動は苦手で……」

 

 だとしても運動しろよと陽介は思った。その通りである。運動しないエリシアが悪い。

 

「でも、少しポッチャリ気味だけど、ダイエットするほどには見えないよ?」

 

 むしろ健康的じゃない? と春は思う。

 

「人間ならばそうだけど、エルフだとなぁ」

 

「うぅ……」

 

 陽介は項垂れるエルシアを横目に見ながらため息をつく。

 

「エルフって長寿で美人のイメージあるでしょ」

 

「あー漫画とかだとそうかも」

 

 薫は確かにと納得する。エルフという種族が書かれる物語では、基本的に長寿で容姿がいいという設定が多い。

 

「長寿ってのが悪さしてるらしくてなぁ」

 

「長生き出来るならいいじゃん?」

 

 確かに長生き出来るならそれでいいだろう。

 

「良くも悪くも容姿が変わりずらいから、これでも太ってる判定らしい」

 

「えぇ……? 少しポッチャリしてるぐらいなのに」

 

 これで太っている判定なのかとエルフの生体に驚愕する。同時に太りにくそうでいいなと羨む。

 

「今まで、ちょっと食べ過ぎちゃって……とかしか聞いてなかったけど、普段なに食べてるの?」

 

「えーと、ピザとニンニクヤサイアブラマシマシのラーメンとドロドロのラーメンとハンバーガーとコーラを……その、毎日」

 

「死ぬぞ!? 太る太らないじゃくて死ぬぞ!? 何がちょっと食べ過ぎちゃってだ!? エルフの菜食主義はどこいった!?」

 

 エルフといえば菜食主義のイメージがあるだろう。……まぁ、作品によるが

 

「そ、そんなのエルフそれぞれです! 私の故郷は普通に狩りもしますし! 動物性たんぱく質は摂取します!」

 

 いろいろと地域によるとエルシアは主張するが……

 

「だとしても食いすぎだろ!」

 

 陽介のいう通りだ。太って当然である。

 

「お、美味しいのが悪いんです! 自然と共に暮らすエルフにとってはラーメンとピザとハンバーガーとコーラなんて劇薬です!」

 

「知らねぇよそんなこと!?」

 

 これで痩せたいとか正気の沙汰じゃないと陽介は戦慄し、薫は残念なエルシアを残念な美人と認識した。春はいいな太り難いのと羨ましがる。

 

「てか、何でそんに切羽詰まってるの? いつもなら余裕あるだろう」

 

 いつもなら、もう少し余裕があるはずだろうと数年の付き合いから陽介は尋ねる。

 

「そ、それが両親が旅行で来ることになりまして」

 

 なるほど、それでかと陽介は納得する。

 

「いつ来るの?」

 

「3日後です」

 

「お帰りはあちらです。さようなら!」

 

「そ、そんな~」

 

 ムチャ言うなと陽介はキレる。世の中出来ること出来ない事がある。

 

「助けてくだいさいよ~。三代目キング オブ ウィザードなんでしょ~」

 

「そんな二つ名知らん」

 

 どうやら陽介には二つ名がある様だ。

 

「なに、キング オブ ウィザードって?」

 

「名前の通りじゃない? 僕にもそういうのが好きな時期があったなー」

 

「薫? 聞こえてるからな? その発言、地味にダメージあるからな?」

 

 陽介は高校生、意味なく包帯に憧れる年齢ではないのだ。

 

「はぁ、いつもなら、食欲を減らす魔法でいいが、その魔法で流石に2日で痩せるは無理だしなぁ」

 

「依頼料は奮発しますからぁ~」

 

 無理だという陽介にエルシアはどうにかしてくれとまとわりつく。

 

「ええい! まとわりつくな! 無理なもんは無理!」

 

「そんな~」

 

 エルシアはペタンと座り込む。ひとえに己の不摂生が悪いのだが……。

 

「別にすぐに痩せる必要なくない?」

 

 陽介を除く全員が発言者である薫を見る

 

「いや、見た目変えれる魔法とかないの? 数日誤魔化せればいいんでしょ?」

 

 今度は全員が陽介の方を見ると

 

「………ぴゅー」

 

 なんか明後日の方向を見ながら口笛を吹いてる奴がいた。なんで誤魔化そうとしているのだ。

 

「その反応、あるんですね! なら今すぐに!」

 

「ダメだ……!」

 

 陽介は薫の案を拒否する。

 

「ど、どうしてですか!」

 

 陽介は深刻そうな顔をしながら理由を告げる。

 

「それをするとな……絶対にダイエットせずにデブエットし続けるぞコイツ」

 

「「あー」」

 

「何で全員納得してるんですか!?」

 

 当たり前である。自分の食生活がどんなもんか考えてみろぽっちゃりエルフ。

 

「エルフの生活習慣病とか聞いたこと無いし。対応してくれる医者いねーよ」

 

 陽介も自分が原因で生活習慣病になったとかは勘弁して欲しいのである。

 

「そういう事だから、俺はしないぞ」

 

 陽介は頑なに魔法の使用を拒否する。

 

「うぅ、どうすれば……」

 

「もう、諦めればいいんじゃないですか?」

 

「これでも故郷では品行方正文武両道で通ってるんで、ダラシない身体を見せるのに抵抗が……」

 

 そんなに抵抗があるなら食生活を改めろよ。どうしてラーメン、ピザ、ハンバーガーで暮らしてきたんだ。

 

 陽介達がどうしたもんかと考えていると。

 

「私にいい考えがあります」

 

 百代が人数分のお茶を持ってやってきた。どうやら百代には考えがあるようだ。

 

「ひとまず、エルシア様はこの書類にサインを」

 

「は、はい」

 

 エルシアは書類の内容を確認せずに名前を書く。

 

「それでは、陽介様は認識変更の魔法をエルシア様に掛けてください」

 

「一応、書類の内容確認するぞ」

 

 陽介は書類を手に取ると内容を確認する。数分ほど経過し内容を確認し終えると

 

「まぁ、これならいい」

 

「ほ、本当ですか!? ありがとうございます!」

 

 エルシアはどうにかなりそうな状況に喜ぶ。書類内容の確認もしていないのに……。

 

「アンタが普通の体型に見える様に認識を変える魔法を掛ける期間は数ヶ月だ」

 

「はい! よろしくお願いします!」

 

「掛けた時点で書類の契約魔法も発動するが……。まぁ、魔法なしのカロリー制限とダイエット頑張ってくれ」

 

「え、それどういう?」

 

 エルシアに魔法が掛けられた。

 

~~~

 

 数週間が過ぎた頃

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉおお!?!?」

 

 エルシアはパライソの下階にあるジムのランニングマシーンで走っていた。

 

 書類に掛けられた魔法は運動の強制、カロリー制限の強制である。そのため好物は食べれず、ひたすらに運動をさせられているのだ。

 

「おぉ、やってるやってる」

 

 陽介がジムでダイエット中であるエルシアの様子を見にきた。心なしかニヤニヤしているのは日頃の鬱憤だろう。

 

「陽介さん! 食欲低下の魔法を掛けてください!? 制限で食べたいのに食べれないな辛いです!?」

 

「しません、アンタは反省しなさい。俺は仕事で来たから、もう行くんで」

 

「そ、そんなー」

 

「じゃあ、ジムの人に食欲低下の魔法掛けてくるから」

 

 そういうと、陽介はジムを回って、エルシア以外に食欲低下の魔法を掛けるのであった。

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