混沌都市~便利屋パライソ珍道中~   作:ものため

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第5話 せまるな改造人間

 木曜日の16時20分

 

「うーん、今日も疲れたー」

 

「まぁ、この後も修行があるんだけどね」

 

「もー言わないでよー」

 

 学校も終わり、春と薫はパライソへ向かっていた。

 

「今日も、依頼人来ないかなー」

 

「来てくれれば修行無くなるもんね」

 

 基本的に、優が見てない状況以外では簡単な修行以外はしない様にと他ならぬ優に言われている。力が力のため、事故が起きたらマズイからである。

 

 そんな話しながら歩いていると、2人はパライソのビルに到着する。特に何も考えずパライソに入り、客室の扉を開けると

 

「…………」

 

「…………」

 

 陽介と昭和顔の男が無言で座っていた。

 

「…………」

 

 その光景を見た春は無言で扉を締めた。

 

~~~

 

 2人は作成会議をしようと、台所へ向かうと、そこには百代がいた。

 

 客室で何が起きているのかを百代に聞くが、

 

「つまり、百代さんが買い出しから帰ってきた時にはこうなったと」

 

「はい」

 

 百代が帰ってきて扉を開けたら、既にこの光景が広がっていたらしい。

 

「流石にこのままってのも問題だし、聞きに行こうよ」

 

「気が重いけどそうしようか」

 

「私はお茶の準備をしなければならいないので」

 

「「逃げんな」」

 

 百代はお茶の準備があるといい断る。

 

「しょうがないし行こうか」

 

「うん」

 

 春と薫の2人は客室に向かうのであった。

 

~~~

 

 2人が客室に向かうと

 

「…………」

 

「…………」

 

 いまだに男が2人無言で座っていた。何をしているんだコイツらは

 

「なにしてんの?」

 

 諦めた春はどうにでもなれと思いながら尋ねる。

 

「……申し訳ないけですけど、もう一回説明お願いします」

 

「あぁ」

 

 男はどこからラジカセを取り出し、音楽を掛ける。

 

「は?」

 

 ラジカセからは昔の特撮の様な軽快なBGMが流れ始める。

 

「私は金剛 貴司は改造人間である。私を改造したリョッカーは「マテマテマテマテ!? ラジカセ止めろ!?」うむ」

 

 薫のツッコミによりBGMが止まる。

 

「俺が頭抱えてた理由その1な。リョッカーってなんだよ……」

 

「えぇ?」

 

 2人は困惑した。なんか変なのが依頼人の様だ。

 

「それで、えーと、金剛さんは何の依頼で来たの?」

 

「……既にリョッカーは残当含め全滅させた。ゆえに、人間に戻りたいんだ」 

 

「な、なるほど」

 

 重い依頼だった。こんなふざけた状況の癖にちゃんと重い依頼だった。

 

「一応聞くけど何の改造人間なの?」

 

「リオックだ」

 

「絶妙に何ともいえないチョイスだ」

 

 薫の質問に金剛はリオックと答えた。バッタじゃないだけマシだろうか……。

 

「ふむ、お見せしよう……変…! し「ヤメヤメヤメヤメ!?」うむ」

 

 陽介は全力で止める。改造人間を見ることより恐怖が勝ったのだ。

 

「無言になるよね。これじゃ」

 

 自分たちが来るまでに、このやりとりをしたのだろうと春は推測した。しかも内容も重いし。

 

「とは言っても、人間に戻すってどうするの?」

 

「そこで悩んでるんだよ。改造人間とか対応したことないよ俺……」

 

 誰だって対応したことない。対応してたとしたら悪の秘密結社かなんかだろう。

 

「そこをなんとか」

 

「魔法掛けたとして所々にある謎の金属とか謎の人工的な素材がどう反応するか予測できんし、それで死なれたら責任取れん」

 

 死なれたら責任が取れないというのが魔法を使えない理由であった。

 

「科学由来だけでもムズいのに、金剛さんの場合いろいろとごちゃごちゃでな、本当に予測が付かない」

 

「おのれリョッカー!」

 

「定期的にパチもん感を出すの止めてください」

 

 あふれでるパチもん感に陽介はダメージを受けている。

 

「しょうもない依頼だったら良かったのにね」

 

「重いよね。人間に戻りたいって。僕も少しは気持ち分かる」

 

 春と薫がこそこそと喋り始める。薫も朝起きたら性別が変わっていたため、元に戻りたいという気持ちは分かるのだ。

 

「そもそも改造人間って科学技術じゃないですか。ならば科学の力で戻すのがいいんじゃ」

 

 春の金剛に尋ねる。わざわざ便利屋に来るのも変な話だ。

 

「私のクローンを作り脳移植というのも考えた……。しかし、その場合クローンの命を奪ってしまう事になる。人間には戻りたいが、命を奪ってまで戻りたいとは思わん」

 

「金剛さん……」

 

 人間に戻るという願いより他者の命を優先する。パライソの面々は金剛がヒーローに見えた。

 

「私も、そして十文字も」

 

「十文字!? なんか増えたぞ!?」

 

 絶対2号である。どう考えても2号である。名前的に多分2号である。名前のヒーローっぽさがパチもん感に全て持ってかれてしまった。

 

「金剛さん……。僕も金剛さんが人間に戻れるように協力するからね!」

 

「柊くん……!」

 

「割りと近い境遇の薫が過剰に反応してる!?」

 

 なんか薫が変なテンションになっている。境遇が近いのもあるが、実は薫は特撮とか結構好きなため、過剰に反応しているのだ。

 

「む、失礼、電話だ」

 

「あ、はいどうぞ」

 

 金剛の携帯に着信が入る。誰からだ?と金剛は確認する。

 

「十文字からか……。もしもし、どうした? …………なにッ!? リョッカーの残党がまだ居て新組織ベルリョッカーを設立しただとッ!?」

 

「なになになに!? ベルリョッカーってなに!?」

 

 情報の濁流に陽介は流される。本当になんだベルリョッカーって

 

「まだまだ私達は戦わねばならない様だ」

 

「金剛さん……」

 

 薫が悲しそうに金剛を見ている。……なんでこんなわけのわからない状況で悲しめるのだろうか。

 

「それでは……とう!!!」

 

 金剛は窓を開けると、そこから飛び出して行った。

 

「いや、玄関から出てけよ……」

 

 陽介は疲れ気味にツッコむ。

 

「ねぇ陽介?」

 

「どうした?」

 

「ああいう依頼人って結構くるの?」

 

 春も結構疲れていた。金剛のキャラクターの濃さにやられているのだ。

 

「年に数回……くらいかなぁ」

 

「そっかぁ」

 

 春は遠い目で、全開になった窓を見るのであった。

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