人外なりの青春の過ごし方   作:エリクサー

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人外のジンガイさん。

 

 天輪浮かぶ空の袂に広がる匣庭。学園都市キヴォトス、幾千の学園が集まり、学生が自治をとる場所。

 

 そこにいる者は皆透き通った世界で、青空のようにさわやかな青春を送る……訳では無い。

 

 度重なる銃犯罪、治安悪化、爆破事件は週一で起こる。そんなとても良しとは言えない治安を持つのがキヴォトスだ。

 

 そんなキヴォトスのとある土地、廃倉庫。そこには、椅子に縛り上げられた一人の犬の獣人と、その周りを囲むヘルメットをかぶった不良数人が緊迫した空気を吸っていた。

 

 すると、不良の一人がこれ見よがしに銃を見せながら呟く。

 

「いやぁ、やっちまったねぇアンタ。まさかアタシらサバサバヘルメット団の縄張りで店開くとはなぁ?」

「か、勘弁してください!知らなかったんです!」

「ま、勘弁するかどうかはアンタのお仲間の誠意次第かねぇ。」

「ショバ代払わず店やったんだ、それなりのバイショー金払ってもらわなきゃあ。」

 

 ……ざっと何があったのか解説しよう。この犬の獣人は、仲間である他の獣人と共に屋台でクレープ屋を始めたのだが……生憎そこは、今獣人を取り囲んているサバサバヘルメット団のナワバリだったようだ。

 

 最も、正式な土地の所有権ももっていない口先だけのナワバリだが……口先だけのものでも、その元が大きければそれは事実と遜色なくなるなんてことはよくある。

 

 サバサバヘルメット団もそれなりの規模を誇り……どうやら、この獣人達も店を始めたばっかりてそのへんのノウハウは詳しくは知らないようだ。

 

 これがもっと手慣れた者によって始められた店なら、こんな荒事も出来まい。獣人達は、強いて言えば運が悪かったのだと言える。

 

(うぅ……誰かぁ、早く助けに来てくれぇ……)

 

 獣人が怯えながら事が動き始めるのを待っていると……不意に、廃倉庫にコツンコツンと乾いた足音が響き渡った。

 

「おっ、来たみてぇだなお仲間さん、さてどうなるかねぇ。」

 

 不良達はこの先手に入る金のことを考えてウハウハになっていた。すると、廃倉庫の奥の暗がりから、ゆっくりと光がともり一つの人影が現れる。

 

 その人影は、キヴォトスで見かける獣人にしては大きく見える……そして、その正体は光に当たる事で露わとなった。

 

 それは、確かに人の影をしていた……しかし、実際のカタチは違う。トカゲのように逆だった鱗のついた尻尾、耳元から後ろに伸びる触角のような二本角、鱗が並んでいたり、甲殻類特有の光沢のある外骨格を持っていたり、まるでトカゲとムシの合わせ子の様な見た目だ。

 

 少なくとも、とても同じ人間とは思えない……だが、頭部に浮かぶ歪なヘイローがその存在を不良達と同じ生徒だと証明してくる。

 

 突然現れたその怪物に、ヘルメット団は息を呑む……獣人に関してはその化け物を見て泡をふかんとするほどの勢いだ。

 

「ひっ、ひぃぃぃぃ!?バケモノ!?」

「な、なんだテメェッ!?」

「表には仲間が見張ってたはずだ!?どうやって入ってきやがった!?」

 

 肝の座った不良が言葉を投げかける。と、その人外はサラリと流暢な言葉遣いで答える。

 

「半ば強制的に。実力行使で。」

 

 そう言ってその人外はぽいっと表の人間が持っていた銃をなげる。投げられた銃は元々切り裂かれていたのか……綺麗な断面を見せながら空中で2つに分かれる。

 

「ひっ……」

「て……テメェまさかぁ!?表の奴らをどうしやがった!?」

「確認すれば分かる事だぜ。っと、それよりも俺の目的は……そこの犬っころだ。」

 

 そう言ってその人外はそっと鋭く爪の伸びた指を獣人へと指す。すると、ヘルメット団の人間は恐る恐る問いかける。

 

「テメェ……どっちだ!?身代金持ってきたのか?それとも、この犬奪いに来たのか!?」

「……後者。」

 

 次の瞬間、問答無用のヘルメット団のアサルトやSMGによる射撃が人外を襲った。本来、キヴォトスの生徒であれば銃弾程度は外の世界の人間で例えると、弱めのエアガンを撃たれるのに等しい。弾丸が人体を貫通することは決してないのだ。

 

 しかし、目の前の人外は違った。蜂の巣にされ、全身に穴が空く。空いた穴から鮮血が飛び散る。飛び散った血が地面に流れ、その人外はその場に倒れる。

 

 その光景を見たヘルメット団は絶句する…………キヴォトスではまず目にしない光景に、そうすることしか出来ないのだ。

 

「お、おいっ!?やべぇぞどうするんだよ!?人を撃っちまって!?」

「馬鹿っ!?相手はどう見てもバケモノだ!人間じゃねぇだろ!?」

「人間じゃない、か。確かにその通りなんだが、そうドストレートに言われると結構傷つくんだよな。」

 

 そう言って人外は何でもないように立ち上がる。その光景を見て、ヘルメット団は唖然とする。

 

「そんなっ……生きてたのは良かったが、銃弾が効かねぇのか!?」

「効いてはいる……この位の小孔ならすぐに塞がるだけだ。」

 

 そう言って、人外は爪を立てながらヘルメット団を見据える……彼女達は銃を向けたまま、あることを思い出していた。

 

(ま……まさか、あいつ……!?)

 

それは、彼女達の根城のあるブラックマーケットで流れる噂。謎の怪物。

 

 その爪はあらゆる鋼鉄を引き裂き、その尻尾はあらゆる生物を穿つ、どんな事があっても死なない不死身の生命力を持つ、トカゲとムシの合わせ子。野良に生きるキヴォトスの特記戦力。ブラックマーケットの何でも屋。

 

 名は――ジンガイ。人外だからそのままジンガイ。それが名前だ。

 

(ウワサのジンガイかよっ!?)

 

 次の瞬間、人外――否、ジンガイは大きく飛び上がり、なんて天井に張り付いてみせた。たが、ヘルメット団は負けじと叫びながら銃を乱射する。

 

「こ、コッチのほうが数は上だ!それにいざとなったならこの犬を人質にして!」

「ひぃっ!?」

 

 獣人が身体をはねさせて帯びていると、ジンガイははぁと溜息をついて呟いた。

 

「……そう言う手を取る気なら、加減はしねぇぞ。」

 

 次の瞬間、ヘルメット団の2人がぶっ飛ばされた……何故か?理由は数泊遅れて分かった。あの尻尾だ、尻尾を叩きつけられたのだ。

 

 ジンガイは天井をヤモリのように這いずり動いて、尻尾を自由自在に伸ばし、ヘルメット団を次々と叩きのめしていく。

 

 周りの仲間がやられる恐怖に苛まれながら、怯えつつも銃を構えるヘルメット団に、ジンガイは天井から手を離して飛び掛かるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 暫く後、サバサバヘルメット団の団員が簀巻きにされた状態でワルキューレの門前に放置されていた。

 

 意外な事に、皆ムシやトカゲに深刻なトラウマを負ったが、外傷自体は大したことはなく、留置所で大人しくしていると言う。

 

 


 

 

 

「それで、今日のお仕事はどうでしたか?」

「……普通だな。」

 

 ここは、キヴォトスのとある忘れ去られた学園。ずっと昔に廃校になっていこう手つかずの場所、その片隅にある狭い廃ビルを不法侵入(お借り)しているのだ。

 

 机に座り込み、食事を摂るジンガイ。恐竜の様な大顎を開け、行儀よく箸を用いて用意された和食を食べていた……この料理を用意したのは誰か?

 

 その正体は、先からジンガイの向かい側に座っている狐耳の少女、狐坂ワカモである。

 

「美味しいですか?」

「美味いよ、美味い。世界一だ。」

「ふふっ、嬉しいです!」

 

 そう言って、ワカモは嬉しそうに笑う。ご飯を作ってもらった挙句に、こんな笑顔を見れるのなんてなんて良い役割だろうか。ジンガイはつくづくそう思う。

 

「いつもゴメンなぁ……ワカモ。世話とか任せちゃって。」

「何をおっしゃいますか!貴方様にあの日救ってもらってこそ今の私があるのです、この程度の事いくらでもお任せください!」

「救ったって……ちょっと拾ってやったくらいだよ、大袈裟だな。」

 

 しかし、なんやかんやでワカモを拾ってからしばらく経つのだと実感する。ワカモが母校の百鬼夜行学園から停学を受けて路頭に迷った所を拾ってやってからずっと一緒だ。

 

 ワカモにとっては、腫れ物同然に扱われる日々に同じ様に手を伸ばしてくれたジンガイを慕っていた。そして、ジンガイにとってもまた……ワカモは初めての見た目で自身の事を拒絶しなかった者なのだ。お互いに、向け合う感情は相応のものとなっている。

 

 しばしの沈黙の後……ワカモがジンガイへそっと問いかける。

 

「……しかし、やはり見つかりませんか?()()()()()()()()()

「そうさねぇ。見つからねぇな……」

 

 ジンガイは人外だが、元々人外だった訳では無い。幼い頃にさる組織に誘拐され、悪質な人体実験を受けた結果が今のジンガイだ。

 

 結局ジンガイは逃げ出すこと自体には成功したものの、その異形の身体ば戻らず、今は名前すら捨て去られジンガイと名乗っている都言うわけだ。

 

 それまでは、ジンガイは普通にブラックマーケットで必死に生きる人間だった……キヴォトス唯一の男と言う特異性はあれど……だ。

 

 ジンガイの目的は……自分をこの姿に改造した組織を探ること、もっと具体的に言うのならば、人間に戻る方法を探ることだ。

 

 その為の情報が集まると思ってジンガイは何でも屋と言う危険だが割の良い職業に就いたのだが……何でも屋になって数年は経過しても、未だに情報らしい情報はなしだ。

 

「まぁ、もう何年も探してるんだ。これからも探し続けるよ。」

「……貴方様がそう言うのでしたら、私に止める事は出来ません。しかし、無理はなさらないで下さいね。」

「分かってるって、体調には気をつけるよ。」

「……あと、再生能力があるかといってそれに頼りすぎないでください。今日も銃弾をモロに受けましたね?貴方様の血の匂いがします。」

「わ、分かった善処する……」

「それから納豆を残そうとしないでください。好き嫌いはよくありませんよ。」

「な、納豆だけは勘弁して……!!」

 

 絵面だけ見ると、見るからに言葉の通じなさそうな化け物の人体が、綺麗で可憐な大和撫子に詰め寄られているという実に面白い光景が流れるのだった。

 

 

 





オリ主は人外なのでジンガイです。
人外と大和撫子のペアって良くないですか?僕は好きです。

―――

ジンガイくん
体長:2m

ジンガイsふぇいす:トカゲに触角生やしたみたいな顔。虫みたいなレンズ状の目をしている。牙もあって噛む力がヤバい。

ジンガイsぼでぃ:腹筋バキバキ、身体半分がトカゲの鱗で身体半分が甲虫の甲殻。

ジンガイsあーむ:爪が鋭いし怪力、銃を真っ二つにできる。実はカマキリの鎌の様に折りたたまれており伸ばす事が出来る。

ジンガイsれっぐ:こちらはどちらかと言えばバッタの様な虫より、しかし足部はトカゲのようなガッシリとしたものになっている。こちらも折りたたまれており引き伸ばすことで逆関節になれる。

ジンガイsてーる:尻尾。めっちゃ動く。気持ち悪いぐらい動き回る。本気で爪で切り裂くとキヴォトス人でも傷つけてしまうのでこちらを主な武器にしている。

他にも再生能力だったり壁に張り付いたり目から血をビームみたいにして飛ばしたりといろいろな機能があるぞ!続報をお楽しみに!()
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