インビジブル〜神を貫いた音速の末脚〜   作:スタイニー

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時間軸は前作の日本ダービー終了直後です。そして、その中で語られるのは、作中時間の1年前の話となります。

前作に登場する人物が出てきますので、前作を読んでいた方が、楽しめるかと思います。

日本競馬史上唯一無二の記録である『キャリア3戦目での日本ダービー制覇』の軌跡をウマ娘世界に置き換えて描きます。

再びの駄文ではありますが、お楽しみください。

前作小説ID:350999


プロローグ

 

「トレーナー。お疲れ様でした」

 

「おう!コンコルドか。お疲れ!応援ありがとな!」

 

予定されていたレースが全て終わり、観客が誰もいなくなった東京レース場。

その観客席でタバコを吸いながら、ターフを眺めていたシンジにフサイチコンコルドが声を掛ける。

 

「いえ、大切な後輩の晴れ舞台ですから、応援するのは当たり前ですよ。ジャスティス、惜しかったですね。勝ててもおかしくない走りでしたが、勝った子が強かったですね」

 

シンジの労いに対して、フサイチコンコルドは優しく笑い、レースの感想を述べる。

 

「ああ。惜しかった…。アイツは今までで一番の走りをしていたよ。負けたのは俺のせいだ…」

 

「そうですか…。でも、トレーナーは悔しくなさそうですね?」

 

フサイチコンコルドはシンジの言葉と表情の違和感を指摘する。

 

「そうか?これでも結構悔しいんだぜ。まあ、負けた相手が宮さんだから、まだ清々しいってのはあるかな」

 

「本当にそれだけですか?相手が恩ある先輩とはいえ、負けてもこんなに清々しい顔をトレーナーがするとは思えませんが?」

 

そう言うシンジに対して、フサイチコンコルドはなおも違和感を指摘する。

 

「ったく、無駄に察しが良くて嫌なヤツだ…」

 

シンジは苦笑いしながら、フサイチコンコルドの察しの良さに毒づく。

 

「僕はあなたの"相棒"ですからね。なんでもお見通しですよ。それで、こんなに清々しい顔が出来る理由はなんですか?」

 

そんなシンジに対してフサイチコンコルドは笑いながら窘め、何があったかを聞く。

 

「さっき、宮さんに聞いたんだ『今回の勝因はなんだったんですか?』ってな」

 

「負けた相手に直接聞きに行くなんて、あなたは…。先輩はなんとお答えになったんですか?」

 

シンジのまさかの行動にフサイチコンコルドは笑いながら、宮下からの返答を聞く。

 

「勝てた理由は『出会いと想い』だってさ。ったく、そんな曖昧なもんを勝因にされたら、対策もクソもねぇだろ!ふざけんなって話だ。ただ…」

 

「ただ?」

 

宮下の意外な返答に呆れた顔をしたシンジが、何かに気付いたように真面目な表情をする。

 

「ただ、思ったんだ。もしかしたら、"去年の俺ら"が勝てた理由もそうだったんじゃないかってな。そしたら、ジャスティスには申し訳ないが、少し嬉しくなっちまったんだ…。2年前の俺とお前の出会いには特別な何かがあったんだってな…」

 

そう話すシンジの顔は先程までと違い、穏やかな表情になっていた。

 

「ええ、きっとそうです。僕はあのダービーに勝てた理由はずっと前からそうだと思っていました。そうでなければ、あんな奇跡は起きませんよ。だって僕らは"神様"を倒したんですから…」

 

そんなシンジに対して、フサイチコンコルドは優しい笑顔で理解を示し、去年のダービーについての本心を伝える。

 

「確かにな…。あの一年間の俺らの標的は『日本ダービー』でもなけりゃ、『ダンスインザダーク』でもなかった。『神様』だった。まあ、『神様』なんて理屈が通じねぇ相手を倒すには"理屈じゃねぇ何か"で倒すしかねぇからな」

 

「そうですね。あの、トレーナーは僕との出会いを覚えてますか?」

 

「ああ、覚えてるよ」

 

「今更だから聞きますけど、トレーナーは最初絶対に僕のこと嫌いでしたよね?」

 

フサイチコンコルドは"意地悪な"笑顔でシンジに問い詰める。

 

「それを蒸し返すなよ。一応、俺的には今も引きずってるくらいには反省してるんだ。生涯の相棒を『冴えねぇ陰キャなガイジン』て、ひでぇ見方をしちまったんだ。お前のことを何も知らないのに…」

 

フサイチコンコルドの問いかけにシンジが申し訳なさそうに答える

 

「謝る必要はないですよ。むしろ、トレーナーがそう思うのも仕方がないと僕は思います、あの時の僕は一人で背負い込みすぎていたんですから。でも、そんな僕をチームに入れてくれ、誰かに頼ることの大切さをあなたから教わって、運命が変わった。僕はあの出会いに関してだけは神様に"感謝"します」

 

申し訳なさそうにするシンジに対してフサイチコンコルドは優しい笑顔で気にすることはないと告げる。

 

「ハハハ、神様に"感謝する"か…。あれだけ神様を"嫌っていた"お前がそう思えるようになるとはな…。コンコルド、お前がファンからなんて呼ばれてるか知ってるか?」

 

「ええ。知ってますよ。『和製ラムタラ』。別名『神のウマ娘』。皮肉ですね。僕は神様が大嫌いだと言うのに、みんなはそう讃えるなんて」

 

「確かにな。でも、俺とお前はそれだけのことをやったんだよ。俺はお前と"相棒"になれたこととあの偉業を成し遂げたことを一生の誇りに思うよ…」

 

「ええ。僕もです。あのダービーは僕にとって人生最高の瞬間だった。一生忘れない最高の宝物です」

 

 

 

 

 

 

それは今から一年前の出来事。

神様に運命を翻弄され続けたウマ娘と若干24歳の若手トレーナーがトゥインクルシリーズの常識を塗り替えた『奇跡のダービー制覇』。

 

神を貫いた音速の末脚の物語。

 




題材は96年日本ダービーです。
前作で97年日本ダービーを描きましたが、自分的には96年のダービーもかなり好きです。
本当にいろいろな要素が絡み合って起きた奇跡のダービー。
フサイチコンコルドの輝きは本当に刹那的な一瞬ではありましたが、一瞬の輝きだからこそ、ウマ娘の世界観で描いてみたいと思い描いてみました。

ちなみに個人的なフサイチコンコルドの容姿と性格はシュヴァルグランとケイエスミラクルを足して2で割った感じで考えています。
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