そして、そのダービー当日も不穏な雰囲気が満載で…。
果たして、シンジとフサイチコンコルドは万全の状態でレースに臨めるのか!?
「コンコルド。親から連絡は?」
「まだ、ありません…。母さんはいつも通りなんですが、父さんからも連絡がなくて…」
「マジか…。何もトラブルがなきゃいいがな…しかし、客の数やべーな。昼過ぎの時点でもう10万人超えてんじゃねぇーか?これじゃあ、親父さんたち来てもいいとこじゃあレースが観れねぇな…」
ダービー当日の昼過ぎ。
シンジとフサイチコンコルドは東京レース場でダービーの時を待っていた。
幸いあれからフサイチコンコルドの体調に異常はなく、ダービー当日はかなりいいコンディションになっていた。
ただ、肝心の両親からの連絡がない。
結局、ダービー前日までもフサイチコンコルドの母親がダービー観戦に対して首を縦に振ることはなかったらしく、体のコンディションとは別の部分でフサイチコンコルドのコンディションは低調だった。
「まあ、あと2時間くらいあるから気長に待つしかないわな…。つーかさ、チームのヤツらも何やってんの?今日はやたらと好き勝手動きやがって、ダービーだからってテンションが上がるのはいいが、トラブルだけは起こすなよ。起こしたらタダじゃおかねぇ!」
「…」
「1時間切ったな…。まさか親父さんも来ないとはな…。まあ仕方がねぇ。コンコルド、もうすぐ本番だ。行くぞ」
「…はい」
それはまさかの展開だった。
必ず来ると言っていたフサイチコンコルドの父親からも連絡がないのだ。
レースのスタートまで残り1時間を切り、ここに来てフサイチコンコルドのメンタルはどん底だった。
「とりあえず、服を着替えろ。初めての勝負服だし、機能性はチェックしとけよ。そんで、後15分くらいでパドックだ」
「…はい」
[こりゃあ、寝起きよりひでぇツラだな。これじゃあ、実家に帰ったのが逆効果だ…]
落ち込むフサイチコンコルドの顔を覗くシンジもその表情の酷さに落胆の色を隠せない。
「ねぇねぇ!トレーナー!コンコルドはどの通路通ってパドックに行くの?ってか、初めてのGⅠだし、早めに行くでしょ?」
突然、チームの1人がシンジにフサイチコンコルドのパドックまでのルートと行く時間を聞く。
「は?そりゃあ、この控え室の場所だから、D通路を通るだろうよ。行く時間はまあ、早めに行くさ。ギリギリだと何が起きるかわからないからな。つーか、そんなこと聞いてどうすんだよ?」
「さあねー。じゃ、ワタシらスタンド行ってるから!バイバーイ!」
質問した子はシンジの質問に答えることなく、控室をニコニコ笑いながら出て行った。
「なんなんだよ。どいつもこいつも浮かれやがって…」
「トレーナー。着替え終わりました」
着替えが終わったフサイチコンコルドが更衣室から出てくる。
「おっ!いいじゃねぇか!一応、デザインはヨーロッパ風のスーツタイプの勝負服を選んだが、なかなか似合ってるな!これなら親父さんたちも見つけやすいだろ」
「そうですね…」
フサイチコンコルドの晴れ姿にシンジは笑顔を浮かべるが、当の本人はの顔色は冴えない。
「…。よし、早めに外行くか。こんな部屋の中じゃあ、辛気臭くて仕方がねぇ。外の空気吸いに行くぞ!」
「はい…」
そんな顔色を察したシンジは、たまらずにフサイチコンコルドを外へと誘い出す。
「トレーナー!」
「なんだ?シンイチか?どうした?」
「ねぇ、みんながあっちに来てって!コンちゃんも早く!パドックが始まる前に早くね!」
先に準備を終わらせていたフサイチシンイチがシンジたちを呼びに来る。
「あん?なんだ?まあ、とりあえず行くか。よし、行くぞコンコルド」
「はい…」
フサイチシンイチに誘われるままに通路を抜け、外への出口に行くとそこには…
「心配をかけてすまなかった。着くのが遅くなりました。とりあえず、間に合ってよかった。ねぇ、"クイーン"」
そこにはフサイチコンコルドの父親とフサイチコンコルドの"母親"がいた。
「ごめんなさい。あれだけ頑なに観に行かないと言っていたのに、やっぱりあなたの晴れ姿を観たいと思いました…。結果はどんな結果でもいいの。無事に一生懸命走ってきてね…」
「えっ…。なんで…。本当に…」
まさかの出来事にフサイチコンコルドは驚きを隠せない。
「よかったじゃねぇか!コンコルド!よっしゃ!これで勝てるぜ!お父さん!ありがとうございます!」
シンジもまさかのサプライズに驚く。そして、快心の笑みを浮かべる。
「いや、私は何も出来なかったんです。でも、今日の朝から娘の友達たちが、レースを観に来てくれるようにと、ずっと私たちに連絡をくれていたんです。それこそいろいろな場所からリアルタイムでね。それを妻に見せたら、先日の話がウソじゃないってわかってくれましてね。『娘の友達が誘ってくれるのなら、観に行かなくては娘の顔に泥を塗る』と言ってようやく重い腰を上げてくれました。感謝するならあなたのチームメイトに言ってください」
フサイチコンコルドの父親は申し訳なさそうにしながらも、チームメイトの協力に感謝の言葉を述べる。
「はー?お前らそんなこと…。だから、今日はやたらと好き勝手に動いてやがったのか!?」
「あっ、だから僕の父さんのLANEを聞いてたの?」
チームメンバーの今日一日の行動理由にシンジとフサイチコンコルドがようやく気付く。
「そうだよ!私ら全員自分のレースそっちのけで裏方スタッフですよ。今日のお客さん18万人らしいけど、私らには関係ないね!パドックが一番綺麗に見れる場所からゴール前のいい場所まで確保済みだし!なんならこの場所での対面式まで!なかなか手強かったけど、警備員の目を欺いてやったぜ!」
「おい!それはまずいだろ!バレたら、俺の責任問題になる!」
チームメイトが満面のドヤ顔でサムズアップするが、引率責任を問われる行動が含まれていることにシンジがツッコミを入れる。
「そこら辺はいつもトレーナーが言ってるでしょ『逃げるな!戦え!後は"俺が"なんとかしてやる!』って。今が漢気見せる時でしょ!」
「おめぇら、後で覚えておけよ…」
シンジの訴えをチームメイトはまったく気にせず、シンジに責任をなすりつけるつもりのようだ。
「フフフ…。賑やかなチームですね…。あなたたちのような仲間となら娘も大丈夫でしょう。コンコルド。こっちへ。少し話があります」
「は、はい」
「時間が差し迫っているのにごめなさい。少しだけ時間をいただいてもいいですか?」
「はい。どうぞ」
そう言ってフサイチコンコルドの母親は娘を少し離れた場所に移して何か話をしようとする。
「ありがとうございました。さあ、頑張ってきてね」
話が終わり、フサイチコンコルドの母親が娘を送り出す。
「はい。トレーナー、行きましょう」
「ああ、行こうか[おっ、目付きが変わった。こりゃ、やべーな。初めて見るかもしれない。コンコルドの、いやレースの本場ヨーロッパの"サラブレッド"の本気を]」
あからさまに雰囲気が変わったフサイチコンコルドにシンジは少しだけ気圧される。そこには、いつもの気弱な雰囲気はなく、その姿はまさに『天才』の風格だった。
この時点で俺の中ではダービーに勝てることはだいぶ確信に変わってたな。
ここまで神様とやらに散々妨害を喰らってきたが、レースが始まりゃあ、こっちのもんだ!覚悟はいいか?神様とやら!今からテメェをみんなでぶっ倒しに行くからな!
第63回日本ダービー いざ、開幕!
パドックではコイツ、寝てるんやないか?と思いました。でも、本馬場に入ったら雰囲気が一変しました。あんなことは初めてでした。
そんな、史実をこのエピソードでウマ娘風に表現してみました。
シンジトレーナーのモデルは『番長』と呼ばれたあの騎手ですが、シンジトレーナーのチームの雰囲気としては『基本的にはトレーナーの言うことをしっかり聞くチームスピカ』として描いています。
なので、チームのみんなは賑やかで気のいい子が多く、チームワーク高めに設定しています。
二次創作でよくある『実際の騎手がトレーナーだったら』という題材はとても面白いお題ですよね。『チームikze』『チームみゆぴー』とか良い味を出していると思います!
ちなみに個人的に好きなチームは『チームノリーズ』です。
いつか、既存のメンバーに『砂の女王』『マイル無敗の雷帝』『老雄』あたりが加わってくれたら嬉しいですね!