インビジブル〜神を貫いた音速の末脚〜   作:スタイニー

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いよいよダービーの火蓋が切って落とされる!
たくさんのサポートを受けてターフに立つフサイチコンコルド。
もう自分1人だけの戦いじゃない。みんなの気持ちを背負ってフサイチコンコルドは戦う。

そして、そのターフにはフサイチコンコルドと共に戦う心強い"味方"がいた。


ALL FOR ONE / ONE FOR ONE

今年、地方・中央含め全国でレーサーとして登録されたウマ娘1万506人。

そして、映えある日本ダービーに出場が出来たのは僅かに17名。

 

2400mの果てにある、たった一つの栄光を目指して、まもなくスタートの時を迎えます。第63回日本ダービー。

 

解説は月刊トゥインクルの吉井さんをお招きしています。

 

 

よろしくお願いします。

 

 

今回はやはり、四天王の3人に評価が集まっていますが、吉井さんはこのダービーをどの様にお考えになりますか?

 

 

ここまでに至る実績を考えると、やはりこの3名かなと思いますが、皐月賞4着のミナモトマリノス・サクラスピードオー・マウンテンストーンあたりも周りが言うほど力の差はないと思いますね。

 

 

あー、そうですか。確かにファンの皆さんの人気を見てもなかなか悩んでいるなと言う感じはありますよね。

 

 

四天王3名の人気も、それぞれの雰囲気が異なりますから、好みが分かれるというところで、支持率が変わっているんじゃないでしょうか?

 

 

なるほど、ありがとうございます。

では、ゲート前、スタート地点の様子を見てみましょう。

 

 

 

 

 

「コンコルド。やっぱり出てきたのね」

 

「あっ、ハイジ。ビックリしたよ。ティアラ路線に行くと思ってから、ダービーに出るとは思わなかった」

 

ゲート前でフサイチコンコルドに話しかけてきたのはビワハイジだった。

 

昨年のジュニアクイーンチャンピオンになったことで、ティアラ路線に行くと思われていたが、まさかのダービー出走表明で注目を集めているウマ娘。

 

フサイチコンコルドの父親との約束によって公にはされていないが、フサイチコンコルドを古くから知る数少ない友達の1人だ。

 

「私には『路線』なんてものは関係ない。私は私の走りたいレースを走るだけよ。ところで、今日の君は何かが違うね。いつもの迷いがないみたい」

 

長い付き合いがあるからだろうか。フサイチコンコルドの纏う雰囲気が昔と違うことにビワハイジはすぐ気付く。

 

「そうだね。いろいろと迷いがなくなったよ。今日は"本当の"僕をハイジに見せられそうだ」

 

「そう。なんか、素敵な顔ね。いいと思う。まあ、負ける気はないけど、あなたの姿を一番近くで見てあげる。頑張ってね」

 

「うん。ありがとう」

 

 

 

ワー

 

 

 

さあ、今場内に歓声が響き渡ります。

今日は15時現在で18万人のお客さんが来ているとの発表があります。

 

さあ、まもなく日本ダービーのファンファーレです!

 

 

ファンファーレと共に大歓声と手拍子の大合唱が始まる。

 

 

 

[母さんたちは確か…。あっ、あそこにいた…。『わかりやすい旗持ってるから、ゲート入る前に必ず見てね』って言ってたけど、流石にあんな派手じゃなくてもわかるかな…]

 

フサイチコンコルドはゲートに入る前に観客席を見る。それはチームメイトが教えてくれた最愛の人たちの場所。

ただ、目印にした旗があまりにも派手なので、フサイチコンコルドはちょっとだけ恥ずかしかった。

 

[ああ。でも、気持ちが穏やかだ。きっと父さんやトレーナーが言ってた『仲間と一緒に戦う』ってこういうことなんだ。こんな舞台なのに緊張も怖さもない。見ててね。僕はみんなのために必ず!]

 

 

 

さあ、17名、体勢完了!

 

 

ガシャン!

 

 

日本ダービーが今、スタートを切られました!

 

 

 

[さてと。狙いは"内側"なんだけど…。みんな早いな…]

 

スタートしてからの位置どりを考えているうちにゲートが開き、フサイチコンコルドは若干の出遅れをしてしまう。

 

しかし、フサイチコンコルドは慌てない。

むしろ、『だからなんだ』というくらいの落ち着きで内側への進路を取る。

 

 

さあ、サクラスピードオーが好スタートを切りました!

何が行く、何が行く。

やはり、スピードオーか!

スピードオーが先頭に立って、約2バ身!

 

そして、内にダンスインザダーク3番手!

 

 

[あの子はあそこか…。あの子、スタート上手いなぁ…。ここからどうしようかな?まだ内側への進路が…]

 

「コンちゃん!コンちゃん!私の横空いてるよ!早く来て!」

 

「えっ?」

 

内側への進路を探していたフサイチコンコルドにフサイチシンイチが声を掛ける。

どうやら、フサイチシンイチがフサイチコンコルドのポジションを取ってくれていたようだ。

 

「あっ、ありがとう…」

 

「よし!これでいいポジション取れたでしょ?」

 

「うん!」

 

まさかのフサイチシンイチのファインプレーでフサイチコンコルドは出遅れをすぐにカバー出来た。

 

 

 

1枠から飛び出した2名が内を突いて第1コーナーから第2コーナーへと流れていきますが、さあ、有力どころでありますが、ロイヤルタッチはちょうど中団あたり。イシノサンデーがその前、これも中団。ただ、その中で、ダンスインザダークただ1人は前から3番目という展開でこれから第2コーナーから向流しへと入っていきます。

 

 

 

「やはり、奈瀬トレーナーの言う通りですわ。確かにサクラスピードオーさんが逃げはしますが、ペースは早くない。だったら3番手の位置だったとしても決して"高すぎる"位置ではない。むしろ、先の展開を考えれば前に障害がなくて、走りやすいですわ」

 

3番手を追走するダンスインザダークだが、それはトレーナーである奈瀬の指示だった。一般的に、逃げ型でなければ隊列の3番目というのはかなり高めの位置である。先行型のレーススタイルをとるダンスインザダークにしては位置とりのミスか?とも思えるような高めの位置どりだが、よくよく考えれば、それは当然の選択だった。

 

そもそも、レース出場者の中でもスタミナ、末脚ともにトップクラスのダンスインザダークがわざわざバ群に埋もれるような位置どりをしなければいけない理由はない。

 

ペースが早くないのなら高めの位置を確保できたほうが、アクシデントが少ない。ダンスインザダークのポジショニングは100点満点の模範回答だった。

 

 

 

先頭に立ちましたのはサクラスピードオー。現在2番手からは2バ身のリード。しかし、ペースはそれほど早いペースにはなっていないような感じがします。

 

そして、そして、2番手にはトピカルコレクターが続いた。

 

そして、奈瀬文乃、悲願のダービー制覇に向けて、ダンスインザダークここに3番手!

 

 

 

「いいペースに、いい位置どりだ。さすがだね、ダーク。さあ、レースの支配は時間の問題だ。あとは、最終コーナーまでこの位置をキープし続ける」

 

奈瀬とダンスインザダークのレースプランはこの時点で完成していた。

 

能力的に17名の中でもトップクラスのダンスインザダークが先団の"かなり"前目にいる時点で後続勢はダンスインザダークの動向を気にしながらレースをするしかなく、『自分本来のレース』などという悠長なことを言っていられない状況になってしまっているのだ。

 

ダンスインザダークと奈瀬はただ、『そのポジションにいる』だけでレースの支配を完成させていた。

 

それは奈瀬が数年前にトゥインクルシリーズを蹂躙していた『芦毛の最強ステイヤー』と共に作り出した『周囲を退屈させてしまう』ほどの完璧なレースプラン。

本来ならば第2コーナーで既に大勢は決まっていてもおかしくない状況だが、今日は、このダービーだけは違う。この日本ダービーにはダンスインザダークを上回る『天賦の才』が身を潜めていることを、今はまだ誰も知らなかった。

 

 

 

 

[もう少しで向正面。ターゲットとの勝負を考えると、そろそろもう少し前に行きたい。どうしようかな…]

 

「コンちゃん!もう行かないと!」

 

声を掛けられたフサイチコンコルドが後ろを見ると斜め後ろを走るフサイチシンイチが小さく手で促しを入れていた。

 

「もう行かないとダメかな?」

 

「私のブロックは直線向いたら厳しいよ。でも、後続は抑えるから任せてね!」

 

フサイチシンイチはフサイチコンコルドだけにわかるようなヒソヒソ声で指示を出す。

 

実際に第2コーナーの出口に差し掛かり、前方組が少しずつ内側へと進路を取ろうとしている。

 

「わかった。ありがとうね…」

 

「絶対に勝ってね!」

 

フサイチコンコルドはフサイチシンイチの合図に合わせて、位置どりを上げる。

逆にフサイチシンイチは速度を一定に維持して、後続勢へ『壁』になるためにフサイチコンコルドの側を離れていく。

 

[よし!とりあえず、私の役目はお終い。でもね、私だってこれで終わらないよ!ダービーの『記念出場枠』舐めんなよ!]

 

フサイチシンイチは自分のレースの全てをフサイチコンコルドのために費やしていた。

 

 

 

 

「さてと、作戦は以上。ダンスインザダークの後ろにさえ付けられれば勝機は見出せる。だから、そのポジションを確保するとこまでが正念場だ!頼むぞ!コンコルド!」

 

「はい。頑張ります」

 

「はいはいー!じゃあ、そのポジションまでは私が露払いやりまーす!」

 

「はっ?お前何言ってんだ?お前はお前のレースをして、勝ちに行けよ!」

 

ダービーの作戦会議に参加していたフサイチシンイチが突然威勢よく手を挙げて、フサイチコンコルドのサポートをすると言い出す。そのあまりにも突拍子ない発言に、シンジがツッコミを入れる。

 

「えっ?別に勝てないから自由に走って良くない?」

 

シンジのツッコミに対して、フサイチシンイチはさも当然とばかりに勝てない宣言をする。

 

「何言ってんだお前?最初から勝ちを捨てて走るやつがいるか!ダービーだぞ、ダービー。ワンチャン目指して必死になれよ!」

 

「そうだよ。シンイチも勝ちに行こうよ」

 

そんなフサイチシンイチに対して、2人は考えを改めるように求める。

 

「あのね、トレーナー、コンちゃん。気持ちは嬉しいけど、私だって周りの才能の見極めくらいはできるよ。私にはダービーを獲れる才能は100%ない…。でもね、仲間を勝たせる"アシスト"ができるくらいの才能なら私にもあるよ。だから、私はコンちゃんのために走る。コンちゃんがタイマン張れるように後続は私が止めるから!」

 

そう宣言するフサイチシンイチの顔はとても清々しく、むしろそのためにダービーに出るといっても過言ではないくらいだ。

 

「お前…。わかったよ。好きに走れ。ただ、ルール上あからさまに勝ち気がないと罰則がある。そこは上手くやれよ!」

 

フサイチシンイチの本気度にシンジは呆れ顔をしながらも、許可を出す。

 

「アイアイサー!任せといて!コンちゃん、今日は一日中、ポジショニングとアイコンタクトとヒソヒソ話の練習しようね!」

 

「えっ?いや、あのー…」

 

「照れちゃってカワイイー!やっぱ、コンちゃんて、いいよねー!」

 

「…」

 

許可をもらったフサイチシンイチがフサイチコンコルドの顔に急接近してニコニコと笑う。フサイチコンコルドはその大胆な行動に赤面するばかりだった。

 

 

 

[同い年で、名前も似てるシンイチはいつも僕を引っ張ってくれる。出会ってまだ1年しか経ってないけど、僕の正真正銘の『友達』の1人で、『姉さん』みたいな人だ。僕に姉さんがいたら、シンイチみたいな人がいいな…]

 

 

レースは前半戦の終わりが近づいている。

遠目から見守る観客たちには淡々とした流れのように見えるかもしれないが、フサイチコンコルドのダービー制覇のためのプロセスは、仲間の支えもあり、確実に完成に近づいていた。

 




今回も前作同様に実際のレース動画をもとにレースを描写することを心掛けていますので、この話を見る前には実際の動画を見ておくことをおすすめします。

さて、実際のレースですが、序盤に印象に残るのは僚馬フサイチシンイチの動きです。実際に意図してあのような状況になったのかはわかりません。でも、もしそれがフサイチコンコルドの勝利のための行動だとしたら、彼も勝利の立役者の一頭でしょう。

私がウマ娘として描いたフサイチシンイチはコパノリッキーとトーセンジョーダンをモデルにしていますが、2人とも仲間想いのいい子なので、同い年の友達にいたらめちゃくちゃいいですよね!
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