※これはフィクションです
プロローグ
「──……私のミスでした」
透き通った景観を背後に、列車内に腰を掛けた少女は語りかける。
少女の頬には血が滲み、白を基調とした服装にも血が渡っている。
凡そ、小さな怪我などでは片づけられないだろう。
だが、そんなことを気にすることもなく、少女は語り続ける。
「私の選択、そしてそれによって招かれた全ての状況」
「結局、この結果に辿り着いて初めてあなたの方が正しかったことを悟るだなんて」
脳裏に浮かぶのは、銃口を先生に向ける生徒の姿。
泣きそうなほどに顔は歪められ、祈るかのように、身に着けている
嗚呼、助けることが出来なかったのだ。
少女の表情は髪と影で隠されており、その言葉の真意を知ることはできない。
だが、確かにそこには取り消すことの出来ない後悔と、キヴォトスへの愛があった。
──体が、軋むのだ。
目の前には助けるべき生徒がいて、それでいて動くことは出来ない。
これでは結局なんの意味もないのではないか、と思ってしまう。
「……今更図々しいですが、お願いします、先生」
そこにあったのは、”先生”に向けた、確かな信頼。
生徒を導き、奇跡を担うものに対しての、純粋な信頼だった。
「きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません」
「あなたのような信念のある大人であるならば、何も思い出せなくても、恐らく同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから」
少女は語る。
──懐かしむように、希うように。
「私はそれを知っていて、信じています」
無条件の信頼ではなく、経験から信頼。
車内は揺れることなく、ただ延々と動いているだけであり、一種の牢獄のようにも感じられる。
ここは果たして何なのだろうか、という疑問は解消されることはない。
「ですから……大事なのは、経験ではなく選択」
「
少女は紛れもなく祈っているのだ。
──先生の選択による、呪縛からの救済を。
補習授業部が集まって笑っている。
ゲヘナ風紀委員会が仕事をこなしている。
美食研究部が気に入らなかった店を爆破している。
便利屋68がハードボイルドを目指して奮闘している。
対策委員会が和気藹々と会議をしている。
あの生徒が、あの生徒が、あの生徒が……………
これは、子供たちによって織りなされる物語。
彼女たちが、傷つくことがないように、きちんと楽しく過ごせるように──先生はここにいる。
子供たちの無限の可能性を、それによって生み出される何事もない
ただ、支えていかなければならない。
「責任を負う者について、話したことがありましたね」
少女は語る。もう取り戻すことの出来ない思い出に浸るように。
責任、という彼女が知っている大人たちがよく使う言葉の意味について。
「あの時の私にはわかりませんでしたが……。今なら理解できます」
『………この失敗は貴女の責任ではない。義務を果たすことの出来なかった私の責任です』
『子供が抱えるものではなく、世界の”責任を負う者”が抱えるものだよ』
それは責任の所在についてのものでもあり、責任という言葉の意味についてでもあった。
大人と子供、先生と生徒……そういった関係性から発生する責任。
そして、それらを抱えることが出来るからこその発言。
「大人としての責任と義務。そして、その延長線上にあった、選択の数々」
先生故の行動であり、大人故の行動であり、持っている故の行動であった。
それらは必ず大きな負担となるはずだが、大人だから、と退けていった。
「それが意味する心構えも」
「……………。」
生徒のため、世界のため。
様々な思いがあったのだろうが、責任と義務に関しての考えは共通していたのだ。
「ですから、先生」
「私が信じられる大人であるあなたになら、」
「この捻じれて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を………。」
物語の本質は変化せず、だがそれでいて中身は捻じれ歪められている。
捻じれと歪みは絶望を生み出すのか、更に捻じり歪めたらどのような結果を生み出すのか。
その先に待ち受ける、終着点とは……。
「そこに繋がる選択肢は……きっと見つかるはずです」
彼女にとって信頼が出来る大人が、きっと手助けをしてくれるはずだから。
先生もきっと、それを乗り越えていくことが出来るのだから。
「だから先生、どうか………────」
◇
先生はアビドス方面の砂漠の道ど真ん中で倒れ伏していた。
動いていないのに暑く、脱水症状で干からびそうである。
その時、ロードバイクを急に止めた音が耳に響く。
「…………。あの………」
顔を残りうる力で精一杯上げてみると、そこには少女の姿。
瞳孔が白と黒のオッドアイであり、全体的にクールそうな印象を受ける。
だが、表情を見るに困惑していることは一目瞭然だ。
「……大丈夫?」
「”ごめん、大丈夫じゃないかも……”」
「何があったの……?」
「”道中に飲食店がなくて、空腹と脱水で………”」
数日間彷徨ったものの、飲食店の一つも見当たることが無かった。
途中で強盗や不良に襲われていた場合、碌なことにはなっていなかっただろう。
「エナジードリンクと行動食4号しかないけど、お腹の足しにはなるとは思う」
そういって少女はスティック状のものと、エナジードリンクを差し出してくる。
スティック状のものの見た目は決して美味しそう、とは思えず何処か科学的なものを感じる。
だが、それを気にしている暇はない。
行動食4号を、エナジードリンクで流し込む。
「あ、それ………」
形容し難い味が口内に広がる。……言うのならば、壁の味。
決して美味しいとは思えないが、食べられるだけありがたいだろう。
「この近くだとアビドスしかないけど………うちに用があって来たの?」
「”うん、手紙が送られてきたからね”」
「………そっか、久しぶりのお客様だ」
当たりには砂漠が広がっており、建造物なども砂に埋まっている。
人が少ないというのも納得ができるような環境である。
だが、先生は手紙が送られてきたからアビドスへとやってきたのだ。
だが、立ち上がり歩こうにも空腹によりマトモに動くことが出来ない。
「動けないの?……うーん、どうしよう」
「”それじゃあ乗せてくれないかな?”」
先生がそういって視線を送ったのは少女の背中、ではなくロードバイクである。
一目で分かるほど手入れが施されており、スリムでありながら機能性を感じさせる風貌である。
きっと性能も高いものであり、2人乗りとなっても問題はないだろう。
何処か科学的なものを感じるロードバイクである。
「性能的には問題ないと思うけど……、座椅子の幅が」
「”じゃあ私が後ろで背負われるような形になるのかな”」
それが効率的であり、最も最善の選択だろう。
「えっと……ロードバイクに乗ってきたから、その……汗だくってわけではないけど……」
「”全然構わないよ、むしろ良い匂いがする”」
「え、うーん、それは良くわからないけど。……まあいっか。しっかり掴まってて」
先生は少女の背に掴まり、少女はロードバイクを漕ぎ始める。
少女――砂狼シロコとのアビドス対策委員会との出会いである。
移動中に風景を眺めてみれば、辺りは砂漠であり経済活動が行われているようには思えない。
治安も良いとは言い難いのだろう。
だが、困っている生徒がいるのならば、先生は手を差し出すだけだ。
◇
『連邦生徒会長、行方不明の噂。何者かの陰謀か!?』
『どうなる、エデン条約』
『七海リン行政官、連邦生徒会長代理に就任!』
【速報】連邦捜査部S.C.H.A.L.E発足。顧問には大人が就任!?
情報は混乱を招き、生徒は説明を求める。
突如現れた超法規的組織など、そう簡単に納得ができるものではないということでもある。
混乱に陥ることは必須であり、避けられない事象でもある。
「ククッ………………」
暗く閉じられた一室で、大人が怪しげに嗤う。
学園都市キヴォトスに突如として現れ、超法規的組織の全権を担う大人。
だが、それでいて権力や金になど固執することなく、ただ”先生”としての執務を全うするという固い信念を持っている。
それは紛れもなく想定していた通りの
「素晴らしい、素晴らしい……」
そこにあるのは愉悦か、歓喜か。
ただどこまでも怪しげに大人は嗤う。
「──主人公が現れ、物語は始まりを告げる」
「クックックッ、ジャンルは決定され、テキストも決定され、物語は作り上げられていく」
砂漠に染まり、雷が降り注ぐ学校の姿。
全てが崩壊し、数多のロボットによって破壊されていく学校の姿。
仮初の平和で、中から崩壊していく学校の姿。
偽りの教えで、化け物を生み出し犠牲になっていく学校の姿。
──そして、赤く紅く染まった世界の姿。
「この世界は何処までも変わることなく、それでいて捻じれ歪められています」
大人は嗤う。
世界の本質を知っているが故、捻じれ歪ませた張本人でもあるが故。
──そして、責任と義務があったが故。
「あなたならば、
僅かな羨望と、期待を抱きながら、大人は嗤う。
その様は先生とは違い、”悪い大人”であることは言うまでもないだろう。
「この世界で
「クックックッ、対面してお会いできることをお待ちしていますよ。……先生」
嗤い声は闇へと消え、罅割れた顔も見えなくなっていった。
呪いと祝福に意味を込めまくりたい。
最近ボンドルドにマキマみたいな厄介オタクの観点を持ってしまったせいで苦悩を味わっています。オリ主要素、無かった場合を見てみたくはないですか?(ニチャァ)
※伏線置いておいて気付かれなかった場合寂しいので、小さく解説だけ置いていくことにします。
戦闘描写
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省け(サクサク)
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書け(それっぽい)