クックックッ…愛です、愛ですよ! シロコ!   作:ゲマ

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今回の敵はなんと………!!◯◯◯◯◯◯◯です!!

戦闘描写は苦手なんですよね…
どけ!マエストロ!エデン条約が読めねえじゃねえか!!

お気に入り&感想&高評価ありがとうございます。
お気に入りが1000を越えました!本当にありがとうございます。

【プロローグを少しだけ修正しました】





.4 空の空

 

 

 

「最近は訪ねてくる人が多いですね」

 

 

「──そうは思いませんか、アリウスの皆さん」

「………」

 

 

 銃口を背中に突きつけているのは錠前サオリであり、周囲を取り囲むように展開しているのはアリウススクワッドで間違いがない。

 最近は本当にネームドキャラと会うことが多い。

 原作への影響について考えを及ばさなければならないため、そこそこ大変ではある。

 

 実際、原作に近づくにつれネームドキャラと出会うことは覚悟していた。

 だが、ここまでだとは思っていない。

 梔子ユメは自ら会いにいったが……

 

 まあ、そんなことを考えても仕方がない。

 

 狙いはわかっている、誰が企てたかもわかっている。

 言うまでもなくベアトリーチェである。

 世界の解釈や、崇高についてで絶対分かりあえないとは理解していたが、手を出すのが早い。

 

 幸い、現在はパワードスーツを着用している。問題はない。

 

 

「狙いは私の技術、首謀者は君達の学校で生徒会長とか名乗っている大人ですね」

「…………武装を解除しろ」

「まあまあ、そんなに焦らないでください」

 

 

 ベアトリーチェはストーリー上此方から攻撃をする。それは間違いがない。

 

 エデン条約という無数の詰みポイントが乱立している場面をいかに切り抜けるかというのは一つの問題点となっていた。聖園ミカを騙して自分が責任を負うという方法を取ろうかとも思っていたが、この機会を活用すればそんなことはしなくても良いかもしれない。

 

 

「しかし、中々手が込んでいますね。私のことをどのように伝えられたのですか?」

 

 

 なんて言うが、どうせ印象操作をしていることは分かっている。

 憎しみ、怒りの矛先を自分に向けさせることは確かに重要かもしれない。

 そもそも、自分がそうなるように仕向けた所があることも否定は出来ない。

 

 

「──ボンクラ仮面、筋金入りのろくでなし」

 

 

 いや、酷いな。

 心外、としかいいようがない。

 

 

「おやおや、それでこうして手を込んだ手法を取ると? それはまるで──」

「………」

「──私から”誰かを守るため”のようですね」

 

 

 少しだけ錠前サオリの纏う雰囲気が変化したことを感じ取る。

 

 変わらずに人殺しの覚悟を決めた雰囲気ではあるが、困惑、怒りなどが現れている。

 やはり自分に言い聞かせているだけだということは非常にわかりやすい。

 

 

「おやおや、可愛らしいですね」

 

 

 と、いってもどうしようか。

 自分は別に素直に武装を解除するつもりもなければ、技術をみすみす提供するつもりもない。

 戦闘は免れることは出来ないのである。

 ならば、せめて挑発だけでもしておこう。

 

 

Vanitas vanitatum et omnia vanitas.(全ては虚しい。ただ虚しいだけである) 中々面白いことを言いますよね」

「っ…………」

「知ってますか?」

 

 

 

「本当に虚しさばかりでは、『愛』すらも生まれないんですよ」

 

 

 

 ──貴女は矛盾している。

 

 

 

 明らかな動揺、錠前サオリの銃口が少しだけズレている。

 動き出すならば今しかない。

 

 

「『枢機へ還す光(スパラグモス)』」

 

 

 肘を少しだけ返し、錠前サオリの腹へと打ち込んだ。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 錠前サオリが吹き飛ばされた瞬間、アリウススクワッドの面々の引き金に指が掛かる。

 

 砂塵が立ち込めるため、黒服が何処へ移動したかは分からない。

 足音も立っておらず、姿も見えることはない。

 だからこそ、警戒状態は解除するわけにはいかないのである。

 

 

「どうです、今からでも食事はいかがしょうか?」

 

 

 声が聞こえた瞬間、槌永ヒヨリが発声地へと銃弾を打ち込む。

 

 これ以上ないほどの正確に放たれた銃弾は黒服と思われるものの影へと向かう。

 

 だが、突然横から入ってきた影に銃弾は防がれる。

 尻尾、純黒の尻尾が防いでいた。

 

 

「おやおや、ご足労願ったのに連れないですね……」

 

 

 砂塵が晴れていき、黒服の全体を捉えると、それは異形の姿だった。

 

 着用していたパワードスーツに変化はないものの、後部から尻尾が生えている。

 先ほどまでは無かったはずの尻尾が突然生えてきた様は明らかにまともな人間ではないことを示している。それに加え、銃弾を防ぐ硬度を考えると、警戒をしなければならないことは当然だ。

 

 だが、アリウススクワッドから黒服が見えるということは、黒服からも見えるということだ。

 特に、銃弾を放った槌永ヒヨリはである。

 

 黒服は、自身の頭部のヘルメットらしきものの光へと触れる。

 

 

「『明星へ登る(ギャングウェイ)』」

 

 

 収斂された状態で射出された光が、乱反射により拡散し四方八方から槌永ヒヨリに襲いかかる。

 遮蔽物を利用し逃れようとするが、光は狙った対象だけを目指す。

 故に、遮蔽物は意味をなさない。

 

 

「うっ…! もう駄目ですよぉ…苦しめられるんです……」

「おやおや、随分と悲観的ですね」

 

 

 ボンドルドの腕が槌永ヒヨリに向かった瞬間、別方向からも射撃が開始される。

 秤アツコと白洲アズサである。

 

 

「おやおや……」

 

 

 アリウススクワッドが事前に入手していた情報はそこまで多くはない。

 黒服という人物を連行する目的、どのような人物か。ベアトリーチェから伝えられたものだ。

 だからこそ、装備の多くは聞いていない。

 

 一般の攻撃に利用される『明星へ登る』

 搦め手として利用される『月へ触れる』

 対人戦において利用される『呪い針』

 

 そして、最も警戒しなければならない『枢機へ還す光』

 

 名前こそ認識しているものの、どのような装備なのかは分からなかった。

 アリウススクワッドの戦闘は対人戦やテロ行為など様々なものに適してはいるが、知らないものに最初から対処しろというのは無理がある。特に、銃を使うこと無く独自の技術で戦う相手はだ。

 

 警戒はしていた。だが、それ以上に黒服の人となりの話を聞いた際に警戒を強めたのだ。

 

 神秘の研究者であり、マッドサイエンティスト。

 神秘のためならば全てを投げ捨て、自分すらも投げ捨てる狂人。

 ベアトリーチェですらも、若干の恐怖を持って名前を呼ぶほどである。

 

 ──その毒牙が、もしアリウススクワッド(家族)に向いたら。

 

 それだけがただ只管に怖く、任務の成功へと駆り立てた。

 失敗しないように、的確に陣形を組んで。

 

 

 だが、錠前サオリは『枢機へ還す光』で吹き飛ばされ、槌永ヒヨリは『明星へ登る』によりダメージを受けた。戦況は良いとは到底言えない。

 

 秤アツコと白洲アズサが銃弾を黒服へと撃ち込んでいるが、ダメージが入ったとは思えない。

 確かに稀に尻尾によるガードを抜けた銃弾が当たりはするものの、それで撃ち抜いたり、昏倒をさせるようなことはなく、弾かれていっているように思える。

 

 その姿は、人の皮を被った化け物のようにも見えた。

 

 

「健気で可愛いですね」

 

月に触れる(ファーカレス)

 

 

 袖下の筒状のものから、黒色の網状のものが射出される。

 狙いは白洲アズサだ。

 そのことに気がついた戒野ミサキは陣形を変えながら声を出す。

 

 

「アズサっ!」

「………わかってる!」

 

 

 情報にあった『月に触れる』は捕らえるためのものだと嫌でも理解が出来る。

 だからこそ、捕らわれないように場所を移動しながら攻撃を仕掛けようとする。

 だが、

 

 

呪い針(シェイカー)

 

 

 黒服から放たれた針が、白洲アズサの足に当たる。

 普段ならば当たることはないものの、今は『月に触れる』に警戒をしながら、陣形についても考えなければならなかったが故、意識する対象が多くなり避けられなかったのだ。

 

 

「ぐぅっ…!」

「安心してください、少々麻痺するだけです」

 

 

 普通の人間ならば内蔵がひっくり返ることは本人が実証済みである。

 

 だが、キヴォトス人はヘイローによる肉体強化の影響でそこまではならない。

 一時的な麻痺により、全身が動かしにくくなるだけで済むのである。

 だが、戦場においてそれは大きな隙となる。

 

 

「──閉じろ」

 

 

 蜘蛛の巣のように展開されていた『月に触れる』が白洲アズサを拘束する。

 縄などではなく、素材が不明であるそれは、容易に解くことなど出来ない。

 

 捕らわれた白洲アズサに、黒服は念の為『呪い針』を打ち込む。

 

 現在の状況は秤アツコと戒野ミサキがフリーであり、錠前サオリは意識を戻さず、白洲アズサは捕らえられ、槌永ヒヨリはダメージを受けているものの行動出来ないほどではない。

 それに対し黒服は大きなダメージはない。頭部にダメージが集まっていることくらいである。

 

 全体で見れば、アリウススクワッドが明らかに劣勢。

 

 

「おや、おやおやおやおや」

 

 

 黒服は秤アツコに目をつけると、感嘆とも取れるような声を漏らす。

 

 

「『ロイヤルブラッド』、是非欲しい」

 

 

 秤アツコはロイヤルブラッドと言われる特殊な体質である。

 勿論それは黒服も原作知識から認知していたものの、実際に目にすると研究してみたくなる。

 ゆっくり、一歩一歩と秤アツコへと近づいていく。

 

 

「……………」

「マダムが特別視する理由もわかります。そのガスマスクは私が技術提供をしたんですよ?」 

 

 

 一歩、また一歩。

 だが、秤アツコは動くことなく黒服を見据えている。

 

 そんな時だった。

 

 

「………姫には手を出させないっ!」

「おやおや……」

 

 

 吹き飛ばされていたはずの錠前サオリが黒服の足を掴んでいた。

 その瞳は虚しさなどには囚われておらず、ただ秤アツコを守りたいという一心だった。

 

 

「これはこれは、興味深い」

 

 

 黒服は錠前サオリに『枢機へ還す光』を撃つ際に調整をしていた。

 本来の『枢機へ還す光』はルール(テキスト)を書き換える力を持っているとも称されるほどの破壊力を持っており、銃弾のように実弾が残るのではなく、文字通り相手を(ほど)くように消滅させていくのだ。

 だが、それは黒服が望む所ではない。

 

 だからこそ、意識を奪う程度に調整をしたのだが、錠前サオリはそれを乗り越えてきたのだ。

 何が要因となって乗り越えたのか。黒服の脳内で幾つもの可能性が考えられる。

 友情や愛情の力という概念的なもの、単純に想定以上だったもの。

 

 一つだけ考えられる可能性があった。

 だが、そんな隙をアリウススクワッドは逃すことはない。

 

 

 

「──ヒヨリ、ミサキ! 今だ!」

 

 

 槌永ヒヨリと戒野ミサキが黒服の正面に現れ、銃口を黒服に向ける。

 狙いはダメージが蓄積しているであろう頭部一点。

 

 

「えへへへ、痛いんでしょうか、苦しいんでしょうか」

「リーダー、当たらないでよ?」

 

 

 狙撃銃とロケットランチャーという高火力武器が容赦なく黒服の頭部に命中する。

 

 吹き荒れる砂塵。

 

 

 

 

 即座にアリウススクワッドの各面々は準備を進める。

 錠前サオリは多少傷を引きずりながらも陣形内へと復帰をし、槌永ヒヨリと戒野ミサキは黒服の監視、秤アツコと白洲アズサは『月に触れる』の解除である。

 

 

「(アズサ大丈夫?)」

「何とか……」

 

 

『月に触れる』は原生生物由来のものを筒状に詰めたもののため、中々目にかかることはない。

 縄などとは違い、少し粘着質なようにも見え、単純にナイフで断ち切ることは難しい。

 それに加え、『呪い針』の効果も現れており、身体は動かしにくい。

 

 

「「……………」」

 

 

 槌永ヒヨリと戒野ミサキは何処か不穏なものを感じ、喋ることすら無く監視を続ける。

 砂塵により姿を確認することは出来ないものの、影が動けばすぐに認知することが出来る。

 

 

 

 

 そんな時、影が動いた。

 

 

 

「──嗚呼、本当に素晴らしい」

 

 

 

 一寸の間、純黒の尻尾が槌永ヒヨリを吹き飛ばす。

 

 

「ヒヨリ……!!」

「君達で考えたのですか? 素晴らしい」

 

 

 砂塵は晴れてきており、黒服の姿が確認出来る。

 

 攻撃が集中した頭部は目の部分が欠損しており、本来の薄気味悪い黒色の顔が見えている。

 何処か感心した様子であることが、更に黒服の気味悪さを際立たせる。

 攻撃されたというのに、相手の感心をする。その姿は異常にしか見えない。

 

 黒服はゆったりと歩みだす。

 

 

「本当に、嗚呼、本当に素晴らしい…!」

 

 

 欠損し、見えた頭部から目が突然湧き出る。

 だがその目は人間などの目ではなく、赤く染まっており、瞳孔は幾つも存在していた。

 

 その様はまさしく『複眼』。そしてそれを身に着けた姿は異形であった。

 

 その姿に、陣形を組みながら遮蔽物から狙いを定めていたアリウススクワッドは動揺する。

 ベアトリーチェのような異形ではあるが、突然目が生えてきたのだ。その薄気味悪さは言うまでもないだろう。

 

 

「どうしたんですか、そんな所に隠れて」

 

枢機へ還す光(スパラグモス)

 

 

 調整せずに放った『枢機へ還す光』は遮蔽物として利用していたものを解くように消し飛ばす。

 アリウススクワッドの面々は避けてはいたものの、その破壊力に冷や汗をかく。

 黒服はその間に槌永ヒヨリを動けないように『呪い針』を撃っておく。

 

 戒野ミサキは状況を変化すべく顔を出し、ロケットランチャーを撃ち込む。

 

 

「この……!」

「いい反応ではありますが……」

 

月に触れる(ファーカレス)

 

 

 黒服は『月に触れる』を比較的地面に向けて射出をする。

 だが、戒野ミサキは軽く跳躍し、捕らわれないようにする。

 

 が、それもまた狙いの一つである。

 

 

「……反応の良さが命取りですね」

 

 

 地面に着地した『月に触れる』に吸い寄せられるように黒服が高速で移動をする。

 跳躍した戒野ミサキには対抗する術がない。

 

 純黒の尻尾で戒野ミサキを叩き落とし、連撃を加える。

 勿論黒服としては殺すつもりなど毛頭ないため、あくまで意識を奪う程度ではある。 

 ……念の為『呪い針』も撃ち込む。

 

 

「あと3人ですか」

 

 

 その時、白洲アズサが黒服の死角から銃弾を撃ち込む。

 人間の体ならば確実に意識が出来ない角度であり、それまで白洲アズサが隠密行動をしていたこともあり、確実にダメージが入るかと思われた。

 

 だが、それを防ぐのは純黒の尻尾。

 

 

「なっ…!?」

「ロイヤルブラッドだけではなく、君達も是非欲しい」

 

呪い針(シェイカー)

 

 

 死角であったはずなのに、的確無比に放たれた針は白洲アズサに刺さる。

 更に、麻痺する程度ではなく意識を奪うほど強力に。

 

 

「なるべく使いたくはなかったのですがね」

 

 

 黒服が『呪い針』に加えた効能は至って簡単。

 

『神秘を掻き乱す』ただそれだけである。

 

 黒服が着目したのは、マエストロの複製(ミメシス)により観測された『恐怖』である。

 勿論原作知識としては持っていたものの、実際に神秘についての知識を得た状態で、生で見てみると印象が似て持って異なるものとなった。

 コインの表裏のような、神秘と恐怖の関係性。

 

 それを装備の一つとして取り入れただけではある。

 

 とはいえ、勿論『恐怖』は中々目にかかることが出来るものではないため、そこまでストックがあるわけではない。自分で量産することが出来ないことが悩みの種だ。

 

 

「…あと2人」

 

 

『複眼』を用いて周囲を探るが、見つかることはない。

 対象を認識出来ていないため『明星へ登る』も使用出来ない。

 

 だが、黒服の中ではある程度予想はついている。

 

 まず間違いなく残る2人──錠前サオリと秤アツコは同じ場所にいる。 

 それは錠前サオリの秤アツコへの過保護を考えれば当然といえば当然である。

 何しろ、アリウススクワッドからの黒服の印象はマッドサイエンティストなのだから。

 

 それに彼女たちは手話で会話をしているであろうため、互いが目線内に入る位置にいる。

 理想は弱めた『枢機へ還す光』で同時に撃沈させることだが、上手くいくとは思っていない。

 彼女たちが最も警戒しているのは『枢機へ還す光』なのだから。

 

 

 となると、考えられるのは──

 

 

 

「──姫、今だ!」

 

 

 

 斜め方向の背後。

 それも黒服を中央とした場合、肩の可動域的に片方は撃つことが出来ない陣形である。

 

 錠前サオリと秤アツコの同時射撃。

 

 複眼で捉えられる位置にいた錠前サオリの射撃は尻尾を使って凌ぐものの、複眼ですら死角であった位置からの秤アツコの射撃は受け入れる。

 パワードスーツであるとはいえ、多少の痛みは感じるものである。

 

 どちらから先に潰すべきか。

 

 通常ならば間違いなく秤アツコを選択する。

 錠前サオリの秤アツコへの態度を考えれば、思考の単純化などは確実であり、人質にすることができれば勝利は確実となるからだ。

 それが最適解であることは、考えずともわかることである。

 

 

 だが、黒服が選んだのは錠前サオリだった。

 

 防御に使用した尻尾をそのまま錠前サオリへの攻撃として転じる。

 

 

「さあ、見せてください」

「このっ……!!」

 

 

 尻尾による攻撃をいなし、回避し、何とか捌いていく。

 その間にも秤アツコは銃撃を続け、黒服に少々ながらもダメージを加えていく。

 勝てる希望も生まれてきた、そう思った瞬間、

 

 

 ──腹部が痛んだ。

 

 

「がっ……!!」

「おやおや……」

 

 

 その位置は間違いなく最初に『枢機へ還す光』を受けた場所である。

 幾らキヴォトス人といえ、幾ら弱めていたとはいえ、『枢機へ還す光』は絶大な破壊力を誇る。たかだか数分、数時間で完治をするわけがないのだ。

 秤アツコも射撃を中止する。

 

 

「最初に『枢機へ還す光(スパラグモス)』を放ったことを、とても悔やんでいます」

「何を…!」

 

 

 錠前サオリが黒服を睨むが、黒服は何処か残念そうにしていた。

 

 

「貴女の成長が今ここで見られないことは非常に惜しいですね」

 

 

 意味がわからない。

 理解が出来ない。

 

 だからこそ、不気味に映る。

 

 

「今は眠っておいてください。悪いようにはしませんよ」

「誰が信じるか!」

「……おやおや、信用されていませんね」

 

 

 だが黒服は納得、理解をしていた。

 自分は今までベアトリーチェの前でも敵対的な言動を繰り返していたため、ベアトリーチェに吹き込まれたアリウススクワッドにとって自分は恐ろしい存在として捉えられているだろうと。

 まあ、自分がしたことなので、仕方がないと。

 

 だが、その認識は合っているようで間違ってもいる。

 

 確かにベアトリーチェから吹き込まれたことにより先入観というものはあった。

 だがそれ以上に戦場での立ち振舞いや、言動が不気味さと悪印象を与えていたのだが……

 それに気づくことはない。

 

 

「……姫には絶対に手を出させな──」

 

呪い針(シェイカー)

 

 

 針が刺され、意識が突如として朦朧としてくる。

 自分の中の何かが狂わされてしまったかのような、不可思議な感覚。

 

 

「や、めろ……」

「安心してください。悪いようにはしません」

 

 

 

 最後に見たのは、秤アツコに向かって歩みを進める黒服の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 砂狼シロコは困惑していた。

 

 

 

 

「すみません、少し手伝って貰ってもいいですか?」

「…………」

 

 

 ボンドルドが帰ってきたと思ったら、見知らぬ少女と共に、4人の少女を持ち帰ってきたのだ。

 誰もが負傷した跡のようなものを見せており、ボンドルドの頭部部分も損傷している。

 戦闘があったことは明白であった。

 

 

「……何があったの?」

「クックックッ、少しだけ戦闘に発展してしまいましてね。まあ大丈夫ですよ」

「……ん」

 

 

 ボンドルドは以前から質問に素直に答えてくれるようになった。

 場違いながらもそれが少しだけ嬉しく感じた。

 

 

「必要なのは食事とベッドと風呂ですかね。一時的に泊まらせることになります」

「客、っていうこと?」

「ええ、丁寧に持て成すようお願いしますよ。シロコ」

 

 

 あれ、完全に自分と同じようではないか。

 

 

 何処か見知らぬ少女達に親近感を覚えた砂狼シロコだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――そうですか』

「ええ、貴女の作戦は失敗ということですよ。ベアトリーチェ」

 

 

 通話にて、2人の大人が話しあっていた。

 黒服とベアトリーチェ、反目しあうゲマトリアの”悪い大人“である。

 

 

「スクワッドは一時的に此方で預からせてもらいますよ」

 

『それは……』

 

「私は研究の対象とすることが出来る。貴女は駒がより忠実なものとなる。win-winの関係でしょう」

 

『………ええ、そうですね。わかりました』

 

 

 ベアトリーチェが何処か悔しげな声をあげ、黒服は愉悦を感じる。

 ベアトリーチェは技術を奪うことに失敗し、黒服は研究対象を手に入れられたのだ。当然といえば当然の反応である。勿論、互いに相手への嫌悪感からの感情は混じっているが。

 

 

 通話を終え、黒服は一人物思いに耽る。

 

 

 

 

 

 不快だった。

 

 年端もいかない少女が、「虚しさ」を語っていることが。

 

 不快だった。

 

 大した「虚しさ」ではないのに、諦めたような素振りを見せていたことが。

 

 不快だった。

 

 「虚しさ」を理解したように見せていたことが。

 

 不快だった。不快だった。不快だった。不快だった。不快だった。不快だった。不快だった。不快だった。不快だった。不快だった。不快だった。不快だった。不快だった。不快だった。不快だった。不快だった。不快だった。

 

 

 いや、原作知識でわかっていたことである。

 

 

 では何故?

 

 

 何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。 何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。 何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。 何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。 何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。 何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故。

 

 

 

 結局、それを理解することは出来なかった。

 

 

 さて、一体何故だろうか。中々興味深い。

 

 

 

 




 

もはや誘拐が恒例行事みたいな所はある。
そして強くしすぎたボンドルド。まあマエストロがヒエロニムスを作れるなら大丈夫だろ。

エデン条約読み終わってないので、アリウスメンバーに対する解像度は低いです

ブルアカの時系列って難しいですね…
先に予告しておくと、パヴァーヌ2章の時系列をずらします。

戦闘描写

  • 省け(サクサク)
  • 書け(それっぽい)
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