やはり俺がトガヒミコとラヴコメするのは間違っている。   作:もるすぁ

1 / 3
ややマイルドになったトガちゃんでもいい人だけ石を投げなさい


やはり俺がトガヒミコとラヴコメするのは間違っている。

 くぎゅる、と某有名声優名みたいな効果音で眼球すれすれを、刃の潰れ気味なカッターナイフが通過する。

 目は無事だが蟀谷掻っ捌かれて、掠り傷でもドッパと血霧が噴出する。

 なぁにコラテラル。しなやす。

 

 通過というか躱したというか、その勢いのまま戦場ヶ原さんみたいな武器を持参した三白眼金髪娘の腕を捻るように捉え、ステップを踏む様に拉いで床へ。

 「っぷぇ」少女の口から漏れた悲鳴が、肺から空気の漏れたダメージを形容。

 天然のクッション(おっぱい)持参してんだからコラテラル。しなやすしなやす。

 

 

「~~~ッ、避けないでクダサイよハチくんっ♡ もっと深くたぁくさんドピュドピュしましょォっ♡」

 

 

 がっつり発情した声色で、うつ伏せに組み伏せられながら叫ぶ少女を見下ろしつつ、空けた片手で自分の蟀谷を抑える。

 個性の影響で止血も済めて、それでも気は抜かずに組体操は維持したまま。

 同じく個性の影響でドチャクソスケベになってる少女、いや同い年らしいんだけどとりあえず形而上、少女に何度目かもわからんご意見を催すのが日課となりつつある。はよ誰か変わってくれ。

 

 

「何度も言ったけどな、俺はお前と斬った這ったするためにヒーロー科受験したんじゃないんだよ。出頭して罪を償ってこいトガヒミコ、一般人の俺に出来ることなんてそれくらいなんだよ」

 

「ヤですー♡」

 

 

 甘ぇよ。

 

 

「アレ」

 

 

 返事と同じく空いてる萌え袖片手に仕込んでる刃物で胴を薙ぐつもりだったのだろうが、そっちは俺の脚が腕ごと踏んで抑えてある。

 逮捕権は有るはず無いのでぶっちゃけ此処までしか出来んのだけど。

 

 過剰防衛で訴えられたら天然的に負け犬の負け組の弱男子である俺には抗える術は何とも無いので、此処までやったら詰んでる可能性もあるが。

 内心チワワになりながら上から目線を解かない。

 さぁて、「――どうする?」

 

 トガの返事は――、

 

 

「――きょ、きょうはこのままエッチなことしちゃいますか…?」

 

 

 ――ごろんと仰向けになって俺に組み伏せられたまま発情顔で蕩けて…、

 なにしおらしい真似してんのお前そんなキャラちゃうやろがい――、

 

 

「――あ?」

 

 

 ふと、鼻孔を擽る香水の匂いに気付いた。

 トガが普段使いしてる制汗スプレーとは違う、甘めの――、

 

 

 

 暗転――、気づいたら檻に居た。うそでしょ。

 

 

 

  ■

 

 

 

「比企谷八幡、個性は【毒腺】。効果は手のひらから弱めの神経毒を汗のように滲ませる。字面だけ見るとなるほど、ヴィラン的な部分はある。――が、ソイツは間違いなくウチの生徒です。現場を抑えてくれたのは有難いのですが、もう少し情状酌量を与えてやっちゃくれませんかね、香山先輩」

 

 

 イレイザーヘッドこと相澤消太は雄英高校ヒーロー科の担任教師だ。

 雄英というブランドに浮かれた新入生を『見込み無し』と厳しめに取り締まって除籍することでも名を馳せている。

 現に去年はひとクラスまるごと除籍して、名実ともに雄英らしさを体現した狭き門の如き辣腕を馳せてくれた。

 

 

「まあ、あまり表沙汰に出来ないヴィランを取り押さえていた現場だったし、個性だって怪我させるために使った形式も見当たらなかったし、ネ。解放するのも吝かでも無いのだけれども、」

 

 

 同じくミッドナイトこと香山睡もまた雄英の教鞭を執っている。

 個性は【眠り香】というサポート型だが、その強制力は下手なラリホーマよりもずっと強い。

 本日は彼女の言う通り、偶々通り掛かった婦女暴行現場を取り押さえたのが名目で、刃物を扱っていたのが女側だという点を除けば誰であっても『それいじょういけない!』と留める話であったのが災いしていた。

 それはさておいて、彼女には彼女で言い分もあった。

 

 

「――若い子のエッチな雰囲気は、お肌に良いのよ」

 

「何言ってんだアンタ」

 

 

 キメ顔で口の端からねっとりと液を滴らせる先輩教師へ、相澤先生は至極真っ当にツッコミを入れた。

 

 

「とりあえず、比企谷の扱いは俺に任せてもらいます。仮にとはいえ去年は俺が担当する生徒でしたから、なんにせよ俺が適任の筈です」

 

「あら乗り気。相澤センセー的にはこれから1年のヒーロー科を除籍する前に引導を渡そう、ってことかしら?」

 

「揶揄うのは辞めてください。それに、見込みのある奴をドロップアウトさせるほど、俺は易しく無いですよ」

 

 

 言葉の端からは比企谷少年がヒーロー科の2年だということを暗に示している。

 しかし、件の2年は目の前のドライアイが全員除籍処分にしていた筈。

 香山は小首を傾げた。

 

 

「入学式当日の事故ということで休学届を受け取って1年経ちましたが、本人に除籍処分はまだ通告してないんです。この1年の成果があるというのなら、まだ見込み有り、デショ」

 

 

 

  ■

 

 

 

「ハァ…、良いな、キサマ…。子供とは思えん、動きも…、覚悟も」

 

「冗談、半端者だよ、俺は」

 

 

 右足を重点的に前へ出し、普段とは逆のスタイルで刃物のおっさんへと向き合う。

 後ろには自力で身動きできないこれまたおっさん。恰好からして多分ヒーロー。

 路地裏とか来るんじゃなかった。

 

 

「足技だけでヴィランと向き合えるお前が半端ならば、偽物のヒーローは軒並み免許剥奪モノだ…。手は、何故使わん…?」

 

「俺の手は傷つける為のモノじゃないんでね」

 

 

 どこぞの海上レストランのコックみたいな言でお道化て見せる。

 いや、ジッサイ免許も無いのに個性使ったらヴィラン認定だぞ。

 攻撃的な個性が大半だっつぅのに一々免許制度にしちまうから弊害が出るんだよ。

 生き辛い、生き難い、全ては社会が悪い。

 トガのことも悪く言えねぇよなぁ。

 

 

「個性すら使わん…。攻撃向きではない、いや、使おうという気概も見えない。そして、見ず知らずのヒーローの前へと出る…、実に惜しい…、キサマがヒーローならば、どれだけ報われたか…!」

 

 

 感激しているところ悪いが、間違えてるぜ、

 

 

「報われる為に生きる気か? 疲れるだろ、それ」

 

 

 

   ■

 

 

 

「――お!?」

 

 

 脚と脚をぶつけ合う。

 

 体格はどっこいだが地に足着けないアクロバティックスタイルが仇になったか、ミルコはッパァン!といい音を鳴らして距離を取っていた。

 顔からして意図したようには見えない。

 てか、俺はなんで彼女と蹴り合っているんですかね。ヴィランじゃねーよ、只の不審者だよ。だからか。

 

 

「足技主体のヴィランか! 珍しいな!」

 

 

 すぐ飛び跳ねて距離を詰められる。

 こちとら使うわけにいかない両手をポケットへ突っ込み、革靴を鳴らして周囲を廻る。

 逆に詰められすぎると蹴っちまいそうで怖い。

 

 

「ぉう! 地面滑るように動くなぁ! 見たこと無い!」

 

「そいつは重畳」

 

 

 活動拠点が日本じゃない=被害者が見当たらないの方程式。

 俺も3年前から縁も切れてるようなもんなので、少しだけ寂しさもあるが安堵もしてる。

 

 左脚を前へと出して、右脚を蹴るように、

 

 

「っ、見逃さねぇ!」

 

 

 ミルコの横をすり抜ける。

 

 後ろへ廻る、横へ、また後ろへと右で蹴るステップを踏む。

 

 

「なん、っだテメェは! 攻撃もして来ねぇ! 弱虫か!」

 

「――いンや、紛い物」

 

 

 所詮俺は、俺らは海賊版。

 

 この3か月後に遭う元スタンダールにも宣言した。

 偽物で、間違っているから勝ち(価値)も無いんだ。

 

 

 

  ■

 

 

 

「本日は諸君に、いっしょに勉強する二年生の先輩方を紹介しよう」

 

 

 相澤先生の言葉に、1年A組の面々は困惑した。

 

 紹介の仕方の時点で留年とは違うのであろうけど、だったらいっしょに、とはどういうことか。

 居並んだ半クラス分の先輩方へと目を向ける。自然と。

 

 

「まず、彼らは2年のヒーロー科に在籍しているキミたちの先輩だ。なんやかんやあって去年の俺はヒーロー科の面々を除籍処分したわけだが、」

 

 

 まず、のジャブが重すぎる。

 待ってください、入学式初日の言い分は合理的虚偽ではなかったとですか。

 

 

「見込み無しと判じたのが多過ぎてな。キミたちの先輩方の浮かれ具合は、それはもう酷かった。その中から復帰したのはこのうち4名だ」

 

 

 わァ…、ちょっと目も充てられない情報がしれっと明かされた。

 なんだか目を向けることが不憫にも思えてきて、数名、臑に傷持つわけでも無いが、学力的にも自負の無い生徒らが明日は我が身なのか…? と視線をスライドさせている。

 相澤先生はその点も見逃さない。

 自信が無い生徒は減点対象である。目が光ってた。コワイ。

 

 

「だが校長にも言われたのだが、雄英のヒーロー科が一年分丸々不在なのはどうなのか、という対外的な視点の云々、まぁちょっと政治的な話だから割愛する」

 

「割愛するなら匂わせるのもアウトでは…?」

 

 

 得体ポニテの八百万百という女子が堪え切れずに疑問符を浮かべていた。

 副委員長に先日任命された女子である。エライ。

 

 

「とにかく、そんなわけで有志を募ったのが此処にいる12名だ。彼らはこれから1年、A組B組の諸君らと数名ずつ混じるように『ヒーロー基礎学』を共に学ぶことになった。普通授業に関しては別だから、其処はクラス単位の成績には含まれないので「あの、先生」なんだ緑谷」

 

 

 方針はともかく、気になった点があるので手を挙げて、申し訳ないが話を止める。

 

 

「残りのヒトはB組に紹介に向かっているんですか? 8名しかいらっしゃらないようなんですけど…」

 

 

 見渡して、数名も気づく。

 ほんとだ、と誰もが呟く中、相澤先生は物静かな少女へと問いかけた。

 

 

「…雪ノ下、三浦と折本、あと比企谷と渡我は何処へ行った」

 

「トガさんという生徒は知りませんが、比企谷くんなら三浦さんと折本さんに捕まって連れていかれていました」

 

 

 

  ■

 

 

 

―3 years ago―

 

 

「やはり行くのかい」

 

「…うす」

 

 

 和服でピシッと纏まった老婦人と向き合う。

 いや、向き合えていない。

 俺は気まずくて顔を背けている。伏せている。

 申し訳なくて、とてもじゃないが顔を向けられない。

 

 

「…申し訳ないっすけど、いい加減、帰ることにもします。親父の事もそうですけど、直接顔を合わせない事には家族とは言えないでしょうし」

 

「そんなことはないだろう、こっちからも連絡は入れてあるよ。その感情はきっと、アンタだけが抱いてる負い目でしかない。きっと、アンタの母親や妹だってそこまで悪し様に言うことも無いさ」

 

「…だといいんすけどね」

 

 

 このひとの言葉は正しかった。

 親父が死んだことを直接伝えられていなかった二人だけど、俺に何を言うことも無かった。

 むしろ3年、仇を追い続けていたことを頑張ったと、慰められた。それが悔しかった。

 

 

「それでも、形見抱えて、技まで積んで、いざ向き合ったら戦えなくって師匠まで失ったら、――流石にもう折れちまいますよ」

 

 

 俺はこの時、泣いていなかっただろうか。

 逆にへらへら笑って不謹慎だった可能性もあるが。

 

 

「…去る者追わず、がウチらのルールだ。アンタが抜けることに異を唱える子はウチには居ないよ。だけど、『隠す』ことも受け取る気が無いのは戴けない。野垂れ死ぬことを善しとするような外道に、なる気は無いんだよ」

 

「むしろ去るっつうのに、『形見』と『脚』も預けっぱなしの時点で充分有難いっす。良いんすか、持ってって」

 

「無くてどう生活する気だい」

 

 

 親父の革靴『不撓不屈(never give up)』と、俺の右脚『勿怪顔(mistake)』。

 文字の数はそのまま『格』で、対抗するには有るだけ有利だ。

 かと言って誰にでも扱えるわけでも無いが。

 俺が親父のを捌けたから受け継いで、新しく炙り出して、本当に折れた理由は、多分『それ』だった。

 

 

「まあ、炙り出した言霊に『ミステイク(間違い)』だなんて言われちまうような義足、捌く物好きも居ないでしょうから良いんすけどもね」

 

 

 大親方の後ろから、少し年上の眼鏡の女の子もまた、申し訳なさそうにこちらを見ていたのが最後の会話だった。

 

 

 

  ■

 

 

 

 けヴぉれくぇすたむじかすたせーら…(イタリア語。カンツォーネ/ガラスの部屋)

 比企谷です…

 空気が悪かとです…

 

 

「ホント、アンタ、マジ、なにしてたん、1年も。音信不通って、在り得ないデショ」

 

 

 ギリィ、とネクタイでめちゃくそ三浦さんに締められとるとです、首…

 

 いやすげぇ静かに怒られてて草、いや笑えないんやが。

 

 

「あn「黙んな」はい」

 

 

 言い訳すら利かねぇ…

 髪色までパツキンになってもーて、見事に女王様って感じです。

 印象変わったねぇ。高校デビュー?

 

 

「いやー、これは比企谷が悪い。ウケる、マジで」

 

「ウケねぇよ止めろよむしろたすけt「黙んな」はい」

 

 

 付いてきた折本が指差しケラケラ笑ってらぁ、お前何しに来てるん?

 というかなんで揃って雄英に居るんだよ。今まで知らんかったんだが? 受かってるんなら多少は勉強観た俺の功績にもならない? ならないんすか。そっか。

 

 

「まあ休学してたのは良いとしてさ、その先で女の子引っ掛けてたんだから悪いよねー。トガちゃんだっけ? 同棲してたってマジ?」

 

「同棲つうよりは同居…? まあ棲み処転々としてたのに付いて来たから許可してるわけでもない「あ?」はい。はい?」

 

 

 待って、マジで最後なんで怒られたの俺。

 

 

「はーちーくーん、あいざわせんせーが大原部長並みに怒ってますよー! バカ1号って呼んでますー! なおトガはバカ2号です! お揃いだね!」

 

「嬉しくねぇよ2号」

 

 

 因みにこのヴィランすれすれ女が諸共に雄英に連れて来られたのは監督責任負わせられた所為だ。

 うん、まあ、幸せそうだからヨシ!

 

「良いわけねぇでしょナメてんのアンタ」「うす」

 

 

 このオナ中女王マジで怖いんですけどォ!?

 




~比企谷八幡
 主人公。弱性の攻撃的個性と苗字でヒキガエルというあだ名でイジメられた悲しき過去を持つ。しれっと父親が退場しつつ中学生時どころか小学生時からなんか鍛えて居たっぽいので高1時放浪中に元スタンダールやらミルコやらとドチャクソアクティブな輩とエンカウントしつつも逃走できた過去も持つ。職人靴団ブーツレグに所属していた。手袋事件という海外の悲惨なヴィラン被害者という表向きの理由から右脚が義足なのを見逃されてる。トガちゃんとは偶に刃物で殺し愛(一方通行)を遣り合う仲。多分ミルコからも目を付けられてる。こういうのが読みたいんだ俺は(性癖。

~トガヒミコ(渡我被身子)
 ヒロイン。入学式の事故で怪我を負った八幡を病院まで追いかけて隠遁生活送らせる破目になった原因。変身出来て何時襲われるかもわからんヴィランに狙われてるから居場所隠しつつ自分にヘイト向けさせたのがふたりの馴れ初め。実のところあんまり個性を否定されてないので八幡への恋が鰻登りならぬ滝登り。薄皮1枚掻っ捌いて血に興奮したところをキュっと〆られたりして落とされて気づいたら誰もいない部屋で刃に遺った血をぺろぺろ舐めちゃうトガちゃんがドロドロにエッチな顔してた描写を書きたかったんだ。ややアホの子。というか浮かれポンチ。

~三浦優美子
 八幡とオナ中という暴挙。上手くできていた原作にはちみつをぶっかけるオリジナル要素。へぇ~ほぉ~なんか良い空気纏わせてんじゃん。じつはすきなんじゃねぇのぉー?みたいなことがやりたくってね。そうでもしないと雄英に居てヒーロー科に混じらせる理由が見つからなくってね。個性は攻撃的では決してないのだが音信不通の莫迦を捕まえるためにやる気出して手段増やして編入的な立ち位置に認められたらあっさりと見つかってた莫迦が女連れだったということでちょっとむちゃくちゃ怒ってる。

~雪ノ下さん&原作ヒロインさん
 事故の原因そのまま。原作で1年すれ違っていた部分に理由を持たせたぞオラァ!本人が学校来なかったら仕方ないよねぇ!あとは出会いと青春ラヴコメの出番だ。助けを求めろヒーローに。

~ヴィラン連合
 ステンバーイ…ステンバーイ…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。