滅びの村より
ドラゴンの襲撃により深手を負った村、メルヴェ…
覚者であれば縁ある地、何事かを思い出す可能性もあるだろう。
手掛かりを求め、村を目指す事にした。
明けて翌日、今度こそ嬢ちゃんの記憶を取り戻すべくメルヴェとやらに向かう事として準備しながら考える。
要するに、だ。
本来であれば俺はあの嬢ちゃんのポーンとして一緒に旅をする。
そして時折"リムストーン"を通し、分身みたいなもんとして他の世界に行き、そこで他の覚者と旅をしてそこで得た経験や知識を持って帰ってくる。
そして得た経験や知識で嬢ちゃんの旅のサポートをする、これが本来の流れである…筈なのだが俺はその知識を経験なく、しかも既知の事柄では無く感覚として持っている状態。
要するに記憶は無いけど覚えてる、でも思い出すのは直前で。
という事だ、別に転生特典とか特殊能力とかでは無いらしい、ちょっとバグってるみたいだけど。
「リーディング・シュタイナー…とは違うか、何かビシッとした名前が欲しいな。
経験は英語でエクスペリエンスだったか?デジャヴってそのままもシンプルで捨て難い…」
と、どうでもいい事を考えていると
「…何の事?」
チェインメイルをしっかりと着込み武器を装備した少女の姿。
腰にはカンテラや小ぶりの革鞄をつけているが、つけている小袋のうち一つはクランベリーが詰まっているのだろう、昨日あれだけ採取してたし。
「…いや、何時までも嬢ちゃん呼びってのも何だからあだ名でもつけようかと。
それとも覚者サマって読んだ方がいいか?」
それに首をふるふると降ると
「名前…」
と、こっちをジッと見つめる少女。
思った以上に乗り気な様子に、別の事を考えていたなど言える訳も無く
「そうだな黒髪だしクロ…はあんまりか、ショート…ってあだ名か?、ちび…いや、悪口にも聞こえるなこれ」
こちらが考え込む中、なおもジッと見つめる少女に天啓のように閃いた。
「そうだ、好物からつけるってのもありだろうし"クラン"はどうだ?"クラン•ベリー"って名前っぽいしな」
「クランベリー…」
「何か別のがいいか?」
「これでいい」
「そうか、名前も決まった事だし後は記憶だな、準備はいいか?」
それに対し首をふる少女。
「ん?何か忘れ物か?」
「名前…」
「いや、だからクランって…」
それに対して再び首を振る少女…クラン。
「名前…」
「…あぁ!俺の名前か?」
下からジッと見上げる紫の瞳にややあって俺の名前を聞いているのだと気づく。
「名前ってもな…最初はポーンが俺の名前だと思ってたんだよなぁ….そう呼ばれる事が多かったし。
そうだな、一応向こうでは太郎って名乗ってたぞ?ポーンの太郎とはそれなりの古株で通ってたんだぜ?」
「タロー…」
「さんをつけてくれてもいいぞ?」
「タロー…、覚えた」
「…まぁいいけどよ、さて今度こそ準備はいいか?」
それに対して今度は頷く少女…クランと共にあらかじめ聞きておいたメルヴェの方に向かおうとした所で
「アンタらは…なんだ、もう出るのか?」
通用門の横にいた兵士に声をかけられた。
「あぁ、とりあえずメルヴェに向かってみようかとな」
隣でコクコクと頷くクランに、ちょっとは話をしろとつついてみるも
「そうか…、お最近ここら辺で魔物の被害が頻発していてな。
アンタらは戦えそうだが半人前の新兵だもまでかり出す羽目になっててな…」
「そう…」
「あー、何だゴブリンでも出るのか?」
コミュニケーショは要改善かと思いつつ話を聞いていれば
「あぁ、流石にゴブリン程度なら新兵でも勝てるだろう…ちょっと心配だがな」
その言葉に後ろから聞いていた兵士が加わる。
「おいおい、向こうにはハーピー出たんだぞ?新兵に相手できるのか?」
「何だと!?聞いてないぞ、そんなの!
助けに行きたいが流石に持ち場を離れる訳にも…そうだ、アンタらこの先に行くんだろ?先にいる奴をを助けてやってくれないか!頼むこの通りだ!」
頭を下げて頼む兵士に横のクランを見れば表情こそあまり読めないものの腕を組んで頷いている。
「まぁ一宿の恩義ってのもあるし構わねぇよ」
「本当か!すまない、恩にきる!」
そうして開かれる門扉、前方の指示された方向に俺とクランは軽く頷きあうと武器を片手に走り出したのだった。
覚者ちゃん:命名 クラン・ベリー(あだ名)
職業:ファイター
装備:ランディングソード
軽量かつ頑丈な素材で打たれた剣、身軽に攻撃出来るのが強味。
ラウンドシールド
円形の盾、取り回しやすい大きさと形状。
チェーンメイル
金属糸で編んだ鎧、簡素ながら対刃効果は高い。
ワーカーズグリーブ
農作業でも使われる脚装備、それなりに丈夫だが戦闘には不向き。
ゴブリン:人間やエルフに対して敵意を持つ小型の獣人。
他のモンスターとの関係は基本的に中立のようだが、敵対している場面が目撃できることもある。
武装によっていくつかのタイプに分かれており、知性は低いが簡単な人語を操ったり武器を作るなど一定の文化は有する。
縄張りの周囲に動物の頭蓋骨を戴く骨製のトーテムを建てているのが特徴。
ヴェルンワース近郊全般に生息しており、歩いていたらほぼどこでも出会える。