新兵の受難
魔物はこちらの都合など気にせずに襲ってくる。
今日も、一人の新兵が命を落とそうとしている。
門を出て道なりに、途中で出たゴブリンは相手にせずそのまま駆け抜ける。
暫く走れば背の高い木が乱立する林へ差し掛かった所で鳥が羽ばたく音と共に
「ち、ちくしょう!こんな所で!!」
と、響く声。
そこには闇雲に剣を振り回す年若い兵士と、囲むように上空を旋回する3匹のハーピィ。
先手必勝とばかりに矢を番えそのまま放つもヒラリと躱わされ、お返しとばかりに急降下からの鋭い鉤爪による掴み掛かりをクランが片手剣で迎撃。
しかし空を飛ぶ故かその一撃は空を斬ると共にハーピィは再び剣が届かぬ上空へ。
「対空装備は持って無いんだがな…」
「あ、あんたは…どうしてここに?」
「あんたがアガートか?とりあえず話はこれが終わってからだな!」
「そうか、先輩達がアンタ達を寄越してくれたのか…心配かけてばっかりだな」
襲われていた兵士を後ろに下がらせ再び矢を番えながら考える。
ハーピィ、またはハルピュイアなどの名前を持つファンタジー生物の中でも定番と言ってもいい怪物であり、その姿は簡単に言うと人間の女性の頭部と胴体を持った鳥である。
自在に空を駆ける事で、足から生えたまるで猛禽のような鋭い鉤爪による攻撃、更には基本的には一撃離脱を行う為近接攻撃では相性が悪い相手だ。
相手は三体、獲物が増えたと見てかいずれも耳障りな鳴き声を発しながら獲物と見定めたのか、こちらを囲うように飛んでいる。
「なら…連なり射ち!」
再び一矢を放つと素早く矢筒から矢を取り出すと共にハーピィが回避する先へ続け様に放てば、上手く羽を射抜きそのまま落下、機を逃さずとばかりにかけより地面で足掻くハーピィの首を踏み砕いた。
そして横では風を斬る音が響くと同時、地面に落ちるハーピィ。
「…一閃突き」
地面に叩きつけられると同時、剣を構えたクランのフ素早く距離を詰めての直進突きで2匹目のハーピィも撃破。
「へぇ、どうやって落としたんだ?」
「これ」
近接故にクランには厳しい相手だと思っていたが、そう言うクランの手には石ころが握られており、残ったハーピィに対して振りかぶるように投げられるもこれは掠めるように外れた。
「なるほど、確かに投石なら使いやすいわな」
そう言いながらこちらも再び矢を番えると二人して1匹を攻撃、程なくしてハーピィ達は討たれたのだった。
「い、今ので全部か!?助かったよ….あんた達がいなきゃ多分手も足も出なかった」
「アカードだったか?まあ相手が悪いだろうな、入ったばっかなんだって?」
「あぁ、入隊したばっかなのにこんな所で死ぬのかって思ったら体が強張っちまってさ…」
「ま、無理もないだろう。実戦もせいぜい獣相手の狩りかゴブリンくらいだろうし、初めての魔物相手なら仕方ないさ」
「今回はあんた達のおかげで助かったけど、一人でどうにかできるくらい、もっと鍛錬しなきゃダメだな」
「まぁ、頼れる心配性の先輩方がいるんだからしっかり鍛えてもらうこった」
「あぁ、おれは急いで帰るけどあんた達の事はせんぱいにも伝えておくよ」
「あぁ、俺たちもちょっと旅の準備が途中だったんでな、少ししたら監視所に戻るさ」
「あぁ、ならまた会いにきてくれよ、じゃあな!」
アカードはそう言うと足早に監視所への道を走って戻っていくのだった。
「さて、これでひと段落か…とりあえず採取だけでも」
そう考えながら近くの高台へ向かおうとした所で袖を引く手。
「どうしたクラン?」
「ゴブリン…」
その言葉に少し考え
「あ、そういや途中にいたな…新兵一人だと不味いか」
監視所を出て少しした所に5体ほどのゴブリンがいた事を思い出し、流石に新兵一人では荷が重いだろうと慌てて引き換えしたのだった。
新兵の受難
アカードをハーピィから助ける
アカードの無事をフィルに報告する
どうにか、魔物に襲われた新兵を助ける事が出来た。
此度は無事だったが、いつ誰がどうなってもおかしく無い世界。
たとえ、覚者であろうと鍛錬は欠かせない。