何とか隠れたままやり過ごせないかとも思ったがそんな考えは途中で吹き飛んだ。
道の先を見て少しだけ速度を緩めたものの、そのまま走る少女とルーク、まるでそのまま断崖絶壁に身を踊り出すように。
「…って何やってんだアホ共!!」
そう言いながら身体は既に動いていた。
そのまま崖から空中に踊り出した少女を追うように右手で服を掴むと抱え込み、左手でルークの腕を掴む。
なんて馬鹿な事したなぁ…と後悔するも後の祭り。
下が海とは言えこの高さから叩きつけられて無事で済む筈も無く、可能性は極小ながら海面直前で放り投げればワンチャン上手く行くかも…と考えていると目の前に飛んでくる影。
「グリフォン!?」
ファンタジー生物としては高い知名度を持つ鷲の翼と上半身、そしてライオンの下半身をもつ生物であり、恐らくこちらを獲物とでも思ったのかもしれない。
だが不思議な事にグリフォンはそのままこちらの落下位置に滑り込むように潜り込み、落下から救うようにその背中に乗せると再び上空へ。
「お前…助けてくれたのか?」
漏れた言葉にこちらを一瞥するも直ぐにプイとそっぽを向くと兵士を連れた監督官達の前に躍り出たのだった。
「なっ!おいお前ら!一体何をやっている!!撃ち落とせ!!」
その言葉に慌てて弓を放つ兵士達、だがそれを物ともせずにグリフォンは身を翻すとそのまま青空へと羽ばたき
「おい!逃げるな!!やれ!撃ち落とせぇっ!!」
監督官の怒声をバックに飛び去ったのだった。
「ふぃー、助かったぁ…」
グリフォンの背で安堵するように天を仰ぐと大きく息を吐き出す。
「貴方は…ポーン?いや、これは…」
腕を掴まれたままのルークはこちらを得体の知れない物を見るかのようにそう呟くも
「脱出手段があるなら教えてくれよ…、死ぬかと思ったじゃねぇか。
それより二人とも怪我は…大丈夫そうだな、それよりもこのグリフォン何処に向かってるんだ?」
「…とりあえずはこのまま飛んで行けばヴァルムントに入ります、そこまで飛べばそうそう追われる事も無いでしょう」
こちらの言葉に何かを言いかけた口を閉じてそう答え、"ヴェルムントって何処だ?"と聞き返そうとした所でこちらへ向けられた視線に気づいた。
視線の主は抱え込んだままだった少女、驚いてるのか、不服なのか全く読めないその表情だがその紫色の目はまるでこちらを見通すかのようにジッとこちらを見ており
「…何だ、何か言いたい事でもあるのか?それとも惚れたか?」
居心地の悪さにそう軽口を叩いてみるも答えはフィッと目線を逸らされるのみ。
「…ま、いいや何はともあれ念願の自由!あんたも色々知ってそうだが話は後でゆっくり聞かせてもらうさ」
そんな少女とルークを尻目に盗ってきた水袋に口をつけるのだった。
牢獄の目覚め
何も思い出せぬからと茫洋とはしていられない…
ポーンの助言を受けつつ労働をこなした。
魔物に倒されずに生き残った。
グリフィンに乗って発掘現場から飛び立った。
王の夢、奴隷の現実…否、これこそは抗うべき理不尽。
"貴方はここで死ぬ運命では無い"導きの声に誘われ"目覚めた者"は牢を抜け、大空へ飛び出した。