始まりの地
辛くも穴掘り場から脱出し、グリフィンの背で海を越えるも同行していたポーンの一人は滝壺のヒュージブルに飲まれ姿を消す。
幸いにも同行者はもう一人…まずは人を尋ね、情報を得ねばなるまい。
「何てこった…」
「…」
土手っ腹に巨大な矢が刺さったグリフォンの前で俺と少女は立ち尽くしていた。
飛行中に見えた石塔、気づいた時にはもう遅くそこから発射されたバリスタによりグリフォンは墜落。
更には墜落した拍子に投げ出され、色々詳しそうで知識的にも頼りになりそうだったルークは川の中にいた得体の知れない触手の化け物に飲み込まれて消えてしまった。
残った手がかりはルークの残した"リム"とやらを探せという言葉。
「おい嬢ちゃん、あんた何者だ?"覚者"ってのはなんかスゴい奴なんだろ?」
ルークはこいつを"覚者様"と呼んでおり、"覚者"についての伝承は俺も詳しくは無いがあの採掘現場で過ごしている間に聞いた。
何でも過去の伝承にも登場する何かスゴい奴だとか何とか。
「…覚えてない」
「そうか…、とりあえず俺は人里を探すとするか。
餞別にこいつはくれてやる、後は自分で何とかするこったな」
流石にそのまま放り出すのは気が引けたので半分ほどの干し肉と水袋を押し付けてその場から離れる…ものの何故か足が少し重く、更には背中から感じる視線。
振り返ればこちらをジッと見る一対の紫眼、落胆でも無く絶望でも無い何を考えているのかわからない瞳がた水袋と干し肉を手にジッとこちらを見つめている。
少女がこちらを見ている。
何を考えているかよくわからない瞳で見ている。
「あーもう…、何で俺がこんな見ず知らずの奴のために。
おい嬢ちゃん名前は?それも覚えてないのか?」
仕方ないとばかりに一息つくと帰ってくるのは無言、という事は肯定だろう。
「名前も覚えてないか…、ここが何処かとかも分からないよな?ベルムントって言ってたか?」
植生も空気もあの場所とは違う、頷く少女に額を抑えるもののとりあえずは人里を探し、誰か優しそうな奴に預ければ良いだけだろう、そう考えると同時耳に捉えたのは足音。
咄嗟に背中に手を伸ばすも墜落の衝撃だろう、背負っていた弓は無く何かに気づいたら少女は腰の柄に手を伸ばす。
「おい!大丈夫か?いったい何が起きた」
道の先から声をかけてきたのは三人の兵士。
丈夫そうな金属鎧、採掘現場にいた奴等ではない…となると別の所属か?
「グリフィンが現れたと思ったら墜落して、そこにお前らがいると言う事は…
まさかお前らか?グリフィンの背中に乗っていたのは!?」
その中の一人、口髭を蓄えた男がそう声をかけてきた。
「楽しい空の旅行中に横からズドンってもんさ、アンタらは?」
「おれはジャスティン、この先の砦の兵士だ。
よく無事でいたもんだ、手当てしてやるから砦で事情を聞かせてもらえるか?」
その言葉に頷くと先導するジャスティンの背を追う。
「おい嬢ちゃん、どうした?」
墜落したグリフォンを見つめる少女に声をかければ彼女もこちらに向かって足を踏み出したのだった。
グリフォンとグリフィン。
どっちも同じ、一般的にはグリフィンと呼ばれているが(この世界で)主人公はグリフォンと呼んでいる。