Re:レイヨリトリツク異世界生活   作:キジユツニトリツク存在

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お待たせ。


『再開を目指して』③

___月明かりもない山の夜道は暗い。

 

当たり前にして普通。

この中で走れば死ぬことすらあり得る話。

 

……なのだが、これが私となってくると、話が変わってくる。

 

「…追ってきたか。何人か」

 

なんせ、私には暗闇をものともしない目がある。

明暗や煙幕などに左右されない、死者の視界(シシャノメ)がある。

 

「…お前たちの居場所は、バレバレだ」

 

走りつつも後ろを向いてみれば。

そこには確かに、ヘドロのように淀んだ人魂(コア)を持つ、同じ黒装束をした六人の覆面がいた。

 

死者の世界では嘘や隠し事は通じない。

それは文字通りの意味で、思ったことや考えてること、感じたことがそのまま伝わる為だ。

だからこそ、一度死んだオレにはわかった。

()()はどうやっても救えない、救うことのできない、邪悪な思考を持ち、罪を持つ、堕ちた存在であると。

 

「…まったく、めんどくさく厄介な相手に絡まれたものだ!」

 

悪態をつきながら、相手に追いつかれないよう全速力逃走しつつ、二丁銃にすべく持っていたナイフをしまい、100個の鉄球が入ったハンカチを前方に投げてばら撒き、その後、黒猫が描かれたMP7A1をもう一つ取り出す。

異世界に来て早々、対人戦をする羽目になるとは思いもしなかった上に、この力をいきなり使うとは思いもしなかったが。

だが、やるしかないだろう。

 

「オレの持つ、このエアガン___MP7A1から放たれたBB弾は毎秒15発。それら全てを避けれるものなら…避けてみろ!」

 

身体を捻っての横回転跳躍。

その瞬間に、トリガーを弾き、球をばら撒く。

勿論…このまま放てば、軽いBB弾なのだから、どんなに威力を上げたところでそこまでのダメージは与えられない。寧ろ下手すればダメージすらないだろう。

 

だが、これが放たれた時の速度のまま、全て、ばら撒いた鉄球となれば?

 


トリツク


 

___ダメージに対する話は全て変わってくる。

 


カエル


 

幽体離脱し、(コア)の世界へと入り込み、放れた全てのBB弾の内、当たるルートのみのBB弾をあらかじめ散りばめていた鉄球へと変えた後、元の体に戻る。

この間、0(レイ)秒。

相手からは突然、痛くもないBB弾が高速でやってくる鉄球に変わったように見えるだろう。もしくはもしかしたら、BB弾が小さすぎていきなり鉄球が現れたように見えたかもしれない。

当たり前だ。

 

___オレは、時間停止が行えるのだから。

 

死者のチカラには、副次効果で、幽体離脱中、死者のチカラを行使する際、時間を一時的に止めることができる。

こうして見ると一見強そうに見えるだろう。

しかし難点として、時間停止中はスピチュアル的存在以外のものは全て動くことができず、死者のチカラも『トリツク』と、自分への『ヨミガエル』は制限を受けてしまうのだ。

自分の肉体も含めた実体あるもの全てを、動かすことなどできない。

 

だからこそ、事前に仕込んだりする必要がある。

 

攻撃力のない弾BB弾を使っているのも、鉄球をばら撒いたのも全ては、入れ替える為に。

 

「その弾を、とくと味わうといいさ」

 

時間停止の解除と共に秒速200mで動き始めた1㎝鉄の玉が、黒装束の人物目掛けて飛んで行く。*1

下手すれば致死ダメージが与えられる程の威力が、確実に相手へと吸い込まれていき___当たる。

 

「…よし、六人中四人命中。即死だな。上出来」

 

銃を構えた際、警戒した気配はありつつも回避行動をしていなかったことから、相手は銃の存在を知らないと予測。

また、高速でやってくるBB弾と鉄球に対しては、暗闇と同化してBB弾と鉄球が見えてなかったことも同時に予想できた。

 

ならばと考え、次の攻撃へと移る。

 

「…なら、これはどう?」

 

そういって、いきなり進路を変え、遠くから見えていた濃霧へと突っ込む。

本来なら追っ手がいることを考えれば、霧の中に獲物を持つ相手が待ち構えてる可能性もあり、悪手になりかねない行動。

だが。これも『死者の視界《シシャノメ》』を持つ私には関係なかった。

なんせ___。

 

「___悪いけど、オレには全て見えてる」

 

全てサーモグラフィーのように見えているのだから。

 

「誰もいないのは確認済み。今度はこっちが狩りをする番だ」

 

そう言って、銃を腰にしまい、気配を消し、10mはあろうかという場所にある木の太い枝に跳躍し、片手で掴み、忍者の如く、逆上がりの要領で上がり、真上になった瞬間、片手逆立ち状態で止まる。

相手は___それに気が付かずに通り過ぎた。

 

「…(…よし)」

 

逆上がり状態で止めた回転を再開。

静かに…たった一つの物音も無く、前方に身を飛ばし、着地。

そのまま、MP7A1から、気配無くして抜き足で走り行き、二つの影を静かに縦横無尽に、サバイバルナイフで切り去っていく。

 

「………他は…いないな?」

 

周辺を『死者の視界(シシャノ)』で安全確認する。

人魂は…一切なかった。

 

「はぁ…なんだったんだ?あいつら」

 

緊張感から放れたからか、疲れがどっと押し寄せたからか、思わずその場で腰を抜かす。

しばらくは動けそうにもなさそうだった。

 

「…スバルは、大丈夫なんだろうか?」

 

初めての人殺しというのに、あまり心が揺らずに、それどころかなんて事のないように、義兄の心配をする私は恐らく、人間としてはずれているのだろう。

だが、それでも。今は。

 

「動けるようになったら、すぐにスバルを探すために、街に聞きに行こう」

 

この、危険に溢れた世界で、少しでも早く、合流しようと思うのだった___。

*1
秒速:160m ×1㎝鉄球の重さ:4.068g ^2 ÷ 2000 =52.07J。

銃刀法ではエアガンとして許されているのは3.5Jまで、3.5J~20Jまでが鹿などを仕留める準空気銃の扱いになることや、厚さ5mの鉄板を貫けるアーチェリー弓が大体同じ威力(=40〜50J)となることから、どれほど威力があることかわかるだろう。

良い子のみんなは真似しないように。

スバルとの合流時期

  • 屋敷での一週間《始めから》
  • 屋敷での一週間《3日目から》
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