あれから色々試して分かったことがある。あの奇妙な力は俺が触れようとさえしなければ面に出てくることはなかった。色々詳しい人間に話を聞きたいところではあるんだが…星子さんは家に居ないし、ターボババアは何も知らなさそうだった。日本の妖怪なんだからそりゃ当然、知らないと言われれば当然ではある。
「はー、あの力制御出来たら良さそうなのに触るだけで暴走ってのは、こうエンジン吹かせないみたいで気が悪いな」
どうにかしたいのは山々なんだが…どうしたら良いか全く分からん。実戦経験も欲しいところだしなぁ…今までなんとか持ち前の物だけでなんとかなってはいたもののギリギリだったのは間違いない。俺がいたのに二人、いや、三人か三人もアクサラに食われてしまった。なんとか桃の機転で上手く行ったが次も上手くいくとは限らない。あいつらも普通の学生なんだし、こんな非日常に時間を奪われるのは実に可哀想だ。何とかしてやりたいってのは正直な思いだ。とはいえ、狙われてるのはあいつらだし常に守れるわけじゃないし…
「あーもう!いろいろ考えてると余計な事に思考が反れる…クソあいつらはこの世界の中心なんだ。俺が守るまでもねぇだろうよ。それにあいつらを理由にするのはちげぇだろ。俺が我慢できねぇだけだろ。ガキが傷つけられたりするのは見んのもあとから聞くのも勘弁だ…俺が考えんのは俺がどう強くなるかだけで良い」
「何ブツブツ…言ってんだ?てめぇ」
「うぉぉ!今の聞いた?」
「興味ねぇ」
俺が自分の道を決めたところで星子さんが帰ってきたらしい。
この手の霊的なものに詳しいであろう星子に話を聞きたいと思ってはいたがこんなにすぐに帰ってきてくれるとは話が早い。
「なぁ星子さん。デュラハンってどんなのか教えてくれよ。調べだんだろ?」
「あぁ?なんだおめぇ自分の事なのにまじで何も知らねぇのかよ。特徴は首がねぇ事、騎士みてぇな外見、馬を自由自在に操る事、あと自分のか首級なのかは曖昧だが、生首を抱えてること。この辺りだな」
「俺、自分の事デュラハンだと思ってたけど割と一致してる部分少なくね?」
俺は本当に自分の事をよく理解してなかったらしい。星子さんが今あげた特徴だけでも合ってるのは普段ライダースーツでバイク乗ってるってのを考えると一つだけだ。俺はそのへん自由度高いんだなぁ程度に考えていたが実はそんなんじゃないのかもしれないな。
「だからてめぇがなんなのかわしにもよくわかんねぇ。最初は首なしライダーだと思ってたが、てめぇの自認はデュラハンだってのにデュラハンの特徴に合致してる部分は少ねぇ。そもそも妖怪ってのは自分の姿形を依代も無しにポコポコ簡単に変えられるもんでもねぇよ。そういう奴にはそういう言い伝えがあるもんだ。その点お前は本質ってのがいまいち見えねぇ」
星子さんはカチカチとライターでタバコに火をつけながら話した。確かにそう言われると俺自身、自分の本質に触れて暴走したところだ。自分が何なのかよく分からない。星子さんの意見を聞きたいと思い、ターボババアと一緒にいた時に起きた事を正直に星子さんに聞いてもらった。
「なるほどなぁ…おめぇやっぱりデュラハンじゃねぇだろ。その白い馬も頭が形づくられたってのも妖怪としての本当の姿に戻ろうとしたって事ぐらいでいまいちよくわからねぇ。日本の妖怪じゃないせいでわしじゃすぐには分からんな。調べてみるか。白い馬に乗った騎士で冠と弓を持ってるっと…」
そう言って星子はスマホを取り出して調べ始めた。こういう時はこの時代は便利なものだ。小さな図書館が欲しい情報をを聞くとその情報をピンポイントに持ってきてくれるみたいな感じで何でもは言い過ぎかもしれないが、殆どのことはスマホで分かる。
「本気か?ん〜」
「なぁ何が分かったんだ?」
星子さんは珍しくしかめっ面で悩んだような顔をしてスマホとにらめっこしていた。何も教えてくれない…
「一先ずだ、わしもそれを見ねぇと判断がつかねぇ。ぼちぼち桃が帰って来るだろうからそん時にもっかいやってみろ。暴走しそうになったらあいつが抑え込む。それで無理ならわしが結界で吹き飛ばす。良いか?もしお前がどうしても正気に戻らねぇようならわしは問答無用で消し飛ばす。」
「やるのは良いけどよ。消し飛ばすのは勘弁してくれよ…」
星子さんは随分と本気で念を入れて俺に言ってきた。確かに長年生きていて霊力は強いらしいんだが、そこまで言われるほどかね…まぁ良いか、その時になればわかるってもんさ。
そうして俺は結局桃が帰ってくるのを待つのである。
「で、こいつが暴れそうになったらウチがこいつのオーラを抑え込めば良いわけ?」
「まぁ、そういう事かな」
「桃最初にこいつのオーラ、どうなってる?」
「オーラ?別に真っ黒って感じだけど」
「しっかり奥の方まで見ろ」
星子さんが真剣な顔で桃に聞くと桃は集中し始め俺の胸を注視して驚いたような顔をした。
「…こいつ真っ黒なオーラの奥の方に違う色のオーラが混じってる。真っ黒なオーラに壁みたいになってて別物みたい」
「何色だ?」
「色は見えづらいんだけど、一番よく見えるのは白、次に赤、黒、最後が青色。コレなんなの?」
「チッ。予想が確信に近づいていきやがる」
「婆ちゃんなんか知ってんの?」
星子さんだけが何かを予想していたらしいんだが、こちらに話そうとする様子は一切見えない。だが、俺の正体は何か不味いものらしい。俺、成長しないほうが良いのか?
「わしも正直悩んでる。だが、この目で見て確信してぇ。もしお前が抑え込めずにこいつが正気を取り戻せそうに無かったら、先んじで描いておいた結界で吹き飛ばす。良いか?てめぇもケツの穴しっかり締めて気張りやがれよ」
「分かった…」
俺は、もしミスしたら命がない事を念頭にまた俺の奥底に眠る気配に手を伸ばして自分のものへと変えようとした。
「ねぇ!コレ大丈夫!?なんか白いオーラがあいつのオーラを覆い尽くそうとしてるけど!」
「桃!その白いオーラを掴んで首無しのオーラが飲み込まれないようにしろ!」
「やってみる!」
そう言って桃の超能力が俺の胸に突っ込まれ飲み込もうとした力が少し弱まった。だがすぐに勢いが戻り始めた。
「なんかウチの超能力が制御効かないんだけど!?うおわ!」
桃が叫ぶと桃の腕が逆に桃を持ち上げ投げ飛ばした。俺は、また意識が飲み込まれ始める。
どうしたら良い!?このままじゃ前の二番煎じだ。そうだ!俺の霊力でこの飲み込もうとしてる力を逆に飲み込み返しちまえば良い!
そう思った俺は霊力を力にぶつけ始めるがぶつかった端から白いオーラに塗り替えられる。そして俺の意識はまた、奥底へ封じられた…
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桃Side
「婆ちゃん!あれなんなの!?」
目の前には白い馬に乗り冠を被った弓騎士へと変貌した首無しだったものが立っていた。あいつのオーラは白いオーラに包まれて小さくなった。
「恐らくあれはヨハネの黙示録に登場する第一の騎士だ」
「なにそれ!?それってやばいの!?」
「本当にそうならやばいなんてもんじゃねぇ。世界が滅ぶ時に現れると言われてる。第一の騎士は支配を司ってる。下手にあいつに触れられるなよ。結界があるから奴は出られねぇが…」
婆ちゃんが珍しく冷や汗かいてる!あいつそんなにヤバい奴だったのかよ!コレどうしたら良いんだ?あいつのオーラは白いオーラに囲まれて弱ってる。叩き起こせそうじゃないし、それに触るなって言われたら何もできねぇじゃん!
「あの首無し野郎またあぁなっちまったのかよ。ケッテメェのケツはテメェで拭けってんだよ。クソだらぁ」
「ターボババア!あんたあれなんとかしたんでしょ!なんかないの!?」
「ワシんときはあの冠を落としたら終わったぜ」
「えらい素直じゃねぇか?」
「フン!あんなの出歩いて困んのはテメェらだけじゃねぇってだけだぜ」
あんなに何もしていないのにこんなに怖いって思うのは初めてだ。あいつの冠をこの小石で叩き落とせば終わる。婆ちゃんは結界の内外を切り替える瞬間を考えて観察してるから頼れないとおもって良い。むしろウチが危なくなればなるほど婆ちゃんはあいつを祓う事に容赦がなくなる。アクサラの時もターボババアの時も助けてもらったんだ!今度はウチが助けてやる番でしょ!
ターボババアから話を聞いてウチが覚悟を決めた隙にあの騎士は、いつの間にかこっちを向いて何かを話を始めていた。
「我は第一の騎士なり。この手に勝利の上のさらなる勝利を齎そう」