元傭兵先生、貞操逆転世界を行く   作:ゆうぐれ

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活動報告にもあるように1〜9話を修正しました。貞操逆転によるあからさまな江口要素を少なめに、社会的な違いをより多めにした感じです。

ただストーリーは変わっていません。微細な設定や会話を改変したのみです。



第10話 ユウカの受難

ミレニアムサイエンススクール所属の生徒、早瀬ユウカには秘密があった。

 

それは近日より、とある場所での手伝いを始めたこと。

 

内申点が上がるからと、余った時間を利用して何気なく行った彼女だったが、そこで待っていたのはあまりにも予想外な出来事だった。

 

なんと本物の大人が居たのだ。

 

「お前さんがユウカか、よろしく頼むよ。」

 

そう言われて差し出された手は、すごくゴツゴツとしていて固かった。

 

今でもその感触を鮮明に思い出すことが出来る。

 

性格も温和で落ち着いた雰囲気をまとっており、如何にも年上の大人といった感じだ。

 

「ふふふ……。」

 

そんな人物を、この場では自分だけが知っているということにユウカは口元を緩ませる。

 

すると背後から肩を叩かれた。

 

「っ……!?」

 

「ユウカちゃん、何か考え事ですか?」

 

「い、いやっ、なんでもないわ!あっ、もう行かなきゃ!」

 

同じセミナーの書記担当、『生塩ノア』の傍をすり抜けて、ユウカは部屋を後にする。

 

エレベーターに駆け込んだ時、鏡に映った自分の顔は朱に染まっていた。

 

「もう……!」

 

いつまでも冷めやらぬ熱を、どうにか放出すること数十分。

 

ユウカの姿はとある高層ビルの前にあった。

 

複数の生体認証を受けると、分厚い防弾ガラスと厳重な警備システムで固められたエントランスを抜け、エレベーターに乗り込む。

 

目的の階に着いても同じような設備が続き、まるで貴重な美術品を保管した金庫へ入っていくようだった。

 

そして最後の自動ドアを抜けた先にあったのは……。

 

「すやぁ……。」

 

まさしく貴重な美術品そのものだった。

 

「まったく……先生?」

 

ユウカは荷物を置くと、ソファの横に立つ。

 

そして手を伸ばそうとしたが、直前で止める。

 

彼女の鼻をついたのは金属が焦げたような匂い。

 

しかし周囲に灰皿は見当たらず、そもそも目の前の人物は喫煙家ではない。

 

ユウカはそっと身を屈め、先生の胸元から漂う匂いを確かめる。

 

シワまみれのシャツは、わずかに煤けていた。

 

「……あ。」

 

ユウカはふと携帯端末を取り出す。

 

画面に表示させたのは彼にあげたシールド発生装置の稼働ログ。

 

バッテリー残量が減っていた。

 

昨日の日中、小口径高速弾並みのエネルギーを数発受けている。

 

「っ……。」

 

チクリと、胸の奥に寂しさを覚えた。

 

何かあったのならまた言ってくれればいいのに、と。

 

だが、その感情はすぐに安堵で押し流されていく。

 

彼が無事だっただけで、今はいい。

 

本当は全部話してほしかったが、変に突っ込むことはしない。

 

自分が足手まといになることはもっと嫌だからだ。

 

「先生、起きてください……先生?」

 

ユウカは気分を切り替えると、先生の顔に被さった本を取り上げた。

 

電気の光を浴びて、彼の瞼がわずかに動く。

 

「ん……ユウカ……?」

 

「おはようございます、先生。それより今は業務時間なのでは?」

 

「あぁ……うん、知ってる。あとはユウカにチェックしてもらうだけだから……。」

 

先生はむくりと起き上がると、ポケットからSSDを取り出し、ユウカに手渡す。

 

「昨日は遅かったんですか?私が帰るまで姿が見えませんでしたが。」

 

「ああ、証拠いんめ……んん”っ!アビドスのみんなと打ち上げをしていてね。」

 

「へぇ……。」

 

慌てたように咳払いをする先生だったが、ユウカの興味はその後にあった。

 

「アビドスとは……例の学校ですか?そこの生徒とご飯を?」

 

「そうだ。問題がひと段落したから。」

 

「ふーん……。」

 

ユウカはSSDを片手にデスクトップの前に座る。

 

しかし内心は穏やかではなかった。

 

焦りか苛つきか、それとも所有欲を刺激されたのか、言いしれぬ感情が沸々と湧き上がっていく。

 

どうにか平静を装いながら、ドライブの中身を見ると、近日中に起こった出来事に関しての報告書があった。

 

ユウカはそれを素早く目を通していく。

 

そしてある時、彼女の手が止まった。

 

「……先生、昨日はヘルメット団と交戦したのですか?」

 

「ああ、セリカ……アビドスの1年生、黒見セリカが以前に拉致されたことは知っているよな?」

 

「はい、報告書を読みました。奪還の際に機関銃手5人分の弾薬を30秒で撃ち尽くし、補給物資の過半数を即日で使い果たしたことも。」

 

ユウカはニコリと笑ってない笑みを浮かべた。

 

対して先生は視線を逸らしつつ、言葉を続ける。

 

「ひ、必要なことだった。それでだ、連中、懲りもせずにまた攻めてきたんだよ。」

 

「なるほど……大変でしたね。」

 

「まったくだ。」

 

やれやれと首を振る先生。

 

そこへユウカはモニターアームを動かし、画面を先生へ向ける。

 

映っていたのは報告用のボディカム映像。

 

手ブレと呼吸音まで入った、やけに生々しい記録だ。

 

「先生、嘘をつくのが下手くそですよ。」

 

「……どういうことだ?」

 

「この添付映像、最初の報告書のものと同じです。場面の構図、気絶した敵、煙の流れ……ほぼ一致します。それに、ここ。」

 

ユウカは指先でタイムラインを弾く。

 

映像の端が一瞬だけ乱れ、色味が揺れた。

 

「フレームの繋ぎ目ですね。編集してそれっぽくした。つまりこれは昨日の映像じゃない。」

 

「……気のせいじゃないか?」

 

「気のせいでメタデータの撮影時刻が飛んだりしません。それに……。」

 

淡々と言い切ってから、ユウカは一拍置いた。

 

画面の一部、端に映った銃を指さしながら。

 

「先生の消音狙撃銃、昨日はここに置いてありましたよね。夕方、私が帰る時もありました。」

 

「それは……。」

 

ユウカの追及に先生は何も言えなかった。

 

沈黙を肯定と受け取ったユウカは、ゆっくりと先生の隣に腰を下ろす。

 

しかしそれ以上に糾弾することはなかった。

 

「先生。」

 

「……何だ。」

 

「こっちを見てください。」

 

先生は恐る恐るユウカの方を向く。

 

しかし眼前の彼女は怒っているわけではなく、ただ不満気に頬を膨らませていた。

 

「先生、私は報告書の偽装に怒っているわけではありません。事実を問いただすつもりもありません。けれど、私に嘘をついたことは看過出来ません。」

 

「すまん……。」

 

「私はシャーレの当番で、先生の補佐と護衛が役目です。だから……もっと頼ってください。今のままだと、先生の周りで何かが動いた時、私が対処できません。事務も実戦も、自信はあるんですから……ホントは戦ってほしくないですけど。」

 

ユウカがそう言うと、先生は黙って頷いた。

 

「今回限りですよ。上への報告書は私が違和感ないように直しておきます。」

 

「ああ、ありが……。」

 

「ただし!」

 

ピッと、ユウカは人差し指を突きつける。

 

「次回からは私への報告は嘘偽りなくお願いしますね?」

 

「……了解した。」

 

先生は降参とばかりに両手を上げる。

 

その返答に満足したユウカは席を立ち、再び自分の仕事を始めようとした。

 

とは言ってもシャーレに割り振られた仕事は思った以上に少ない。

 

男に特区の外で職務に当たらせているという時点で十分に負担ということから、仕事量でバランスをとっているのだろう。

 

手早く残りのタスクを済ませて、先生とゆっくりお茶でもしようと考えるユウカだったが、モニターからの通知音で我に返る。

 

誰かが建物の中に入ってきていた。

 

「あら?訪問者……ではないわね。」

 

ここシャーレは見た目通り、先生保護の目的から厳重な警備が施された施設だ。

 

例え無害な一般生徒であっても、面倒な検査を何通りも行う必要がある。

 

よって先生を除き、簡単に入れるのは当番であるユウカだけの筈だった。

 

「反応しない?侵入者……いや、まさか正規で?」

 

タレットも警報も沈黙したまま、足音だけが近づいてくる。

 

ユウカは鞄から自身の得物、MPXを引き抜き、入口へ銃口を向けようとした。

 

だが銃身を先生の手が押さえた。

 

「待て、敵じゃない。」

 

「ですが先生……!」

 

その時、ガラス扉を押して1人の生徒が現れる。

 

彼女の頭上では銀色の犬耳がぴこぴこと揺れていた。

 

「ん、先生、こんにちは。」

 

「おう、シロコか。急にどうしたんだ?」

 

「私の『当番』としての登録が終わったってメールで見たから、試しに来ただけ。」

 

「そうかい。なら問題は無かったな。」

 

「ん、これなら気軽に来れる。」

 

満足そうに鼻を鳴らすシロコだったが、その視線が僅かに逸れる。

 

先生の隣、唖然とした様子のユウカへ。

 

そして、無表情だったシロコの口角が僅かに吊り上がった。

 

「目的は達成した。じゃあ先生、また明日ね。あと隣の人……()()()()()。」

 

シロコはさっさと踵を返すと、姿をくらました。

 

残されたユウカは口の端をヒクつかせていた。

 

ワナワナと震える拳を握りしめながら、彼女は口を開く。

 

「……先生、当番の新規登録に関する事前申請書、提出されていませんよね?」

 

「何それ?」

 

先生はそう言い切った直後、自分の失言に気づいたように目を逸らした。

 

「ふぅーん……。」

 

ユウカは、ただニコリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

アルは久々に満ち足りた生活を送っていた。

 

借金を返し、家賃を払い、ご飯を食べて、お風呂に入り、暖かい布団で眠る。

 

空腹は無くなり、服と身体は清潔に。

 

事務所の電気と水道も止まっていない。

 

当たり前なようで当たり前ではなかった日々が戻ってきたことに彼女は喜びを隠せなかった。

 

しかし同時に複雑な気持ちでもあった。

 

資金繰りが回復したのは自分達の力によるものではない。

 

突然として現れた身元不明な強盗集団『覆面水着団』から貰った支援金——1億円のおかげだ。

 

「はぁ……アウトローたる私が施しを受けるなんて……。」

 

事務所の応接間の中、机に座ったアルは溜め息を吐く。

 

するとカヨコが部屋に入ってきた。

 

「社長、ツケは全部払ってきたよ。」

 

「ああ、お疲れ様。ありがとう。」

 

「ギリギリだったよ。闇金に手を出す羽目にならなくて良かったね。」

 

「そうね……。」

 

アルは顎に手を当てて、ジッと黙り込んだ。

 

そして口を開こうとしたが、目の前のカヨコに手で制される。

 

「社長、ダメだよ。これはあくまでも生活を立て直すための資金。依頼には使わないよ。」

 

「……まだ何も言ってないわ。」

 

「言わなくても分かる。社長の言い分も理解出来るけど、()()()との約束だから。」

 

「ふーん……。」

 

アルは訝しげな視線をカヨコへと向ける。

 

「な、何……?」

 

「少し意外に思っただけよ。カヨコが約束事を律儀に守ってること。」

 

「それって貶してる?」

 

「違うわ。ただいつもルールの抜け穴を探し当てるのは貴女だから、今回もグレーな方便で資金を依頼に使うのかと思って……。」

 

アルの言葉にカヨコは押し黙る。

 

「まあ……確かにそうだけどさ、今回は違うっていうか。」

 

「分かってるわ。約束を守ることは大切だもの。特にあの尊敬すべき覆面水着団のマネージャーから言われたのだし。貴女にもその気持ちがあるのなら良かった。」

 

「……あー、うん。そうだね。」

 

カヨコはアルの鈍感さに呆れるしかなかった。

 

男なんて、特区の外には2人と居ないというのに。

 

思わずカヨコは目を細める。

 

「な、何よその目は?」

 

「いや……何でもない。それよりお昼ご飯食べに行こ。ムツキとハルカも下で待ってるし。」

 

「そうね。」

 

アルたちは事務所のガレージ、同じく支援金で買った中古の黒塗りセダンに乗り込む。

 

アルの見栄っ張りとカヨコの現実主義がぶつかった結果、折衷案として導入された社用車だ。

 

中身は型落ちの旧車でも、一般人からすれば威圧を感じられないこともない。

 

まあ、ハンドルを握るのは社長のアルなのだが。

 

当たり前のように助手席や後部座席に座る社員たちを前に彼女は溜め息を吐く。

 

「はぁ……いい加減貴女たちも免許取りなさいよ……。」

 

「仕方ないよ。教習費用って中々に高いんだから。」

 

「私はアルちゃんの運転がいいなー。安定しててよく眠れるし……お母さんって感じ?」

 

「あ、アル様の命令であれば頑張って運転しますが……。」

 

「はいはい、あたしゃ送迎のママですよー。」

 

便利屋一行が向かったのは前回も行った店、柴関ラーメンだった。

 

安い上に美味いという最高の条件が揃っているからだ。

 

「あー!アンタ達!また無銭飲食する気!?」

 

「ち、ちがうわよ!今日はちゃんとお金あるから!」

 

記憶に新しい猫耳のホールスタッフへ注文を伝えると、腹を空かせながらラーメンを待つ。

 

店内はお昼時ということもあってか、たくさんの客が足を運んでいた。

 

カヨコは何気に店内の一角、調理場に沿ったカウンターを眺める。

 

「……?」

 

その時、カヨコは違和感を覚えた。

 

それは出ていく数人の客。

 

同じような服装——おそらくは作業員だろうが、気になったのはそれに続く個人の客。

 

他人同士にも関わらず、まるで示し合わせたかのような動きをしており、あっという間にカウンターから人が居なくなってしまった。

 

また、残された丼や皿にはラーメンやチャーハンが食べ残されたままだった。

 

「……っ!?」

 

直後、息が詰まった。

 

誰も座っていないカウンター席の下。

 

そこにジュラルミンケースが1つ置かれていた。

 

「ムツキっ!!」

 

カヨコは目の前のムツキへ視線を送り、同時に隣のアルを押し倒す。

 

カヨコの動きからムツキも察したようで、何事かと目を白黒させているハルカを同じく突き倒す。

 

4人はテーブルの下へと潜り込んだ。

 

1秒、2秒と静かな時が流れていき……。

 

「……ねえ、何してんの?避難訓練?」

 

5秒を過ぎたあたりで猫耳のホールスタッフが静寂を破った。

 

カヨコは恐る恐る顔を上げる。

 

「もしかしてネットに変なことをする動画を上げて、悪い意味でウチをバズらせる気?」

 

「いや……そこ……。」

 

「え?ああ、単なる忘れも……。」

 

彼女の言葉は最後まで続かなかった。

 

ドゴッッッ!!!!っと、一瞬にして爆風と爆炎が店内を包み込んだからだ。

 

全てのものが衝撃波によって粉砕されていく中、カヨコの意識は痛みが届く前に断線された。

 

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

[先生!緊急事態です!]

 

「んぁ……どうした?」

 

[アビドスの生徒さん、接触者AS122『黒見セリカ』さんが働いているお店が爆破されました!]

 

「……おいおい、嘘だろ。」

 

「先生、どうかしましたか?」

 

「ん、何かあった?」

 

「シロコ!出動だ!ライフルを取ってこい!ユウカはまたバックアップを頼む!」

 

「ん、分かった!」

 

「えっ、ええっ!?また戦闘ですか!?」

 

「追って連絡する!緊急事態だ!」

 




久々にブルアカへ復帰したらユズがプラグスーツ着てたし、アリスはフライトユニット背負ってたし、リオは対◯忍だったし……どういうことやねん……。


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