元傭兵先生、貞操逆転世界を行く   作:ゆうぐれ

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銃の設定を敢えて変えてる場合があるけど、外見は変わってないから気にすんナ。

まあ気付けた人はスゴいと思うけど。



第2話 我が赴くは砂の海原

『砂狼シロコ』は淡々とペダルを漕いでいた。

 

砂混じりの風に銀色の髪と犬耳、首元の青いマフラーが揺れる。

 

誰も居ない住宅地の中を、水色のロードバイクは滑るように進んでいく。

 

時折り維持管理用のドローンが建物や道路を綺麗にしていたが、それ以外に動くものはない。

 

その筈だった。

 

「ん……?」

 

ピクリと、シロコの犬耳が反応する。

 

彼女は自転車から降りて、曲がり角の先を覗き込んだ。

 

微かに聞こえてきたのはディーゼルエンジンのアイドリング音。

 

やはりというか、道路の傍に真っ白な車両がぽつんと停まっている。

 

「……装甲車。」

 

即座に警鐘が鳴らされる。

 

シロコは自転車を片手で引きながら歩く。

 

もう片方の手を上着で隠れたホルスターに添えながら。

 

おそらくは民間軍事会社のカイザーや、付近の武装勢力だろうか。

 

どちらにせよ歓迎すべき相手ではないことは確かだ。

 

しかし直後、シロコは足を止めた。

 

目に入ってきたのは車体に施された見覚えのないロゴ。

 

S.C.H.A.L.E(シャーレ)……?)

 

聞き慣れない単語に首を傾げる。

 

するとその時、運転席の分厚いハッチが内側から押し上げられ、相手が中から顔を出してきた。

 

(っ……!?)

 

ゴツゴツとした手と腕、見慣れない目鼻立ち。

 

サングラスをかけた『大人』、それも珍しい『男性』だった。

 

予想だにもしなかった人物を前にして、ピシリと固まってしまう。

 

お互いの視線が交差することコンマ数秒。

 

先に口を開いたのはあちらの方だった。

 

「あー……ここらへんの学生さんかな?」

 

発せられた低い声にハッと我に返る。

 

シロコは反射的に返していた。

 

「っ……ぐ、グラサンをかけたままの人間とは話したくない。」

 

「そうだな、すまなかった。視線の向きが分からないと不安だよな。」

 

相手の男は素直にサングラスを外した。

 

すると乗っている車とは裏腹に温和そうな双眸が現れる。

 

更にはドアを開き、運転席から降りてきた。

 

(わざわざ装甲車から降りた……敵意はないってこと?)

 

大人の男を初めて直に見たおかげか、シロコの胸が少しだけ跳ねる。

 

しかし警戒の手は緩めない。

 

肩にかけたバッグで隠しながら、ホルスターの銃をゆっくりと握る。

 

「ん……それで何?」

 

「アビトス高等学校って知ってるか?元はアビドス東第三高等学校って名前だったらしいんだが、迷ってしまってな……。」

 

「アビドスは私の学校だよ。」

 

「おぉ、ちょうど良かった。行き方を教えてくれないか?」

 

シロコは怪訝に思った。

 

何故あの学校に大人の男性が行く必要があるのか。

 

怪しさしか感じなかったが、かといって何か悪巧みをしているようにも思えなかった。

 

「いいけど……まだまだ遠いよ?」

 

「どれくらいだ?」

 

「ん……だいたい30km。」

 

「さんじゅっ……!?マジか……。」

 

相手の男は深刻そうに頭を抱える。

 

その反応にわざとらしさは見えない。

 

(ここの地理を知らないってことは、近くのチンピラではない……か。)

 

相手に対しての危険度を下げる。

 

その分、心の奥底から好奇心が持ち上がってくる。

 

だからなのか、次の瞬間、思わずシロコは口走ってしまった。

 

「私が乗って案内しようか?」

 

自分の発言に唖然とした。

 

やってしまったと、瞬時に後悔する。

 

知らない人の車に乗ろうとするなんて、子供でもやらない。

 

相手がか弱い男でも危ない匂いがするのは同じだ。

 

いや、むしろ力の弱い男が話しかけてくること自体、非常に怪しい。

 

なのに——。

 

「いいのか?」

 

「っ……。」

 

「あ……いや、無理言ってすまなかったな。せめて道だけでも……。」

 

「な、何でもない……この自転車、載せられる?」

 

「ああ……まあ、荷物を退ければいけるかもな。」

 

男はさっさと自転車を装甲車に積み込んでいく。

 

猜疑心を捨てきれなかったシロコは、その後ろ姿を無表情で自然に眺める。

 

背丈はこちらよりも高く、背中や脚には使()()()()()()()が沢山ついていた。

 

単にジムで鍛え上げただけとは思えない。

 

(うん……監視……監視した方がいい。)

 

どうせここで無視しても、きっとこの男は学校へ向かうだろう。

 

ならば最初から見張っておいた方が合理的だ。

 

何か少しでも怪しいと思えば、すぐに制圧すればいい。

 

「これでよしと、行こうか。」

 

「うん。」

 

シロコは助手席に滑り込むと、窓の方を向く。

 

そして今後の予定をもう一度反芻した。

 

(第一に監視、変なことをしたらすぐに無力化。この車両も奪えるなら奪おう。)

 

だが何度考えようとも、どうしても自分の意図に邪念が混ざっている気がしてならない。

 

おそらく顔が熱いのも気のせいだろう。

 

そう信じないと、判断が鈍る。

 

 

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

広い住宅街をようやく抜けると、景色が一気に変わった。

 

まさに砂一色、比喩抜きに砂だけ。

 

おそらくは元々街があったのだろう。

 

僅かに残っていた高架橋の上を装甲車は進む。

 

延々と砂漠だけが広がっている景色は非常に退屈で、その単調さが時間を溶かしていく。

 

そんな暇な時を紛らわす為にも運転席の男——先生は、今までの事情をシロコへ全て話した。

 

中央の『連邦生徒会』が機能不全になっていること。

 

その代行機関として独立連邦捜査部、通称『シャーレ』が動き出したこと。

 

そしてアビドスが、助けを求めていたこと。

 

いきさつを聞いた彼女は納得したように相槌を打つ。

 

先程までの刺々しい警戒心はだいぶ無くなっていた。

 

「なるほど……アヤネが言っていたシャーレの人は貴方だったんだ。」

 

「そういうことだ。よろしく頼むよ。えっと……砂狼さん?」

 

「シロコでいい。」

 

「じゃあよろしく、シロコ。」

 

「ん……こちらこそよろしく、『先生』。」

 

ここで会話は途切れた。

 

クーラーが冷風を吐き出す音と、ディーゼルエンジンが唸る音だけが車内に残される。

 

気まずいというより、どんな話題を投げかければいいのか分からない、といった雰囲気だった。

 

そんな時、カランと軽い金属音が車内に響く。

 

「あ……しまった。」

 

シロコが隣を見ると、先生が水筒を口元で垂直に傾けていた。

 

しかし中からは氷を除いて、水滴が僅かばかり滴ってくるのみだ。

 

「んぐ……ああくそ……ここまで時間かかるならもっと色々と用意してくるべきだったな……。」

 

「ん、それなら……これ飲む?」

 

シロコはバッグからエナジードリンクのボトルを手に取り、先生へ差し出した。

 

封は既に開けられており、量は少し減っている。

 

要は飲みかけだ。

 

「すまんね。ありがたくもらうよ。」

 

先生は躊躇いも無く中身を煽る。

 

(嫌がらないんだ……。)

 

シロコは意外に思いながら、その様子を横目で見続けた。

 

「ふぅ……生き返った。ありがと。」

 

「ん、どういたしまして。」

 

ボトルを受け取ると、シロコもそれを口に運ぶ。

 

変に意識したおかげか、いつもより甘ったるい気がした。

 

ひとりで悶々としていると、次の瞬間、パシーンと、空を切るような破裂音が耳に入る。

 

「銃声……!?」

 

ガバリと顔を上げれば、直後に装甲車が急ブレーキをかけて停まった。

 

先生はエンジンを切り、ジッと息を潜める。

 

すると遠方からターン、タタターンと小さな破裂音が断続的に聞こえてきた。

 

「……学校からだな。」

 

「先生、早く飛ばして。」

 

シロコは足元に置いてあった自身のライフル、SG556をすぐさま手に持った。

 

マガジンをはめ込み、コッキングレバーを引く。

 

「本気で行くのか?流石に危険じゃ……。」

 

「先生、早く。あそこには私の友達が居る。」

 

「……そうだな。」

 

先生が横目で見た先には銃声に怯える新兵ではなく、戦い慣れたベテランの姿があった。

 

それに懐かしさと親近感を覚え、思わず苦笑してしまう。

 

「行くぞ。掴まってろ。」

 

「ん。」

 

先生はエンジンをかけ直し、アクセルを大きく踏み込んだ。

 

装甲車は巨体を唸らせながら、砂の街を突っ走る。

 

「そうだ。メールで弾薬が無いって聞いた。後ろにしこたま積んでるから好きに使ってくれ。」

 

「ありがとう。」

 

「それで足りそうか?」

 

「ん……十分。」

 

木箱に詰まったモノを前にして、シロコの目が少しだけ鋭くなる。

 

まさにやる気満々といった顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

アビドス高等学校は戦場と化していた。

 

攻めて来たのは今まで幾度と無く武力衝突を繰り返して来たカタカタヘルメット団。

 

黒いヘルメットを被った彼女達は校門から侵入し、校舎への侵入を図ろうとしていた。

 

「ああもう……今日はいつにもなく多いわね!」

 

ツインテールの髪型と猫耳が特徴の『黒見セリカ』は歯噛みした。

 

対して隣の、尖った長い耳に赤色のメガネをかけた『奥空アヤネ』は悲痛な叫びを上げる。

 

「弾薬の備蓄が底をついてるってバレてるんでしょう!きっと力任せに押してくる筈です!」

 

「ええ!今でも既にゾンビ並みよ!」

 

セリカは遮蔽から身を乗り出し、窓枠からAR70/90を突き出した。

 

ダン!ダン!と、肩で反動を受けながら指切りで発砲する。

 

床へ空薬莢が転がり、時折り敵が1人、また1人と倒れていく。

 

しかし死んでいるわけではない。

 

ただ意識が落ちただけだ。

 

この世界において、銃撃戦は殺し合いとはならないのだ。

 

だからこそ、こういった無謀な突撃が平気で実行される。

 

「リロード!」

 

「はい!」

 

セリカはライフルから弾倉を引き抜くと、ポーチに手を伸ばす。

 

しかし中は空だった。

 

弾薬箱もすっからかんだった。

 

「やっば……弾!弾が無い!」

 

「私が探してきます!代わりにこれを!」

 

「ありがと!」

 

アヤネは自身のP226をセリカに渡すと、弾薬を探しに駆け出した。

 

「このっ……何で毎回襲ってくるのよ……!」

 

セリカは再び遮蔽から身を乗り出し、両手で構えた拳銃を突き出す。

 

彼女の目に入ってきたのはスクラップの盾を持ち、校庭を進む敵の群れだった。

 

拳銃1丁で仕留め切れる筈もなく、一部が校舎にまで到達してしまう。

 

「ホシノ先輩!ごめんなさい!何人か突破されました!」

 

セリカがそう叫ぶと、間延びした声が返ってくる。

 

[うへ〜、大丈夫だよ〜。]

 

直後、セリカのヘッドセット越しに何回かの発砲音が聞こえてきた。

 

更にはくぐもった敵の悲鳴らしきものまで。

 

[終わったよ〜。]

 

「本当に強いですね……。」

 

[うへぇ、照れちゃうよ〜。]

 

通信の相手は階下の昇降口に居た。

 

下駄箱を背に座り込み、ベレッタ1301へショットシェルを装填しているピンク髪の少女。

 

黄色と青色からなる金銀妖瞳(ヘテロクロミア)の『小鳥遊ホシノ』は溜息をつく。

 

彼女の周りには物言わぬヘルメット団員がそこらじゅうに転がっていた。

 

それでも懲りずに攻めてくる敵だったが、ホシノは容赦なく顔面へ散弾を叩き込んだ。

 

「ち、ちくしょう……。」

 

「強い……ぐは……。」

 

「ふぅ、これで……って、また来たよ。」

 

何度目かの侵入を防いだ時、校門の方向からガタガタと何かの走行音が耳に入ってきた。

 

ホシノはヘッドセット越しに屋上のもう1人へ呼びかける。

 

「ノノミちゃーん?何か見えるー?」

 

[はい、歩兵戦闘車(IFV)が1両、よく見えますよ〜♪]

 

「型式は?」

 

[おそらくBMP-1ですね。大砲がついています。]

 

「うへ……敵さんも必死だねぇ。お互いカツカツだってのに、虎の子を投入してきたわけだ。」

 

シロコと同期の『十六夜ノノミ』の明るい声とは裏腹に、報告の内容は深刻なものだった。

 

通信を聞いていたセリカは急いで窓の外を見る。

 

そしてきゅっと胃を縮ませた。

 

「うっそでしょ……。」

 

カタカタと履帯を鳴らしながら近付いてくる敵車両。

 

そのお椀型の砲塔からは太い砲身、73mm滑腔砲が伸びていた。

 

あんなものに撃たれたら教室なんて容易く吹き飛ぶだろう。

 

ノノミからの報告が続く。

 

[敵兵が車両の後ろに集まっています。あれを盾に突破するつもりですね〜。]

 

[それはちょっと厄介だぁ。]

 

その時、敵車両の砲塔が動き始めた。

 

砲口がピタリとセリカの居る教室へ指向される。

 

[セリカちゃん?アヤネちゃん?]

 

ノノミの声が急に切迫した。

 

セリカは反射で近くの棚の裏に滑り込む。

 

次の瞬間、カッッ!!っと、眩い光が教室を包み込んだ。

 

遅れて轟音と爆風、爆炎が後に続く。

 

「きゃあっ!?」

 

視界が白く跳ね、熱が頬を撫でた。

 

床も壁も天井も紙のように吹き飛び、砕け散った机が宙を舞う。

 

「……ぐっ。」

 

キーンと耳鳴りがうるさい。

 

息が上手く出来ず、変に粉塵を吸い込んで派手にむせる。

 

パラパラとコンクリート片が降り注ぐ中、セリカは全身を白く染めながら半壊した教室から張って出た。

 

「もう……最悪……!」

 

まさに絶対絶命といった状況。

 

そこへノノミの声が。

 

[ホシノ先輩、こうなったらアレを使いますか?]

 

[うーん、もうちょっと温存しておきたかったんだけどなぁ……。]

 

話している間にも敵のIFVはゆっくりと距離を詰めてきていた。

 

ガタガタと履帯の音と共に、構成員の歓声も近付いてくる。

 

その時だった。

 

[あら?また何か来ますね?]

 

校庭の方からまた別のエンジン音がすることに気付く。

 

唸るようなそれが大きくなると、真っ白な装甲車が砂煙を蹴立てながら校門に突っ込んできた。

 

「えっ!?」

 

気付けば外に身を乗り出していた。

 

装甲車の上部ハッチに見えたのは銀髪の少女、先輩であるシロコの姿。

 

彼女は車内から何か大きな物を取り出していた。

 

「RPG!」

 

歓声を上げていた敵は異変の察知が大幅に遅れた。

 

目を見開くセリカの視線の先で、装甲車は敵構成員の間をすり抜けていき、あっさりとIFVの背後をとってしまう。

 

そこでようやく敵の乗員が乱入者の存在に気付いた。

 

しかし鈍重な車体と砲塔はのろのろとしか動かない。

 

直後、シロコがトリガーを引いたようだ。

 

ドッッ!っと激しい音と硝煙を発生させながら弾体が発射され、敵車両の背面に直撃した。

 

弾頭部の成形炸薬弾は乗降ハッチを易々と貫通し、内部で炸裂する。

 

たちまち敵のIFVは内側から派手に炎を吹き出し始めた。

 

「やった!」

 

セリカの胸が一気に熱くなった。

 

脅威の撃破に喜んでいると、先程の装甲車が校舎の入口へ滑り込み、運転席から『見知らぬ大人』が降りてくる。

 

「おい、そこの!手伝ってくれ!弾持ってきたぞ!」

 

「うえっ!?私!?」

 

その低い声に思わず二度見をする。

 

何故なら『人間の男』だったからだ。

 

キヴォトスにおいては超レアどころの話ではない。

 

驚いたまま固まっていると、遅れてシロコが顔を出してくる。

 

「ん、セリカ、話はあと。」

 

「わ、分かったわよ。またちゃんと説明してよね。」

 

セリカは1階に降りると、弾薬ケースを受け取る。

 

中には5.56mm弾の詰まったSTANAGマグがズラリと並んでいた。

 

「よし、俺とシロコは横に回る。おまえさんは上から撃ってくれ。きっと顔を出す筈だ。」

 

「ええ!」

 

「ん、了解。」

 

弾薬の補給を済ませると、先生の指示のもと、ヘルメット団の残党を狩っていく。

 

もう弾をケチる必要もない。

 

セリカはお返しと言わんばかりに苛烈な射撃を敵にお見舞いする。

 

「この……このっ……教室を吹っ飛ばしてくれた分よ……!」

 

敵は十字砲火を浴びて、すっかり足が止まっていた。

 

下手に突撃すれば、セリカとシロコ達からの弾幕に晒され、足を止めれば屋上のノノミから狙撃され、何とか校舎に辿り着いてもホシノのショットガンと徒手空拳が待っている。

 

次第に戦闘が処理作業に変わると、敵も敗色を感じ取ったらしい。

 

1人が背を向けると、我も我もと一斉に逃げ始めた。

 

「撤退?逃さないっての!」

 

セリカは敵を追おうと階下に降りるが、そこで先生から手で制される。

 

「待て。敵は引いている。追い詰めると返って抵抗してくるぞ。」

 

「でも……!」

 

「心配しなくとも戦闘はもう終わる。それより持ち場を守れ。」

 

先生の言ったことはすぐに現実となった。

 

IFVの撃破とアビドス側の立て直しにヘルメット団は戦意を喪失したようで、こちらが攻撃せずとも撤退を始めた。

 

燃える敵車両からも黒焦げになった乗員達が逃げ出し、覚えてろよ!と、捨て台詞を吐きながら走り去っていく。

 

こうして何度目かのアビドス防衛戦は呆気なく終結した。

 

 

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

先程までの喧騒が嘘だったかのように学校は静寂で満ちていた。

 

あれだけの軍勢をたった数人で撃退出来たことにシロコは驚きを隠せなかった。

 

戦場の跡地である校庭を眺めていると、隣から拳が突き出される。

 

そちらを向くと、先生の姿があった。

 

「よくやったな。良い動きだった。」

 

シロコは一瞬固まるが、そっとグータッチを返す。

 

コツンと、硬さと暖かさを僅かに感じる。

 

その余韻に浸っていると、背後からの声でビクリと肩を震わせた。

 

「シロコちゃ〜ん?」

 

後ろを向けば、そこには少し怖い雰囲気を纏わせたホシノの姿が。

 

「んっ……ほ、ホシノ先輩。おはよう。」

 

「うん、おはよう。状況を説明してくれると嬉しいかなー?」

 

ホシノに続いてノノミとセリカ、アヤネも現れると、大人の男性を前にそれぞれ好奇の視線を向けてくる。

 

「紹介するね。この人はシャーレの先生。」

 

「えっ、シャーレ?」

 

「もしかして……。」

 

先生はポケットから自身の身分を表すパスを取り出し、皆んなに見せた。

 

「ああ、シャーレの顧問だ。今朝、メールに気付いてな。遅まきながら参上させてもらった。」

 

半信半疑だったノノミ達はパスを見て安堵の息を吐く。

 

「へえぇ……!」

 

「ならこれからは先生が助けてくれるってこと?」

 

「私達の専属ってこと、ですか?」

 

「まあ、そうかもだな。今後ともよろしく頼むよ。」

 

「「「はいっ!!」」」

 

生徒たちの返事が重なる。

 

先生は彼女達の反応に裏で胸を撫で下ろした。

 

——自分がどんな目で見られているとも知らないまま。

 

これから始まる騒動に巻き込まれるとも知らずに。

 




ちなみにシロコ達の視点を男から見たものに変換すると、男子校に大人な雰囲気を漂わせるグラマラス女教師(無防備)が異動してきた感じです。

ぶっちゃけ貞操逆転難しいけど、面白いので頑張って書いてきます。テンポを良くするためにストーリーは時々端折ったり結合したりするのでご了承を。



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