元傭兵先生、貞操逆転世界を行く   作:ゆうぐれ

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テンポ良く行きたいので、結構すっ飛ばしていきます。

あと先生の乗る装甲車はPKO仕様の白塗りの車両をイメージしてもらえば。



第3話 アビドス高等学校廃校対策委員会

先生達は戦闘の後片付けと物資の積み下ろしを済ませると、部屋のひとつに足を運んだ。

 

中に入れば中央に置かれた長机と周りのホワイトボードが目に入ってくる。

 

教室というより、何かの作戦室のようだった。

 

「ここは?」

 

「ん、いつも使ってる教室。」

 

「『アビドス廃校対策委員会』本部へようこそ〜。」

 

「ほう、なるほど……。」

 

先生は適当に椅子を引き寄せると、机の端に腰を下ろす。

 

その瞬間、空気が変わった。

 

シロコが最初から狙っていたかのような、目にも止まらぬ速さで先生の隣を占領する。

 

続いてホシノがスルリと向かいのポジションに滑り込んだ。

 

次に先生が前を向くと、そこには勝ち誇った表情の2人。

 

一方でノノミとアヤネは言葉にはせずとも、少し悔しそうにしていた。

 

何事かと首を傾げていると、ホシノが話を切り出してくる。

 

「それで先生、何か聞きたいことはあるー?」

 

「じゃあ、ここの事情について詳しく教えてくれないか?」

 

「うへ、じゃあアヤネちゃんに任せた方がいいかな?」

 

「えっ、わ、私ですか?」

 

「ん、やはりここは私が手取り足取り……。」

 

「んん"っ!では説明させていただきますね。」

 

先生に擦り寄ろうとするシロコを摘み上げながらアヤネは軽く咳払いをする。

 

そしてアビドスの状況を淡々と話し始めた。

 

元々アビドスは類を見ない程に巨大な街で、学校の規模もゲヘナやトリニティに負けず劣らずだったこと。

 

しかし砂漠化が急激に進み、余裕のある生徒や住民から次々と出て行ったこと。

 

そして治安も悪化の一途を辿り、様々な武装勢力が跋扈し始めたこと。

 

アヤネの説明はそれからも続いたが、『一番の問題』とやらについて話そうとした時、今まで黙っていたセリカが突然話を遮ってきた。

 

「待って!本当に話していいの!?」

 

「んー?別に大丈夫じゃない?」

 

「先生は私達を助けてくれた。信用出来ると思う。」

 

「で、でも部外者よ!?」

 

「私達より立場が強い大人のお兄さんがせっかく話を聞いてくれるって言うんだよ?すぐには解決しないだろうけど、もしかしたら何かアイデアが見つかるかもしれないじゃん?それともセリカちゃんには何か良い代替案があるのかな?」

 

ホシノの言葉にセリカは押し黙った。

 

そして吐き出すように叫ぶ。

 

「今までに私達が助けを求めて、手を差し伸べてくれた大人は居なかった!」

 

その声は僅かに震えていた。

 

「だから独力で必死にやってきたのに……今更になって介入してくるなんて……!」

 

セリカにとって先生はレアな男と言えど、部外者の大人には変わりない。

 

誰ひとりとして支援の要請を受けてくれなかった大人達。

 

それらの同類がいきなり現れて、今まで大事に守ってきた場所にズカズカと土足で踏み込んできたのだ。

 

気分が良い筈が無い。

 

「セリカちゃん……。」

 

「私は絶対……み、認めませんからっ!」

 

そう言い捨てると、セリカは勢いよく教室を飛び出していった。

 

先生は後を追おうと席を立つが、ノノミがそっと手で制す。

 

「先生はここでアヤネちゃんの話を聞いていてください。セリカちゃんは私が見てきます。」

 

「……すまない。頼んだ。」

 

「大丈夫です。あの子、根はすごく良い子なので……。」

 

「分かってる。気にしちゃいない。」

 

ノノミは頷くと、セリカを追って部屋を後にした。

 

気を取り直し、アヤネは説明を再開する。

 

「えっと、その問題というのが……借金なんです。」

 

「借金?」

 

「ええ、砂の被害が出るたび、修繕費と防災費が十万単位で出て行ってしまって……。」

 

「いつの間にか金庫の底をつき、札束が借用書の山になってたと……それで額面はどれくらいなんだ?」

 

「ん、だいだい9億。」

 

「正確には9億6235万クレジットです。そこに利子もつきます。」

 

「それは凄まじいな……。」

 

その膨大な額に先生の思考が一瞬止まる。

 

数千万程度ならまだ多少の融通が効くかもしれなかった。

 

しかし億ともなれば話は別だ。

 

利息だけでも相当な数になるだろう。

 

先生は椅子にもたれかかり、額に手を当てる。

 

「T-72が8両分……返せなかった場合は?」

 

「担保として学校が渡る。そうなったら、アビドスは終わり」

 

「そうか……。」

 

ホシノは誤魔化すように軽く笑う。

 

「つまらない話でしょ。でもちゃんと聞いてくれてありがとね。大人にここまで話したの、初めてだよ。」

 

その言葉の直後、先生は手首の端末を操作し始めた。

 

「おーい、アロナ。聞こえるかー?」

 

 [は……い! きこ……えますよー!]

 

「うわ、何それ?」

 

「ウチの頭脳担当。俺の足りない脳味噌を補ってくれる……なあアロナ、手っ取り早く金を稼ぐ方法ってあるか?」

 

 [えっと……無難にアルバイトでは?]

 

「いや、百万千万単位だ」

 

 [うえっ!? そ、そんなにですか……!?]

 

「だよな。万能でも即答は無理か……俺の手持ちは無いし……。」

 

本気で考える先生の、その横顔にホシノ達は目を見張った。

 

「ん、あなたが無理に介入する必要はない」

 

「何故だ?」

 

「部外者を巻き込めないよ。これは私たちの問題だし。」

 

アヤネも頷く。

 

「先生に迷惑がかかる可能性も……。」

 

先生は端末から目を離し、淡々と言った。

 

「何言ってる。わざわざここまで来たんだ。途中で投げる方が気分が悪い。」

 

それから、少しだけ口角を上げる。

 

「先生としての『最初の仕事』をほっぽり出すほど無責任じゃないよ。」

 

先生は立ち上がり、ホシノへ右手を差し出した。

 

「改めてよろしく。立場としては……委員会の顧問でいいのか?」

 

ホシノは固まった。

 

恐る恐る手を伸ばし、指先が触れ、全体を握り込む。

 

「っ……!?」

 

初めて感じる異性の感触に、ホシノは真面目な場面にも関わらず、硬直してしまった。

 

気付けば握手としての時間は既に超過しており、段々と周囲からの視線が厳しくなっていく。

 

「ん……ホシノ先輩?」

 

「少し長いのでは……。」

 

「んえっ!? あ、あっ……ご、ごめんね先生!」

 

慌ててホシノが手を離した途端、シロコが間に割り込んだ。

 

先生の右手を、両手でがしりと掴む。

 

「ん、先生。よろしく」

 

「おう、よろしくな。」

 

「せ、先輩たちばっかり……ズル……うぅ……!」

 

独り残されたアヤネは顔を真っ赤にしながら、言葉を行方不明にさせる。

 

だがシロコが先生の手を取り、アヤネの方へと差し出してきた。

 

アヤネは恐る恐るそれを握り込む。

 

ニヤけそうな顔を必死で抑えながら。

 

「じゃあ、また明日な。」

 

それからは明日以降の予定を簡単に確認し、解散となった。

 

連絡先を交換し、何故かテンションを上げに上げた彼女達に見送られながら、先生はシャーレへの帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

日が傾き、空が赤みを帯びる。

 

装甲車が角を曲がって見えなくなると、ホシノとアヤネはホッと息を吐いた。

 

「ふぅ……行っちゃいましたね……。」

 

「うへ……そうだねー……。」

 

「私たちも戻りましょうか……。」

 

「もう精魂尽き果てたよー……。」

 

大きなイベントが2つもあったおかげか、2人とも疲れた様子だった。

 

トボトボと校舎へ戻り始めると、彼女達の前にノノミが現れる。

 

「あっ、ノノミちゃん。セリカちゃんは?」

 

「さっきバイトへ行きました。先生は帰っちゃったんですか?」

 

「うん、また明日来るってさ。大丈夫、連絡先はゲットしたよ。」

 

「おぉ!それは……って私も欲しかったですー。」

 

ノノミは悔しそうに膨れっ面になる。

 

対してホシノは得意げに端末の連絡先一覧を掲げた。

 

すると2人の横でアヤネがポツリと呟く。

 

「それにしても……その……先生ってかなりオープンな方でしたね……。」

 

「まあ……だったねぇ……。」

 

「確かに言われてみれば普通に私達と話してましたね。男の人って割には女性への忌避感とか警戒心が感じられなかったというか……。」

 

真面目に分析をするノノミだったが、他の2人の様子がおかしいことに気付く。

 

そして彼女達の表情からして、『別なこと』を考えていると瞬時に理解した。

 

「あらあら……。」

 

ノノミの笑顔が、ゆっくりと温度を下げていく。

 

彼女はホシノに詰め寄ると、その緩み切った顔を両手で挟み込んだ。

 

「うふぇっ……にゃ、にゃにかな……?」

 

「一体何を見たんですか?私にも詳しく教えてほしいですね♪」

 

「うへぇ……顔が怖いよぉ……。」

 

「で?何を見たんですか?鎖骨ですか?胸元ですか?うなじですか?」

 

「さ、鎖骨とうなじ……かな?だよね?アヤネちゃん?」

 

「えっ!?えっと……!」

 

話を振られたアヤネは俯いて顔を真っ赤にする。

 

そしてポツポツと白状し始めた。

 

「その……シャツが透けてタンクトップの下着が……。」

 

「ふーん……。」

 

「あ、あと手もゴツゴツしてて触り心地が私達とは全然違いました……。」

 

「へえぇ……!」

 

次第にノノミの両手へ力がこもっていく。

 

「にょ……にょにょみちゃん……はにゃしてくりぇると……!」

 

「あっ!も、もしかしたら防犯カメラに映ってるかもしれません!」

 

「あらっ、それは良いですね。早速見に行ってみましょう♪」

 

「ぷえっ……た、助かったぁ……。」

 

アヤネの機転によってノノミから解放されたホシノだったが、その時、何か違和感を感じ取った。

 

『こういう話題』に一番敏感であろう、むっつりな人物が居ないことに。

 

そして周りをよく見渡してみれば、件の仲間の姿は見当たらない。

 

「そういえば……シロコちゃん、どこ行った?」

 

「あっ……確かに……!」

 

「まさかとは思うけどさ……。」

 

ホシノの予想は見事的中していた。

 

一方、先生の運転する装甲車の後部座席。

 

空の弾薬箱や畳んだ段ボールなど、アビドス側から受け取った沢山の荷物が積まれていた。

 

その中で、もぞりと何かが動き出していた。

 

「ん、先生。」

 

「ああ、シロコか……っ!?シロコ!?」

 

「ちょっと相乗りさせてもらうね。」

 

シロコは驚愕の表情を浮かべている先生を他所に、助手席へ腰を下ろした。

 

「いつから乗っていた?」

 

「ん、最初から。先生の真後ろ。」

 

「全く気付かなかった……何か言い忘れたことでもあったか?」

 

「ううん、特には。」

 

「じゃあ何だ?」

 

「え、えっと……。」

 

シロコは視線を落とし、指先をいじりながら言葉を探す。

 

競争相手が増えたのを、彼女は察していた。

 

だからこそ、大きく踏み込むつもりだった。

 

「あのね……その……先生と……2人きりで話をしたかっ……。」

 

その瞬間。

 

ぎゅるるるる、と腹の虫が車内に鳴り響く。

 

出所は言うまでもない。

 

シロコは頬から耳にかけて真っ赤にすると、そのまま黙り込んでしまった。

 

車内には走行音のみが残る。

 

数秒後、耐えきれなかった先生が笑い出した。

 

「笑わないでほしい……。」

 

「ははっ……すまんすまん。ならどっか夕飯でも食べにいくか。俺も色々と話を聞きたい。」

 

「……ん!ファミレス行きたい!」

 

「了解、ただこのことはあんま言い振らさないでくれよ。勤務時間の寄り道は怒られる。」

 

「つまり……先生と私だけの秘密?」

 

「そういうことだ。機密事項だぞ?」

 

「ん……分かった!」

 

シロコはいつにもなく満足そうに首を縦に振った。

 

先生も彼女の反応小さく笑うと、アクセルを踏み込む。

 

白い装甲車は地平線の摩天楼へ続く一本道を走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

⬛︎

 

誰も居ないアビドスの街。

 

その上空には黒い影があった。

 

夕焼けの光に紛れて飛ぶのは、プロペラが後部に装備されたグレーの機体。

 

航空機より小柄で、大型ラジコンのような印象を受ける。

 

いわゆるドローンだった。

 

機首には球体のカメラが収められており、それがギョロリと動く。

 

大きなレンズが捉えたのは遥か下方の白い装甲車。

 

それは写真を何枚か撮り、すぐに踵を返す。

 

次に狙いを定めたのは街中を1人で進む人影だった。

 

猫耳の生えたその少女は先程の装甲車とはまた違う向きに歩いている。

 

周囲には誰も居らず、彼女だけだ。

 

ドローンは速度を落とし、追跡を始めた。

 




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