【リメイク版】不遇な朝田詩乃に寄り添いたい。 作:ヤン詩乃ちゃん( _´ω`)_
「詩乃ちゃ〜ん。」
「ひゃぁい!?」
いつものように詩乃ちゃんの部屋に突撃する。これで何十回、もしかしたら何百回かもしれないけれど、そのぐらいしているのに、度々こうやって驚く事がある。慣れてるのか慣れてないのか、まったくわからん。
「あ、い、出雲!ちょっと、出てて貰っていい、かな?」
「へ?」
「いいから!出てて!」
結構真面目に怒鳴られたので、仕方なく部屋から出る。詩乃ちゃんのお母さんが2階に上がってくるが、大丈夫ですよと言うと、あらそうと言って降りていった。
「……も、もういいよ。」
姫からお許しが出た。
俺が部屋に入ると、女の子座りでベッドに座っていた。顔は真っ赤。
「……おはよう。」
「うん。おはよう。」
「詩乃ちゃん。」
「何?」
「公園行こう!」
「…………」
何故か詩乃ちゃんは、頑なに俺と外で遊ばない。何度か遊ぼうと誘っても、「本当に小学生かよ。」ってくらい誤魔化してなんだかんだ、屋内で遊んでいる。
お互いインドア派なのもあるし、出会った頃は外で遊ぶ方が多かったのだが、最近は頑なに外で遊びたがらない。
「どうしても、公園で遊びたい?」
「遊びたい。なんでダメなの?」
「それは……出雲が……まぁいいわ。分かった。仕方ないなぁ……」
そう言って、にへらっと笑う。やっと外で遊べる。
何して遊ぼうか。鬼ごっこか?隠れんぼか?子供らしい遊びをしたいなぁ。普段出来ないような……
……ん?詩乃ちゃんが凄く見てくる。
「嬉しそうだね。」
「詩乃ちゃんと久しぶりに外で遊べるからねー。」
ニッコニコ顔の詩乃ちゃんを見て、自然と俺も笑顔になる。後で聞いたが、この時俺の顔が凄く緩んでいて、喜んでくれてるんだと思って、とても嬉しかったらしい。
その後、近くの土手にある結構広い公園に来た。遊具も豊富で、真ん中には噴水もある。今は土曜の朝9時ちょっと。中高生らしき人達が遊んでいるのが見えるが、同じくらいの年齢の子達はいないようだ。
「……ねぇ、出雲。」
「うん?何?」
家からこの公園まで歩いて20分程なんだが、その間、ずっと俺の服の袖を握っていた詩乃ちゃんが、ここに来て一言目を発する。公園までずっとキョロキョロしていて、何も喋らなかったのだが……
「……日向ぼっこ、しよ?」
日向ぼっこかぁ。
「うん。いいよ。」
もちろん受け入れます。
詩乃ちゃんと共に土手に寝っ転がり、日向ぼっこする。日向ぼっこっていいよね。体力ない人でも出来るし、こうやって、好きな人としていると、とてつもない幸福感に包まれる。
「んっ……」
大の字になって寝っ転がってた俺、その左腕に、詩乃ちゃんが頭を乗せてきた。詩乃ちゃんの顔近い。多分、俺の顔今真っ赤だと思う。詩乃ちゃん……え、寝てるやん。早っ!
……今日、朝早かったのかな。それとも、昨日夜更かししちゃったとか?起こさないでおこう。
「……寝よ。」
開き直って寝る事にした。
「おやすみ。詩乃ちゃん。」
まだ朝だけどね。
「……」
暖かい感触を感じながら、むくりと起き上がる。寝てしまっていたのか。
ちらりと右を見ると、穏やかな顔でスヤスヤと眠っている彼がいた。寝ぼけ眼の目を擦り、もう1度横になる。起きた時に感じた暖かい感触は、彼の腕だったのか。
「えへへ……」
だらしの無い声が出てしまうが、いいだろう。大好きな彼の顔が近くにあって、こんなにも暖かさを感じるのだから。
自覚がある。私の恋心は、普通とは少し曲がっている。【恋】という物は、あらゆる本のストーリーに干渉してくる物だ。恋をしないストーリー本の方が少ないだろう。それ故、少なくとも【普通の恋】というものは知っているつもりだ。
まず、私は彼の所有物を幾つか持っている。貰った物ではなく……盗んだ物だ。
どうしようもなく、彼を感じられる物が欲しくなる。私が読んだ事のある作品にも、そんな人がいたが、
いつかそう思ったら、私は行動に移すのか……それはわからない。
「……ふふ。」
彼の全てが好きだ。彼の、私が嫉妬してしまうくらい滑らかで、綺麗な黒髪に手を通す。
………………………………
「ん……んぅ……」
彼の唇に、私の唇を合わせる。唇を合わせるだけの、ソフトなキス。それを、10秒程する。
幸せだ。幸せ……幸せ……幸せ。幸せ。幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ!!!
体全体が熱くなる。幸せ過ぎる。唇を離した後も、彼の左腕を体全体を使って抱き締める。このまま死んでもいいとも思える。
もう1度寝よう。遊んでいる、とは言えないかもしれないけれど、有意義に過ごせたのだ。私的に、満足な1日だ。
その2時間後、昼の3時になっても帰ってこない詩乃達を探しに来た詩乃母が、土手でラブラブと昼寝をしている詩乃達を見つけ、携帯で写真を何枚か撮って、2人を起こす。
その後、出雲が詩乃宅でおやつを貰い、今度は室内で遊ぶ事にした。
何だかんだ、出雲も詩乃も、インドア派なのだ。ずっと室内で、少し外に出たくなっただけで。
明日も元気に室内で遊ぼう。と、2人は思った。
朝5:30。起床。
私は毎朝この時間に起きる。前日は大体20時か21時に寝ているので、9〜8時間以上は寝ている計算になる。問題ない。
まだ早朝で、外はあまり明るくない。この時間帯は、雨だろうが晴れだろうが、曇りのような空をしている。これも、彼が居なければ知らなかった事だ。
まずは、
この髪留めは、私と彼が友達になったばかりの時、彼が買ってくれたものだ。お小遣いを貯め、お店で買ってきてくれたらしい。
クロス型の、小さな髪留め。本人は「安かったし、壊れたら捨ててもいいよ」といっていたが、あれから2年経った今でも、壊れず私の髪を留めている。これを付けていると、彼を近くに感じられる。
服を入念に選び、6:00になったら、彼の家へと向かう。1年前の今頃は、私も寝ていたのだが、彼は遅刻やギリギリに来る事が多く、私が居なきゃダメ*1な事に気が付いた。もっと早く気付くべきだった。
6:00。彼の両親もまだ寝ている頃。私は彼の家の鍵を開け、彼の部屋へと向かう。鍵は、彼の両親がくれた。起こしに行き始めたぐらいに。優しい人達だ。
彼の部屋へと入り、すやすやと穏やかな顔で眠る彼の顔を見つめる。何故か下腹部が熱くなるが、いつもの事なので放っておく。
毛布を剥ぎ、すこし肌寒いのか、身動ぎする彼の足に跨る。彼は寝起きが悪い。暴れたりする訳では無いが、尋常じゃない力で毛布を被る。最初の頃は困ったものだ。
少しシャツが捲れ、むき出しとなった腹部を見て惚けてしまう。なんと引き締まった
しかしそれはダメだ。毎朝行われる、彼を前にした私の理性と本能の攻防。今日も理性が勝利し、彼を起こしにかかる。
起こすのは簡単だ。肩をゆすればいい。起き上がるまでは長いが、起きるのは早い。
「……」
眼を、少し開いた。起きた事がわかった私は、溢れ出ている感情を無理やり押さえ込む。毎朝毎朝、本能を抑え込むのは疲れる。
「おはよう出雲。まだ寝てるの?」
私がそう問いかけると、彼は少し頭を上げ、私の顔と体を往復して見て、頭を下ろす。右手を額に乗せて、弱々しい声を出す。
「……降りてぇ。」
降りてやらない。降りたら、ベッドからずり落ちている毛布を取って被り、数十分、下手したら1時間起きてこないからだ。最初は、寝たいなら寝かせてあげようと思って、彼の椅子に深く座り込んで、彼の寝顔を近くでじっと見ていたのだが、時間を忘れ、朝ご飯だと叫ぶ彼の両親の声も聞こえず、あっさり2人とも遅刻した。
それからは二度寝させないようにしている。
「じゃあ起きる?」
無言。何も返ってこない。ちょっとムッとしてしまうが、まだこの起床時間は習慣化されていないので、眠いのは当たり前だと、自分を納得させる。
数ヶ月続けているのだから、そろそろ自主的に6:00に起きてもいいと思うのだけれど。
……それはそれで寂しい。我ながら面倒臭いと思う。
「今何時だよ……」
「6:00よ」
時計を探すようにキョロキョロしていたが、間髪入れずに私が答える。時計なんかに意識を向けず、ずっと私に意識を向けて欲しい。そう思うのは、異常なんだろうか。
「まだいいじゃんか……朝ご飯7:00でしょ……」
「いいから起きなさい!」
これは断じて私的な物ではなく、6:00に起きるのが健康的だから、必死になって起こしているだけだ。そう。別に、彼が構ってくれなくて寂しいなんて、そんな訳ない。確かに、彼はイケメンで優しくて性格も良くて綺麗好きで頭も良くて私なんかと仲良くしてくれる私の大好きな人だけど、構ってくれなくても大丈夫なのだ。
「…………嘘ね。」
思わず声に出してしまう。頭の中で言い訳を並べていたのだが、私の本質が言い訳を許さなかった。
あ、彼に聞かれてしまっただろうか……
「んん……なんか言ったぁ?」
……聞かれていなかったようで、よかった。
「いいえ。何も。早く起きなさい」
「うぇ〜……」
はぁ……まったく。彼は、私が居ないと、本当にダメなんだから。
学校への通学。彼はいつも「歩くのは嫌いだ」とボヤいているが、私は、彼と2人きりでいられるこの時間は、結構好きだ。
学校へ着き、各々の席に座る。彼は真ん中少し後ろの位置におり、私は扉に1番近い右前の席である。授業中、たまにチラリと振り返って彼を見るのだが、彼は授業中、机に突っ伏して寝ているか、暇そうにペン回しをしており、黒板なんてチラリとも見ない。
そんなので大丈夫かと思うだろうが、彼は天才。テストは全部満点だ。ある時、一体何処で勉強してるの?と聞いてみたら、「へっ!?……よ、夜、かな?」と曖昧な返事が返ってきた。何を動揺していたのだろう。
休み時間になったら、彼の元に向かいたい……が、それはクラスメイトが許さない。
すぐに彼は同年代の女や男に囲まれ、あっという間に見えなくなる。彼はいつもこうだ。人を惹きつける才能というか、欲しい時に欲しい言葉をかけてくれるし、同年代離れした知的さにやられた女子は私だけでは無い。
クラスで明らかに浮いている私と人気者の彼。話せる訳もなく……
そして、離れて遠巻きに彼を見ていたら、後ろに彼を見て笑いながらひそひそ話す姿が見えた。
その女共がこちらに歩き出そうとした時、私は殺意を込めた目を女共に向ける。私から2m程の距離で立ち止まり、反転して人混みの中に姿が消えるが、彼には何もしていないだろうな。
たまに彼に害意を持って接触しようとする輩がいるが、私はその分別が出来る。私の学校での役目は、ソイツらを彼に近付かせない事だ。
……彼には気付かれていないな。よし。
話は変わるが、結構最近、彼は眼鏡をかけ始めた。いつもとは違う、知的さを感じさせる眼鏡も、とても似合っている。
いや、いつも知的さを感じさせない訳では無いのだが。これはこれで、とても恰好いい。
遠くで談笑する彼に、私も自然と笑みが零れる。直接話している訳では無いが、心が通じあっているのを感じる。実際、さっきから何回か目が合っている。絶対に*2。
この瞬間は、何にも変えられない、今しか味わえない感覚に落ちる。永遠に続いて欲しいとも思うし、それ以上も求めてしまう。
私なんかが、なんて、最近はよく思う。クラスメイトが彼に群がっているのを見て、更にだ。
でも私がどんな状況でも、彼は私の手を握り、いつも私を安定させてくれる。どんなに辛く苦しい時でも、彼が居れば、私はやっていける。
今はまだ、彼の隣に立つには、足りないかもしれない。でも、絶対、いつか、彼の隣に、立ってみせる。
私以外……まともに立たせない。
放課後になったら、私はすぐに彼の手首を掴み、校門まで引っ張る。悪いなとは思うけれど、すぐに出なければ、クラスメイトがわらわらと集まってくる。事実、彼と私が登下校を共にし始めた頃に、何度かあった。それからはこうしている。
「さ、帰りましょ。」
校門前で、振り返って、彼の顔を見る。彼は毎回不思議そうな顔をするが、私が笑顔で彼の手を握ると、苦笑した顔になり、私と共に歩く。
何度も言うが、彼は優しい。それは良い所だが、同時に悪い所でもある。外の世界は危険なのだ。だから、危険を知らない彼を、私が守らなきゃならない。
いつまでもいつまでもいつまでも……
私は、彼を見守る。彼の隣に立つために。私の幸福感を満たす為に。そして、彼の幸せの為に。
「……大好きだよ。出雲。」
私のその言葉は、強い風の音でかき消され、誰の耳に届く事もなかった。
なんか一瞬だけランキング入ってました。
ありがとうございます。